386: ライスイン :2017/12/31(日) 22:48:15
1940年12月9日 大英帝国首都ロンドン 日本大使館


「まさか旧式とはいえここまでイギリスに供与するとは・・・。」

「まあ一応負けてもらっては困るからな。」

「連中は”もっと寄越せ”とか”もっと派遣しろ”の大合唱ですよ。」

駐英日本大使館の一室、完全に「掃除」された密談用の部屋で遣欧総軍司令官の杉山大将、遣欧艦隊司令官の南雲中将、
そして交渉の為に急遽派遣された吉田茂の3名が苦々しい顔で密談していた。
彼らは連合国向けの供与兵器リストを見ながら連合国(主にイギリス)の強欲さに呆れかえっていた。主な初期供与兵器だけでも

○陸

 ●97式中戦車(初期型):50両  (若干装甲が薄く、装甲の傾斜も浅い)

 ●92式軽戦車:100両

 ●須天短機関銃(日本版ステンMk2):10万丁 (供与用に態々生産した物で史実より遥かに高精度で確実に動作する)

○海

 ●若宮型護衛空母:4隻  (試験的に商船を改造して建造された護衛空母。性能はロングアイランド相当)

 ●天龍型軽巡洋艦:天龍 龍田   (英本土で主砲を高角砲に換装、魚雷を撤去し爆雷投射機を追加)

 ●江風型駆逐艦:2隻  ●峰風型駆逐艦:4隻  ●改峰風型駆逐艦:3隻  ●論風型駆逐艦:9隻

○空

 ●96式戦闘機(初期型):70機  

 ●97式双発戦闘機:20機

 ●100式重爆撃機「連山」先行量産型:20機  (正式量産型より若干性能が低い)

と負けてもらっては困る為、旧式の在庫処分も兼ねた大盤振る舞いとなっていた。代償として英国側からは資源供給や市場参入、油田の共同開発や
技術公開する事が決められていた。

「”今回”は陸戦部隊も派遣するんですね」

「実戦経験・戦訓確保と容易に裏切られないようにするためだな。」

また戦闘部隊も先のフィンランド派遣義勇軍と合わせて陸軍3個師団(うち1つは戦車師団)と海軍陸戦隊1個旅団、艦隊も金剛型戦艦4隻と空母飛龍・蒼龍が追加で派遣。
航空隊も戦闘機を100機以上(一部は烈風や飛燕)を送り込んでいた。

「陸軍は主に中東戦線へ投入予定で既にアレクサンドリアへ到着し訓練中です。陸戦隊は万が一に備えます。」

「最悪戦闘機の追加派遣はしないといけないかもしれん。例え戦局がイギリス不利になってもチャーチル爆死さえ防げばなんとかなるだろう。」



日ソ同盟の憂鬱  第3話「バトルオブブリテン」



英米の求めに応じてドイツに宣戦布告し連合国入りした日本は続々と欧州へ戦力を派遣していた。またソ連も戦闘機・地上攻撃機などの航空部隊を義勇軍として派遣。
それと同時に

●BT-5快速戦車:400両(増加装甲装着)  ●BT-5U支援戦車:100両(短砲身76.2㎜砲を搭載した火力支援型)

●T-26軽歩兵戦車:300両  ●19-K 45mm対戦車砲:300門  ●M1909/37 122mm榴弾砲:100門  ●PPSh-41短機関銃(先行生産型):10000丁

及び各種弾薬、ウォッカやスピリタスといった嗜好品を含んだ大量の物資が中東戦線へと送られていった。
もとも日ソ両国はただ支援するだけでなく、モズリー(MMJ英国支部長)やケンブリッジ5(コミンテルン(萌)系)を通して様々な工作を行っていたが。

