201: 弥次郎 :2017/08/26(土) 20:30:16

大日本企業連合が史実世界にログインしたようです-4- 「日企連の胎動」-承- 舞台裏2







      • アメリカ合衆国 ハワイ州 オアフ島 パールハーバー 西暦1936年3月17日(現地)

サラことアメリカ合衆国海軍所属の航空母艦サラトガは磨き上げられた状態でパールハーバーに停泊していた。
何しろ、急きょ決まったとはいえイベントなのだ。アメリカ海軍の拠点であるハワイにオリンピック委員会を迎えるのだから、
あわただしさと緊張と興奮が入り混じっても仕方がない。急遽、太平洋艦隊から

艦長のウィリアム・フレデリック・ハルゼー・ジュニア大佐は、自室でちらちらと時計を確認している。
きちんとした正装の彼は、今日目覚めてから全く落ち着きがない。彼に限らないことだが、誰もが突如のイベントに興奮している。
間もなく到着予定という事実は、それだけで落ち着きを奪ってしまった。

「余裕を見れば10日はかけるはずだ」

テーブルの上の海図を前に、ハルゼーは誰にともなくつぶやく。
海図には太平洋とハワイとアメリカと日本が載っている。
それらを何度も鉛筆が行き来した線が書かれており、計算を行ったメモが何枚も海図上に置かれている。
すべて、ハワイと日本を結ぶ航路を記したものやそれにかかる日数や必要となる物資や船舶についての計算を行ったメモだった。

「そうだ。船舶で向かうならそれくらいは必要だ……どうやっても、それくらいは必要なはずだ……」

既に何十回も繰り返した計算の結果。
それは、日企連が示した期日で日本とハワイを結ぶことはできないという、「現実的な」「常識的な」結論だった。
平均速力40ノット越えの船舶でなければ、到底間に合うことはない。40ノット。どれほどだろうか。
船舶でその速度を出すのはかなり難しい。航空機ならばできる。ただし、それでは大勢が運べない。
一体どのような方法なのか、見当がつかなかった。

その時、控えめに部屋のドアがノックされる。
入室を許可すると、同じく正装に身を固めた水兵が入ってきた。

「艦長」
「キートン、どうした?」

ぴしりと敬礼をして、その水兵は用件を伝える。

「ハワイに無線が入りました。そろそろ到着するそうです」
「よし、艦橋に行くか」

姿見で襟元やボタンをもう一度確認し、ハルゼーはさっそうと部屋を出た。

202: 弥次郎 :2017/08/26(土) 20:30:59

艦長と部下の会話は自然と日企連の話題へと移った。
具体的には、どうやって日企連の人員がこのハワイを訪れるのか、というものだ。

「ヒッカムを指定したんだろ?飛行機で飛んでくるんじゃないのか?」

「ですが、査察団は数百名、いや千名にまで膨れ上がってますよ?」

「ああ、そいつは知っているさ。
 チャイナクリッパーでも数百機も用意しなきゃならんし、DC-2のようなものでも同じくらい必要だ。
 いや、アメリカ中にあるDC-2を根こそぎ集めても足りんかもしれんな」

角を曲がり、敬礼を送ってくる水兵に返礼しながらもハルゼーは指折り計算しながら答える。
DC-2あるいはボーイング247 フォード トライモータなど、当時のアメリカには数多くの航空機が存在した。
アメリカではその広い国土に由来してそういった旅客機の発達は著しく、激しい競争は洗練を必然的に生み出していた。
それを知るが故に、キートンは至極当然の疑問を抱いた。

「ジャパンがそんな航空機を用意できるんですか?」

「ライセンス生産されたDC-2は8機くらいだそうだ。足りないだろ」

「では……査察団の重要人物だけ連れていくという可能性も」

「それならそう言うだろうさ。妙に隠しているところがあるのは期日通り運べないことを隠すためじゃないと思うんだがな……」

暫く考えを巡らせたが、すぐに同じ結論へと戻ってきてしまう。
嘆息してハルゼーは仕切り直して呟くように自分の考えを、現状の考えを述べた。

「俺もかなり考えてみたが、どうにもわからん。
 数百人どころか数千人を一気に運ぶなんてのは、どんだけデカい航空機を使えばいいか検討もつかねぇ。
 何発エンジンが必要になるかもわからんし、そもそも、そんな飛行機が着陸できる飛行場があるのか?
 あの国は土地が狭いんだ。限界がある筈だ」

