395: リラックス :2019/06/20(木) 21:27:43 HOST:119-228-10-186f1.hyg1.eonet.ne.jp
よし、投下



ラ・パルマ島から発生した大災害、同時期に発生した日米戦争、更に後にアメリカ風邪と呼ばれる疫病の発生によってアメリカ合衆国という史実における覇権国家が崩壊し、日英独による世界秩序が曲がりなりにも成立し、世界が一応の安定を取り戻して十年。

世界は新たな混乱に巻き込まれていた。

事の始まりは1950年代も半ばを過ぎ、日英独それぞれの勢力圏内も(程度の違いこそあれ)ある程度落ち着きを取り戻した頃……夢幻会の会合で史実以上の災害に対応しつつ、時に核や軍事力に偏重しかねない世論を宥めつつ、時に暴走する外国を適切な武力で殴りつけて武威を示しつつ、

勢力圏の国々を成長させながら健全な軍備と国家経営が軌道に乗りつつあった頃、世界各地で突如として謎の遺跡が発見されるようになったのである。

その遺跡は推定される年代も様式もマチマチで、海を隔てた異なる大陸で発見された遺跡で同一の言語と思しき文字が発見されたこともあれば、逆に小川一つ挟んで様式も推測される年代も全く異なる遺跡が発見されるというケースもあった。

そして、後に天の涙と呼ばれる事件が発生したのは、各国がそうした遺跡から発見された資料や文献の解析についてある程度まとめたタイミングだった。

天の涙、あらゆる場所に小規模な隕石らしき物が降り注ぐ(本土にも四国と九州に一発ずつの落下が観測された)というその事件は、直接の被害こそ(隕石の落下が起きたにしては、だが)限定的で済んだのだが、この被害は始まりに過ぎなかった。

隕石の同時多発的な大量落下という混乱から開けて、各国が被害確認と隕石落下箇所付近の調査に派遣された部隊から思いもよらぬ報告が挙げられる。

見たこともない謎の生命体が多数確認されたというのである。

一部(というか遭遇した部隊のほとんど)の部隊はこの未確認生物と実際に交戦し、死骸や生捕りにされた個体はサンプルとして持ち帰られ、調査が行われた。

それは日本も同じであり、調査の結果、未確認生物は既存の生命体にはあり得ないアデニン、チミン、グアニン、シトシン、ウラシル以外の多数の塩基をリボ核酸 (RNA) やデオキシリボ核酸 (DNA) に保有していることが確認された。

これを皮切りに、というか同時に、世界各地で隕石の落下地点付近を中心に未確認生物の出現情報が多数報告され、『宇宙からの生命体』と混乱を引き起こした。

なお、そうした未確認生物の一体の姿形を夢幻会関係者(というか転生者)が確認した時には別の意味で驚きしかなかったという。

「これ、チョコボじゃね……」

そう、中には明らかに(転生者が元ネタを)知っている魔物と思しき姿が含まれていたのである。

こうした事例はそれだけに止まらず、時間を経るにつれ日本の妖怪としか思えない姿の個体や世界中に存在する神話や伝承で語られる空想上の生物らしき物が各地で確認されるようになるまで時間はかからなかった。

更に追い討ちを……というより正確には時間軸的に考えてこちらが先なのだが、例の遺跡の調査結果を解析して得られた情報から、ある意味で転生者泣かせな、ある意味で転生者が踊って喜ぶ事実が明らかになる。

即ち……魔法と呼ぶべき力が存在している可能性が浮上したのである。

尤も、日本国内の遺跡から得られた資料によると魔法とは過去に魔女と呼ばれる存在だけが使用できる特別な力であり、そのままでは一般人には使用が無理であることも判明するが、魔女にのみ許された奇跡を条件を満たすことで誰にでも扱える技術として再現した理論までも発見されたことにより、(色々な意味で)注目を集め、(主に転生者のある一派の後押しもあって)その理論を解析の末に、遂に再現に成功させることになる。

ただし、再現に成功したその魔法は効果の高い物ほど事前の準備が大変になり、費用対効果や威力としては(回復魔法は別として)対魔物用の攻撃手段として見ても一般人に簡単に準備して使用出来る程度の魔法では大した効果は期待出来なかった。

子供の小遣い程度の予算で準備可能な小さな火の玉を一つ飛ばす魔法で得られる攻撃力の期待値より、そこらにある石でもスリングショットを用いて投げつけた方が高いといった具合だ。