387: ライスイン :2017/12/31(日) 22:48:48
1941年1月29日 大英帝国首都ロンドン 日本大使館


「援軍を得た途端に大胆になったものだな」

杉山は援軍や支援物資を得た事で強気になったイギリスを嘲る。
援軍・支援物資を得た事とアジア方面から戦力を転出することが可能な事、そしてスペインが中立を宣言した事でジブラルタルが安全になった事で攻勢に転じたのだ。
?アフリカではコンパス作戦を発動。受け取った戦車を使用して全面攻勢に出たイギリス軍は12月末までには英字ぷとからイタリア軍を叩きだして逆侵攻を行い
イタリア領リビアのトブルクまで占領。エチオピアも1月半ばには解放していた。無論イタリア軍も日本の増援を察知して援軍到着前にアリエテ戦車師団・リットリオ戦車師団
及びチェンタウロ戦車師団を中核とするイタリア第1装甲軍団(※1)を始めとした有力な部隊をリビアに派遣していたが一連の戦闘で山下友情率いる日本帝国アフリカ軍団によって
壊滅させられている(※2)。
 また?アフリカでの戦局が有利になった事でイギリスはエジプトにショートスターリング爆撃機200機を派遣してイタリア本土爆撃を開始。同時に多数の潜水艦を派遣しての
通商破壊も行い始めた。これらの攻勢で戦局が不利になったばかりか本土爆撃儲け、リビア陥落の可能性が出て来た事で遂にムッソリーニはヒトラーに泣き付いた。

「まったく・・・ドゥーチェも困ったものだ。」

ヒトラーはイタリア軍の惨状に呆れかえったが一応同盟国であるし万が一イタリアが寝返るか陥落すれば直接ドイツ本土に侵攻可能になる。このためヒトラーも支援を約束したが
現実では戦車など装甲兵器の供与や戦闘機部隊の派遣が精いっぱいだった。原因は地中海の制海権が連合側に握られていた事である。その要因が・・・


時は遡り、1941年1月1日00:01  イタリア本土 タラント軍港


 「対空見張りも厳として。よろしくねっ!」  「第一次攻撃隊、発艦っ!」

新年あけたばかりのタラント軍港に飛龍・蒼龍から飛び立った攻撃隊が来襲。遣欧艦隊によるタラント軍港攻撃作戦「審判」作戦(※3)が発動された。
レーダーは存在せず高射砲の数もそれほど多くなく、深夜ゆえに戦闘機隊の警戒も行われていないなど様々な要因が重なり攻撃は完璧な奇襲となったのだ。

「くぅ・・・かなりのダメージが、でもリットリオ、このくらいでは、沈みは・・・しません!」

飛龍・蒼龍から飛び立った97式艦攻や97式艦爆が800㎏や500㎏の徹甲爆弾及び航空魚雷で軍港内の艦艇を攻撃し始め、各艦が緊急出航を始めるも間に合わず次々と被弾・被雷していった。
これ等の攻撃で戦艦リットリオが大破着底しヴィットリオ・ヴェネトが小破(後部砲塔旋回不能)。コンテ・ディ・カブールとカイオ・デュイリオは辛うじて無事だったがその後に飛来した
第2次攻撃隊によって多くの補助艦が撃沈され軍港も機能を損失した。

「航行可能な艦は直ちに出港せよ、艦列を整えてアンコーナ海軍基地へ向かう。」

タラント駐留の艦隊司令官アンジェロ・イアキーノ中将はヴィットリオ・ヴェネトの艦橋から命令を下す。

現時点で航行が可能な艦は

戦艦: ヴィットリオ・ヴェネト(旗艦) コンテ・ディ・カブール カイオ・デュイリオ

重巡: ポーラ ザラ

軽巡:ライモンド・モンテクッコリ ムツィオ・アッテンドーロ ルイージ・カドルナ

駆逐艦:マエストラーレ級 4隻、 ダルド級 5隻

だけであった(※4)。

388: ライスイン :2017/12/31(日) 22:49:24
「他の艦隊と合流すればまだ戦える。」

イアキーノ中将は士気を高めるべく部下を鼓舞する。だが軍港を出て暫くすると・・・。

「撃ちます!Fire~!」   「やった!待ちに待った夜戦だぁー!」

金剛型4隻を中核とした打撃部隊が軽巡洋艦川内以下の水雷戦隊と共に襲撃してきたのだった。
この攻撃に艦・人員共に消耗していたイタリア艦隊は最後の意地でヴィットリオ・ヴェネトが金剛を大破させる戦果を上げたものの壊滅し
イアキーノ中将も艦と運命を共にした。この結果、イタリアは本土周辺の制海権を損失。援軍・の望みが断たれたリビアのイタリア軍は
1月末にトリポリ近辺まで押し込まれ、ヴィシーフランス軍の増援で辛うじて持ちこたえている状態であった。。ドイツが援軍を阻止しリビアで優位に立ったことに喜ぶイギリスであったが
同時にそれはドイツが援軍として用意した兵力や資材を他に転用することが出来るという事でもあった。


