337: 名無しさん :2019/07/18(木) 18:20:35 HOST:175017014222.ppp-oct.au-hikari.ne.jp
なんか、ネタ帳整理してたら、大昔にここで投下した一発ネタの続きが出てきた
供養のつもりで投下しますね。

といっても大昔の1発ネタだから、覚えてる人も少なそうなんで、前の奴も一緒に

338: 名無しさん :2019/07/18(木) 18:21:29 HOST:175017014222.ppp-oct.au-hikari.ne.jp

 ―― 皇紀1936年、文永13年8月、博多にて ――――――

 無数の船が博多の港より出港する。それらはその装いや乗っている者たちから
まちがいなく軍船であると言える船舶たち。
すなわち、艦隊。
その1隻の甲板にて、2人の武者。それをのぞき見る女性たちがなにやら算術の勉強を始める中、
2人の武者たちは親しげに、そして周りから聞こえぬ小さな声で話をしている。

「「やっぱりおかしいよなぁ……」」
2人の武者の意見が一致した。

「なんで鎌倉時代の日本で元寇の報復攻撃として、5万の軍勢を大陸に送り込めるくらいの国力と統制が保たれているんだ!?」
どこぞの一つの歴史軸、世界線にて富永と呼ばれていた武者は己の中にある妖気をこの日ばかりは封印に成功し、かつての世にて
東条と呼ばれた武者と会話する。

「やっぱり原因はコレしか思いつかないんだよ」
そう言って東条が差し出したのは金色に輝く『和同開珎』。

「皇朝12銭……が、ここでは皇朝25銭になっている。その上、まだ廃止されていないばかりか当たり前のように貨幣経済が全国
一律で普及している。調べてみたところ、歌名を『辻』と表した貴族がかつていて、財政のすべてを担ったという文章が……」
「…………」
本来の時代であれば、今頃宋銭が出回っているハズだが、史実以上に大量の宋銭を国家主導で輸入しているはずなのに
なぜーか、宋銭そのものはほとんど流通せず、ほぼすべての宋銭を朝廷貨幣に改鋳しているという事実。
しかも大判金貨、金貨、大判銀貨、銀貨に銅貨、鐚銭、一部でアレだが、信用通貨で金・銀本位制的な貨幣体制という微妙に
古代中世を離れた近世的なそれになっている。

「この和同開珎の大判金貨は基本的に朝廷とそれが許した一部貴族だけが所有できる。金貨10枚でこの大判金貨1枚と交換できる。
同じように銀貨10枚で大判銀貨1枚と交換できると朝廷が宣言して100年近くたとうとしている。これにも歌名を『辻』と名乗るのが」
「……でもいないよなぁ……。探したけど、夢幻会……見つからなかったよなぁ……?」
「……いや、そうなんだよなぁ……。多分だけど夢幻会を組織できるほど人がいなかったとかか?」
「「…………」」
2人の答えを返す物は誰もいなかった……。

339: 名無しさん :2019/07/18(木) 18:22:02 HOST:175017014222.ppp-oct.au-hikari.ne.jp

  ―― 皇紀2468年、文化5年8月、長崎にて ――――

「旗を掲げよ!!」
そのかけ声とともにそれが掲げられる。国王陛下万歳! 我らの偉大なる王国の旗。
その名は、ユニオンフラッグ。

その日、その時、その場所でフェートン号は絶頂期にあった。
かつて、掲げられていたオランダの旗はうち捨てられ、代わりに翻るユニオンフラッグ。

「オランダの船を探せ! 焼き払え!」
その叫び声とともに、船員たちは勝利の高揚感に身を任せ――――

――――飛び散る轟音と水しぶきにその気が霧散する。


「なんとか間に合いましたか……」  「辻さん……」
「イヤ、ほんと。大変でしたよ。なぜーか皆さんは2度目、3度目程度の用ですが、私は何故か6回ぐらいこの世界線を
転生している気がします。しかも、夢幻会を組織できるだけの人員も資産も無いというないないづくし」
*1
ここ10年ほどの時間をかけてようやく再結成されるに至った、夢幻会といつもの会合の面々が長崎奉行所の一室にて
ラーメンを食べながら集まっていた。

「……まぁ、正直、我々が今更何をしなきゃいけないのかっていいたくなる程度にはこの日本は強い気がするんですけどね」
「まったくだ……」  「いえいえ、色々と爆弾自体は見えているじゃ無いですか」
辻が広げるのは一枚の地図。
日本人が見慣れた日本列島。だが、真の問題はその地図の縮尺。とある世界線の21世紀日本人が日本地図を見るときには
明らかに見慣れない物の数々が写っている。

