674:ホワイトベアー:2022/08/11(木) 20:31:04 HOST:157-14-234-250.tokyo.fdn.vectant.ne.jp
日米枢軸ルート 第15話 改訂版

鴨緑江にて守備を固めていたロシア軍第1極東軍団三万を撃破し、清国との交渉により遼東半島の軍事通行権を確保したことで満州地域への確固たる足掛かりを確保した連合軍司令部は当初の計画通り次の目標を清国東北部の満州にある都市であり、東清鉄道が走る交通の要衝でもある遼陽とした。

この連合軍司令部の方針維持を受けて、鴨緑江会戦を行った第1軍に朝鮮半島にて待機していた第4軍および第5軍を合流させて編成された第1軍集団が朝鮮半島側から北上を開始。
遼東半島に上陸した第2軍および第3軍からなる第2軍集団が大石橋などでロシア軍と戦闘を繰り返しつつ遼東半島から遼陽に向けて進軍を始め、その後にシベリア第2軍団が展開していた柝木城を攻略、11月の中頃には第1軍集団と第2軍集団は遼陽を半包囲下においた。

また、日本軍は地上部隊の満州侵攻と同時並行して航空部隊による阻止攻撃も開始していき、92式戦略爆撃機や91式戦略戦略爆撃機などの大型爆撃機が多数配備されている第8海軍航空軍などの戦略爆撃部隊がその足の長さを活かして極東ロシアに存在するシベリア鉄道等のインフラや資材集積所などへの空爆を実施し始めていく。

こうした日本軍による後方の交通インフラや物資集積所への空爆はロシア軍上層部にとって極めて頭の痛い問題であった。
元々、ロシア軍が開戦前に計画していた対日戦戦略は太平洋艦隊の存在によって日米連合軍の兵站線に圧力を加えつつ、朝鮮から北上するであろう日米連合軍地上部隊を引き付けながら満州の奥地まで誘因、兵站線が伸びきったところを本国から来た援軍と合わせて圧倒的な兵力差で押しつぶすといったものであった。

この戦略はシベリア鉄道による安定的な補給が行われる事が大前提であり、また、満州よりも遥か後方に位置しているシベリア鉄道が大規模な攻撃にさらされることなどあり得るはずがないので前提条件が覆された場合の想定なんぞ必要なく、存在もしていなかった。

しかし、実際に蓋を開けてみれば、日本軍が航空戦力という従来の軍事学を根底からひっくり返す常識外の戦力を用いてシベリア鉄道を無防備な空から攻撃を仕掛けてくるという技術的奇襲によって日米連合軍よりもロシア軍の方が先に戦略構想は根底からひっくり返されてしまう。
日本軍航空隊による航空阻止攻撃に対して碌な防空戦力や航空戦力を有していないロシア軍にはなすすべがなく、空から一方的に攻撃を加えて去っていく日本軍の航空部隊を指を加えて眺める事しか出来ないために、彼らの補給状況は日に日に悪化していった。

ロシア帝国陸軍は満州を含めた極東方面に大軍を展開している。だが、この大軍を戦力として運用するには莫大な物資や装備が必要であり、それらがなければどれだけの大軍を集めようとも張り子の虎である。
今しばらくは極東方面に貯蔵されている物資だけでも問題ないが、それだって何時までも持つわけではない。補給線が脅かされている今、彼らにとって時間は敵でしかなかった。

対する日米連合軍は早々に太平洋方面のロシア海軍水上戦力を無力化したことで日本本土から大陸までの兵站線を確立しており、さらに朝鮮半島や遼東半島といった大陸への確固たる足場を確保している。

時間が経つごとにロシア軍は先細り、連合軍は強化されていくのは子供でもわかる事実であるが、その一方でまともに戦っても勝てないことはこれまでの戦闘が証明しており、ロシア満州総軍司令官を務めるアレクセイ・クロパトキン大将としてはなるべく満州奥地に日米連合軍を誘引してから決戦に挑むことを望んでいた。

だが、対外輸出量の約7割から6割を占める黒海から地中海を経由する貿易ルートが日本軍によって海上封鎖されていることによる経済の悪化や、開戦から続く敗北の報の数による国債額の低下を覆すために早急なる勝利を望むサンクトペテルブルクの強い意向によりこれ以上の撤退は認められず、
ロシア軍は遼陽に向けて進軍する日米連合軍を迎撃する為に極東第1軍団の残存部隊と同軍第2、第3軍団、シベリア第1軍団、シベリア第2軍団の5個軍団という莫大な兵力を遼陽へ集結させていた。

