453: ライスイン :2018/03/08(木) 14:49:07
注)ネタ成分あり。



 1940年10月10日 アラスカ近海 第7駆逐隊 旗艦 曙


「ここら辺りか・・・哨戒艇0271号と4649号が消息を絶った海域は・・・」

第7駆逐隊司令は旗艦の曙の艦橋で呟いた。北米派遣艦隊に所属する第7駆逐隊はアラスカ近海で消息を絶った哨戒艇0271号らの捜索の為に派遣されていた。そもそも哨戒艇も同海域の付近を航行していた商船が消息を絶った原因を調査する為に派遣されていたのだ。

「偵察機より入電、本艦前方100㎞に巨大な氷山が漂流中との事です。」

「巨大な氷山だと・・・まさか商船や哨戒艇は氷山と衝突して沈没したのか・・・確かにこの濃霧では可能性はあるが・・・。」

隊司令は偵察機からの報告に疑問を感じた。商船はともかく哨戒艇はレーダーや暗視装置などを搭載しているのだ。
機器の故障などのトラブルで氷山を回避できなかったのかと思いつつ隊司令は氷山方向へ向けての航行を指示する。そして氷山との距離が80㎞を切った時・・・

「て・・・偵察機より入電っ!!氷山より対空砲火を受けているとのことです。」

「なんだとっ!!アメリカは氷山の上に基地でも作ったか?艦隊司令部に報告しろ、我々は更に接近して情報を集める。」

隊司令は艦隊司令部に状況を報告する様に指示した後、更なる情報収集の為に氷山への接近を試みる。

「偵察機より続報、氷山中央に艦橋の様な構造物を発見。その前後に巨大な単装砲塔があり周囲に3連装砲塔が多数あっ!!・・・通信が切れました。
   撃墜された模様。」

「分かった、全艦戦闘用意。」

偵察機撃墜の報告を受けた隊司令は戦闘準備を命令する。そして氷山との距離が60㎞を切った頃、立ち込めていた濃霧が晴れだして氷山の全容が映し出された。

「氷山の上に巨大な艦橋・・・前後の単装砲も恐ろしくでかい・・・。」

「氷山軍艦・・・いや、氷山戦艦か。」

曙の艦橋ではあまりの非常識さに隊司令や艦長以下、環境の要員たちは絶句する。しかし・・・

「敵艦発砲っ!!」

見張り員の絶叫が艦橋内に響く。

「各艦対艦誘導弾斉射っ!!」

見張り員の声に反応した隊司令が対艦誘導弾の斉射を命じ、各艦から96式艦対艦誘導弾が次々と発射される。

「着弾確認、距離10㎞以上、非常に巨大です」

発射の最中に見張り員から敵艦の砲弾が10㎞以上離れた位置に着弾したとの報告が入る。それは以前隊司令が見学した大和の51㎝砲の試射で発生した水柱より遥かに巨大であった。

「単装砲で発射速度が遅いと言っても威力は・・・何㎝あるんだ?」

「隊司令、間もなく誘導弾が着弾します。」

第7駆逐隊が発射した96式艦対艦誘導弾は32発(全弾)、誘導ミスや迎撃で9発が脱落したが23発が氷山戦艦に着弾するが・・・

「効果なし!!表面の氷が少し削れた程度です。」

「180度反転、急速離脱っ!!」

効果は殆ど無かった。それにより足止めやこれ以上の情報収集は不可能と判断した隊司令は速やかに撤退を命令する。

「隊司令、敵艦から入電です。」

離脱を指示している最中に敵艦から電文が入る。

”我はヒューイ・ロング・・・氷山戦艦ヒューイ・ロング、ジャップを滅ぼす艦(フネ)なり”