「樺太、千島列島、アリューシャンにアラスカ、南洋群島にフィリピンルソン島とその周辺のいくつかの離島。台湾に中国福建省の
一部沿岸部に、従属国という名目で地図に載る高麗王国にハワイ王国。イギリスやフランス、アメリカと言った後の列強諸国が
いい加減ぶち切れそうです。これらの領域が全部日本の物で鎖国なんですからね」
歴史研究により、鎖国とは正確には中央統制に基づく管理貿易であった事がわかるようになったのだが、江戸時代これらの貿易政策を
外から検証した、つまりヨーロッパ人の学者が『鎖国』と体制と政策を分析したことが輸入された洋書より日本人にも伝わり
何時しか日本は『鎖国』を国法とすると勘違いに至る訳なのだが、ソレはともかく閉鎖的なシステムであることはまぁ、確かな訳で

「これらの島々の住民は必ずしも我々が知る『日本人』として同化してしまったわけではありません。むしろ江戸の封建制が
よりこれらの地域の住民の地域性を強化してる側面に着目せねばなりません。コレでは下手な中央集権改革なんて必ず凄惨な内戦を呼び込みます」
「なるほどなぁ……しかも列強は虎視眈々と狙っている訳で」  「列強じゃ無くても清王朝さんが福建省と台湾を殴りたくてうずうずしてますが」
「「「仕方ないね。建国期からの最大の敵だから」」」
日本乞師は途中まではうまくいったようだが、結局止められなかったようで。

340: 名無しさん :2019/07/18(木) 18:22:38 HOST:175017014222.ppp-oct.au-hikari.ne.jp
「でも、どうしてこうなった?」  
「平安時代に徐々に進行した国力の衰退や中央統制能力の壊滅を結果的にとはいえ辻さんをはじめとする先人たちが何とかして、モンゴル相手に
鎌倉武将がヒャッハーしまくったからでは?」
「あと、戦国武将もヒャッハーしてますね」  「豊臣もヒャッハーして本家は滅びましたが、羽柴の方は大名として海外利権で生きてますしね」
「つまり、史実より国力は強化されたが史実より火種も増えた?」
「史実の国力が1だとすれば、この時代の日本の国力は10程度にはなってるかと。ただし、史実の火種が1だとすれば、こっちの日本は20」
「国力の2倍じゃ無いですかー!」  「しかもなぜーか、大事な戦国時代、江戸時代前期には1人も転生者がいた痕跡がないんですよ!?」
「何者かの悪意を感じる」  「正直、今の結成されたばかりの夢幻会で何とかなる自信が無いんですが」
「でもやるしか無いのでは?」
結論:やるしか無い。

「とにかく今はフェートン号だ。とりあえず『完成度たけえなおい』で押さえているがどうする?」
「ごめんなさい、私達若者世代じゃないみたいなの」
「まぁ、わかるけどな!」  「お帰り願いましょう。その際、今回の件の謝罪を正式にイギリス本国に要求します」
「そこから、国際社会に入り込むと?」
とある世界線で近衛と呼ばれていた公家は替え玉を頼みつつ、そろそろ自分の出番と鼻息を荒くする。

「であるならば、朝廷の出番になるな」  「外交は朝廷主導で大丈夫ですか?」
「正直不安はあるし、幕府の方が最後はいい結果になる可能性も高い。だが、今のままでは史実の尊皇攘夷なんてなったとき、余計に暴発しそうでもある。
それに、史実でも幕府が朝廷に申し立てを行って大問題になっただろ? それなら最初から朝廷主導だ」
「では嶋田さん、あなたには是非とも老中あたりを目指して頂いて……」  「無理です!」

341: 名無しさん :2019/07/18(木) 18:23:16 HOST:175017014222.ppp-oct.au-hikari.ne.jp

  ―― 皇紀1955、永仁2年、鎌倉にて ――――

「では、それが『正統性』であると?」  「然り、それこそ天朝を支える『道徳的な正統性』の理念」」
「……それでは、徳政でも徳治ではない…………」
「不思議なり。本朝の方々は何時だって、徳という物を法家として語る――――」
――お堂。鎌倉仏教建築の最高峰と言うべき禅寺形式の寺の中にて、響く声。

「それが『朱子学』なり……」  「…………面白い話ではあったし、非常に論理的であると考える」
「それは良かった」
寧一山という元王朝すなわちモンゴル帝国より来航してきた高僧。彼らは日本に最初に朱子学を伝えたと
公的には語られている人物の一人。

「しかし、我らはソレを徳治であるとは決して思えん!!」
北条に連なる男の金切り声。

「……それでよろしいかと」
横から声をかけるのは一人の日本禅僧。

「筋は通っておりますが、しかし、筋が通り過ぎている。世は単純であり複雑でもある。故に現に理が屈する事となるでしょう。朱子学なる物は
まちがいなく、その手の類い出会えると言えるかと。筋が通り過ぎているが故に――――」
「――平行線ですな」
「ええ。出来れば是非とも……『法論』をお願いしたいのです。出来れば本朝と幕府、そして各地の神仏を招き
法論を監する明法道博士の下で。これは単なる法論では無く……『王と覇、徳と人』のあり方をも左右するでしょう」
北条に連なる物は『法論』と聞き、そして前代未聞の提案を聞き、驚きおののく。曰くそのようなことをやって良いのかと。
それに対し日本禅僧は語る。然りと。神と仏、法と人、そしてソレまでの道理をすべて兼ね備えた話をしよう。
それは、ただの法論では惜しいと。
寧一山は感じていた。この禅僧、ただならぬと。おそらくは自らの法論は敗北となるだろう。だが、不思議と真理を
求めていた真実の悟りを得る最初で最後の機会をついに達磨が与えたのかもしれない。ならば言葉は一つ。

