172: ライスイン :2017/08/09(水) 18:34:16
1939年11月1日 バルカン半島テッサロニキ付近 イタリア・ギリシャ連合軍

ギリシャとトルコの国境のトルコ側にあるこの町から少し離れた場所にイタリア軍とギリシャ軍が集結していた。

○イタリア軍(司令官:ロドルフォ・グラツィアーニ大将)

戦車師団×1(国産のP40重戦車やM11/39中戦車中心)  快速師団×2(アメリカ供与のトラックや国産豆戦車中心)

歩兵師団×2  山岳師団×1  黒シャツ隊×4個連隊

○ギリシャ軍(司令官:コンスタンチノス・バコプロス中将)

レオニダス戦車連隊 (英国供与のヴィッカース6t戦車B型やカーデン・ロイド豆戦車で構成されたギリシャ唯一の機甲部隊)

歩兵師団×4

グラツィアーニ大将が東郷指揮を執るこの軍であるが疲弊した状況で無理をして集めた軍勢であり、支援する航空隊の数も少なかった。更に支援を期待していた東欧諸国の軍は
動員可能な兵力の大半をドイツにつき従って対ソ戦に派遣していた。
彼らの戦略としてはまずトルコを撃破してバルカン半島から追い出し、後にマケドニアやアルバニアを攻略するというものであった。
そのため両国の国境には合計で6個師団も防御に咲いていた。また状況次第ではアルバニアにイタリアが強襲上陸する計画も立てていた。

「攻撃開始」

グラツィアーニ大将の命令で連合軍が進撃を開始する。手始めにテッサロニキを占領することで勝利を宣伝し国民の士気を上げるつもりであった。だが・・・

「街中よりロケット弾が多数飛来してきます。」

テッサロニキ市内より多数のロケット弾が飛来。命中率は悪かったが装甲の薄いギリシャやイタリアの戦車にとっては深刻な打撃になっていた。

「ま・・・街中より戦車部隊が出現、我が方に向かってきます。」

更に街中よりトルコ軍戦車部隊が出現する。そしてその戦車はどう見ても自分達の戦車より強そうだった。


 同時刻 トルコ軍

「戦車部隊は前進開始、パスタ野郎と彫刻野郎をぶっ飛ばせ。」

テッサロニキ市内のトルコ軍司令部では司令官のジョージ・パットン中将(※1)が攻撃命令を下し、戦車隊が前進を開始する。
日本から供与された74式中戦車改4型や輸入した90式中戦車(極少数)・95式軽戦車及び国産の中戦車サラディン(※2)を揃え、
国産の自走ロケット砲シャムシール(※3)や野砲の支援の元に次々とイタリア軍とギリシャ軍を打ち破って行く。空では81式艦上戦闘機(憂鬱96式艦戦)や
83式艦戦(憂鬱烈風改)及び91式艦上戦闘攻撃機「雷風」(※4)が制空権を握り、丸裸になった地上部隊を食らっていく。海上では核攻撃や爆撃を生き残った少数のイタリア艦隊を
帝国海軍地中海艦隊の支援の元、ティムール級戦艦4隻を中核とするトルコ海軍が優位に戦い制海権を掌握しイタリア・ギリシャ本土の港湾に対して艦砲射撃を行う始末。
結局、イタリア・ギリシャによる攻勢は翌日には完全に失敗し撤退を開始する。

「補給を終え次第追撃を行う。愚行の代償を払わせてやれ。」

攻撃を撃退し帰還した部隊にパットンの檄が飛ぶ。彼はケマル大統領(日本人医師の治療及び健康指導で未だ存命)から撃退後は逆侵攻してギリシャ全土を制圧する命令を受けていた。
だがトルコ軍は進撃を止めずにギリシャ本土へと侵攻。主力の大半を損失していたギリシャは
その後、補給を終え増援を受け取ったパットン率いるトルコ軍の攻撃にギリシャは耐え切れず11月半ばには本土を失陥。またイタリアの派遣軍も脱出に失敗して降伏。
そして11月末には周辺諸島も失いイタリアに亡命政権を作る羽目になっていた。