「ふざけやがって、艦隊司令部や付近の友軍に打電しろ、平文でかまわんっ!!」

隊司令は怒りに駆られつつも役目を果たすことを忘れなかった。



                         孤立大陸 第32話「最終決戦 大和型VS氷山戦艦」

454: ライスイン :2018/03/08(木) 14:50:23

 1940年10月10日現在、日本の戦局は非常に安定していた。アメリカは太平洋での制海権どころか海軍戦力事態を損失(※1)していた。
また降伏したワシントン・オレゴン・カリフォルニアに続きアリゾナとネヴァダが合衆国からの離脱と中立を宣言、付近の州でも動揺が広がっていた。
日本軍は降伏した3州に現時点で12個師団を展開、またカリフォルニアには戦略爆撃機用を含む大規模な飛行場を複数建設していた。軍港に関しても工作艦や海軍建設兵団(※2)や工作艦を送り込んで簡易修理したことにより使用可能な状態にまで修復されていた(浮きドックも多数持ち込まれていた)。
同時に民間工場に資材や資本を供給し、酒やタバコ・菓子等の嗜好品を生産する工場(※3)まで建設・運営するなど徹底的に治安や民心を安定させる対策を講じていた。

「だいぶ安定してきたな。」

「そうですね、食料と嗜好品の供給も安定していますし。我々が建設した工場群に加えて接収して修復・稼働させたボーイングの工場でも市民を雇用してますからね。」

サンフランシスコの北米総軍司令部で総軍司令官の寺内寿一大将と参謀長の牟田口中将が参謀や外務省などの職員(全員夢幻会)と状況を話し合っていた。

「最近では苦しい現状から州を越えての逃亡者が相次いでいます。中には部隊丸ごと亡命を求める米軍部隊もいます。」

「諜報の結果、アメリカ国内では一部食料品や嗜好品の大半が配給制度の対象になっているとの事です。」

順調な日本に比べ、アメリカの国内情勢は悲惨の一言に尽きた。
主要な工業地域が核で吹き飛んで工業生産が激減。更に少なくない農地も放射能で汚染されていた。嘗ては資源の大半を国内で自給できていたが其れも核で吹き飛ばされるか地域ごと合衆国から離脱するなどしていた。更に大西洋大津波や日本軍への敗北で海外貿易が途絶した事により国外から物資や資源を輸入することも出来なくなっていたのだ。

「アメリカ国内では各家庭からの金属資源の回収が始まっています。主に警察や州軍が回収を担当している様です。」

「国内を引き締める為に親日的な思想の持ち主や反戦活動家などを反逆罪などで逮捕している様です。同時に思想統制も始めている様で戦争遂行賛美や反日的なスローガンを掲げたポスターや横断幕が多く見られる様になっているとの事です。」

「士気の低下に業を煮やしたロングの野郎が海兵隊に督戦隊擬きの役割をさせているとの報告もあります。また最前線部隊にはFBIやOSSの要員が”政治将校”として配備されているそうです。」

続く報告にその場にいる全員が苦虫を噛み潰したような表情をした。
資源減少により物資生産及び質の低下が続発していた事でロングは金属等を回収する大統領令(金属類回収令擬き)やリサイクルを推奨する大統領令を公布。
警察や州軍が各家庭を回って各種資源(鍋や灰皿などの金属製品や車用のガソリンなど)を回収。当然回収に抵抗や反対する市民が殆どであった為、時には強引な回収も行われていた。また戦局の悪化や生活の困窮からくる反戦デモや議会でもロング糾弾が続発した為、業を煮やしたロングは見せしめとして反戦団体の指導者や反ロングの議員を日本への内通や国家への反逆などの罪で逮捕拘束するまでになっていた。また国民の戦意や対日憎悪を掻き立てる為にアメリカ軍を正義のヒーローで日本軍が極悪非道の悪役に仕立てた映画・小説・漫画などが多数制作され、街中にも”欲しがりません勝つまでは”や”聖戦断行”などの横断幕やポスターが至る所で見られる様になっていた。そしてそしてロングは士気の低下した陸運部隊への対処として大統領令のみで動かせる海兵隊を陸軍部隊の背後に展開させて督戦させ(※4)、同時に部隊内に反戦思想の蔓延や内通者の発生を防ぐためと称してFBIやOSSの要員を派遣して思想統制まで実施していた(※5)。もっとも一時的な効果はあったが市民の大統領への憎悪や陸海軍と海兵隊の対立が高まるという笑えない事態に発展したのだった。