「私も是非『法論』を願いたい――――」
「――っ」
北条に連なる物は悩む。だが、これを断る『道理』が無い。
北条の血筋は法と道理に基づく政を行う事を宿命づけられた物だ。北条の始まりは他の名門と称される武家と違い
正真正銘、「賊」、「土地の収奪者」の類いだ。そして、名だたる名家と違って小さすぎる。
そんな家が……悲しいことに1人の女と男が恋をした。
その瞬間より、宿命づけられた。一つ間違えば、『族滅』される立場であると。
何一つ抵抗することを許されず、弁解の機械を与えられること無く……。
そんな北条が、生き残る道はただ、どこまでも機械的に、法と道理に基づく政治を行うことだけであった。
だから――
    ――拒絶できない。
(もしも……北条が滅びる時があるとすれば……ひょっとしたらこの瞬間より――――)
――――後に多くの学者たちは口々に言う。この法論はただの仏教の宗派争いを超えていたと。
そこには、バジェットが、ルターが、カルヴァンがダイシーがジャックルソーが、西洋の偉大な法学者や神学者たちが。
墨家が、儒家が、兵家が、法家が、天道が、東洋の偉大なる英知の研鑽が、まちがいなくそこにはあったと。
ある法学者がこの法論は朝廷と幕府、そして各地の寺社寺院の代表者たちの前で行われた事で
『日本的法の支配』の理論的確立が始まったと評価した。過大評価であるという批判も多いが、この日、確かに何か変わったのかもしれない。
なぜならば、確かにその日より、日本人の徳のある政治とは長く研鑽された法に基づく政治であるという価値観は強化されていくのだから……。

342: 名無しさん :2019/07/18(木) 18:23:57 HOST:175017014222.ppp-oct.au-hikari.ne.jp

  ―― 西暦1811年、皇紀2471年、文化8年水戸藩邸にて ――――

「きましたね! 嶋田さん!」  「辻さん……なんでそんなに張り切っているんですかねぇ……」
「ゴローニン事件ですよ! ゴローニン! 近衛さんがフェートン号で忙しい状況、是非とも我々がお手伝いを……」
「そんなことしてる暇ありません!」(半ギレ
徳川斉脩こと、どこぞの世では嶋田と呼ばれていた男が、これまたどこぞの世で辻と呼ばれた元農民の士分たる
大久保今助と2人きりでこそこそ話をしている。
なお、話が難しく会話内容は理解できないが、それでも女中たちはよく、この2人を立派な参考書として算術の勉学によく使っている。
何でも算用の方式の違いでアツく法論が出来るほど立派な算術の参考書だそうだ。

「しかし、実際手を打たないと藩内部で、攘夷思想の高まりを止めることが出来なくなっていくでしょう。たちが悪いことに、この日本には
それが出来る。それだけの国力がある」
辻の言葉に反論したいが、全く出てこない。史実と称する世界線の徳川斉脩は若いときこそあの水戸黄門の再来などと賞されるほどの
英才を見せていたが、体が弱くまた臆病な性質を隠し持っていたためか、何時しか藩内部を統制する力に欠けていくことになる。
嶋田も、生まれたときよりそうはならないように注意してきたが、それでも肉体の問題というのは簡単には解消出来ないようで史実より
10年ちょっと程度長生きするぐらいだろうなと最近あきらめ始めていた頃だった。
まぁ、これからストレスでぜってぇ寿命縮むんですけどね!

「……転生先が水戸藩と気がついたときより半分覚悟してたんですけど……なんで史実より強いのに史実より難易度インフェルノなんですかねぇ」
「そりゃ、史実と比べ国力10倍、火種20倍って感じの世界線で水戸藩ですよ……? 水戸藩ですよ……。もう一度、水戸藩ですよ?」

343: 名無しさん :2019/07/18(木) 18:24:53 HOST:175017014222.ppp-oct.au-hikari.ne.jp

  ―― 同年、首里にて ――――

「とか何とか、あの2人はやってるんだろうなぁ…………。あいつらはいいよなぁ……なんだかんだで立場も安定しているし」
どこぞの世で(ry
牟田口という男であった魂をもつ『 琉 球 女 王 兼 沖 縄 藩 主 』尚コウはクソ熱い中華風の服を脱ぎ捨て、日本風の琉球伝統衣装へと着替えていく。
この国は昔から、中国の使者を歓待するときだけ都合良く中国からもらった服を着てアピールする癖があった。
というより、中華の奴らは気候風土も無視して、自分たちの服を他人にやたら着させようとするので、それに適応した結果とも言えなくも無かったり。
が、南国で文化的にも言語的にも日本に近い琉球で普段用いられているのは日本の着物に近い服である。

