558: 弥次郎 :2017/11/23(木) 21:35:13
大日本企業連合が史実世界にログインしたようです「国防は軍人の……」20 -マーケティック・テロリズム-






これは実際にあった後方攪乱の一例だ。
非対称戦争だったはずの、低脅威戦争だったはずの戦争が、疑似的な総力戦へと変貌した事件。
よく覚えているし、今の日企連の教本にもしっかりと掲載されている大事件だった。

時に西暦20XX年。
経済低迷にも関わらず元気に紛争が続く紛争地域に、これまた社会不安にも関わらず近くの国が治安維持軍を送った。
その結果?お決まりの泥沼に突入したのさ。それはもう、かなりの泥沼に。
次々と拠点を動かして尻尾をつかませないゲリラ戦と、洗脳された自爆兵による要所への襲撃。
さらにネット上での扇動・・・・・・人質を取って交渉しておいて約束を履行せずの公開処刑、対抗組織や対抗国家の情報の暴露や脅迫、拉致監禁、拷問などなど。それは星の数だけ重ねられた。
背後には結構込み入った事情の元で誕生した抵抗組織が存在し、組織的に戦っていた。
それまでの低脅威戦争とは言えない、紛れもない国家と国家の戦争は未知であるが故に長期化した。

面白いことにな、この洗脳された自爆兵は各地から徴兵できたんだ。
どうやってか?それは簡単だ。

インターネットでの徴兵だよ。
世界とつながる電子の網で、世の中に不満を持つ連中をたきつけるのさ。
社会不安や社会情勢のバランスがおぼつかなくなると、短絡的に人は精神のよりどころを求めるようになる。
そんな連中が集まるサイトをのぞき込んで声をかけて回れば、案外ちょろっと徴兵できるのさ。
徴兵というか、どっちかといえば洗脳だな。言葉巧みに破滅への道を選ばせる。
洗脳されている兵士は恐ろしい。
何しろ怖がらない。戦車を前にして、自己の生存を一切顧みずに如何にダメージを与えるかを考えてくれるんだからな。

ん?そういった組織がネット上で活動できるのかって?
出来てしまうんだよ、これが。グローバリゼーションの浸透と電化製品の普及、特にインターネットへと接続する手段の普遍化、さらに業務の外部委託化(アウトソーシング)でおおよそのことはテロ組織でさえもできるようになってしまったのさ。

テロリストはただインターネットで注文するだけでいい。ある程度の情報隠匿技術が発注する側にあれば、その手の業者はクライアント(顧客)がまさかテロリストであるとは夢にも思わない。
ましてや、世界に存在する会社には、その手の業務をやりたい個人向けに名義だけを貸し出す企業もいるほどだ。
ただ送られてくる手配書通りに仕事を行い、それきりでサヨナラ、とする。互いに素性など明かさずに速やかに取引を終えてしまう。
これを重ねて行けばテロリストは警備や警戒を潜り抜けてしまうわけだ。合法的な隠匿の衣をまとってね。
インフラ整備の名を借りて地形の把握、市場調査の名目で集まる人間の調査、清掃業務の名のもとに裏方(バックヤード)の把握。
おまけに報酬さえきちんと払えば顧客のプライバシーや情報を守るためにそういった会社は口をつぐんでくれるわけだ。
自分達が一体何に手を貸したのかもわからず、そして自分たちが何をしでかしたのかも知らずに。

そして、それらが積み重なって、紛争地域の後方にある病院から盗まれた軍人のパーソナルデータをもとに、安全であったはずの本国にいる兵士の家族・親族に対して報復がなされた。
後方への攻撃。最前線と最も遠くにある筈の本国は、弾道弾や直接の軍事攻撃もなしに攻撃を受けたのさ。
そう、何時までも続くかに思われた非対称戦争は、技術と世界の発展に伴って、総力戦となった。