ロシア軍が遼陽において決戦を意図していることは連合軍も時間をおかずに察知することになるが、この遼陽に集結する大戦力を一気に撃滅することで早々に戦争に蹴りを付けるために、連合軍はあえてロシア軍の思惑に乗った。

ロシア側の兵力の集結の完了が確認されると連合軍は、3個機甲師団と3個機械化歩兵師団を中核とした機甲部隊である第4軍と第1空挺軍を持って奉天と遼陽を結ぶ連絡線を遮断するために行動を開始。
同時に、日本陸海軍の航空戦力による空襲で東清鉄道を遮断させることにも成功する。

第4軍と第1空挺軍、日本軍航空部隊による後方遮断の成功を確認した連合軍は11月28日明朝より遼陽への本格的な攻撃を開始。

675:ホワイトベアー:2022/08/11(木) 20:31:46 HOST:157-14-234-250.tokyo.fdn.vectant.ne.jp
連合軍工兵隊により設営されていた野戦飛行場に待機していた攻撃機群を動員して遼陽およびその近郊に展開しているロシア軍に大規模な爆撃を敢行、特に砲兵陣地には徹底した爆撃を実施する。
航空部隊による爆撃が終了すると第1軍集団及び第2軍集団に属している砲兵隊による集中砲火が開始され、第は203mm榴弾砲、小は105mm榴弾砲まで大小様々な火砲による容赦のない砲撃がロシア軍外周陣地に叩きつけられていった。
砲兵隊による砲撃は三時間ほど継続され、その後、第1軍集団および第2軍集団は第1線陣地を突破するべく戦線全域で攻撃を開始する。

空爆と砲撃を凌いだロシア軍の第1線陣地守備部隊はこれを食い止めるべく必死に抵抗するものの、93式戦闘攻撃機や砲兵隊の支援の下に、史実M3中戦車を原型として開発された1式中戦車を先陣に連続的な波状攻撃を実施する日米連合軍を、航空戦力や機甲戦力は愚か満足な対空兵器や対戦車兵器すらないロシア軍が食い止められるはずがない。
さらに、本来なら第1線陣地からの要請に応じて予備部隊を送り込むことになっていた第2線陣地や遼陽に配置されていた部隊は日本軍航空部隊の空爆や連合軍砲兵隊による砲撃などの阻止攻撃やコマンド部隊による破壊工作により有機的に動くことが出来なかったために援軍も満足に受けられず、日米連合軍は次々と防衛線の突破、11月29日の未明までには連合軍は大した損害も出さずに第1線陣地は完全に制圧した。

第1線陣地を陥落させた後も連合軍の猛攻は続き、12月1日にはロシア軍が護りを固めていた首山堡陣地がアメリカ海兵隊第1海兵師団による師団規模での夜襲により陥落させられ、その他の戦場でも日米連合軍は戦況を優位に進めていった

日米連合軍の猛攻と首山堡陣地の陥落を受けてロシア満州総軍司令官クロパトキン大将は奉天への撤退を決断。
ロシア軍は崩壊しかかっていた第2線陣地の部隊やいまだ無傷であった第3線陣地の兵力を遼陽に集結させ、予備兵力であったが故にいまだ大した被害を受けていない極東第2軍団を殿とし、その他の残存部隊は奉天に退却するために連合軍第4軍および第1空挺軍に対して攻撃を敢行した。

これに対して連合軍第4軍と第1空挺軍は航空部隊の支援の下に全力で迎撃、また第1軍集団および第2軍集団からなる連合軍主力はロシア満州総軍主力を挟撃するために遼陽に籠るロシア軍に攻撃を強めていく。
しかし、政治的な制限から遼陽郊外に築かれていた陣地とは違いロシア軍の籠る遼陽には火力を十分に活かす事ができず、さらにクロパトキン大将が指揮する極東第2軍団が予想を上回る抵抗を見せた事で連合軍主力は少なくない時間を浪費させられ、第4軍と第1空挺軍は数の差や犠牲を前提としたロシア軍の強引な攻勢により所々で突破を許してしまった。