「な・・・なんという末期日本ぶりだ。おまけにソ連風味も加わっているとは・・・。」

「我々に滅ぼされるのが先か、市民革命や軍部の反乱で滅ぶのが先か・・・」

455: ライスイン :2018/03/08(木) 14:51:01
「わかりません。ですがロングの独裁的政治に市民の多数が反発して親ロング派の市民(※6)と衝突を繰り返しています。また複数の反政府組織が誕生し、現政権への抵抗運動を行っている様です。有名どころはフリーダム・ファイターズ(※7)と黒の騎士団(※8)ですね。」

 かつて自国と組むことで繁栄を謳歌した自由の国とは思えない惨状。これ以上攻勢を掛けなくても自壊するんじゃないかという思いに一同は駆られていた。
そんな中、第7駆逐隊が発信した緊急電が北米総軍司令部にも舞い込んだ。

「氷山戦艦だと・・・、随分とふざけた物を作ったな。だが今更それだけで戦局を覆す事など出来ないぞ。」

「ですが極めて強固なようです。96式が通用しないのはともかくこの分ですと99式も効果がなさそうですな。戦略爆撃機も動員して大型爆弾で絨毯爆撃をしつつ、艦載機や陸攻で火器を破壊。対艦誘導弾と魚雷の飽和攻撃を行いつつ全ての戦艦を用いて集中砲撃するくらいしか・・・。」

「だが集める時間も無いぞ。序に核爆弾も輸送中で手元には緊急用の戦略核1発しかない。本土では99式に搭載可能な小型核の試作が完成したらしいが。」

氷山戦艦への対策に頭を痛める一同。通常攻撃は効果が薄く、破壊できるだけの戦力を集める時間も無い。核爆弾は緊急用の1発以外撃ち尽くして本土から輸送中。また戦略爆撃機からでは低速とはいえ洋上目標へ確実に命中させるのは非常に困難で高度を落とせば撃墜される危険性が高まる。

「大変です、たった今大出力の放送を受信しました。ホワイトハウス(臨時)でロングが演説を行うようです。」

ノック無しに入室してきた通信参謀の言葉に一同はラジオに耳を傾けた。



 1940年10月10日 夕方 カンザス州ウィチタ  臨時ホワイトハウス前広場


 現在ホワイトハウス前はマスコミ(反日連合国)や市民(ロング派)及び警備の警察や海兵隊でごったがえしていた。事前にロングが重大な演説を行うと予告していた為である。

「アメリカ合衆国大統領ヒューイ・ロングより親愛なるアメリカ国民の皆様そして勇敢な同盟国の方々にご報告します。今朝方、アラスカの極秘ドックから出撃した私の名を持つ最新鋭の戦艦、氷山戦艦ヒューイ・ロングが日本艦隊を蹴散らしたとの報告が入りました。分厚い鋼と氷に包まれ通常攻撃はおろか新型爆弾に耐えうる強度を持ち、80㎝の巨砲2門と多数の18インチ砲を備え、その全てに科学の力を利用した砲弾(毒ガス砲弾)を備えています。現在は我が国侵略の拠点であるサンフランシスコの日本軍と日本軍に組する裏切者を浄化する為に進撃中です。しかし私は世界を覆う惨禍を憂い、白紙講和という慈悲を与える決断を下しました。日本よ、白紙講和に応じて神聖なる合衆国領土全てから去りなさい。そして合衆国を裏切った者達よ、罪を悔いて再び星条旗の元に集うならばその罪は許されるでしょう。さもなくば化学の力で浄化されるでしょう。
  猶予は僅かです、懸命な判断を期待します。そして合衆国を守る神聖な戦いに身を投じる全ての市民と偉大なる民主主義に栄光あれっ!!」


