884: 名無しさん :2017/06/13(火) 23:14:11
では失礼します


『比叡御殿のアイスとラムネともう一つ』


比叡御殿
それは、日企連によって生まれ変わった比叡の姿である。今後生まれてくる戦艦たちへの技術指導を兼ねたもので、その指導とは兵装と居住性であった。
のちに生まれる戦艦たちは全て比叡をモデルにして作られており、ある意味日企連戦艦の1番艦ともいえる。
兵装は連装4基8門から連装3基6門へと減らされ、減らした分来るべき対空戦闘のためにハリネズミのように対空砲を積んである。
主砲は減ったことで火力は下がったかのように見えたが、日企連によって搭載された半自動装填装置と電算機によって、
絶え間ない連射とあり得ない命中率をたたき出し、むしろ火力は向上した。
無論、全く未知なる技術であるため、毎日勉強会が開かれ海軍大学並の勉強量と揶揄されるほどであり、士官達は悲鳴を上げることになる。
だが、悲鳴を上げても逃げるものはいなかったことが救いであった。

そして、砲塔を1基減らした分余剰スペースが生まれ、その分艦の居住性を著しく向上させることができ、今まで比叡で過ごしていた水兵達は
「ここは本当に比叡なのか? 帝国ホテルや高級旅館じゃないのか?」
と漏らすほどであった。


居住性の改善はエアコンによる快適な空調だけにとどまらず、食事も改善された。
ダメージコントロールの技術指導や訓練の目的で炭酸ガス消火装置が付けられたが、これを利用してラムネ製造設備をつくり、
一般水兵に至るまでラムネをいきわたらせることができ水兵達には大いに喜ばれた。
ダメコンには弾薬庫冷却も含まれており、その冷房とそれを動かすための発電設備で強力な冷蔵庫が出来、電子レンジなどで新鮮且つ美味しい食事にありつけた。

尚、史実では巡洋艦以上の大型艦にはラムネ設備はあったがアイス製造装置はなかった。
なので、比叡は技術指導のテストモデルであったため搭載した結果。アイスを提供する場所はアイス・バーと呼ばれ、ラムネを提供する場所はラムネ屋と
愛称が生まれることとなるほか、アイス派とラムネ派の二大派閥が生まれることになり熾烈な争いをすることとなったのは余談である。

だが、アイス派のほうが俄然勢力は強かった。アイス製造設備によってできたアイスは、一般水兵のみならず上級士官や艦長ですら虜にしたからである。
この時代のアイスはとても貴重であり高価であったため、それにタダでありつけるとなるとラムネより狙われた。

そして悲しいことに、日本の酪農はアメリカや欧州に比べるとレベルが低いため十分な量の確保が難しく、日企連によって酪農にも指導が入り大量生産への
道が開かれていたが、道はできても物が出来るのに時間がかかる状態であった。
故に、ラムネは簡単にできるがアイスはそうではなく、料理などにも使うため量の少ない牛乳などの確保のために決められた時間でしかアイス・バーは開かれなかった。
その決められた時間に、水兵はもちろん艦長は愚か提督すら列に並んで待たなければ食べられないという不文律が生まれたのである。


が、その不文律は破壊されてしまう。
ある日列に並ばずに割り込んだ士官が発端で艦長や提督すら巻き込む大喧嘩に発展し、それ以降食券制度が生まれることになった。
この食券は嗜好品食券と呼ばれ、もっぱらアイス一杯かラムネ2本のどちらかと交換できるというもので、アイス券ないしラムネ券とよばれ酒保で配給された。
酒保で直接配れる以上徹底的に管理され、3日に一度で一人一枚しか配られず、場合によってはこれの窃盗事件が起きたりもした。
が、アイスかラムネと交換できるこの食券の価値はとても高く、これの窃盗は銀蝿より罪が重く、罪人は艦内トイレの全清掃が言い渡されるほどであり、
窃盗事件はそれ以降一度も起きなかった。
だが、窃盗はご法度だが交換や売買は特に罰してなかったため、適正かつ正当な取引であれば交換や売買は黙認された。
もちろん、階級をかさに着て安く買いたたいたりするものは、トイレ掃除より重い罰を下すと日企連から厳重に言い渡されたため、皆適正価格で売買や物々交換をしあったりした。

この結果、下士官や一般水兵が、上級士官や艦長クラスが持つ高級品などを持ったりするという珍事が起きたりしたのは余談である。


なんにせよ、この食券制度を用いたことで、決められた時間によって開かれるアイス・バーとラムネ屋は常に開くことになったが、その代わり食券を持たぬものは
たとえ提督は愚か総理大臣ですらラムネもアイスも食べられぬという新たな不文律が生まれたのである。



それから幾日か経った後、相も変わらずラムネ派とアイス派は争っていたが、その二派を分ける大事件が起きてしまった。

885: 名無しさん :2017/06/13(火) 23:16:49


「ううむ、どちらにしようか……」

佐藤少尉は悩んでいた、手には貴重な1枚の嗜好品食券。これはラムネかアイスかどちらかに交換できるというものだが、それゆえに悩むのである。
ラムネとアイスはいわば、量か質かであった。

日企連によってラムネは艦全員にいきわたらせるほどの生産量があるが、アイスはそうではない。
そして、悲しい乱闘の結果生まれた食券制度で交換できるようになり、今ではこの食券1枚でラムネ2本、アイス一杯と交換できるのである。
ラムネ2本というのはとてもいい、今までは3日の1本の割合で配給されたがそれが2本ももらえるのだから、3日のうち1日は我慢すれば後の2日はラムネが楽しめる計算だ。
だが、アイスというのも捨てがたい。バニラアイスとチョコアイスと抹茶アイスの3種が用意され、どれもこれもが美味いのだ。
一杯しか食べれないが、その味は天に昇るがごとく。さらに3種も味があるのでラムネの同じ味と違って選ぶ楽しさがある。