1941年2月2日 ベルリン 総統官邸


「全力を挙げてロンドンを空襲する、そして選抜した降下猟兵と残存のブリテン・ナチス(※5)を使ってチャーチルを暗殺するのだ。」

「「総統閣下・・・本気ですか?」」

会議の為に集まったナチス首脳部に対してヒトラーはロンドン空襲とその隙を突いたチャーチル暗殺を命令する。その突拍子もない内容に
ブラウヒッチェやレーダーは唖然とし、ゲーリングやヒムラーが思わず聞き返してしまう。

「対ソ連戦を控えている以上、これ以上の消耗は避けなければならない。強硬派のチャーチルを始末すれば弱気になるはずだ。勿論飛行爆弾V-1(※6)も投入する。」

ヒトラーの言葉を聞いた首脳部の中にはそれは一理あると思う者も居たが大半が簡単にいくとは考えていなかった。
また開発に成功し量産体制に入ったばかりの画期的な飛行爆弾の投入にも数が十分でなく鹵獲の棄権を考えて投入を躊躇う者も多かった。

「総統閣下、連中がそれでも停戦に応じなかった場合は・」

ゲーリングがイギリスが停戦に応じなかった場合の対応を聞こうとヒトラーに話しかける。

「生物化学兵器を使用した無差別攻撃を行うと通告する。余としては実際に使用したくはないが講和に応じなければ・・・。」

ヒトラーの言葉を聞いた首脳部は一斉に顔を青ざめた。だが顔が紅潮し血走った眼をした今のヒトラーに反攻すれば確実に粛清される。
こうして誰も反対する事無くロンドン空襲とチャーチル暗殺が決定された。


 1941年2月25日、未明からロンドンは激しい空襲に晒されていた。ドイツ軍が飛行爆弾V1をロンドン目掛けて発射したからである。
投入されたV-1は合計700発。その内25発が発射に失敗、55発が途中で失速、200発が目標を大きく逸れ、30発ほどが迎撃。結局ロンドン及び近郊に命中したのは
390発前後であったが今までにない”無人で飛行する爆弾が飛んでくる”という恐怖にロンドン市民はイギリス空軍や陸軍高射砲部隊も混乱し満足な迎撃態勢が
取れなかった。因みにV-1はすべて日本軍が撃墜していて通常型に偽装した早期警戒機型の連山4機をを飛ばして効果的な管制をを行った成果であった。

 そして夜が明ける頃、ドイツ軍の空襲は本格化した。Ju88などの空軍機に加えてFw200や飛行艇などの海軍機も動員され、迎撃側を飽和させる為に一気に投入された。

「こちら第501戦闘航空団、保有戦闘機の8割を損失。」

「ロンドン東部のレーダーサイトが破壊されました。」

「敵の勢いが止められないっ!!」

ソ連国境の防衛やイタリア派遣部隊を除く稼働する軍用機の大半を投入したドイツ軍の猛攻の前にイギリス軍は押されていた。更に復讐に燃えるヴィシーフランス軍機も加わり
状況はさらに悪化していく。

「些か不味い状況だな。」

空襲下の首相官邸でチャーチルが苦々しく呟いた。

389: ライスイン :2017/12/31(日) 22:49:55
「日本の航空隊やソ連義勇空軍の活躍で辛うじて持ちこたえている状態です。」

主将の呟きに官邸付きの空軍将校が状況を説明する。

「ありがたい事だな・・・、だが我々と彼らは何時からこんなにも差が付いたのだ。」

日本は96式戦闘機の他に少数だが烈風や飛燕を持ち込み、ソ連もMIG-3やLa-5FNといった純国産の最新鋭機を少数ながら派遣。これらの活躍で
ロンドン中心部は辛うじて持ちこたえていたのであった。そんな時・・・官邸の外で大きな音がした。

