20 :VISP:2012/01/22(日) 00:10:33
某日、PAN-51にて

 「っぉ!」

 予期せぬ被弾による衝撃に、肺から空気が漏れ出す。
 吹き荒ぶ吹雪の中、この環境に長年親しんだ自分とは異なり、目の前の敵機は悠々とこちらに銃弾を当ててくる。

 「このクソどもが!」

 吹雪の合間に敵影目掛けてマシンガンを連射するが、掠りもしない。
 だと言うのに、周囲の味方の反応は刻一刻と消えていく。
 っ!レーダーの僅かな反応を逃さず、逆間接の特徴を生かして瞬時にその場から跳躍する。

 『ダメだな、その程度では。』

 だが、先読みした様に青いレーザーが背後からこちらのPAを貫いた。

 「ぐお!」
 『落ちろ!』

 動揺を見越したのか、空かさず敵ネクストがQBで踏み込んでレーザーブレードを振るってくる。

 「クソったれがぁぁ!!」

 反射的に正面へQBを発動、バランスを崩しながらも辛うじて左腕を犠牲にする事でコアへの直撃だけは回避する。
 だが、火器を失いバランスを崩された代償は大きい。
 バランス調整にほんの数秒間だけ挙動が乱れ、右腕を失った衝撃がノイズとしてAMS接続から脳に流れる。

 (し、死にたくねぇ…!)

 OBを起動、全てを捨ててこの場からの撤退を図る。
 既に吹雪でノイズだらけのレーダーには、味方の反応は一つも無い。
 あるのは一つ、この資源基地を壊滅に追いやった敵ネクストの反応だけ。
 既に、イルビス・オーンスタインの精神は限界だった。

 あんな化け物、勝てる訳が無い。
 土台無理だったんだ。
 日企連に手を出すなんて事は…

 だが、彼の必死の逃走は報われる事は無かった。
 鮮烈な緑の閃光が、マロースの白い機体を貫いた。
 被弾箇所はコア。腹から背中まで見事に貫徹していた。

 (そう、か…こいつら始めから…)

 そこでイルビス・オーンスタインの意識は永久に途絶えた。





 『すまないな、手間をかけさせた。』
 『…いや、良い。こちらこそ、時間をかけ過ぎた。』

 戦闘が終わった資源基地跡で、二機のネクストが佇んでいた。
 一機はJAN-01SAKIMORI、日企連製の中量二脚機。
もう一機はJAN-02SAMURAI、同じく日企連製の新型軽量二脚機だ。
 もうお分かりと思うが、この二機は日本企業連合所属のネクストだ。

 今回のPAN-51襲撃は、先のアルゼブラ側からの海上ガス田襲撃の報復措置の一つとして行われたものだった。
 海上ガス田は勿論守り切ったが、日企連は即座に報復措置を開始、アルゼブラの重要拠点の幾つかを同時に襲撃した。
 本来ならこの場所も多数のMTやノーマル、航空支援戦力とネクストの同時運用で作戦を行うべきなのだが、この場所は年中吹雪で閉ざされているためにそれも難しい。
 そのため、日企連側は所属リンクス達の中でも特に精鋭で知られる2人を一度に投入したのだった。

 『2人とも、お疲れ様でした。間も無く輸送機が到着しますので、帰ったら食事にしましょう。』
 『助かるよフィオナ。そうだ、後で一杯私から奢ろう。』
 『…よい店を知っている。』

 既にそこには張り詰めた空気は無い。
 戦闘が終われば彼らも人の子。
 彼らの守った日常へと返っていくのだ。


 和気藹々と会話するAC4主要キャラクターの3人だが、夢幻会メンバーが事前に話をつけてアナトリア陥落後は日企連に逃げ出す手筈になっていた。
 ジョシュアはそもそも最初から日企連所属であったし、『アナトリアの傭兵』も日企連の依頼を何度も受けていた。
 フィオナも、アナトリアの住民を受け入れてくれるとなれば拒否する事は無い。
 優れた技術者が多くいるアナトリア市民の移住は、日企連としても歓迎する事態だった。
 そして何より夢幻会内のACシリーズファン、特にAC4・FAファンにとって狂喜乱舞する程の事態だったのは言うまでも無い。

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最終更新:2012年01月26日 21:05