こうした事情から魔法万能という風潮にならなかった。

だとしても、銃弾や打撃に極端に強い耐性を持つ種族を相手にした場合の備えや、怪我を負った場合の応急処置などには有用であることは確かであり、これ以降、対魔物を主任務とする専門部隊だけでなく通常の警備部隊等にも徐々に広まって行くことになる。

396: リラックス :2019/06/20(木) 21:28:35 HOST:119-228-10-186f1.hyg1.eonet.ne.jp
「それなんて擬似魔法」

「正確には『我々転生者の知識でイメージすると擬似魔法と呼ぶと分かりやすい物』ですがね…… これでジャンクションシステムも再現出来ればデメリットを考慮しても心強かったのかもしれませんが……」

「精霊らしき物はいないではないがガーディアンフォースとしての再現は遺跡の中の資料をどれだけ解析しても手がかりになりそうな表現すら見つかってないし、多分その辺りは別物っぽいからな。
ここから発展させて類似の物を再現出来る可能性は無いでは無いが、少なくとも十年では無理だと思うぞ。それより無人兵器と飛空挺だろJK」

ザワザワザワザワ、と心なしかいつもより大きいざわめきも、今回ばかりは仕方ないかと嶋田は思う。

「まあ、例の……擬似魔法ではないですが、魔導技術の確立のおかげで放水車や火炎放射器といった装備を標準装備として大量配備せずに済むようになったのは良かったのでは?」

「特定の属性を用いないとほとんどダメージが通らない個体や、物理攻撃がほぼ効かない個体というのは確認されていますからね…… 初期の妖怪による被害は酷いものでしたが、巡回部隊にそうした装備を大量配備せずとも解決の目処が立ったのは我々としても助かりました」

例の涙が落下した四国や九州を中心に魔物に対する被害は軍の努力の甲斐もあって徐々に減少傾向にある物の、備えが十分で無かった頃に壊滅状態に近い被害を被った村落も少なくなく、国内の流通にも一時かなりの悪影響が発生していた。

そして、常に一定の戦力と装備を備えた部隊を国内や勢力圏に巡回させて討伐を行う必要があり、少なくない負担となっていた為に、必要な追加装備に割く予算が抑えられたのは大きかった。

「必要は発明の母と言うが、予め準備しておいた物を任意のタイミングで瞬時に発動出来る仕組みが早期に完成したおかげで訓練と実戦投入がスムーズに行えるようになったな」

「攻撃と回復に関してはそれで良いんですが、防御魔法に関しては効果時間や回数切れに気づかず戦い続けてしまうという問題が発生しているのが課題ですね」

「任意のタイミング、つまり特定の条件で発動することが可能な以上、危なくなった時にオートで発動することも理論上は可能とのことですから、その辺りの改良は地道に進めるしかないでしょう」

「発動中は恒常的にダメージを一定量軽減する魔法、一定のダメージを受けるまでダメージを防ぎ続ける魔法、一定回数まで割合でダメージを減らす魔法、装備の耐久性を上げる魔法を必要なタイミングで組み合わせて発動する……成功すれば回復魔法による応急処置を合わせて、兵士の生存率を大幅に向上させることが出来るだろう。研究する価値は充分にあるな」

病気はともかく、止血程度なら戦闘中の片手間でも充分に行えることから、衛生兵のみでなく一般兵に至るまでこの擬似魔法を使用出来るよう教育を行うことが検討されていた。

研究がもう少し進み、コストを抑えられれば実現の目処が立つところまで漕ぎ着けているのだから驚きだ。

「各地に存在する遺跡とそこから発掘された資料の調査や解析を進め、その辺りの改良に努めていますが、同時により効果の高い魔法をより容易に使用出来るよう改良出来ないかも研究を進めています」

「仮に強力な防御と火力が低コストで実現し、今後空を飛んだり高速移動が可能な魔導技術が完成すれば、歩兵の戦闘力がとんでもないことになりそうだな」

「人間大のACまたはMS?」

「というかEDFじゃないか?」

「今ですら科学的にアプローチが可能だったりプロセスの解明が出来たりして、改良や応用が成功してるからなぁ…… 効果向上の度合い次第では否定出来ないのが恐ろしい」

「それと各地で採掘されるようになった謎の結晶に関して記された遺跡も発見され、これを増幅器というか媒体として用いることで魔法の効果を高めたり、遠隔発動や自動発動といったことも行えるようになるのではないかとのことです」

