562: ひゅうが :2017/10/14(土) 17:04:34

三式水中聴音器


――海軍技術研究本部が作り出した対潜用ソナー。
当時としてはずば抜けた高性能を誇り、1943年以降に竣工した新型艦に標準装備された。
その最大の技術的特徴は、圧電素子にセラミック材が用いられていることである。

従来は国産の低品質なロッシェル塩を用いたことから性能のばらつきが大きく、また全体性能自体も極めて低いものであった日本の聴音器。
そのおかげで初期にあっては日本の海上護衛網は有名無実といってもいい状態であった。
しかし1942年5月、軍需省に畑違いともいわれる一人の技術者がやってきたことがすべてを変えた。
日本碍子の新事業開発部が持ち込んだのは、人類史上初の圧電セラミックスのサンプルであったのだ。
これまで開発されていたチタン酸ジルコン酸鉛結晶素子の量産技術が確立できず、さらに同年の相次ぐ重要補助艦の喪失に頭を悩ませていた軍需省は直ちに特殊特許をねじ込む決断を下す。

担当者とともに海軍技術研究本部を訪問した技術者たちは、この時代としては極めて珍しい「手放しでの大歓迎」を受けた。
同年に発生した砲塔運搬艦「樫野」の撃沈という衝撃的なニュースと偶然にも時期が一致しており、まさに渡りに船とこの新発明は大歓迎されたのである。
結果、日本碍子は直ちにこの圧電セラミックの大量発注を受けた。
しかし当の日本碍子側はこの要求に困り果てる。
確かに良好な性能を実現したこの圧電セラミックであったが、それに対して発注があまりに多すぎたのである。

困り果てた技術者たちは、畑違いである肥前有田をはじめとする窯業の職人たちに助けを求め…そしてブレイクスルーを迎える。
ある種のセラミックスは、叩くとその結晶構造や組成によって特有の「音」を出す。
ベテランの職人たちはそれを「聞き分け」たのである。
結果、技術者たちは大量生産された素子を迅速に検査し、それを工程改良にフィードバックするという体制の構築に成功する。

そのうちに、理由は不明ながらもさらに「良い」音を出す素子がさらなる高性能を実現するという発見もあり、
翌年2月に海軍水雷学校と聴音学校の共同開発により完成した三式水中聴音器は当初の予定を超える高性能を実現することができたのだった。

本機は、1943年以降に竣工した夕雲型駆逐艦後期型や松型駆逐艦、さらには各種新型海防艦に標準搭載される。
結果、温度や湿度面で厳重な管理を必要としたロッシェル塩式聴音器ではとらえることができなかった水中目標の発見に威力を発揮した。
とりわけ、宗谷要塞に配備された本素子搭載機が日本海への侵入を試みた米潜水艦プランジャー パーミット レイポンの3隻を発見しこれを撃沈したことは有名である。

現在では本機が当初は意図されていなかった三層構造の膜を形成し、各帯域における良好な聴音性を確保していたこと、そしてある種のダイオードとしての作用すら起こしていたことが判明している。
(なお、初期型の半導体素子はコストを度外視して生産され、少数ながらも帝都防空要塞の構築や、「雷神」射撃管制システムに搭載されている)

565: ひゅうが :2017/10/14(土) 17:16:18
ちなみに>>562のネタバレ

碍子とは、電線と電柱の間を絶縁するためのもの。
その新素材の開発中に「電気を流すと振動する」ものができてしまった。
これでははっきり言って困るのだが、それを偶然発見した技術者(ちょっと転生経験あり)が「圧電セラミックじゃねーか!」として妙に権限の大きい軍需省へ持ち込む。
もちろん採用。ジルコンなんてめっさ高い素子使わずにこんなことができるんですもの当然。

で、職人的なこだわりを突き詰めていったら音響フィルタ効果っぽいのを自然に備えてしまうことに…
何がこわいって、これだいたい史実における圧電素子開発でたまにあること。

569: ひゅうが :2017/10/14(土) 17:39:12
ちなみにこれを見たある元自の人はこういったそうです。
「どこのOQS-101だよ絶対知っているやつが作っただろ!」
失礼な。そんな電力も性能もありませんよ…

570: ひゅうが :2017/10/14(土) 17:45:20
562
修正

「チタン酸ジルコン酸鉛」で。

571: ひゅうが :2017/10/14(土) 17:56:21
(しかしリン酸二水素アンモニウム使ってもよかったかもしれない…)

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最終更新:2017年10月18日 16:54