ロングの演説が終わった時、広場は大歓声に包まれた。もっとも広場外は壮絶な罵声と銃声に包まれていたが。

456: ライスイン :2018/03/08(木) 14:51:35
1940年10月11日 大日本帝国 帝都東京 首相官邸


「ふざけているのかっ!!発狂したのかっ!!それとも・・・薬でもキメているのかっ!!」

「今更白紙講和だと。散々卑劣な行動を繰り返し、挙句本土に上陸され敗戦寸前だというのに。」

演説の翌日に官邸で開かれた夢幻会の会合では余りにも馬鹿げたロングの要求について話し合っていたが凄まじく荒れていた。

「本気なのでしょうな。撃破が極めて困難な氷山戦艦でサンフランシスコに接近してしまえば我々は我が軍や西海岸住民を人質に取られた形となり、核兵器を使えなくなると思ったのでしょう。その状態なら白紙講和を受け入れざるを得なくなる。それでなくても動きを封じている隙に戦力を集中させ有利な布陣で臨めば本土から駆逐できるとでも考えているのかもしれませんね。」

荒れる中で嶋田は冷静にロングの意図を推測する。

「ですが不味い状況ですね。サンフランシスコにある核は緊急用の戦略核1発のみで今からハワイから輸送しても間に合いません。」

「誘導弾では効果が無いとの事です。戦略爆撃機を用いた貫通爆弾や絨毯爆撃では命中は期待出来ませんし。」

第7駆逐隊が放った96式艦対艦誘導弾が殆ど効果が無かったとの報告は既に上がっており、戦略爆撃機を用いた貫通爆弾攻撃や絨毯爆撃では命中性をが期待できず、命中させる為に高度を下げれば対空火器の餌食になる。ましてや大量の毒ガス砲弾を搭載している事から高角砲にも毒ガス砲弾を使用している可能性もあるのだ(※9)。
おまけに欧州でのとある作戦の為に本土に逢った余剰の核爆弾は応手方面へ輸送中であり、すぐに使えるのはハワイに備蓄してある分のみ。だが今からでは輸送している時間は無い。
そんな手詰まり感が漂う中・・・。

「遣米艦隊司令部より入電っ。”大和型4隻を中核とした打撃部隊を編成し、古賀中将指揮の元で氷山戦艦に決戦を挑まん”とのことです。」

遣米艦隊司令長官の塩沢大将より届いた電文に一同の表情は明るくなった。

「そういえば・・・大和型には2斉射18発分の核砲弾(※10)が搭載してあったな。4隻で計72発か・・・。」

「大和型に核砲弾が積まれている事を知っているのは我々の中でも海軍関係者と会合参加者の一部だけだからな。」

対抗手段が一応は確立した事に安堵する会合メンバー。

「塩沢大将からは空対艦誘導弾(エグゾセAM39相当)や戦略爆撃機からの250~500㎏爆弾による絨毯爆撃、対艦ミサイルや雷撃(潜水艦含む)により足止めも行っているとの事です。」

「そうか・・・後は古賀君に全てがかかっているな。」


 1940年10月11日午前 カナダ・バンクーバー島沖50㎞ 氷山戦艦ヒューイロング


「ふはははははっ!!見ろ、ジャップがゴミの様だ。」

ヒューイロングの艦橋で艦長兼任務部隊司令官のムスカ中将(※11)が離脱の遅れた日本軍高速艇が爆沈する様を見て大声で笑っていた。任務部隊と言っても随伴艦はなく、氷山戦艦唯一隻である。
ここに来るまでに日本軍の決死の攻撃で速度が4ktに低下し18インチ3連装砲塔が2つ破壊され、対空火器も3割程低下していたが戦闘力は充分残していた。

457: ライスイン :2018/03/08(木) 14:52:07
「あと数日でサンフランシスコに到着する。そうしたらこの偉大な力でジャップ共を根絶やしにしてやるのだ。」

