179: 第三帝国 :2017/09/04(月) 01:39:46
銀河連合日本×神崎島ネタSS――——「来訪者」
『初めまして、アドミラル・カンザキ。
そして私を受け入れてくださって感謝します』
車いすに座る人物から肉声ではなコンピューターによる合成音声が出る。
神崎は前世で知る夢幻会の面々と同じ水準で知的好奇心が強い目の前の人物に呆れを覚えた。
「こちらこそ。
しかしまさか貴方がこの島に来るとは正直思いませんでした――――スティーヴン・ホーキング博士」
車いすに座る人物の名はスティーヴン・ホーキング博士。
ブラックホールの特異点定理を理論化させたのを始め、現代宇宙理論に多大な影響を与え続けている現役の物理学者である。
そんな彼が助手や付添人、さらに記者(にしては全員妙に体格が良く右肩が発達した)と共にこの神崎島へ来訪した。
「何せ貴方が住まう英国、
というより欧州では中国との関係もあってわが国と国交を結ぶことに慎重なのですから」
『アドミラルは、研究者の欲望を甘く見ているようですね。
それだけこの島は私の知的好奇心と研究意欲を刺激させるのです』
神崎島周辺は昼夜が頻繁に入れ替わなど時間の流れが歪んでいる。
しかし人が住まう場所は通常の時間が流れるなどと2つの時間軸が同居している。
この常識から外れた神崎島の特性について各学問で議論が沸き起こっており現地での調査、研究の希望が後を絶たない。
だがそれを口実にスパイ活動を仕掛けて来るのは明白で、
案の定、というべきか博士と共に来た人間は明らかに軍人と思われる仕草をしている。
しかし眼前で車いすに座るこの世界的権威を誇る学者は、
『神崎提督宛てに記された女王陛下の親書』を託されおりこれを断ることは難しい。
断る理由もない上に、中国の圧力で進んで神崎島と国交を結ぶ国が少ない中での親書は政治的にありがたいくらいだ。
『なので、今後はぜひともあらゆる科学者に門戸を開いていただきたい。
さすれば国際社会の世論もカンザキ・アイランドのファッショ体制という批判は少なくなるでしょう』
「前向きに検討しましょう」
純粋な好意と善意な意見なのだろう。
しかしファシスト呼ばりされたことに不快感を神崎は覚える。
確かにこの島は軍事国家だがそれは市民たちが望んでしていることで、
提督を頂点とする体制も歴史的経緯から成り立っており、議会だってあるにも関わらずこの物言い。
元々欧州の人間からすればチャイナとジャパンの区別も怪しいので致し方がないかもしれないが・・・。
まあ、夢幻会の愉快な仲間たちと過ごしたあの前世で独裁者として振る舞い。
あの原子爆弾の投下を決断した殺戮者として汚名を受けているので今更ファシスト呼ばわりされても痛くもかゆくもない。
『それとkanmusuについても調べたい。
人から艦、艦から人へと変わる過程は何か?
一体全体どうやって質量保存の法則を無視するのか?
これを解き明かせば地球人類はあの宇宙人たちと同じく膨大をエネルギーを――――』
「断ります」
即断即決であった。
180: 第三帝国 :2017/09/04(月) 01:40:54
『なぜですかアドミラル?
秘密は秘匿するものではなく、
解明して世界市民のために共有されるべきではありませんか?』
「博士のおっしゃる通りです。
情報公開こそが国際社会の常識で、市民が求めるものです」
心底不思議そうに首を傾げる博士。
まあ、この人はよくも悪くも純粋な学者なのだな、と神崎は感じる。
それと博士に便乗する記者の言葉には予想通りの反応で苦笑すら覚える。
「彼女たちは科学の力で解明できる程軽い存在ではありません。
積み重なった人の想い、願い、歴史こそが彼女たちを艦娘とたらしめているのですから、それと―――――博士」
刹那、付添人と称する人間が動く。
続いて傍に控えていた吹雪が神崎の前に出る。
周囲は俄かに訪れた緊張感で冷たい空気が流れる。
はて、何が発生した?
と考えた所で車いすでおびえている学者を見出して察する。
ああ、成程。
どうやら威圧してしまったようだ。
相手は単によくも悪くも好奇心が旺盛な学者に過ぎないのに。
「驚かせてしまって大変失礼しました、博士。
しかし、これだけはよく覚えていて欲しいのです。
彼女達は私にとって大事な妻、その点についてぜひ忘れないで頂きたい」
そう言って吹雪を抱き寄せて微笑む。
で、ここで記者がカメラのシャッターをパチリと切った。
明日の新聞紙にはT督達が血の涙を流すことまったなしである。
しかしやり過ぎたかな?
とはいえこのくらい強く言わねば艦娘にちょっかいを出して来るだろう。
何といったって博士が言う通り今や艦娘は世界中の学者から研究対象として「人気」なのだから。
まあ、それよりも――――。
「妻、妻・・・え、えへへへ」
何せ見た目女子中学生なこともあって、
デレた吹雪と自分を交互に見る人間たちの視線が痛い。
具体的には「こいつロリコンか?」と言いたげな代物である。
この何とも表現しがたい空気となったこの場をどう収めるか神崎はその頭脳を必死に働かせた。
おわり
182: 第三帝国 :2017/09/04(月) 01:49:00
今回のイメージとしてひゅうが様の幕間「偽預言者はかく語りき」のオマージュです。
あちらではアインシュタインでしたがこつらではホーキンズ博士といった感じで。
この後ティ連合の好意で障害を完全に克服してニーラ教授とヒャッハーする話が書けたら書きたいです
(※ティ連合は宇宙学術部門で啓蒙目的で東大で留学生相手に講演している)
では
最終更新:2017年09月06日 14:53