「首相閣下、官邸前道路にドイツ軍爆撃機が墜落しました。」

官邸警備の陸軍兵士が大急ぎで執務室に駆け込んで知らせに来た。その知らせにチャーチルは思わず執務室を出て墜落した爆撃機を見に行こうとする。

「危険です。」

護衛の制止を振り切って玄関を出たチャーチルは中庭から爆撃機を見詰めた。ドイツ軍の爆撃機・・・He177(※7)は機体の損傷は少なく、撃墜されたというより
不時着した様な状態であった。そんな時、He177の機体の一部が吹き飛び、中から完全武装のドイツ空軍降下猟兵10人前後が飛び出し官邸に向かって攻撃してきた。
彼らはロンドン攻撃に投入された降下猟兵の中で奇跡的に撃墜されずにロンドン中心部に到達でき、事前情報に基づいて官邸前の道路に撃墜を装って強行着陸
したのだった。

「閣下、早く中に避難を」

護衛に急かされて官邸内に避難するチャーチル。幸いにも降下猟兵は少数で官邸の警備や続々と駆け付けてくる部隊をもってすれば全滅は時間の問題であった。

「ん・・・あれは?」

チャーチルに視線の先には赤十字の腕章を付けた若いメイド(※8)が救急箱を手に駆け寄ってきた。その様子にチャーチルは外の負傷者の救護だろうと判断した。しかし・・・

「ハイルヒトラーァァァァッ」

そのメイドは血走った眼でヒトラーを称える言葉を叫ぶとチャーチルに飛びついた。そして救急箱の中身・・・高性能爆薬が炸裂する。
こうしてチャーチルはメイドに爆殺されこの世から退場。連合国とドイツの戦争は急展開を迎えるのであった。


※1:イタリアが保有する3個戦車師団(大半が国産豆戦車かドイツ供与のチェコ製軽戦車)で編成された機甲打撃部隊。

※2:戦車師団1・機械化歩兵師団2+αで構成され、主力である第1戦車師団「黒色槍騎兵」は97式中戦車のみで構成された現時点で世界最高の打撃力を持つ戦車部隊である。

※3:日本版ジャッジメント作戦。本来はイギリスが行う予定であったが空母の損失が多く、残った空母も船団護衛に投入しなければならない状況から代わりに有力な
   空母と艦載機を有する日本の遣欧艦隊が作戦を実施した。

※4:生き残った艦艇は他にも多く存在したが大破~中破状態していたり燃料不足で動けない艦ばかりであった。

※5:その名の通りイギリスにおけるナチス党。戦争勃発後に非合法化され徹底的な取り締まりを受けたが少数の残存勢力がロンドン市内に潜伏している。

※6:開戦前にフィーゼラーの工場を視察したヒトラーが偶然提案資料を見て英本土攻撃に仕えると判断し優先開発命令を出していた為、ロンドン攻撃に間に合った。

※7:He177の試作機を輸送機に改造した機体。爆撃能力を削除し乗員保護の為に装甲を厚くした。ロンドン攻撃には10機が投入され内1機が首相官邸への強行着陸に
   成功した。

※8:首相官邸勤務のメイドでブリテン・ナチスに思想的にも下半身的にも洗脳された挙句、機会を見てチャーチルと爆死する様に命じられていた。

390: ライスイン :2017/12/31(日) 22:53:03
~予告~

 戦争を主導していたチャーチルの死亡により士気が極度に低下したイギリスはMMJやK5達の必死の活動もむなしくドイツと講和。そして国土復興の為と称して形ばかりに市場開放を行い、
支援の代償及び代金を日本に支払おうとしなかった。この日英の関係悪化を見たロングはイギリスに多くの支援を行うと共にソ連に接近を図る。。さらに日本との戦争を望むロングは
莫大な援助の代償として日本からイギリスに供与された軽巡天龍・龍田を譲り受けた上で奉天軍に供与し、日本近海を遊弋させるという極めつけの挑発行為を行う。
しかし日ソの”同志達”によってニューヨークのとある場所で行われている悪魔の研究が暴露された事によりアメリカは大混乱に陥って行く。

次回”黒き死の降臨”


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最終更新:2018年01月01日 11:34