587: 名無しさん :2017/08/12(土) 16:46:43
流れを切りますが折角なのでエスコン5の冒頭を使って、1レスの短いネタを拵えてみる
ベルカ戦争相当の戦争から十五年後のオーシアのあの人たち、という設定
拙いネタですが保管の方は問題ありません
※エスコン世界IN大陸日本、支援ネタ ――― とあるカメラマンの追憶
十五年前、戦争があった。
いや、戦争ならば遥かな昔から何度となくあった。
しかし、私たちの国が負けた戦争は、それが初めての出来事だった。
あの時、私たちの国は地球に迫った脅威を打ち砕くための大砲や塔の群れを軍事的な脅威と捉え、その設置を世界中で促していた東の国々に対して侵攻を試みた。
自らの事だけを考えず、驕り高ぶっていた私たちに勝利が齎されるはずがない。
私たちは時代が変わったことに気付かなかった。
戦争と繰り返しては領土を広げ、世界屈指の大国へと至っていた私たちは養われた比類無き国力を武器に、大陸の東に位置する国々。
そのさらに東にある異なる大陸の国々。
そして、半世紀近く前に海の向こうへ突如姿を現した不可思議な島国に戦いを挑んだ。
それが十五年前の戦争。
私たちの国は猛々しく戦い―――惨敗した。
人類の危機を前にしてなお、変わろうとしなかったオーシア人。
世界には私たちの姿はそう映り、世界が降り注ぐ星に立ち向かう中で蚊帳の外に置かれた。
かくして世界に平和が訪れた。私たちではなく、彼らのお蔭で。
それは永久に続くかと思われた。
発端は、またしても私たちだった。
2010年11月23日 / 11時09分 / アダムス島沖合
【 Offshore Adamas Island / 1109hrs. / Sep23,2010 】
レッドアラート。
その時、私は空中に居て、編隊長機の後席から演習をカメラに収めようとしていた。
前席が地上に向けて吠えている。
「無茶言うな。新米の面倒見てんだぜ、こっちは」
『繰り返す、通信司令室よりウォードッグ。不明編隊のコース、レッドミルを基点に128から146。
バートレット大尉、バーナの貴隊しか間に合わない』
「……ベイカー、スヴェンソン。後ろに就け。教官機のみで侵犯機を出迎える。残りは低空に避退しろ」
瞬間、世界が引っ繰り返り。
「うっ」
私の胃も裏返った。
2010年11月23日 / 11時09分 / バーナ空軍分遣基地
【 Bana Air Base / 1352hrs. / Sep23,2010 】
「すまねえな」
「……いえ……大丈夫です」
そんな場合でもないだろうに、隊長は私に謝った。
生き残った教官は着陸時にクラッシュして死に、もう一人は空の上で既に死んでいた。
この人の責任ではない。
国籍不明機が躊躇いもなく実弾を撃ってきたことは。
そして、訓練生を逃がした低空が敵の真正面だったことは。
通信司令室がいくつか間違えたゼロのために、八人が死んでいた。
「国籍不明機は、何者だったんでしょうか」
「あのな」
ぼそりと呟いたその言葉は、隊長の耳に届いてしまったらしい。
「この海の向こうっていや……インペリアル・ジャパンはチチシマか、ヒャクリの航空基地っきゃねえんだぜ」
「ジャパンと戦争をしていたのは十五年も昔の話じゃないですか」
「だからよ。あっちの中で何が起こってるのか。上は今頃、釈迦力になって確かめようとしているだろうさ。
ホットラインがじゃんじゃか鳴ってるはずだぜ。この国の何処かではよ」
頭を掻きながら、隊長はぼやくように言う。
「悪戯に庶民の敵愾心を煽るのが、政治の仕事じゃねえのさ。本来はな。
……ただ、あの大統領様じゃどうなることやら」
「……」
「あんたのカメラ、持って行かれちまったらしいな。すまねえことだけど」
「それは戦闘を伏せるためじゃ―――」
「……なら、いいんだけどな」
そう言って、隊長は東の空を睨む。
その姿が妙に様になっていて、私は思わずカメラを構えようとして
先ほど基地の兵士に持って行かれたことを思い出して静かに落胆した。
「……また、始まるかもしれんな」
だから、彼の言葉は私の耳に届くことはなかった。
最終更新:2017年08月22日 10:03