173: ライスイン :2017/08/09(水) 18:34:47
孤立大陸 第31話「反日連合の崩壊と終局への準備」



 反日連合各国が見せた醜態はバルカン半島だけではなかった。

「日本との神聖なる戦いを汚し、裏で日本と繋がって我らを裏切った卑劣な共産主義者共を撲滅する」

 核攻撃による国内経済と食糧事情の悪化で後が無くなったドイツは東欧諸国と共に食料と資源(と奴隷)を求めてソ連領へと侵攻を開始したのだった。
無論可能な限り犠牲を抑える為にヤク漬け朝鮮人(老若男女問わず・国内の生き残り全てを掻き集めて編成)を先頭に配置し、監視用の武装SS髑髏師団(※5)と
支援用の武装SS帝国師団(※6)を配置して攻撃に出ていた。
 対するソ連軍もドイツ軍の攻撃をある程度予測していて防御陣地や時間稼ぎ用に囚人部隊(※7)を配置していた。だがソ連軍は東にロシア王国や大陸の日本領との
国境を抱えていてそちらにも軍を配置しなければならず、最新鋭のT-34やKV-1も核攻撃の影響によるインフラの崩壊から生産が遅延していた為にドイツ軍の攻撃を止めるに至らず
12月半ば頃にはウクライナの大都市キエフにまで到達した。しかし豊かと思われていた穀倉地帯は日本軍の核攻撃やダーティボム等によって汚染され、残されていた食料も
ソ連軍によって挑発されていた。これに落胆したヒトラーは食料が大量に貯蔵してあると予測されたモスクワやスターリングラード、そしてバクー油田を狙って再進撃を命令。
独ソ領国は先の見えない泥沼へと突入していった。

 フランスではドゴール皇帝が暗殺され、宰相であったアルベール・ルブランが大統領へ就任し共和制へと復帰。援助目当てで対日戦継続は宣言したが国内復興を優先し、
裏では反日連合脱退と対日講和を画策していた。しかしこの情報が漏えいするとドゴール政権のNo2であり暗殺後もフランス人同士が相打つことを嫌って行動を起こさなかった
ルクレール大将が旧ドゴール派を率いて武装蜂起しマルセイユ周辺を占領して”ガリア王国”の建国を宣言。それに触発されてか王党派や共産主義者や無政府主義者など無数の
組織や集団が武装蜂起しフランスは内部で壮絶な内戦が繰り広げられる事となった。

 また反日連合に加盟した中南米諸国では日本軍による追加攻撃(通常型の弾道弾や爆撃、通商破壊に港湾部への機雷散布)に加えて政治家や官僚・軍上層部や財界人などの
不正や汚職などのスキャンダル情報が大量にばら撒かれて大混乱に陥っていた。更に日本軍工作員によって良識的な人物の暗殺やダムや発電所などの重要インフラの破壊も
続発し、混乱する状況から有効な対処が出来ず国民の不満が増大していた。おまけに犯罪組織の跳梁跋扈や押さえつけていた少数民族の武装蜂起に加えて新たに反政府武装勢力が
結成されるなど救いようのない状況で身動きが取れなくなっていた。


 1940年2月5日  東京・夢幻会会合場所


「反日連合は最早救いようがないほど内ゲバを繰り返していますね。」

「イギリスでもIRAがテロを再開。いい気味だな。」

会合の場では参加者達が反日連合の内ゲバを嘲笑していた。もっとも反乱勢力や武装組織に武器や資金をしたのも彼らであったが(※8)

「まあ良いでしょう、私達はこの隙に態勢を整えることが出来るんですから。」

そんな彼らを窘めながら嶋田は今後の計画を述べる。昨年10月のハワイ沖海戦の勝利及びハワイ諸島占領後、攻勢を停止。戦略兵器の増産や兵器の新型への更新、海外に展開している部隊の
交代や友好国への支援などといった態勢を整える事に専念していた。もっともゲリラ的な爆撃や弾道ミサイル攻撃に破壊工作・通商破壊等は引き続き行われていたが。