「はしたない」  「コレだから女は」
「神々は怒りを持って」  「はやく後継者を……」

これ見よがししに聞こえる声。立場の弱い女王。だが、そもそも琉球王国に『女王』の歴史は無い。王族の女性は大なり小なり神官として
神女として扱われるのが基本である。というか、何でか知らんが、本来尚コウは男性である。とある世界にて史実と呼ばれる世界線では。

「転生の神様とやらがいたらずいぶんと意地悪な存在に違いない」
史実世界線においても、尚コウは元々継承順位が低く、国王の地位に就くことなど本人は一切考えてなかっただろう。
だが、何の因果か、血筋や時の政治、そして継承権問題から彼が玉座に着くことになった。
この世界線でもそういった数々の要素から結果的に彼女が玉座に着くことになった。
とはいえ、基本的に望まれているのは中継ぎだ。複雑な政治的事情からある種中華風文化メッキを張り巡らせた琉球では珍しく
女性の国王が即位するなぞ、普通はあり得ないのだ。
このことは、史実世界線とは違ういくつかの違いに由来するところがある。
特に代表的な物が3つだ。

1.日本の朝廷由来の征西将軍府が沖縄に設置されている。
2.第1尚家がまだ生きてる。
3.史実においても日清両属の独立国家という訳わかんない琉球の国際環境がさらに分けわかんない沖縄藩とか言う立場になってる。

これらの要素を説明するには、まず史実の沖縄の歴史をちょっとだけ説明する必要がある。
簡潔に言えば、日本列島に最初にやってきた日本人というのは沖縄経由の南方ルートの南方系と北から樺太北海道伝いにやってきた北方系の混在だったと言うことだ。
そして、遺伝子調査からも、日本の稲作は主に南方ルートを通じてもたらされた事もわかっている。
つまり、沖縄経由で米作りが伝わった事になる。
が、ここで不思議なことに沖縄で米作りはおろか農業がスタートするのは日本本土で稲作が始まって少なく見積もっても数百年後の事だ。
実のところ、沖縄はあまり農業に適した土壌環境では無い。
そこがネックとなり農業技術の発達とともに、先進的な技術を持った人々が日本本土や大陸からやってくるまでは、
沿岸部に小さな交易の補給拠点がある程度であった。
それが徐々に小さいながらも都市と呼べる規模に成長し、独自の国家を形成するには数世紀の時間を必要とする。
が、それ以前の沖縄に政権と呼べる物が無かった訳では無い。
奈良時代の記録には沖縄方面から『租庸調』を納めにきた記録がある。
大和朝廷に沖縄からわざわざえっちらおっちら税金を納めに来たという話である。
その後、大和朝廷の沖縄政権は維持することが出来ず、事実上放棄された事から、沖縄で独自の国家的政治勢力が
長い時間をかけて、少しずつ形成されていく。
これが、『13世紀』に形成された『英祖王』を始祖とする最初の琉球王国であり、沖縄本島中南部とその周辺のいくつかの離島からなる国家であった。

……ところで、思い出して欲しいのは元寇って何時だっけ?
答え、『13世紀』。

344: 名無しさん :2019/07/18(木) 18:26:33 HOST:175017014222.ppp-oct.au-hikari.ne.jp

元寇って、確か九州以外にも攻めてるよね? アイヌが戦った記録とかもあるし。で、元寇の軍隊はどこから来たっけ? 大陸だよね?
で、長年大陸と日本本土の接触ルートって何だっけ? えっ? 南方ルート? …………あっ(察し)
実のところ、史実において英祖王朝は実際にモンゴル帝国相手に国家防衛戦争を遂行していたりしている。

で……この世界線の鎌倉武将はどこ相手にヒャッハーしてたっけ? あっ……(察し)

史実の沖縄において、英祖王朝は5代目で崩壊し、その後沖縄版戦国時代として知られる三山時代へと突入する。
いわゆる北山、中山、南山という沖縄本島の三大勢力と宮古八重山の離島地域のいくつかの勢力による群雄割拠の時代だ。
これに勝利を収めたのが元は南山の地方領主に過ぎなかった尚巴志である。
彼は交易利権や水利権を握り、ソレを元手に軍勢を編成し、地方領主に過ぎないはずの立場でありながら中山へと攻め入り
中山の玉座を簒奪。その後、かつての主君であった南山を滅ぼし、いわゆる琉球王国尚家第1王朝を形成するに至る。
まぁ、その後ごたごたがあったり権力闘争の果てに、金丸という出自不明の男――伝説では日本本土から来た技術者か大陸の知識階級――による
事実上のクーデターによって、尚家という王族一同は皆殺しにされちゃうのだが……。