色々と夢はあるが常識が音を立ててブレイクしていくような報告に、嶋田は軽く頭痛を覚えた。

「結晶ってマテリ○か魔○か…… 8じゃなかったのかよ」

「色々と節操が無い」

「しかし、魔導技術の解明が進むのはともかく、それらがこのまま民間にまで普及してしまうのは問題があると思います」

警察上層部の立場にある者がそう発言した。

「治安維持の観点から言わせてもらえば、魔導技術を使った犯罪が増えた上に、何時それを悪用した大規模テロが発生するか常に警戒を強いられています」

他の警察関係者もそう疲れたような口調でこぼす。

397: リラックス :2019/06/20(木) 21:29:59 HOST:119-228-10-186f1.hyg1.eonet.ne.jp
「リリカ○で○ジカルな作品で魔導師ランクというのが身分制度だ階級社会だ何だとアンチ作品で良く批難されていたが……」

「魔法を使える奴を優遇して自発的に名乗り出させる背景を整えることで、誰がどのくらい魔法を使えるか把握しやすくする制度は合理的と言えば合理的と言えますね。
そうしたことが全くわからない状態で社会に不満を持った魔導師に隠れてコソコソやられる危険性を考えると」

「優秀な魔導師ほど優遇して魔導師という戦力を管理局で抱え込むようにするのも魔導師対策としては間違ってない、というかむしろ正しいか。不満ゼロ、支持率十割とかあり得ん訳だし、そういうのが問題起こした時に魔導師として優秀な人才を抱え込んでおけば対処もしやすくなると」

「ヘイトコントロールというか魔導師を優遇することを納得させる根拠として魔導師が必要となる環境を整え、魔導師の就職先が自然と確保されるようにして一番社会に不満を抱かれたくない層の不満を抑える体制を作るのも決して間違っていなかったと……
ただ、それが行き過ぎて優秀な魔導師が相当数いないとどうにもならないような社会になった挙句に、『自然に産まれる魔導師じゃ足りないから人工的に作って補おう』という発想まで逝ったのがアレなだけで」

「我々の言う魔導技術が誰にでも使用可能な技術である以上、参考にするのは難しいですし、それは一度置いておきましょう。
英国やドイツはどのような状況ですか?」

「ドイツでは個人の才能に左右されるタイプの魔法について記された遺跡が主に発見され、才能のある者を集めて魔導部隊の設立が進められているそうです」

「寄りによってというべきかイメージ通りというべきか…… ドイツの魔法技術は世界一ぃぃぃ!!とならんだろうな」

「英国では大規模魔法についての遺跡が確認されているそうですが、そればかりでは手間がかかり過ぎて不便と我が国と情報交換を行いたいとの打診があります」

「何がどう役に立つかわからない以上、情報交換は吝かではありません。問題は如何にして我が方にとって有利な取引に持って行くか……、腕が鳴りますね」

クックック、と笑う辻に、嶋田は英国側の交渉担当に内心で冥福だけ祈っておくことにした。

「そういえば、とある一派が長期休暇を取って東北に行きたいと言ってるとのことでしたが……」

「幻想○探索だな?二次設定でなく原作準拠なソレがあったら、いや、どちらにしろあったとしてどうする気だと怒鳴りつけとけ」

そんな休暇を取る余裕があるなら俺が欲しいよ、と続いた嶋田のボヤきに、何かズレてる気がするがこの件に下手に触れるとヤバいと辻や近衛ですら脳内で警鐘を鳴らし、話題を戻すことにした。

「他にもマナだか龍脈だかライフストリームだか知らないが、未知のエネルギーの観測にも成功したそうだから、これを新しいエネルギーとして利用出来ないかという研究を開始したと報告が」

「無色の○ナ……○杯……この世全ての○……う、頭が」

「それ以上いけない。確か、擬似魔法を発動する際に利用しているエネルギーが何処かから何かの形で存在していないと可笑しいと魔導技術を研究してる方々が頭を抱えていたそうですが、これがそのエネルギーだとすれば謎が一つ解明される訳で、彼らのSAN値も回復しそうですね」

「謎が謎を呼んで別の意味で削れるんじゃないのか、というのは置いといて、仮にこれを新たなエネルギーとして利用出来れば凄いことだな」

「擬似魔法に物を移動させたり動かしたりする物があるということは、そのエネルギーが何処にでも恒常的に、かつ半無限に存在しているとすれば直接動力として使える可能性もある訳か」