「フランスは放っておいても潰れる。ドイツ(+東欧諸国)とソ連は史実のクルスクやスターリングラードのような決戦時に核で纏めて消毒すればよい。イギリスに対しては爆撃と  
  通商破壊の強化及び反政府勢力への武器援助で良いだろう。」

伏見野宮は冷淡に言い放つ。

「そうですな・・・。まあトルコはパットン将軍がハッスルしたおかげでギリシャ全土を占領、イタリアも半島内に閉じ込められて地域間対立の激化で身動きが取れませんからな。」

辻も同意するかのように述べる。

「ではアメリカに対してはどうしますか?現状では政府に怒りが向いていますがこれ以上核攻撃を行えば傀儡政権を作る事すら難しくなります。」

そんな中で嶋田は今後のアメリカへの対策について意見を求めた。現状では自らの利益の為に長年の友好を無視して対日戦争に踏み切った政権と財界、そして敗北を続ける軍に対してアメリカ国民の怒りが
向いている。だがこれ以上核攻撃を行えば下手すれば日本への怒りに変化し政権の支持へとつながるかもしれない。

174: ライスイン :2017/08/09(水) 18:35:26
「まあ核攻撃は控えて”以前のカリフォルニア共和国”みたいな傀儡国家を作れればよいだろう。無論駐留軍付で統制を強めなければならんがな。」

「勿論圧力をかける為の直轄統治領は必要でしょうが。」

伏見宮と近衛が嶋田の問いに答える。

「ですが最悪の場合は・・・滅菌消毒が必要でしょうが。」

続けて辻が最悪の事態を想定した発言を行う。仮に傀儡政権の樹立に失敗しアメリカ世論が完全に反日に染まった場合は有りっ丈の核で北米全土を完全に滅菌消毒することを計画していた。
その為に極秘のうちに超大出力水素爆弾「天地開闢」(※9)の開発が進められていた。

「その為には西海岸上陸作戦を行う必要が出てきますね。」

夢幻会はアメリカを効率的に叩いて屈服させるにはアメリカ本土への上陸作戦が不可避と考えていた。初めはアラスカを占領し弾道ミサイルや戦略爆撃機を進出させる事を考えてはいたが
弾道ミサイル潜水艦の保有に加えて太平洋地域のアメリカ海軍をほぼ壊滅させていた事からアラスカ攻撃よりアメリカ市民やロングへのダメージが大きいと判断してアメリカ西海岸、
具体的に言えばカリフォルニア州への上陸作戦を計画していたのだった。

「やるしかなかろう。」

嶋田の言葉に伏見宮が答え、会合は終了した。そして日本は通商破壊や重要インフラへの攻撃、特にカリフォルニアを中心に西海岸への攻撃を強化しつつ
占領したハワイへ戦力を集中させ上陸作戦の準備を行い始めた。そして・・・。


 1940年7月1日 ユタ州ソルトレークシティ  臨時ホワイトハウス


「日本軍の大艦隊がカリフォルニアに向けて接近中だとっ!!」

臨時ホワイトハウスで憔悴しきった様子のロング大統領が驚愕の声を上げていた。

「スプルーアンス提督が機動部隊を率いて迎撃に向かいましたが戦火を上げる事無く壊滅。陸軍海軍合同の航空攻撃も失敗に終わり出撃機はほぼ全滅しました。」

接近する日本軍に対して残存する少数の巡洋艦・駆逐艦及び護衛空母・フリゲート・コルベットで編成されたスプルーアンス提督率いる機動部隊が迎撃に向かったが
数と性能で圧倒されて壊滅(提督自身は旗艦を撃沈されて漂流中に捕虜になった)。陸上基地からの攻撃も戦略爆撃用に改造されたB-25Zや残存するB-17及びB-24など
再生産困難な貴重な重爆撃機も動員されたが分厚すぎる防空網により艦隊に接近する事無く壊滅。最早日本軍の上陸を阻止することは不可能となっていた。