気分が高揚しているのか上機嫌で語るムスカ。参謀や副長など艦橋要員も同意するかのように差別発言を繰り返す。

「素晴らしい!!最高のショーだとは思わんかね!?」

友軍艦艇の撤退を援護していた旧式巡洋艦が複数の18インチ砲弾を浴びて爆散する様を見たムスカは更にハイになる。だが・・・

「前方に日本艦隊発見。距離およそ80㎞、大型戦艦4隻を先頭に我が方へ航行中っ!!」

遂に日本の迎撃艦隊が姿を現した。

「砲戦用意、サンフランシスコの前の前菜だ。さっさと平らげるぞ。」


 ほぼ同時刻 帝国海軍特別打撃艦隊 旗艦大和


「ふふふっ、油断は出来ないし重責は理解しているが・・・待ちに待った最高の晴れ舞台だ。」

特別打撃部隊の旗艦である戦艦大和の艦橋で司令官である古賀中将は高揚する気分を抑えながら己の職務を遂行していた。
何せ戦争の行く末を決める重要な決戦であり自身の旗下には最新鋭かつ最大最強の大和型戦艦が4隻もあり、対する敵は氷山戦艦という常軌を逸した怪物である。
戦艦派閥にとって気分が高揚しない方がおかしかった。編成は

大和型戦艦:大和 武蔵 信濃 甲斐

大井型重誘導弾巡洋艦:大井 北上

香取型巡洋艦:香取 鹿島

初春型駆逐艦(改暁型)×10 神風型駆逐艦×8 

哈爾濱型通報艦:哈爾濱 新京 

で離れた海域にも複数の空母が展開し、周辺警戒や航空支援が行える体制にあった。。

「まず誘導弾と空爆で敵の足止めを行いつつ戦闘力を削る。そして大和型で砲戦を挑み、頃合いを見て核砲弾を使用する。」

古賀中将の命令の元、艦隊は戦闘行動を開始した。まず70㎞を切った時点で大井型及び駆逐艦が哈爾濱型の誘導支援を受けながら対艦誘導弾を発射。
次いで空母から飛来した雷風や流星が誘導爆弾や対艦誘導弾による攻撃を実施する。

「敵艦との距離が50㎞を切りました」

「敵艦の速度低下を確認。複数の砲塔が破壊された模様、なお主砲2基は健在。」

対艦誘導弾や航空機による攻撃で戦闘力を奪う事に成功したとの報告が入る。

「砲戦用意っ!!」

古賀中将は遂に砲撃を命じる。大和型の51㎝砲の射程距離は最大で53000mにも及ぶ、確実に命中させるにはまだ遠いが哈爾濱型や航空機による観測支援があれば命中率は高まるだろうと判断した。

458: ライスイン :2018/03/08(木) 14:52:49
「撃てぇっ!!」

古賀の命令の元、各艦が斉射を行い36発の51㎝砲弾が放たれる。そして・・・

「敵艦に命中弾、大和1 武蔵1 信濃2 甲斐1 計5発。砲塔1基を破壊、氷が剥がれます。」

命中弾が発生し、被害を与えた事が報告される。しかし・・・

「敵艦発砲。」

反撃の為かヒューイロングが前部の80㎝砲を発射した。それを聞いた古賀は各艦に回避運動を命令する。

「敵砲弾、鹿島の至近に着弾」

80㎝砲弾は艦列の後方を航行していた鹿島の近くに着弾した。鹿島はその猛烈な衝撃で沈没こそしなかったが主砲を始め多くの兵装が破壊され、誘爆により炎上していた。

「鹿島より報告、”我沈没は回避するも戦闘力損失。更に着弾地点より毒ガスが発生、対処行動に移る”との事です。」

「おのれヤンキー共めっ。」

「鹿島に離脱を命令、退避した駆逐艦に救援させろ」

毒ガス砲撃により鹿島に大きな被害が生じた事に大和艦橋は怒りに包まれるが古賀は怒りを押し殺しつつ命令を下す。
その後も3斉射・4斉射と砲撃を続け、遂に古賀は核砲弾の使用を決意した。

