203: 635 :2018/09/19(水) 20:44:45
銀河連合日本×艦これ神崎島 帰還


大和を旗艦とした艦隊が東京湾へと入る。
日本への帰属のための条約を調印するためだ。
神崎島鎮守府提督神崎博之は座乗している戦艦大和の甲板上から東京湾沿岸を見ていた。

「随分と人が集まったものだな。」
「やはりそれだけ関心が高いのでしょう。」

艦娘大和を傍らに双眼鏡を覗きこみ集まった群衆を眺めていた。
在りし日の軍艦を興味深そうに見ている者、
艦を指差し傍らではしゃいでいる幼子とその家族、
軍艦を懐かしそうに見ている老人、
戦争反対と横断幕を掲げる団体、
どれもがこの国が戦争と縁のない平和な国だと物語っていた。

「平和なものだな。」
「そうですね…。散って行った者達がこの平和の為に無駄ではなかった…。そう思いたいものです。」
「そうか…。」

大和の言葉にどれほどの思いが詰まっているのか、想像出来るが口に出すことはしない。
口を噤んだまま神崎提督は双眼鏡を再び覗き込むと日本政府特務交渉官柏木真人と共にある集団を見つけた。
おかえりなさいと書かれた横断幕が見える。
すぐにその集団の正体を察し、口を歪ませる。

「なるほど、そういうことか。」
「提督?」
「フフ、柏木君もなかなか粋なことをする。」

神崎提督は声を出して笑い初めた。
そんな提督の姿を見た大和は混乱していた。
ひとしきり笑い終えると提督は混乱する大和に命令を下す。

「連合艦隊全艦艇に通達、艦隊左舷方向の埠頭を注視せよ。目印はおかえりなさいと書かれた横断幕だ。」
「ふえ!?」
「復唱!」
「は、はい。連合艦隊全艦艇に通達、艦隊左舷方向の埠頭を注視せよ!目印はおかえりなさいと書かれた横断幕!」
「うむ、それでいい。」

大和は通信員妖精を呼び出し、即時に全艦艇へと提督の命令を通達するよう指示をだす。
混乱しながらも的確な指示を出す大和の姿を見た提督はこれも日々の訓練の賜物かと感じた。

「提督。今の命令は一体?」
「先程の通りだ。」

疑問を示す大和に対し提督は命令の通り行動しろと言う。
訝しげに大和は陸地の方を向きおかえりなさいと書かれた横断幕を探す。
ここは陸地から随分と離れているが並の双眼鏡以上の性能を誇る艦娘の目なら簡単なことだ。
すぐに横断幕を見つけた。

大和の目が大きく開かれる。
別に変なものを見つけた訳でなない、彼女がよく知る者を見つけたのだ。
腰は曲がり、白髪が増え、車椅子に座り家族に押してもらっている者もいる。
年を取り姿は変わったが忘れる訳がない。
かつてただの鉄の塊であった自分が水底へと沈む今際の際まで一緒に戦っていた者達なのだから。
いや、決して忘れてはいけない者だ。艦にとって乗組員というものは。

204: 635 :2018/09/19(水) 20:46:51
元彼女の乗組員だった者達はおかえりなさいと書かれた横断幕の下にいてプラカードや小さな横断幕を持つ者もいる。

大和お帰りなさい
乗組員一同、大和の帰還を待望せり
大和よ、我々はここにいるぞ!

彼らは敬礼をしていた。
その目には確かな親愛の情が浮かんでいた。
全員が大和に親愛を示していた。

「ウソ?…。」

大和は信じられなかった。
恨まれていると思っていた。
祖国を守れず、乗組員の家族を守れず、最後は多くの乗組員を巻き添えに水底へ沈んだのだから。

大和の瞳から一筋の涙が流れた。
自分を待っていてくれる人々がいるとは思わなかった。
故郷へと戻れるのは嬉しかったが、罵倒され石を持って追われると思っていた。
大和は甲板へと座り泣き始めた。
この世界へと戻り初めて泣きじゃくった。
悲しみからではなく嬉しさからの涙を流した。
提督はそんな大和を優しく見守っていた。

「大和。彼らに答えてあげなさい。」
「グス、はい提督ぅ。」

目を赤くしながら大和は提督に答えた。
提督の手を借りて起き上がると敬礼をした。
教本の手本としたいくらい見事な敬礼であった。

「総員甲板上へ集合。左舷へ登舷礼用意。」
「グス、了解しました!」

敬礼をする大和に変わりそばで一緒に涙ぐんでいた妖精へと指示を伝える。
妖精は合点と仲間と共に伝令へと走る。
急いで大和の妖精達が甲板上へと集まり登舷礼を行う。
皆目を潤ませ、中にはすでに涙を流している者もいる。
提督はその中へ加わらない。
この場、この時の主役は彼女達だからだ。

登舷礼を見た埠頭の人々も再度敬礼を返す。
ある老人は動かない体を懸命に動かして、
ある婦人は記憶の中の夫の姿を思い出しなれない敬礼をして、
ある幼子は傍らの曽祖父の姿を真似て、
皆が戦艦大和に敬礼をしていた。

大和達と元乗組員達が波を隔て互いに敬礼を交した。
かつて波間で隔てられた者達が再び波を隔て敬礼を交わす。
まるで物語のような光景であった。


カシャ

シャッターを切る音がした。

「君か。」
「あややや、提督申し訳ありません。」

大和に乗り込んでいた神崎島の記者妖精だった。

「記者としてこんなこれを皆さんに伝えなければと思うのですが、その提督?」
「まあ、いいだろう許可する。あまり邪魔にならんようにな。」
「はい!」

記者は撮影を続けた。
艦と人、散った者と残された者、託した者と託された者、語り継ぐ者と語り継がれた者
彼らが今この場に共にいることを世の人々に示そうと。
艦娘も妖精も人も共に歩み始めようとしていると。

神崎提督はそんな彼らの姿を目に焼き付けていた。

「帰還か…。」
「提督?」
「いやなんでもない。」

提督の漏らした言葉を聞き記者は訝しんだ。
提督は空を見上げるとそれきり口を噤んだ。
見上げた空は全てが終わったあの日と同じように抜ける程綺麗な青空であった。

205: 635 :2018/09/19(水) 20:50:33
以上になります。

あ…ありのまま 今 起こった事を話すぜ! 
カレーの話を書いていたハズが調印式の時の話を書いていた…
頭がどうにかなりそうだった…催眠術だとか超スピードだとか
そんなチャチなもんじゃあ断じてねえ
もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ…

ホントなんで書いたんだろ?

転載などはご自由にどうぞ。

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最終更新:2018年10月03日 19:42