「以前からの砲爆撃で列車砲や重砲陣地も殆どが壊滅しています。生き残った戦車や重自走砲がバンカーなどに潜伏していますが・・・。」

補佐官の言葉に力は無かった。現状では無防備都市宣言を出させたうえで戦力を後退するか全滅覚悟の無謀な抵抗しかない。
だが追い詰められない画から非難を浴びたせいで思考に狂気が入り込んでいたロングは非道な手段にでた。

「エンジェル隊を出せ。」

その言葉に補佐官だけでなく閣僚たちは戦慄した。エンジェル隊・・・それは航空機による体当たり、所謂”特攻”を行うために編成された部隊であった。
特徴は軍からだけでなく民間からも志願者を募った事であり、代償に残された家族らに高額の年金や食料支給を行う事とした為に女性を含めた多くの市民が
志願していた。また特攻専用機チェリーブロッサム(桜花43乙型相当)の開発が行われ既に大量生産が行われていた。

「「大統領閣下っ、それは・・・。」」

「それ以上は言うな、もはやこれ位しなければ真面に戦えん。」

非人道的な体当たり攻撃を行えとの命令に閣僚や軍高官らが抗議の声を上げようとするがロングは一言で黙らせた。だったら降伏(かそれに近い講和)しろよと
一部の閣僚らは心の中で思った。

「それとミニッツメンも出撃させるのだ。」

その言葉を聞いた途端、先ほど以上の衝撃が部屋を駆け巡った。ロングの言うミニッツメンとは正式名称を合衆国少年少女義勇兵団と言い、主に高校生の志願者からなる
義勇部隊で指揮官は予備士官教育を受けた大学生の士官・下士官が担当していた。編成自体は今年の初めであったが今までは安全な地域での後方任務を担当していて
戦闘に参加するようなことは殆ど無かった(一部が対空戦闘を行ったくらい)。
先程とは違い閣僚たちは反対することが出来なかった。ロングの目が狂気を帯びていた事とミニッツメンを編成する法案を通す為にロングが反対派の有力議員を
”ジャップのスパイ”としてFBIに逮捕させていたからだ。

「では万難を期してジャップを撃退するのだ。」

ロングはそう言い残すと休息を取る為に寝室へと向かって行った。

175: ライスイン :2017/08/09(水) 18:36:03
同年7月5日 サンフランシスコ沖 日本帝国海軍 西海岸遠征艦隊


「間もなく上陸が開始されます。」

「宜しい、防空を密にせよ。艦隊も可能な限り接近して支援を行え。」

遠征艦隊旗艦の空母隼鷹の艦橋で塩沢大将が命令を下す。遠征艦隊は先のハワイ攻略艦隊を軸に強襲揚陸艦を始めとした揚陸・輸送艦や多数の支援艦艇を加えて編成されていた。
既に艦砲射撃や空爆でトーチカや重砲陣地及び沿岸砲台は破壊済みで上空にも多数の味方機が乱舞していて米軍は移動可能な軽野砲や自走砲などで散発的に攻撃してくるのが
精一杯な状況であった。しかし上陸第一波が上陸を完了させた時に異変が起こった。

「レーダーに反応有、距離約50・・・数最低でも100以上、高速で接近中。」

警戒中の駆逐艦が接近中の敵機をレーダーに捕えたのだ。艦隊はそれを速度から爆装したジェット機と判断し艦載機を迎撃に向かわせる。だが100機以上の敵機は低高度を編隊を組まずに
分散して飛行していた為に完全に阻止できなかった。そして・・・