仮にそれが実現すれば、そのエネルギーの変換機構と制御系さえ備えればモーターもエンジンも無しに走る自動車も夢でなくなるのである。

「そのエネルギーを変換し、別のエネルギーにすることが擬似魔法だとすれば、魔導技術はエネルギー変換技術と言える訳ですか」

「その変換プロセスの解明が進めば、冗談抜きでエンジンやモーターが必要なくなるかもしれんな」

「仮にPC言語のように専用の言語でプログラムを組むことによって変換プロセスを実行するとしたら…… 高度な科学なんだか魔法なんだかもう分からないな」

「PCを用いた擬似魔法の制御は実験室レベルでは成功したケースも既に確認されてんだよなぁ…… そのエネルギーを利用して恒常的に防御魔法や回復魔法を発動しておけるように出来るようになったらチートだな」

「怪我を治すだけでなく、疲労回復が出来るからと言って七十二時間働けますかを恒常的にやらされるのはごめん被りますよ」

ワイワイと雑談になりかけていたところに、冷や水を浴びせるように割と笑えないジョークを真顔で飛ばす嶋田に、辻~んですら軽く冷や汗を流した。

閑話休題。

398: リラックス :2019/06/20(木) 21:31:31 HOST:119-228-10-186f1.hyg1.eonet.ne.jp
「場合によってはエネルギー革命に繋がる訳ですか。仮にこれを星の力とすると、星の力を利用してエネルギーを売って利益を上げる……それなんて神○カンパニー」

「例の隕石にジェ○バが付着していて、魔物の正体はそれによって既存の生命体が変化したとか?いずれ星の防衛システムとしてウエポンが……」

「おいバカやめろ。どうせならサン○スターにしてくれよ」

「ただし2けも「それ以上いけない」

勢力圏や国内の遺跡には所謂魔法科学的な技術について主に記されていたこともあり、科学的な解析も当然試されていたが、日本古来の呪法や陰陽術なども一部は実際に発現したのみならず発動プロセスの解明に成功していることから、そうした面からのアプローチも行われていた。

「魔物自体の研究も行われていますが、個体差は大きいものの既存の生命体とは大きく異なる特性を持っているのは間違いなく、今後の研究に期待が持てそうです」

縁起でもない発言を振り払うように報告が再開される。

「生物学や医学の発展に繋がりそうですね」

「生物図鑑に魔物という項目が出来る日が来るとは」

「国内の物に限定して抜き出してまとめると妖怪大百科にもなるな」

「ん?このイラストを描いたのってもしかして……」

「既存の生命体と掛け合わせてペガサスやピポグリフを生み出せないかと考える輩は絶対に出るな、これ」

夢があると言えばそうなのだろうが、夢は夢のままであった方がいい物もあるんだなぁ、と嶋田が遠い目をしたかどうか、それは当人のみぞ知る。

「夢と言えばエルフとか獣耳とかは見つからなかったんだよな」

直後、(色々な意味で)ズッコけたのは確実だと思われるが。

「一応、ゴブリンの類似種やリザードマンの類、ディープワンの近似種らしき種族は発見されて、交流を持つことに成功したケースもあります。彼らから得られた技術や情報で有用な物もありますから、これはこれで良かったのでは?」

「魚面じゃないんだ!獣耳娘を一度見たかったんだ!」

「ライカンスロープっぽいのならいるから、そっちで我慢しろ。しかし、エルフならともかくゴブリンやリザードマンと交流を持つとは新しい……」

「ガチの獣人はちょっと……」

「ケモナーには本物の獣でイケるという猛者もいるらしいですから、これを機に転身でも図っては如何です?」

「いあ!いあ!」

一人、深淵に踏み込もうとしている奴がいるが、無視。

ちなみにディープワンの近似種についてだが、ダゴンやクトゥルフといった洒落にならない物はあくまでも当人たちにとっても御伽噺の中の存在であるそうだったが、ジョゴスという使い魔を使役する技術や海底資源の調査等に協力してもらうことで良好な関係を築くことに成功していた。