佐藤少尉だけではない、周りを見れば似たような者たちが、佐藤少尉と同じく顎に手をやり悩んでいた。皆が皆、同じように悩んでいるのである。

「悩んでいるな、佐藤少尉」
「あ、これは鈴木中尉」

佐藤は敬礼し、鈴木中尉もそれに答礼する。

「俺もどちらにしようか悩んでいるのだが、貴様は決まったか?」
「いえ、まだであります。自分も、アイスとラムネどちらも捨てがたいので……」

だろうな、と言い鈴木も同じように顎に手をやり悩み始めた。
それから、周りの者たちからふらふらとアイスやラムネへと歩み始めるものが生まれた、休憩時間も狭まってきたために決断したのだろう。
さて、俺も決めるか、と足を動かそうとしたところ

「あれ? お二人ともどうしたのですか?」
「あ、これは社員殿」

佐藤だけでなく、上官の鈴木も敬礼した。その相手は日企連社員。
軍に属さないため階級はないが、日企連社員はある意味軍より上の立場であるため、日企連社員は艦長などからも敬礼される立場にある。
社員は軍人でないためぎこちない答礼をし、先ほどの続きを話し始めた。

「見たところお二人は並んで立っていましたが、アイスかラムネか悩んでいたのですか?」
「ええ、お恥ずかしい限りです。軍人である以上即断即決すべきなのに、こうも悩んでしまうとは」
「それは仕方ありませんよ、貴重な嗜好品ですからね」

鈴木中尉の言葉に苦笑しながら答える。気になった佐藤は社員に話しかけた

「ところで、社員殿はこちらにどのような用ですか?」
「いえ、私も食べに来たのですよ。わが社が導入した機材である以上、ちゃんと作られているか、味はしっかりしてるかの確認は重要ですからね」
「なるほど」

社員は日企連に属している以上、この戦艦比叡の機材を提供する側であるため、それらの機材がきちんと動作してるかのチェックも仕事なのである。
機材である以上、アイス製造機とラムネ製造機も範囲に入っているので、社員の答えに佐藤は納得した。
そして、たとえ社員であっても一船員として扱われ、食券も3日に1枚というのは同じであった。

886: 名無しさん :2017/06/13(火) 23:21:40
尚、日企連とは多くの日本人にとって救世主ではあるが、突拍子もない斜め上どころか大気圏突破なことをしでかす理解不能な存在としておそれられたりもしている。
それは、海軍や陸軍といった軍人も同じであった。扶桑を三胴式にした強襲揚陸戦艦など誰も考えないだろう。

その斜め上な発想は、一般である社員ですら同じであり、佐藤と鈴木双方の目の前にいる社員も、この場にいる全員の頭では思いつかなかった
斜め上のことをしでかしたのである。

「どちらか悩んでいるのですか……、ならば両方取ればいいんじゃないんですか?」
「「は?」」

社員の答えにおもわずハモる二人。
その二人を無視して、社員は食券二枚を用意し、ラムネを受け取り、アイスをお椀に手にして机に座った。

「しゃ、社員殿一体何をなさるので?」
「これからこの二つを同時に食べようとするだけですよ」
「しょ、食券二枚はどこから?」
「ああ、それは溜めていたんですよ。うっかり使うの忘れてたんです」

理解はできた。食券は3日に一度もらう以上、6日で2枚もらえる。が、誰一人として6日も我慢したものはいない。佐藤もそうだった。
故に、社員の溜めていたということには衝撃を受けた。

だが、佐藤と鈴木の二人を同時に、いや、この食堂にいるもの達すべてに衝撃を与えることを社員はし始めた。

なんと、アイスの入ったお椀にラムネを注ぎ始めたのである!!

「うーん、クリームソーダなんて久しぶりだな」

周りの驚愕の表情をよそに、社員はクリームソーダを堪能し始めた。

貴重な食券2枚を消費したその嗜好品は、その場にいる兵士すべてを魅了する存在感を放っていた。
ラムネの上に浮かんだバニラアイスがシュワシュワと溶け、溶けたバニラとラムネをすくって飲む社員を見て、何人かがのどを鳴らした。

さらに社員はバニラアイスを少量スプーンにとり、さらにラムネを加えて同時に食べた。

「うーん、ラムネの味とバニラの味が絶妙にマッチしてるな」

その言葉を聞き、さらに何人かがのどを鳴らす。それらをよそに、社員はもくもくと食べ、ついに食べ終えた。

「ごちそうさまでした。余ったラムネは冷やしておこうかな」

余ったラムネ一本を手に、社員は食堂を出た。彼は周りが自分を見て驚愕してることには最後まで気づかなかった。


『クリームソーダ』


その甘美なる響きは、貴重な食券2枚を消費して生まれる裏メニューとして語り継がれることになり、
アイス派とラムネ派、そしてクリームソーダ派という新たな派閥が生まれたのであった。

887: 884 :2017/06/13(火) 23:24:21
以上です、wiki転載はご自由に。・・・でいいのかな?
何分自分の調べた範囲で穴が開きまくりのガバガバな奴かもしれません。
大和にアイス製造装置とラムネ装置があって、巡洋艦以上ならラムネはあるらしいですが
アイスがあるかどうかは確認してないのです・・・たぶんあるかも?

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最終更新:2017年06月19日 08:38