「節刀殿下に改めて申し上げることは、夷狄に決して折れぬ意思を――――」
「――もう良い。私が聞きたいのはそういうことでは無いのだよ。阿児奈波守」
御簾の向こうに誰かいる。本来であれば、王国の国王として絶対的に振る舞えるはずの牟田口女王が王冠をかぶらず平伏している。

「南明(台湾・福建省沿岸部)の泰主――国王・皇帝、どちらでもあってどちらでも無い。政治的あれやこれやで出来上がった造語――より
南蛮人の勢力が拡張してる事への恐れの書状が届いた。徳川にこの書状を渡すのが普段の流れではあるが……」
歌に通じ、京の都の君臨する今代天子の兄に当たる皇族将軍。ここ100年ほど、それまでの公家と武家の境界線が曖昧な羽柴を初めとする
摂関将軍では無く、皇族将軍。

モンゴルにヒャッハーしたり戦国にヒャッハーしたりその他色々あった結果、琉球王国……いや沖縄は晴れて、多重服属構造を持ち服属返しを行う
面倒な国際的立ち位置を獲得し、地雷じみた玉座を持った存在となった。
琉球国王の国王としての立場は、清王朝と南明王朝の半冊封によって王位を保証された物だ。
と、同時に現実の沖縄領域の支配者・統治者としての実力と権力の保証は朝廷より派遣された征西将軍を通じた朝廷叙位による国司長官職、
江戸の幕府により認められる沖縄藩藩主としての国持大名としての立場。そして薩摩藩島津による(半従属)同盟による保証だ。
これだけでも複雑なのに、冊封という意味では上位であるはずの南明を清王朝から守る雄藩としての立場を持っているという訳のわからなさ。
挙げ句の果てに、ルソン島の旧南宋系藩王国の国王から朝貢もらっちゃうとか言う訳のわからなさ。まぁ、大陸や日本本土に行くより近いし、征西将軍がいるから
という理由でいつの間にか、ルソン島に存在するいくつかの藩王国の一種の宗主国という立場を通して
ルソン島が日本の帝国的領域に組み込まれており事実上、ルソン島が日本の物となっている訳だが。
ともあれ、そういった数々の政治的条件と第1王朝最後の国王の必死の政治的あがきによって、金丸のクーデターは事実上の王位簒奪には成功した物の
第1王朝に連なる王族を全員血祭り斬首祭にはならず、第2王朝こそ成立した物が、尚家第2王朝はその成立の瞬間より正統性に幾分かの瑕疵を
内包した存在となった。
彼らは圧政と良政を同時に遂行しなければならない宿命を背負う存在となった。

345: 名無しさん :2019/07/18(木) 18:27:06 HOST:175017014222.ppp-oct.au-hikari.ne.jp
琉球王国の繁栄ときらびやかなイメージは首府である首里を離れれば離れるほどそのメッキが剥がれるのが琉球王国だ。
だが、それも沖縄の地政学的状況やそもそも論として農業に不向きな土地柄故の問題もあったりする。
簡潔に言えば、この時代の税体系の基本は農業収入だ。だが、農業に不向きな沖縄で農業を行ったところで、機械労働力の無い時代、
今で言えば収入は1000円程度にしかならない。で、これを5割も税金に持って行かれれば、500円。これで1ヶ月生活しろと言われても無理である。
おまけに、当時の価値観的に琉球王府が首里の煌びやかなイメージを崩す事を許せるわけが無く、そしてそこに薩摩島津へと納める物が重なるという始末。
すなわち、二重課税の構造。
ただ、生きていくだけなら、海にでも出て魚を捕れば飢えることは無いはずなのに、水の問題から生産管理の難しい陸稲が主力農産物となってしまい
逆に飢餓を呼び込んでしまう始末。
こうした状況打開として史実で大々的に進められ、こちらの世界線でも進められたサトウキビ栽培は、
そもそもサトウキビはある意味で高麗人参の同類である。ぐいぐいと土地の栄養分を吸い取ってしまう。
おまけにこれまた管理がめんどくさいという手間暇付き。史実であれば、本土が一時期砂糖を大量に輸入し潤った物のそれに危機感を持った
幕府の砂糖自給政策によってこれまた破綻を迎えてしまうことになる。
というか、琉球は中継貿易で儲けていた国である。
ところが、中継貿易というのは要するに中抜きな訳で
中国商人&日本商人『『直接やりとりすれば安くなるんじゃね?』』
これに追い詰められることになる。
ついでに、オランダが東南アジアで暴れ回ったことで貿易網が破壊されてしまったという落ちがつく。

結果、史実の琉球王国の末期は、どこぞの将軍様がミサイルで納める金ぴか王朝よろしくな事になってしまっていた。

幸いな事にこの世界線はそこまで追い詰められていない。何故ならば――――

「――――オランダ人は、神州の威光なく、大東亜にこれ以上の覇を唱えることが出来ないと私は長年聞かされていたのだぞ?」
オランダが、史実で暴れる事が出来たのは……

「節刀殿下、オランダが大東亜にて暴れるには必ず必要な物がございます。軍資金です。それもできる限り本国に頼らぬ安定した
財源にございます。それを提供出来るのは本朝に他なりません。かの石見の銀山は遠く聞くポトシの銀山以外に比類する物なき大銀山。
彼らはソレを持って、大東亜にて商業の覇道を唱えたのです。しかれども、銀を必要とし欲すのは彼らだけにとどまりませぬ。
そもそも神州の銀はまず、神州で使われてこそにあります」
そう、史実において、オランダが暴れ回る事が出来たのはそういう背景があったから。そして――――

