789： 第三帝国 ：2018/03/11(日) 12:14:19
銀河連合日本×神崎島ネタSS――——――「盲信者たちの行進」
―――――中華人民共和国 首都北京
軍服を着た兵士たちが歩調を合わせて行進し、戦車が力ずよく唸りを上げ、歩兵戦闘車、各種自走車両がそれに続く。
兵士が歓喜に満ちて叫び、沿道からは大歓声が上がっている。
「前进！各民族英雄的人民！
伟大的共产党领导我们继续长征。
万众一心奔向共产主义明天，
建设祖国保卫祖国英勇的斗争。
前进！前进！前进！
我们千秋万代
高举毛泽东旗帜，前进！
高举毛泽东旗帜，前进！
前进！前进！进」
そして勇ましく国歌が鳴り響く。
テレビ中継でその光景を見ている青年や少年たちは、偉大なる祖国の力強さに目を輝かせているが５０、６０代の人間はやや複雑そうな表情を浮かべる。
何せ今と違い歌詞は文化大革命終了直後に採用されたバージョンで、我々は永遠に毛沢東の旗を高く掲げて進め！と言ったフレーズが含まれているからだ。
加えて周囲には「打倒日帝」や「中华民族在亜州造成新秩序」などなど派手なスローガンが林立しており、共産主義国得意のマスゲームと合わさって余計に複雑な感情を呼び起こすのだろう。
そして未だ歌詞が終わらぬ間に９９式戦車が『道路に描かれた日の丸』を押しつぶして通過する。
さらに道路には二藤部総理に神崎提督の顔が描かれておりそれも踏み潰す。
やっていることは原爆を題材にした某漫画で、主人公たちが敵国の首脳を描いた絵を踏んだように滑稽かつ無意味な行為であるが、敵愾心を煽るというプロパガンダ的な意味から見れば十分有意義な行為であった。
演目は地上だけでなく空でも行われていた。
武直10型攻撃ヘリを先頭に低空を進撃するヘリの大群。
その上空には中国が誇るステルス戦闘機である殲-20。
後からは爆撃機である轟炸六型、などと派手な兵器が続々と登場し、その都度周囲から偉大なる中華に畏怖をと誇りを胸に抱き、歓声の声が上がる。
「今日は日帝を！明日はアジアを！明後日は世界を！」
レポーターが興奮気味にそう叫び、人民広場は尽きることのなく中華人民共和国万歳！が連呼した。
790： 第三帝国 ：2018/03/11(日) 12:16:28
どうしてこうなった。
張徳懐は暗澹たる思いで紫禁城から行進を見つめていた。
「軍事委員長閣下、顔が優れないようですが？」
「・・・当然であろう、総書記に対する事前連絡もなく突然の出来事であるからな」
いや、原因は横に立つ軍服を着た男だと分かっている。
参謀本部作戦第二部長、唐克日少将。
対外強硬派の筆頭中の筆頭で日本人が言うところの「ガーグ」でこの状況を作り上げた人間だ。
通常ならこうした表の場面で、それもたかが少将の分際で国家主席である自分の横にいるなどあり得ない事態である。
だがそれこそが今の中国が陥っている状況を端的に示していた。
「しかし、それでもなお軍の『要請』に応じてくださるとは、
軍事委員長閣下の徳は泰山のごとく雄大であらされる！」
「人民の要望に応えるのが共産党の役目、ゆえ」
お互い白々しい言葉を口にする。
「とはいえ、いい加減目的を話してくれないかね？
我が国は独自の社会主義を採用しているとはいえ、このパレードに掛かる費用は少ない額とは言い難い。
まさか君たち軍人の自尊心を満たすためだけ、と思いたくないので」
張徳懐は正面を向いたまま疑問を発言する。
本当は怒鳴りつけてでも聞きたい所であるが、テレビ中継が注目する中でそんな真似はできない。
「なるほど閣下はこれに疑問を抱いているようですが―――――もしや漢奸では？」
漢奸、その言葉に沈黙を余儀なくされる。
この大陸で一度でもそのレッテルを張られれば一族皆殺し、その上、秦檜のように見せしめにされた挙句未来永劫に渡って名が貶められる定めとなる。
（蛇足だが現在秦檜の像に対してウィキ先生では、
「かつてはこの像に唾を吐きかける習慣があった」
としているが約10年前に第三帝国自身が現地で見たところ未だに唾を吐きつけられていた。
無論、現地の掲示板などで唾を吐くのを止めるように警告してあったが・・・。
そうした文化、習慣の違いが歴史問題云々で『捻じれ』が発生していると個人的に考える）
「一体何を躊躇しているのですか？
奴らは所詮東洋鬼、我々が強いことを示せば米帝、そして外星人に従ったように我々に従うようになるはずです」
沈黙する張徳懐に唐が嬲るように、
あるいは苛立ち、優越感、焦りを混ぜ込んで言う。
どうしてこうなった。
再度、張徳懐は内心で呟く。
別に日本のことなど極端に言えばどうでもよい。
が、祖国が気づけばかつての日帝同様軍人がのさぼる現状に絶望を覚える。
そして同時に―――――皇帝になるしかない。
砂のごとくバラバラになる中国人を纏めるにはそれしかない、そう確信した。
おわり
791： 第三帝国 ：2018/03/11(日) 12:19:55
以上です。
では
最終更新：2018年03月12日 17:13