「確かにそうですね」

「言っちゃあ悪いがジャパンは航空機の発達が遅れている。アメリカで出来ないことができるとは思えないんだよなぁ」

ただ、とハルゼーは角を曲がりながらも自分の考えを漏らす。

「JaCの連中が何かしたなら、とも思うんだ」
「そうですか?」
「アーマードコアとかいったか?あんなものを作れる連中なら、何かしてのけたんじゃないかって思える」

アーマードコア。人の形をした兵器。それが知らされたのは、ほんの少し前の出来事だ。

「巨人だぞ?巨人。新聞の写真は覚えているだろ?」
「ですが、巨人を作れても航空機を作れるとは……」
「どうだか。自動車が無かったころには自動車なんて想像しもしなかっただろうぜ。
 今は変なモノ扱いされているが、何時かはアレが一般的になる未来があってもおかしくないんじゃないか?」

航空機がそうだったじゃないか、とハルゼーは床を指さす。
床というより、乗艦である空母サラトガを指している。空母、航空母艦、Aircraft Carrier。
その艦種を表す言葉は数あれど、要するに航空機と、航空機を飛ばすための飛行場を船に乗せたものだ。

「最初に空を飛んだ人間は、海の上に飛行場を浮かべるなんて考えたか?普通なら馬鹿らしいって考えるさ。
 今の常識は昔の非常識だ。ましてや、あいつらは人型を動かして見せたんだ。常識じゃ考えられないことをできるかもしれん」
「はぁ……そうだといいですけど」

いまいちキートンは納得しきれていないようだ。まあ、それはしょうがないとハルゼーも割り切っている。
今は一大行事に向けて気を引き締めることが肝要だ。国家の本質はその振る舞いの随所に現れる。
アメリカ合衆国という看板を背負うのが、この合衆国海軍なのだ。

「兎も角だ、俺達はいつものように振る舞うしかねぇ。だらしない真似はすんなよ!」
「Sir, yes, sir!」

いい返事だ、と一人頷いたハルゼーは艦橋へと足を踏み入れる。
いつもよりも清掃に力が入れられ、磨きのかかった艦橋は一種の緊張感に満ちていた。
良い緊張感のなかで、よく訓練された水兵たちが待ち受けている。

(一体、奴らは、JaCはどうやってここに来るつもりだ…?)

そう思いながらも、ハルゼーは新しいおもちゃを待つ少年のように弾む心を抑えるために苦心することになった。
コウノトリがハワイへと来訪する、ほんの少しばかり前の出来事であった。

203: 弥次郎 :2017/08/26(土) 20:31:34
「あのぉ……これって所謂犯罪では?」

「事前の調査だから問題ない。地形確認を行うところに『たまたま』サラトガが停泊していただけですから」

「……ですが、ねぇ?」

「模型屋とそのファンを黙らせるにはこういったものも必要なんです……ついでに、こっちの軍部へのお土産です。
 艦艇の写真と、真珠湾の地形や設備について。真珠湾を奇襲するかどうかは不明ですが、偵察は欠かせません」

「まあ、何とも卑怯というか、フェアではありませんね」

「フェアではありませんが、フェアではない戦いに正面から突っ込んでくる方が悪いんです。
 核地雷が埋まっているという警告を無視して踏んだ相手にどうしろと?」

「たしかにそうですねぇ。……っと、おわりました。記録とバックアップです、お忘れなく。
 この撮影は例によって機密でお願いします」

「いや、撮影もしなかったし、機密などなかった。そういうことだ」

「機密って?」

「ああ!」





      • 大日本企業保有 ハイブリット大型航空プラットフォーム『コウノトリ』 某所での会話

204: 弥次郎 :2017/08/26(土) 20:32:11

以上、wiki転載はご自由に。
短めの話となりました。今さらながら、「承」の舞台裏を追加してみました。
偵察完了です(ニッコリ
206: 弥次郎 :2017/08/26(土) 20:39:36
205
彼はいい人間だったが、彼の国の上層がいけないのだよ(彗星並感



おっと、>>202の修正を


「それならそう言うだろうさ。妙に隠しているところがあるのは期日通り運べないことを隠すためじゃないと思うんだがな……」

暫く考えを巡らせたが、すぐに同じ結論へと戻ってきてしまう。
嘆息してハルゼーは仕切り直して呟くように自分の考えを、現状の考えを述べた。

「俺もかなり考えてみたが、どうにもわからん。
 数百人どころか数千人を一気に運ぶなんてのは、どんだけデカい航空機を使えばいいか検討もつかねぇ。
 何発エンジンが必要になるかもわからんし、そもそも、そんな飛行機が着陸できる飛行場があるのか?
 あの国は土地が狭いんだ。限界がある筈だ」

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2017年08月27日 09:08