「敵機・・・突っ込んできます。」

撃墜を免れた敵機エンジェル隊所属の「チェリーブロッサム」が突入し次々と艦艇に体当たりを行ってきたのだ。

「駆逐艦春雨爆沈っ」  「輸送船邪邪丸に大火災発生。」  「第991駆潜艇轟沈」 「海岸に墜落した敵機より毒ガス発生。」

1000ポンド徹甲爆弾を搭載したチェリーブロッサムの威力派凄まじく、駆逐艦ですら大破~爆沈し大型輸送船でも大損害は免れ無かった。中には毒ガスを満載した機体もあり、
揚陸地点に突入・墜落した機体により揚陸部隊に多大な損害を与えていた。この一連の攻撃で日本軍は駆逐艦5隻・大型輸送船2隻・支援艦艇10隻が沈み、最初に上陸した
海軍陸戦隊にも500名以上に死者が出ていた。もっともこの後に行われた第2派の攻撃は態勢を立て直した日本軍によって完全に防がれていた。
 そしてまとまった数が上陸した日本軍は遂に市内に向けて侵攻を開始するがそこで更なる驚愕の事態に直面した。

「アメリカの正義の為にィ」 「ジャップを海に叩き出せっ!!」

遂にアメリカ合衆国少年少女義勇兵団「ミニッツメン」が遂に姿を現したのだ。だが

「なんだあの餓鬼どもは?」  「あんな粗末な武器で何がしたいんだ。」  「練度低すぎだろ」

交戦した日本軍からは呆れられていた。練度はお寒い限りで武器も旧式小銃やリボルバー拳銃及びホームガードパイクなど雑多なもので重火器は殆ど無く、最大火力は
軽機関銃や博物館から出したガトリング砲という有様だった。この為に日本軍には大して損害を与えられなかったが精神的には被害を与える事に成功し、
一時的に進撃を止めさせることが出来た。だがこの一連の出来事が西海岸諸州の住民、そして政治家や財界人たちをキレさせた。

「これ以上ロングの豚野郎に付き合ってられるかっ!!」  「合衆国の未来を担う子供達を無為に死なせやがって」

特に戦場となっているカリフォルニア州・オレゴン州・ワシントン州の政治家や財界人らは自分達の意に反したエンジェル隊やミニッツメンの編成命令。精鋭を内陸部に温存して真面な
増援を寄越さず時間稼ぎの捨て駒にするような政府の態度。そして最近になって発せられた各州が保管する物資の内陸部への輸送命令。西海岸の失陥を前提とした政府の行動に
州知事以下の政治家や財界人、そして西海岸方面の陸海軍司令官(アイゼンハワー大将ら)達は会議を行ったうえで遂に決断した。

 1940年8月2日、西海岸諸州の知事や同方面の軍司令官らが合衆国からの離脱と日本への降伏を宣言。これを即日で受諾した日本軍は各地域へと軍を派遣した。大半の米軍部隊は
降伏に同意したが一部の東海岸から派遣された部隊や狂信的な白人優越思想を持つ指揮官の部隊は降伏に応じずに無謀な抗戦を行うか内陸部の州へと撤退していった。

「おのれ裏切者どもめぇ!!」

西海岸が占領下におかれたせいでユタ州も危なくなったと判断したロングは更に東側のカンザス州ウィチタにホワイトハウスを移すことを決定。日本軍や自分達を裏切った州知事らに
呪詛の言葉を吐きながら逃げるように移動していった。それから2か月後・・・

176: ライスイン :2017/08/09(水) 18:36:34
1940年10月5日 カンザス州ウィチタ  臨時ホワイトハウス


「おのれおのれおのれぇ、腐れジャップに裏切者共めぇ」

執務室で狂気に駆られたロングが吠えていた。西海岸3州の降伏後、日本軍は泥沼の陸戦が予想される内陸部への進撃を嫌ってか陸軍の侵攻を停止しダムや発電所及び工業・資源地帯への
爆撃を強化していた。これに対してロングはエンジェル隊に空対空特攻を命じて数機の撃破に成功したが日本側は西海岸を得た事で十分な護衛を付けられるようになった事で
それ以降は戦果を挙げることが出来なかった。更にはエンジェル隊やミニッツメンの事が大々的に知れ渡り、多くの合衆国市民から