「アレだな。仮に地球の神話が影響していたとしても中途半端にというのが厄介というか」

「あくまでも見かけそれっぽいという程度に認識しておくべきでしょう。適用される部分もあるのが困りものですが」

このように魔物の目撃例が増える中で、会話をしたり子供と一緒に遊んでいる所を確認したという報告や漁に出た船がトラブルで漂流していた所を助けてもらったといったケースも一部には存在しており、例のディープワンの一族とはそうして助けてもらった漁師達の母港である漁村を通じて海産物の取引などを行うようになっていた所に国が介入して、正式に関係を築くまでに至っていた。

「彼らのように話が出来る種族がいるのは僥倖でした。我々にとって完全に未知な技術を保有していることもありますし、交流を持てるなら持つに越したことはない。早い内に前例が出来たことで、今後類似したケースが発生した場合にもスムーズに進むでしょう」

珍しく非常に真っ当な辻~んの発言に胸を撫で下ろす嶋田だったが、

「まあ、残念な気持ちはわかります。お嬢様学校にエルフや獣耳の少女達を招くことが出来ればさぞや素晴らしかったことでしょう」

やっぱりそのオチにたどり着くか、と内心でズッコけるのだった。

399: リラックス :2019/06/20(木) 21:32:13 HOST:119-228-10-186f1.hyg1.eonet.ne.jp
まあ、お嬢様学校云々はともかくとして人に無い知識や技術を持つ者達と交流を持つ利益は計り知れないものがあったし、今後交流を持てる種族が増える可能性が広がるのは悪いことでは無いだろう。

改善されたとはいえ、魔物による被害はゼロになった訳ではなく、むしろ今この時も全国で発生し続けて軍は対応に追われており、『魔物だから』で問答無用に敵認定して片端から排除、などとやっているような余裕は何処にも無かった。

話が通じ、更に帝国の法規を守り、かつ先方が望めば帝国の臣民として扱うのも吝かではない、というのが会合の総意だった。

「改めて言うまでもないことですが、経済活動や人命といった隕石や魔物によって生じた直接的、間接的な被害は我が国は比較的マシとはいえ膨大な物になります。
それを少しでも補填出来るというなら、交流を結べる種族とは積極的に交流していくべきです。
無論、契約や約束の意味を理解し、信用、或いは信頼出来る相手ならという条件は付きますが」

辻のこの言葉にも、今回ばかりは「また金か」と言う者はいない。

確かに得られた物も少なくないが、異変によって被った被害を考慮すれば収支は現時点でマイナスであり、これを少しでも穴埋め可能なように持って行かねばならない、というのは出席者全員の考えだった。

そうして話がひと段落して一息入れていた会合出席者達の元に、一つの知らせが入る。

「富士山麓の樹海から発見された新たに発見された遺跡の調査に向かったチームから報告がありました。今迄国内や勢力圏で発見された物とは大分毛色が異なるそうです」

「ほう……、まあ、何が見つかっても不思議ではないからな」

「しかし、違う体系の技術が見つかったのはむしろ喜ばしいのでは?」

「確かに、未だ何がどう役に立つかわからない面がありますから研究サンプルは多様なほど望ましいですね」

とんでもない物の発見報告にもある程度耐性のつきつつあったメンバーだが、資料を読み進める内に表情が引きつることになる。

遺跡と言われて思い浮かべるような物とかけ離れた現代的、または近未来的な建物にはもう慣れた。

しかし、そこで発見されたという代物に関するデータが問題だった。

一見すると原始的な武器のように見えるが銃器に似た構造の機関部や法珠のような物を持ち、剣、槍や短剣、弓といった形状のものもある。

傍には組成などは不明ながらも金属製の薬莢らしき物も。

更に施設の一部は未だ稼働中の物もあり、調査の結果次第だが施設のかなりの部分を再稼働させられるのではないかとも記されていた。

「「「魔○剣じゃねーかこれ!!」」」

彼らが叫んでしまったのもやんぬるかな。

あの作品の技術……というかあの作品の魔物がいるとなったら、それはあまりにも洒落になってない。

この後、全力で調査班のサポートと追加人員等の手配を行い、当該遺跡の調査に全力で乗り出すことになったのは言うまでもないが、彼らの胃と頭の痛みが緩和されるのは遺跡の調査の結果、彼らの知る元ネタ程に厄介な連中は存在していないことが判明してからである。

400: リラックス :2019/06/20(木) 21:33:51 HOST:119-228-10-186f1.hyg1.eonet.ne.jp
以上、蒸し暑さにやられた。後悔と反省は涼しくなった頃に

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最終更新:2019年07月09日 10:11