346: 名無しさん :2019/07/18(木) 18:27:48 HOST:175017014222.ppp-oct.au-hikari.ne.jp

「――幸い、我が国、我が藩は石高では無く部分的ではありますが、貫高による徴税を行っております。本朝の外に流出した銀の一部を
回収し、再び神州に還元出来る体制がそろっております。オランダ人が神州の威光無く大東亜にこれ以上の覇を唱えることが
出来ないのは紛れもない事実! 殿下が心配なさることはございません!」
史実より貨幣経済や金融工学が発達していたおかげで、金や銀の流出は史実に比べると抑えられていた。結果として
オランダの暴走は史実より小さくなっており、琉球も比較的大きめの遠征軍隊を有する国家として存在していた。
とはいえ、所詮は小国であり日本本国からの援軍を待つ2~3日ほど時間を稼げればいい程度の物だけど。
が、その結果、琉球王国の玉座にして沖縄藩藩主の座は地雷原の上でタップダンスを踊るような物になった。
軍隊と一定以上の食糧自給率を維持するには、圧政同然に地方を絞らねばならない。だが、下手に絞れば第1王朝の血筋を
誰かが担ぎ上げて簒奪の嵐が吹き荒れる。だが、軍隊と一定以上の食糧自給率を維持せねば、島津に飲み込まれ、何より
沖縄の役割たる、大陸権益の日本側守護者の地位を喪失する。
複雑で面倒な政治的事情を元に誕生した女性の国王。

だが、そこに、こんな面倒な玉座、出来れば適当な人間に押しつけたいと言う大勢の意図を感じてしまうのは自分の考えすぎであろうか。

「つまり……阿児奈波守は攘夷は可能であると? コレはおとう……陛下にいいことを伝えられそうだ」
「――! お待ちください! そのような意図を申したわけではございません!」
ああ、何故……なぜ、皇族将軍なのだ。中央で何が起きている。どういう政争が進んでいる。
参勤交代はこの世界線でもある。だが、史実より領域が広いためか、本州・四国・九州の大名は2年ごとに1年。
それ以外の地域は5年ごとに1年江戸にいればいいという事になっている。
最も中央の政治の情勢を知るためにも無理して、そして自らの藩の力を示すために財貨をばらまく参勤交代が
頻繁に行われており、幕政はもとより各地の藩を悩ませているのだが。
ちなみに、沖縄藩は、同時に琉球王国という立場もあるため、参勤交代とは別に通信使を送る。
中国からもらったせっかくの上等なクソ厚い服を着ろとのお達しだ。その方が、何というか将軍家に箔がつく。
外国を従えてる感が出て。

なお、本人は気がついていないが、本人のおかげで一つだけ進んだ点がある。
簡単に言えば、兵站の神様は元々はどこぞの21世紀世界線を生きた事があるわけで、当時の主流だったり
聞き慣れた『音楽』を未だ覚えているわけである。
津波で一つの国家を滅ぼした時代においても、重要なある音楽的素養を手に入れるにはある種当然の環境がそろっていた。
すなわち、『三拍子』。
日本古来の音楽には実は、三拍子が極端に存在しない。皆聞き慣れていないので三拍子の曲は無いに等しい。
基本的には二拍子、四拍子が主流である。そんな日本人に三拍子が広まったのは明治より日本に伝わった曲『エーデルワイス』が
原因だったりする。というか、アレが教育プログラム的に最適すぎて、エーデルワイスを学校などで教えたことで広まった訳である。
歴代の転生者たちはどうも音楽的能力が高くても、立場やその時の時代的状況からなかなか改善出来なかったようだが、彼女が
鼻歌交じりに歌ったことから、観覧の王朝音楽として発達していた琉球音階に三拍子が加わり、凄まじい勢いで音楽史的進歩を
進めており、そのため、音楽的に沖縄に行きたい人が増えてたりする部分があるが、ソレは直接は関係の無いお話。
要するに、王女様って、得だねというだけのお話。
なお、本人にとっては地獄な模様。この後兵站の神様、音楽の女神様となる。

