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銀河連合日本×神崎島 ネタ あの海を越えて


ソロモン諸島ガダルカナル島ホニアラ

その日ホニアラの港には巨大な艦が埠頭に停泊していた。
練習艦として遠洋演習航海をしている練習戦艦比叡だ。
戦艦比叡の前には艦娘比叡を筆頭に山城、香取、鹿島等の練習艦隊に属する艦娘達が整列していた。
日除のテントも設けられており、そこには彼の方や柏木もいる。

『ただ今より、ソロモン諸島戦没者遺骨引き渡し式を行います。』

比叡達の前に何人もの人々が整列する、ソロモン諸島で戦没者遺骨収集に従事する派遣団の方々だ。
その手には大事そうに純白の布で包まれた箱を抱えている。

それがどれ程大事な存在かを比叡達は知っている。
先の戦争でソロモン諸島で散った英霊達の遺骨だ。

『派遣団よりお預かりした御遺骨を遺骨安置台に安置をお願いします。』

「前へ進め!」

比叡達は預かった遺骨を壊れ物の様に大事に抱えながら移動を始めた。
君が代が流れ始めた。
その歌を聞きながら比叡達は安置台へと進む。
彼の方は目に焼き付けるようにその様子を見ていた。



比叡は自分の甲板の縁に座り海を見ていた。
視線の先には山城や香取等の神崎島の艦艇が停泊している。
また、神崎島との関係の誇示と新造艦の練度向上の為に同行している海上自衛隊のふじ型護衛艦の一隻も停泊しいた。

「どうしたの比叡?」

練習艦隊の副官を務めている山城だ。
比叡の隣に来ると腰を降ろした。

「またここへ来ることになるとは思って無かったからいろいろとね…。」

「ああ…。」

比叡と山城が見つめる海は神崎島の艦娘、深海棲艦達に感傷を起こさせる。
砲火と硝煙に覆われた海と海面に浮かぶ人だった物。
その海はこう呼ばれる。


鉄底海峡―――アイアンボトムサウンド―――と、


日毎に勢力が変化する日米の大消耗戦、ノーガードの戦いより多数の艦艇、航空機が喪失、鋼鉄の残骸が海底を埋め尽くす第二次大戦での激戦地の一つである。
比叡と妹の霧島を筆頭に多くの艦がこの海に眠っている。
練習艦隊が停泊しているガダルカナル島ホニアラの北北西30kmにあるサボ島沖、そこに比叡は眠っていた。


「私達のミッドウェーが比叡さんのソロモンだからしょうがないと思いますよ。」

「赤城…ってあんた何食べてるの!?」

「屋台で売ってた地元の焼き魚やホットドッグですよ。山城さんも一つ如何ですか?」

手に大量の食べ物を持った赤城が近づいてきた。
その姿を見てしんみりとしていた雰囲気は吹き飛んだ。
山城は絶句し、比叡は苦笑いを浮かべた。

「私達が沈んだ場所に行くとどうしても気持ちも沈みがちになりますからね。それより美味しい物でも食べて笑いましょうよ。」

「あんたねえ…。」

比叡達はその赤城の心遣いが嬉しかった。
大量の食べ物持つ姿が全てを台無しにしていたが。
赤城も比叡達の隣に腰掛けた。

「それじゃ一つもらうね。」

「はいどうぞ比叡さん。」

「あっ、美味しい。なんて魚?」

「さあ?美味しそうだから買っただけなので詳細までは。」

「あんたそんなの買ったの(汗)。」

340: 635 :2019/03/01(金) 20:55:08 HOST:p1898232-ipbf412souka.saitama.ocn.ne.jp

じゃれ合いながら食べる三人。
唐突に赤城は話始めた。

「そうそう比叡さん。」

「何?」

「比叡さんは艦娘になってから鉄底海峡を越えましたよね?」

「え?」

「山城さんはスリガオ。」

「ん?」

「武蔵さんはレイテ、瑞鶴さんはエンガノ、長門さんのビキニ環礁に私のミッドウェー…。」

指を折りながら深海棲艦との戦いを数える。

「みんな提督のご采配の元で突破して来た戦いです。本来ならあり得る筈のない…。」

赤城は立ち上がり遠くを見つめたその瞳に映るのは無敵艦隊一航艦の壊滅したミッドウェーかそれとも連合艦隊機動部隊落日のエンガノか。

「でも私達は確かに越えて来たんです。再現されたあの戦争を。」

赤城は比叡と山城を見下ろす。

「その戦争を戦い抜き私達は生きてここにいるんですよ?かつての鋼鉄の艦体じゃないんです。名一杯人生を楽しまなくちゃ損ですよ?」

赤城はにこりと笑った。

「かつての戦争に思いを馳せるのも良いでしょう。感傷に浸るのも良いでしょう。でも引っ張られちゃダメですよ。私達は生きているんですから。」

比叡と山城はぽかんと口を開けていた。

「「赤城がそんなこというなんて…。」」

「酷い!?私をどんな目で見てたんですか!?」

「「妖怪食っちゃ寝?」」

「仕事はちゃんとやりますし、食っちゃ寝ばかりじゃないですよ!?待ちなさい!!妖怪食っちゃ寝を訂正しなさい!!」


逃げる比叡に山城、追う赤城。
その姿を物影から見守る二人の人影があった。

「御心配ですか?」

「朕にとっては須く我が子同然であるからな。」

「彼女達艦娘も陛下の前では『陛下の赤子』ですか…」

「何度言ったら分かるのだ柏木よ。朕はもう陛下ではないと常日頃から言っているだろう。」

「はいはい分かりました。日差し強いですから日影で話をしましょう。」

そんな話をしながら二人は移動を始めた。
柏木がふと振り返ると戦艦比叡の甲板には波音と海鳥の鳴き声だけが響き、光る海の水面はどこまでも優しかった。

(彼女達が望んでいたのはこんな海だったのかな?)

「柏木よ、置いていくぞ。」

「待って下さいよ!陛下ぁ!」

彼の方を追いかける柏木の上にはどこまでも澄んだ青空が広がっていた。



何処かでの会話

『おーい、また海軍さんの艦が迎えに来たぞ!』

『海軍さんが迎えに来てくれるようになるとは日本も変わったのだな。』

『良い方向へ変わっているのだと良いのだが。』

『おい!あの艦、御召艦の比叡じゃないか!?沈んでいなかったのか!?』

『陛下もいらっしゃるぞ!亡くなられたと聞いていたが生きてらっしゃたのか…。』

『まさか陛下自ら迎えに来て下さるとは…。』

『おいお前、笑いながら泣くとは酷い顔だぞ…。』

『お前も似たようなもんだ馬鹿野郎…。』

341: 635 :2019/03/01(金) 20:56:44 HOST:p1898232-ipbf412souka.saitama.ocn.ne.jp
以上になります。
転載はご自由にどうぞ。

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最終更新:2019年03月02日 17:43