”合衆国の理念を汚す最悪の独裁者”  ”合衆国皇帝”  ”同志ロング書記長”

などと凄まじい非難を浴びていた。更には設立法案を通す際に反対派議員をFBIに命じてスパイ扱いで逮捕させていた事やその後も反対派をジャップのスパイや裏切者扱いして
弾圧していた事が原因で支持者や野党(共和党)だけでなく与党(民主党)議員からも見限られていた(※10)。
更には手足となっていたFBIや情報機関からも離反者が続出。それらからスパイとして弾圧され収監された人々より押収された資産の多くがロングの懐に流れ、選挙資金等になっていた
事が暴露されると上下両院は反ロングに染まり、あと少しで弾劾されるという事態になっていた。

「大統領閣下、アラスカの海軍極秘ドックより例の戦艦が完成したとの報告が届きました。」

待ちに待った報告にロングは喜色を浮かべた。アラスカは初期に飛行場や軍港、日本共和国の所在地を核で蒸発させられて以来、戦力が殆ど存在していなかった事もあって
日本軍からはほぼ無視されていた。そのアラスカ州の入念に偽装された極秘ドックで待ちに待った待望の戦艦が完成したのだ。

「それで攻撃目標は如何しますか?当初の予定通り東京を?」

報告を行った補佐官が攻撃目標を尋ねた。当初の予定では日本本土に進出させあわよくば首都である東京を砲撃で壊滅させる計画であった。

「いや、最早JAPの本土にはたどり着けんだろう。目標はサンフランシスコだ。JAPの本土進攻の拠点を叩くと同時に裏切者共に制裁を加える」

多少は冷静さが残っていたのかロングは目標をサンフランシスコにするように指示をした。サンフランシスコは現在日本軍のアメリカ本土進攻における拠点となっており
新編成された北米総軍の司令部が置かれた他、大量の物資が集積されていた。更に西海岸3州と日本との協議の場も設けられており、ここを攻撃することで上陸した日本軍を
弱体化させて奪還作戦を容易にし、併せて離反した3州への懲罰とするつもりであった。

「早速出撃させるのだ。」

早々と出撃命令を出すロング。もう完熟訓練などをしている余裕は無かった。

「大統領閣下、艦名は如何しますか?」

まだ艦名が決まっていなかったことを思い出してロングに尋ねる補佐官。

「私の名前を付けろ、ヒューイ・ロング・・・氷山戦艦ヒューイロングだ。」

ロングはなんと自身の名を付けるように指示を出した。

177: ライスイン :2017/08/09(水) 18:37:07
※1:客員軍人だったが祖国の有様に落胆し、正式にトルコに帰化。親友でもあるケマル大統領を始め政府・軍首脳部からも高く評価され、再選終了後に大将に昇進する。

※2:74式中戦車改4型の車体をベースに国産の45口径90㎜砲を搭載したトルコ初の国産戦車。技術取得が目的で生産数は200両前後。

※3:トルコ版カチューシャ。生産が極めて容易な為、大量に製造された。

※4:リビアの倉崎重工の工場で再産された物。一部はトルコ本土の倉崎重工の工場(建設途中)でノックダウン生産された。

※5:主に名誉ドイツ人となった朝鮮系ドイツ人で編成されたSS師団。自分達はドイツ人の血を引く優良人種という意識及びプライドが高く、
   其れゆえ他に対する優位を示そうと極めて残虐で戦争犯罪上等の部隊で軍内だけでなく市民からも毛嫌いされている。指揮官はオ○カー・金・ロイ○ンタールSS准将。

※6:純血のドイツ人のみで編成されたSS師団。任務は薬漬部隊や髑髏師団の支援となっているが実際はそれらを敢為するのが目的で不都合な事態が生じた場合は
   それらを適切に”処理”するように命令されている。指揮官はウォ○フガング・ミッ○ーマイヤーSS少将。