347: 名無しさん :2019/07/18(木) 18:28:32 HOST:175017014222.ppp-oct.au-hikari.ne.jp

 ―― 同年、日本領域外、東南アジア、ボルネオ島北部、ブルネイ王国にて ――――
「うーむ。つまり、日本への布教は難しいか」  「そうと言わざる終えません。布教が出来ればそのよしみを通じて……」
「イギリスやその他、ヨーロッパ諸国への盾として活用できるかと思ったが、うまくいかんか」
ブルネイ王国。小さな東南アジアの国家であり、実態は事実上の都市国家である。
まぁ、さすがに町1個が国土のすべてでは無いが。
後に産油国として東南アジア屈指のお金持ち国家になるのだが、この時代は立場の弱い小国に過ぎない。
最も、この時代のブルネイの領土はどこぞの世界線21世紀より遙かに巨大で南方向へ広がっていたりする。

「あーイスラムの教えを広めて、その好意で守ってもらおうかなーって思ったけど無理カー」
「そもそも、イスラムに伝道師はおりませぬ。正統派な考え方ではそもそも皆が良きイスラム教徒であろうと努力し続ければ
必然的に理想の社会が訪れます。理想の社会を見た物がソレを何時しか学ぼうとするので、自然と広まるはずという物です」
「わかってるよ、そういう考え方が正統派だって」
イスラム教は実は、時代と地域によってはすっごくガバガバだ。近代になって、アンチヨーロッパこじらせたり、ナショナリズムこじらせたり
イスラム教の宗教改革運動こじらせたり色々こじらせた結果、どこぞの世界線21世紀へと繋がっていくことになる。
そもそもイスラム教では酒は規制されるべきだが、歴史上、イスラム教世界では他地域より遙かに医学が発展しており、
その原動力が実はラム酒を作る過程で出てきた酒粕を使った蒸留酒を転用した
消毒用アルコールといった所から、言うほど規制もクソもないという事がよくわかる話である。

「けどさぁ……現実に今、ヨーロッパ連中が軍艦で続々とやってきてる訳じゃん? 昔より遙かにパワーアップして
となると、どこぞの大国の庇護って奴が欲しい訳よ。こういうときに都合良く虎の威をなんたらになりそうなのって清と日本じゃん」
「確かに、清も、日本をぶん殴るために艦隊を整備してますな」  「最も殴り切れてないから事実上倭寇への抑止力で終わってるけど」
「最も倭寇の時代は終わってますが」  「「…………」」
ブルネイスルタン(イスラム系国王・日本史的に説明すると征夷大将軍)の青年にとって、今はまだいいが、100年先はどうなっているか
わからない状況に置かれていた。だからこそ、強くて信頼できて保護してもらえそうな国を探している。

348: 名無しさん :2019/07/18(木) 18:29:03 HOST:175017014222.ppp-oct.au-hikari.ne.jp

「ペナンをイギリスが手放す事はなさそうなんだな?」  
「そうですね。シャム王国から手に入れたペナン島を拠点にマレー半島への進出が本格的になっていってます」
「蛮族のほうは?」  「……知ってますでしょうに」
この時代のブルネイはボルネオ島中央部の原住民主体の戦闘民族の北進に押され、実のところ防衛ラインの死守に国力の大部分を
使っており、弱り始めていた。そこに現れるのがイギリスの冒険家であり、彼は言葉巧みにブルネイ人の軍隊を率いることになり
蛮族討伐に大きな成果を上げる。そして、時のブルネイ国王は彼の功績に対して小さいながらも領土を与えた。
これがサラワク王国という名前で世界史に刻まれた国家である。
が、そもそもこの人物はイギリスの冒険家な訳で、ついでに冒険家は野心家だった。
こうして、後詰めのイギリス軍が押し寄せてきて、サワラク王国との長きにわたる戦争に突入する。
結果として、ブルネイは国土の8割を喪失、残る国土を必死に守りながらジリジリと後退しさらに領土を失い、それを繰り返して、
ついにはイギリスの保護領となりどこぞの世界線ではWW2と呼ばれる時代、日本の占領を受ける事になるのだが、それは関係の無いお話。
つまり、この時代のブルネイはイギリスの冒険家が現れるちょっと前。蛮族の北進に苦しめられ、徐々に大きくなってきたイギリスの艦隊に
頭を悩ませる小国である。

「清を引き込むことは出来そう?」  「……冊封しますか?」
「……アッラー的に出来る?」  「…………まぁ、理屈的には出来るかと……シーアっぽくはなりますが」
「なら、冊封する?」
あーだこーだと議論が進むが冊封に関しては

「時期尚早って事でいいんだよね?」  「ですな。正直、大陸ならともかくこんな辺境にまで軍隊を出してくれる人たちでは……」
「って事はやっぱ日本かー。あっちの『大君(世俗皇帝)』は万が一の時、遅れてもいいから軍を出してくれそうかな?」
「それよりは、琉球国王のほうが軍隊を出してくれそうですぞ。あっちに朝貢してみては? ルソン島はまさにそんな感じで日本の領域に
組み込まれていきましたし」
「…………でも万の単位では出してこないって聞いたぞ」  「そもそも他国を助けるために万単位の軍勢を出す方が普通おかしいのでは?」
「そりゃそっか!」  「「HAHAHA」」
「「……はぁ…………」」
今日も明日もだいたいそんな感じで時間が過ぎていく南国の小王国であった。