勿論、報復は苛烈を極めた。だが、失ったものはあまりにも大きく、失われれば戻ることはなかった。
決して言えない傷を与えてしまったのさ。

559: 弥次郎 :2017/11/23(木) 21:37:28
そしてもっと恐ろしいことに、そうしたテロ組織も学問を身に着けるようになった。
どのような宣伝や、どのような文句を使えば、より効果的なのかを。
あぶれた学者や技術者を遠隔で雇い、その知恵を借りるようになったのさ。
テロリストは、民間にいる軍人と何ら変わらなくなった。
徹底した管理と統制、指揮系統、充実した後方支援体制を構築し、局所戦に限定されるものの軍隊と同じような戦力になった。
より正確に言えば、そうした適応力を発揮できない奴らが次々とやられていき、結果的には精鋭化が進んだのさ。

テロリストはテロ屋となり、やがては武力闘争を請け負う裏のPMCとなった。
そう、法の垣根を超えた争い事を担当するための「従業員」となり「企業」となったのさ。
出資者を募り、顧客を探し、業務を行い、独自に装備を調達し、福利厚生などを整えて規模を拡大する。
企業内の粛正などの汚れ仕事(ダーティーワーク)の実施を請け負い、同時にその企業を調べ尽し、うまく寄生する。
「市場化されたテロ活動(マーケティック・テロリズム)」、経済学者は、そんなふうに表現した。

これができる組織は、世界的にも大きく拡大した。
危険な仕事を次々とアウトソーシングしていた国家にとっては、ある程度取り締まる必要はあっても嫌う必要はなかった。
いや、むしろ推進したというべきかな。自分達の多くを見透かされているという自覚も薄いままに、次々と国家は機能を外部に任せた。
勿論これによって国有軍では賄えない需要を満たし、フットワークの軽い行動ができるようにもなった。

だがメリットもあればデメリットもある。そういった外部化は形骸化を招いた。
まるで、臓器がくたばった人間が延命装置や体の外に置いた人工臓器を頼りにして生きているようにも見えたくらいだ。
惨めな生。延命させられ、維持させられている国家。
国家解体戦争で国家は止めを刺された。でもそれはな、なにも企業が軍事行動に移してしまえば止めを刺せるようになるまで国家の側が疲弊し、弱っていったためでもあるわけだ。スカスカになった国家は外から叩いてやれば簡単に崩れる。
中身のない、がらんとした肉体(国家)は、ちょっと押してやればすぐに倒れるものだ。

未来の話だと思うだろう?案外そうでもない。
国家の疲弊の原因は様々だ。戦争、経済の不調、疫病の発生、技術発達と制度の不一致、国家間の暗闘、宗教、飢餓、天災などなど……それこそ数え切れないほどに火種は転がっている。この時代でも影響力は変わらない。
企業が支配をする時代でも、むしろその可能性は高まったくらいだ。
せっかくカンニングペーパーがあるんだ、しっかり対策をしておくといい。
子や孫どころじゃない。未来の、遠い世代のことも考えてやらなければダメなんだ。
それこそが、本当の意味での国家百年の計だ。

ん?日企連がそういうのに詳しい理由か?
日企連に協力する、あー…これもまた外部組織なんだが、ともかくそこに、かなり有名なテロリストがいる。
それはもう過激な組織を率いていてな。具体的に言うと、人々の暮らす居住地を大義の為と言って落とそうとする程度には過激だ。
そんな過激な連中をまとめ上げるカリスマと組織経営能力と腕前を備えている。
蛇の道は蛇、という奴だ。テロリストを知りたければそのテロリストに聞くのが一番だ。
信頼のおけるテロリスト、というのは奇妙な言葉だが、それしか適切な言葉がない。
さっきも言ったが、テロリストも必要があるからこそ存在する。
そして、オーダーに副ったテロを実行できるという信頼が、必然的に存在するのさ。
いずれは紹介したい。テロリストの、本当の恐ろしさを教えてやれるだろうし。
言っておくが、警戒を忘れるな。彼らは亡霊(ゴースト)でもあり、こちらを見透かしてくる怪物だ。





          • 虎鶫のある日の臣民向けのざっくばらんな講義より

560: 弥次郎 :2017/11/23(木) 21:38:22
以上、wiki転載はご自由に。
AC世界で企業が力を持ったということは、国家がその国家機能の外部委託乃至切り売りをした結果ではないかと思います。

そしてAC世界のテロリスト…否、テロ請負業者についても少し妄想を。
企業が見過ごすってことは、企業がそれだけ評価をしたか、あるいは…ということですね。

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最終更新:2017年11月25日 11:12