395: 弥次郎@外部 :2017/10/12(木) 00:02:51

食。
それは、従属栄養生物ではおよそ避け得ない行為である。

米。
それは、日本人にとっては避け得ない食料である。

この二つが合わさると、どうなるのか。
それは、日本人にとってフェイタルな要素となるということである。




大日本企業連合が史実世界にログインしたようです 「国家改造」7 -食い物の恨みは…?-




岩畔豪雄中佐はその箱のようなものを興味深げに眺めていた。
先程から、その箱は不可思議な音を立てている。蜂が飛ぶ時の音をさらに大きくしたような、唸るような、奇妙な音だ。
その箱の中では、何かの光がともっており、中では皿に乗った握り飯がくるくると回り続けている。
そして、何だろうかこの甘く食欲をそそる臭いは。連れてきた副官もちらちらとそれに視線を送っている。

(味噌、いや、醤油か……?)

例えるなら、焦がした醤油のような匂いは徐々に強くなっている。
思わず、喉が鳴った。時刻は昼を過ぎてしばらくたったころ。
相変わらず講義はみっちり時間割に詰められているために、小腹がすいたころだ。そこまですいているわけではないが、何か口に入れたいのが正直なところだ。そんなところにこの臭いだ。口の中に唾がたまって来るというもの。

イカン、と意識を目の前の書類へと戻すが、その書類にもこれまたおいしそうな食品の写真が並んでおり、腹が減って来る。
誰かが、自分と同じく並んでいる陸軍の高級将官やら主計科の人間の誰かが、ごくりとつばを飲み込む音がしたような気がする。
それを咎める人間などいない。ああ、なんと魅力的な写真が並んでいるのだろうか。

書類に載っている写真は、いわゆる軍用糧食だ。
缶詰や瓶詰、場合によっては「真空パック」というものに詰められていて、長く保存し、必要な時に開封して食べることができるらしい。
確かに写真のそれは、軍で支給するものらしいよく言えば質実剛健な、悪く言えば風流も欠片もない器に納められている。
さらに写真以外にも、どのような栄養が含まれているかの図や解説文が載せられていて、はっきり言えば面白みもない書類なのだ。

(だが……)

まるで、高級料亭で品書を眺めているような気分だ。
いや、これらの価値はそこらの料亭の料理よりも高い。
含まれている栄養の調和は、兵士にとって理想的であると書かれている。
陸軍も海軍も一つ気にかけている項目がある。ビタミンをはじめとした必須栄養素のバランスである。
なぜか。それは、日企連が先だって「脚気の原因はビタミン不足」と明かしたからだ。
さらに公表されたのが、「史実」において「自分達」が晒した脚気対策への不徹底であった。

言うまでもないが、この時代の脚気というのは国民病とも呼べるものであった。
それこそ、江戸患いという名前で江戸時代から残り続けており、それの根本解決はいまだになされていない。
白米への幻想(ユメ)、憧れ、そして無知。結果、海軍陸軍双方が互いに互いの非を認め、上層部は概ね和解などが完了しつつあるため、あとは軍医や一般兵士の常識を改めるのみとなっている。
現在、兵士たちに提供される食事には「強化米」というビタミンを補う米状の粒を入れた白米が使われている。
また、玄米もおいしく食べられるように様々な調理がなされて提供されていると聞く。

396: 弥次郎@外部 :2017/10/12(木) 00:04:15

(炒飯、とか言ったか)

ちらりと書類をめくり、缶詰のバリエーションに含まれているその料理の写真を見る。
玄米というのは、正直なところうまくない飯というイメージが付きまとっている。
だが、調理の方法を変えるだけで解決できると知らされ、玄米の持つ栄養の高さとあわせて俄かに注目を集めている。
既に高級将校をはじめとした臣民達で実際に食べて戦闘証明(コンバットプルーフ)は取ってあり、あとは徐々に普及させるのみだ。これの導入においては、陸海の主計が足並みをそろえて行うことが既に検討され、「最重要事項」として通達されているという。

また、前線に配備する電子調理器というものも今後導入を進めていくとか。
今、目の前にある箱もそれの一種だという。あの箱に入れ、操作を行うだけで温かい飯が食える。
電力は必要になるというが、それについてのインフラ整備が進めば解決はできる。調理時間の短縮と手間のカットは、正直なところ大きな変化になるという予感がある。何しろ、あれだけ小さな装置で料理の多くができるのだ。
軍事革命といえるかもしれない。

そして、気の抜けた、軽い金属音が目の前の箱、電子調理器から発せられた。
書類から目を上げて覗いてみれば、中で灯っていた光は消えており、くるくると回っていた皿は止まっている。
箱から取り出された皿には、魅惑が乗っている。握り飯だ。それも、良い品種の米を炊き、綺麗に握って、それに醤油をたっぷりと縫ってそのまま火鉢であぶって完成させたような、そんなものなのだ。

「うっ……」

出された皿は、これ見よがしに置かれる。
ごくりと、誰かの生唾を飲み込む音がする。

「こちらが資料にもありました冷凍食品になります。保存用の冷蔵庫が必須となりますが、長期保存が可能ですね。と……」

解説を続けようとして、日企連の社員は困ったように笑う。
少しばかり刺激が強すぎたか、と反省するしかない。職にうるさい日本人にこれを見せたのが悪かっただろうか?
よりにもよって日企連内の食品系企業が競い合って資料やらサンプル、そして史実世界向けの「新商品」の開発に勤しんだためだ。
日企連も、ゲートの開通による史実世界への進出で、内部市場は静かに沸き上がっている。
比較的後進国とはいえ、一国を丸ごと、文字通りの意味で丸ごと市場とでき、リターンは極上。
無理もないと思いつつ、目の前の皿にのった焼きお握りを配るべく、立ち上がった。

397: 弥次郎@外部 :2017/10/12(木) 00:05:14
以上、wiki転載はご自由に。
リハビリ的に投下です。

岩畔豪雄が出てきたのはなぜか?
彼って、く号兵器(怪力光線 ぶっちゃけるとマイクロ波)の開発を行う登戸研の成立に関わっていたりします。
なので史実側の判断で早くにこういった秘密研究を任せようと出席を命じられております。
ちょっとずつでも史実ネームドを出していければなぁ…

では、ゆっくり進めてまいります

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最終更新:2017年10月18日 16:46