それでも機械化部隊による機動防御や航空攻撃も有効に作用し、結果として連合軍を突破して奉天に退却できたのは遼陽に展開していたうちの約3割、20万人ほどでしかなく、
連合軍主力の攻撃を受け止めることになった極東第2軍団はクロパトキン大将と共に決死の抵抗をおこなった結果、部隊の撤退の時間を稼いだ代償に軍団に所属していた将兵達はほぼ全てが戦死するか捕虜になってしまうという文字通り壊滅的な損害を出し。その他の多くの部隊も日米により無力化された結果、ロシア軍はこの戦いによって40万人近い膨大な兵力を失ってしまう。
また、何とか奉天に到達できた部隊も退却に際して大半の装備や物資を放棄せざるをえず、多くの物資や装備も喪失し、ロシア史上最大規模の大敗北を味わうことになった。

これだけでも十分に大損害であるが、しかし、ロシア帝国がこの敗北によって被った被害は軍事的なものだけに留まることはなかった。

アジア方面での主力が決戦で敗北し大損害を出したという一大ニュースは今までの敗北とともにたちまち全世界に広まる事になり、金融市場でのロシア国債は大暴落を招いてしまったのだ。
ただでさえ開戦後に日本海軍が実施する海上封鎖によって総輸出額の7割から6割を生みだしているダーダネルス海峡を経由した対外貿易が不可能になったことで大きなダメージを負っていたロシア経済にとって国債の暴落は致命傷に近い打撃でもあり、ロシアは戦費の確保が困難になるだけでなく戦争経済そのものが崩壊一歩手前まで追い込まれる。

また、大敗北の報告そのものもロシア帝国にダメージを与えていく。
ロシア政府はこの戦いでの大敗を情報統制により国内では隠そうとするも、しかし、レーニンを初めとした共産主義者や日本軍特務機関に利用された親皇帝穏健派を通して遼陽会戦の大敗北は国民にも知れ渡ってしまい、悪化し続ける国内の経済と大敗北の報によりロシア国内では厭戦感情がすこしずつではあるが着実に広まる契機となってしまったのだ。

676:ホワイトベアー:2022/08/11(木) 20:32:16 HOST:157-14-234-250.tokyo.fdn.vectant.ne.jp
当然、サンクトペテルブルクでもこうした国債の暴落や国内経済の悪化、厭戦感情の拡大といった問題は非常に重く受け止められるものの、彼らにできることで即座に効果を期待できる事は戦前に独断専行で日米との関係を悪化させ、開戦後も碌な戦果を上げずに醜態をさらし続ける極東総督府とエヴゲーエイ・アレクセーエフに全ての責任を負わせることで批判の先を逸らすことぐらいしかなく、彼は今までの全ての責任を背負わされたことで全ての権限とその地位を剥奪され、その上で国家反逆罪とサボタージュの罪など複数の罪状を被せられて拘禁されることになる。

なお、本来ならロシア満州総軍司令官として開戦時から日米連合軍との戦いを指揮していたアレクセイ・クロパトキン大将もその責任を追及させる立場にあったが、彼は撤退するロシア満州総軍主力への追撃を防ぐために遼陽に残った極東第2軍団を指揮して殿戦に参加、最終的には連合軍の捕虜になってしまったものの、結果として約20万近い友軍が奉天まで撤退する時間を稼いだことや司令部を巡る戦闘で自身もライフルをもって連合軍兵士と戦ったことなどが連合軍と共にいた各国の従軍記者を通して諸外国に広く知れわたっていたことで政治的に責任の追及が難しかったため、公的に彼の責任が追及させることはなかった。
それゆえにアレクセーエフが1人で全ての責任を背負わされ、彼への処置が過激になってしまったが。

極東総督を更迭し、ロシア満州総軍司令官が捕虜になったことで東アジア方面における司令官を失うことになったロシア側はその後任としてオスカル・グリッペンベルク大将を任命、なんとしても連合軍に反撃をくわえて戦争の主導権を取り戻す為に戦力の再編を推し進ていく。

対する連合軍であるが、政治的な理由もあって遼陽市街地への火力投射を制限された事もあり、圧倒的な火力を活かせずに市街地戦を行わざるを得なかった事もあって彼らも決して少なくない被害を出したものの、その数は死傷者合わせて4万程度とロシア軍と比べると圧倒的に少なく、追撃は容易と考えられた。
しかし、後方遮断任務に当たっていた第4軍と第1空挺軍の疲弊や連合軍支配地域に逃れてくる清国難民などへの対処、それに伴う兵站線への不安など幾つかの事情により進軍を中止せざるを得ず、ロシア軍に戦力の再編を行う余裕を与えてしまう。

677:ホワイトベアー:2022/08/11(木) 20:34:26 HOST:157-14-234-250.tokyo.fdn.vectant.ne.jp
以上になります。
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最終更新:2023年07月21日 00:42