389 :ぽち:2011/12/16(金) 18:03:17
夢幻会一同は感動していた。
今この場で涙で溺死したとしても心残りは無い、そう言い切る者も幾人もいたに違いない。

無理も無い。
眼前に置かれた本。
これを見るために今日まで生きてきたといっても過言ではないのだから。

「新宝島」 しかも初版。
夢幻会が「萌え」を一般化してしまい「かつて」ほどの価値は無いとはいえそれでも感慨無量であった。
「で、どうします?手塚氏を支援いたしますか?」
辻の提案に、一瞬明るい表情を見せた嶋田は、しかし憂鬱な雰囲気を出すと首を振る。
「それはまずいだろう。確かに支援はしたい。
 うまくいけば手塚氏の自伝に名を残す事ができる。
 ある意味聖書に名を残すに等しいだろう。
 今のうちに支援すれば『日給5百円』などというアニメーターの生活を向上させることも可能だ。
 しかし・・・・・・トキワ荘の作品はあの日々の鬱屈が原動力となっているのもまた事実。
 特に手塚氏は一度大コケにコケなければ『ブラックジャック』が描かれなくなってしまう」
「しかしなぁ 『まんが道』に『あの極貧の日々、あの人が奢ってくれたカツ丼が無ければ自分たち二人は飢え死にするか漫画を諦めていただろう』
 とか書かれるのって憧れない?」
「だとしてもだ!」
ダンッと机に拳を叩き付ける嶋田。
「たとえ永遠の名作にその名を残す機会を失おうと!
 我々が干渉してはその『永遠の名作』が失われてしまうのだ」
その言葉と、込められた力とは裏腹に未練タラタラなのが判る。
「ここで彼らに救いの手を差し伸べる事は・・・・・・正しき文化の発展を阻害することになるのだ!
 諸君も理解したはずだ!
 だからこそカリ-や江川のデビューも妨害しない、そう決めただろう!」
「で、我々のすべきことは?」
「とりあえず中国と朝鮮の連中に版権というかオリジナリティに敬意を払うことを教える事だな」
「アメリカに正面から勝利するより難しくないか?」
「だとしても、我々はやり遂げねばならぬ・・・・・・・・・」

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最終更新:2012年01月16日 18:52