「頃合いだな、全艦核砲戦用意。」

核砲戦の命令が発せられ、大和型各艦は主砲全てに核砲弾を装填する。

「艦隊総員、耐衝撃・閃光防御。」

この命令に従い艦橋要員はゴーグルを装着し、各艦内では隔壁を閉鎖し不要な火元・電源を切り身近な物に掴まる等防御態勢に入る。そして・・・

「撃てぇっ!!」

ヒューイロングへ向けて36発の核砲弾が放たれた。


 氷山戦艦ヒューイロング艦橋


「中々粘るなジャップ共め。」

日本艦隊の奮闘にムスカ中将は苛立っていた。大被害こそ受けていないが日本艦隊の攻撃は徐々に無視できない打撃を与えつつあった。
対空砲は8割がた破壊され、10基あった18インチ3連装砲塔は5基を失っており速度も3ktに低下していた。それでいて戦果は大型巡洋艦1隻を大破させただけだった。

「やむを得ん。進路そのまま、砲撃で牽制しつつサンフランシスコへ直進する。」

ムスカ中将はこのまま戦闘を続けて戦闘力を徐々に失うよりも目的を果たすことを優先した。砲撃で氷山戦艦を沈める事は不可能に近い。ならば日本艦隊を無視して目的地へ行くことが優先だ。サンフランシスコへ到着しさえすれば日本軍司令部や現地住民を人質にすることが出来る。仮に砲の大半が破壊されようとも艦内には緊急用の野砲と毒ガス砲弾がある。ムスカ中将が外道な考えをしていたその時・・・

「敵戦艦発砲っ!!」

日本の巨大戦艦4隻が発砲したとの報告が入り、皆が衝撃に備えて身を固くする。だが砲弾は艦体及び至近海域に着弾し、猛烈な閃光を放つ。

「あ~あ~目がぁ~目がぁ~!!」

猛烈な閃光、それがムスカ中将が見た最後の光景だった。
36発の核砲弾が炸裂し、巨大なキノコ雲が立ち上がった。それが晴れたとき・・・海面には何も残っていなかった。

「北米総軍司令部に打電、我氷山戦艦を撃沈す。」

艦橋が勝利に沸く中で古賀は報告を送る事を忘れなかった。

459: ライスイン :2018/03/08(木) 14:53:21
 1940年10月11日 夕方 カンザス州ウィチタ  臨時ホワイトハウス前広場


「なんだとっ!!氷山戦艦が・・・ヒューイロングが撃沈されただとっ!!」

臨時ホワイトハウスではロング大統領が切り札の損失に呆然としていた。
これでは日本に白紙講和を強要できない。残るは降伏か死か・・・それだけとなった。降伏すれば確実に自分は裁判の後に吊るされる。
明確に死の恐怖を感じたロングは大声で怒鳴った。

「前線の部隊に直ちに攻撃命令を出せ。無差別攻撃並びに毒ガスの自由使用を許可する。」

日本軍と現地市民の区別なく無差別に攻撃、しかも前線指揮官に毒ガスの使用を自由に使用する許可を出すロング。しかし命令が伝わる事は無かった。
祖国と市民の惨状やロングの横暴に耐えかねた軍や市民及び議員の有志が遂に決起したのだ。中心となったブラッドレー中将率いる首都防衛軍団(※12)は監視として派遣されていたOSSやFBIの要員を排除するとホワイトハウスへ向けて進撃を開始。警備の海兵隊やロング派市民を排除してロング大統領の拘束に成功する。そして元副大統領ウォレスや共和党のデューイ議員が中心となって成立した臨時政権は全軍に戦闘停止を命じ、日本に対して降伏を申し入れた。
日本側も臨戦態勢を継続いつつもこれを受け入れ、日米による戦争は一先ず終結したのだった。