※7:国内の少数民族や”購入”した中国人及び刑務所の囚人で編成されている。

※8:鹵獲したイギリス・アメリカ製の武器を国内や海外領土の工場で生産して供与する真似もしている。中でも稼働率が劇的に向上したステンガンはそれを鹵獲した
   イギリス軍を戦慄させた。

※9:皇帝爆弾の情報を基に開発中の超大出力水素爆弾。出力を抑えて起爆させられるように設計されているが最大出力の場合は100メガトンに達するだろうと予測されている。


おまけ1  アメリカ軍新組織概要

○エンジェル隊

 ロングが編成を命じた体当たり攻撃を前提とした特別部隊。所謂アメリカ版神風特別攻撃隊。
上記のとおり志願者には代償として多くの特典が与えられるために意外と多数の人間が参加。中には家族に市民権を得させる目的の不法移民や英雄志願の少年少女、日本共和国の
残党やその家族らも含まれていた。ただ実行前には躊躇う者も多く、”活力剤”の投与や政府派遣の心理学者による”カウンセリングも行われていた。

○ミニッツメン

 ロングが編成を命じた高校生による義勇兵部隊。正式名称は合衆国少年少女義勇兵団で主にミニッツメンと呼称されている。名前の由来は独立戦争当時の義勇兵部隊から。
旧式の武器や間に合わせの手製武器を装備し指揮は予備士官教育を受けた大学生の士官・下士官が執る。後方地域での輸送や治安維持・連絡業務など補助的な役割を担っていた
がロングの命令で実戦投入された。建前上は志願制となっている事から反対派が多い西海岸では編成されず、今回実戦に投入されたのは主に中~東部で編成された部隊。
因みに実戦投入されたものの戦果は殆どあげらず、唯一の戦果は初遭遇した日本軍部隊に精神的な衝撃を与え、一時進撃を止めさせたこと。
なおこの事を知った夢幻会からは

「リアルガ○パレードマ○チかよっ」 

という声が聞こえたという。

178: ライスイン :2017/08/09(水) 18:37:38
おまけ2  氷山戦艦ヒューイ・ロング

基準排水量:凡そ200万t  全長:約600m 全幅;約100m  最大速力:5kt

主要武装:40.6口径80㎝砲×2  50口径457㎜3連装砲×10

 アメリカ海軍がアラスカの極秘ドックで建造した狂気の産物。主武装はドイツの列車砲を参考にした超長射程の80㎝砲で副砲の18インチ砲もディルマン級やモンタナ級の主砲という
重武装。但し戦時下の急造及び材料品質の悪化からくる機関の出力不足により最大でも5ktしか出ず、冷却能力の不足により南太平洋などでは運用が困難であるとされている。
当初は日本本土を攻撃し、その長射程や専用の毒ガス砲弾で皇居や首相官邸などを攻撃して日本の首脳部を抹殺する計画であったがロングの判断で日本軍の拠点と化した
サンフランシスコ攻撃に変更された。なおアラスカの極秘ドックに関しては入念な偽装や徹底した秘匿が図られており、日本の優秀な偵察網や諜報網をもってしても
出港直前まで存在を発見できなかった。



 如何でしょうか?やっと最終決戦直前まで進みました。
反日連合はほぼ崩壊し内ゲバや自爆祭りを開催中。肝心のアメリカも遂に本土上陸を食らった挙句、西海岸3州が降伏しロングも弾劾手前という崖っぷち。
末期日本軍張りの特攻や学徒動員を行うも進撃を止めることが出来ず、遂に最後の希望?である氷山戦艦を投入しました。スペックなどは適当ですので真面目な考察は勘弁して下さい。

~予告~

 反日連合が崩壊する中で遂に米本土上陸を果たした日本軍。アメリカは特攻や学徒動員で抵抗するも西海岸は離反し占領下におかれる。
日本軍はアメリカ国民の士気を砕いてロングを失脚させようと戦略爆撃を強化するがそんな中、遂に完成した狂気の産物がサンフランシスコへ牙をむこうとする

次回”最終決戦 大和型VS氷山戦艦”

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最終更新:2017年08月12日 08:19