※1:大西洋大津波で大西洋艦隊はほぼ消滅。太平洋艦隊も大型艦は壊滅し僅かな巡洋艦と駆逐艦、哨戒艇が残存するのみ。

※2:日本版シービー。

※3:ビールやエールなどの酒類や菓子類等の食品系が主だが同人誌(英語版)の製本施設も整備されつつあり、宣伝担当の軍属扱いで複数のサークルも進出していた。

※4:士気や忠誠心・愛国心が低下しつつある陸海軍部隊の反乱や戦闘拒否を警戒してのロングの措置。但し本土に残存する海兵隊は戦争勃発後に編成された部隊のみで経験も浅いか無く、大統領命令による権威と優先的に供給される高品質の装備頼みの案山子的な存在。またこの措置によって陸海軍と海兵隊の関係が極めて悪化した。

※5:軍内の反戦思想や反国家的な思想を持つ者を摘発するための措置。部隊への命令権は与えられていない筈だが一部の者が権力を笠に口出しや介入を行うなど”政治将校化”が進みつつある。

※6:ロングの思想に賛同したり、彼の行動を支持する市民達。主に白人至上主義者やロング政権で財を成した者が多い。

※7:反ロング活動を行う抵抗組織の一つ。セオドア~フーヴァー時代の”古き良き時代の正しきアメリカへの復帰”を掲げて活動している。活動の大半やゲリラ的なラジオ放送や機関紙・宣伝ビラの散布だがロング政権で腐敗を行う官僚・財界人の成敗も行っている。密に日本からの支援を受けている。

※8:反ロング活動を行う抵抗組織の一つ。こちらは黒人のみで構成され、黒人至上主義を掲げて白人への襲撃や資金調達の為の銀行強盗を行う黒人版KKK。
   指導者は正体不明の仮面男。

※9:5インチ両用砲や6インチ副砲の対空砲弾の半数には毒ガスが充てんされた対空毒ガス砲弾が占めていた。

※10:威力(出力)不明。戦艦派の暴走や核万能論の増大を懸念して極一部にしか核砲弾の搭載が知らされていなかった。

※11:米海軍中将でヒューイロング艦長と任務部隊司令官も兼ねており、元々艤装委員長兼極秘ドック責任者として赴任していた。嘗ては米海軍特務機に所属し某天空の城の捜索に当っており、とある少年や少女と激闘を繰り広げた過去を持つ。

※12:ロングが首都防衛及び反撃の為の切り札として編成を命じた軍団。第1歩兵師団や第1機甲師団など戦前から編成されていた練度も高く、質の良い装備を供給されている部隊のみで構成され、兵員の士気も比較的高い切り札的な存在。

460: ライスイン :2018/03/08(木) 14:53:51
○ おまけ  哈爾濱型通報艦  哈爾濱  新京

13500t  57㎜速射砲×2 20㎜近接防御機銃×6  各種レーダー多数  32kt

旧式化した筑波型防空巡洋艦の5・6番艦を改装して誕生した艦。通報艦と称しているが主な任務は搭載した各種レーダーを用いての対艦誘導弾の誘導やレーダー射撃の補助など。
武装は搭載レーダーへの電波干渉を懸念して自衛に必要な最小限程度に抑えられている。


 いかがでしょうか?やっとアメリカとの戦争を終わらせることが出来ました。
SS化する海兵隊にNKVDと化したFBI・OSS。国内では家庭からの資源回収や清潔物資の配給が始まるなど完全に末期戦状態に陥ったアメリカ。そして最後は陸海軍のホワイトハウス突入によるクーデターと現実ではありえない有様になりました。遣り過ぎかもしれませんが。
 次回では欧州方面など反日同盟に加担していた地域を書く予定です。


~予告~

アメリカとの戦争を勝利で終わらせた日本は次の目標を欧州に定める。某地域で決戦中の独ソ両軍に神の炎が炸裂し、蛙や紳士の国も幾多の厄災が降り注ぐ。
その様に恐怖した中南米は日本に膝を屈し、一先ず戦争は無くなるのであった。

次回”そして伝説へ”

掲載お願いします。

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最終更新:2018年03月12日 16:50