349: 名無しさん :2019/07/18(木) 18:29:35 HOST:175017014222.ppp-oct.au-hikari.ne.jp

  ―― 同年、日本領域外、インド帝国にて ――
 あまり知られていない話がある。
アヘン戦争の勃発を望んだ勢力がいると言うことに。最もソレは典型的な陰謀論に飾られた秘密結社がどうとかこうとかでは無く――――

「――よって、東アジアの『政治的恐怖の世界閉鎖』を粉砕する必要があると本国により圧力をかけると言うことで」  「うむ」
インドを根城にするイギリス系貿易商から成り立つ無数のブルジョワジー。
彼らこそ、アヘン戦争を起こす原動力。そして、アヘン戦争の勃発を望み勃発に喝采を挙げた者たち。

「やっとこれで一息付けますな」
むろん彼らとしても、その後何が起きるのか、詳細なプランを立ててやっていたわけでは無い。極端な話、彼らは
売れるのであれば国すら売る。そういう存在に過ぎない。
困った事にさすがに国を売ったら逃げる暇無くぶっ殺されるか、高価すぎて買い手が付かないパターンが多いので売らないだけだ。
そして、彼らにとって一番困った事が――――

「――全く。オランダを笑えませんな」  「バブル……ですな」
イギリスがインド帝国を手に入れた原動力は何であったか? それは無数の植民地投資とソレを利用して拡張する貿易商のブルジョワジーたちだ。
植民地統治とは、搾り取ることだと思われがちだが、少なくともイギリス方式は違う。
彼らは、搾り取るのでは無く、与える。与えて与えて与えて、最後には抜け出せない金融の牢獄で溶かす。
無数の投資、そしてそれにより整えられる産業設備。
彼らは植民地を『支配する土地』とは見なさない。
『金融商品』として扱う。そこに付随する人口、資源、地政学的性質。すべてを含めて『投資家や銀行がマネーゲームをする対象』と見なす。
大英帝国は軍事力の帝国でも無ければ、数多くの歴史上の帝国がそうであったような圧政の帝国でも無い。
金融帝国。それが、大英帝国の神髄。
けれどもソレには一つの欠陥がつきものだ。

350: 名無しさん :2019/07/18(木) 18:30:27 HOST:175017014222.ppp-oct.au-hikari.ne.jp
すなわち、投資過剰からくる生産力過剰や消費の破綻。つまりバブルとその崩壊。
有名なオランダのチューリップバブルでは無いが、イギリスはインド権益を手に入れたことで、事実上定期的にバブルが発生しては定期的に
バブルが崩壊するの波を繰り返すようになっていた。
ましてや、この時代、あるものが猛威を振るっている。その名前は『ラッダイト運動』。
工業化による価格崩壊やバブルの崩壊がもたらした巨大な反発である。
インド帝国という存在はそういう意味でイギリスを飛躍させると同時に、金融帝国であったイギリス本国そのものですら金融商品としてズブズブ金融の牢獄で
溶かしていたのだ。
だから、欲しかった。さらなる飛躍の土地が。リスクヘッジでインド以外で金融商品として特別有望な土地が。
北アメリカを失った後、イギリスにとって、『有望な金融商品(植民地)』は一部の港町を除き、事実上インドと南アフリカくらいしか無かったと言って良い。
リスクヘッジの観点から言ってもっと欲しい。有望な金融商品が。特に、インドにおいて、『中国銀』と『日本銀』は彼らの金融市場を支える巨大な
マネーサプライの動力源として機能している。
インド銀はとっくに枯渇している。彼らの金融商品としてすべて活用され尽くした。別にどっかに消えて無くなった訳では無い。
普通に通貨同然に流通している。ヨーロッパ世界経済システムの中で。
そりゃ、インド帝国内部の目線だけで見れば足りないわけである。
日本銀が史実より流出しなかった事で、変化が起きていた。
インド帝国の銀の流出が史実より激しかった。それでも足りなかったため、東欧、ひいてはロシアの『農奴化』が史実ほど広がっていない。
スペインが南アメリカ大陸の国々を植民地にしたことは有名だ。
そして、南米のポトシ銀山が開発され、ヨーロッパにポトシ由来の銀が大量に入ってきたのも。
しかし、知れば驚くことに、南米ポトシ銀山の銀はスペインに流通しなかったのが歴史だ。支配しているのがスペインなのに、それらの銀は実はスペインにとって
敵同然の(反乱軍的な意味で、なおオランダ側は独立戦争のつもり)のオランダ商人とデンマーク商人に流れていたのが現実に起こっていた事だ。
理由がある。

351: 名無しさん :2019/07/18(木) 18:31:00 HOST:175017014222.ppp-oct.au-hikari.ne.jp
一つ目は、スペインは延々と膨らむ膨大な軍事費に苦しんでおり、一番の最悪の時代の場合、9割が外国からの借用であったのだ。
二つ目は、西欧の産業化に伴い、都市人口が膨らみ、出生率も部分的改善を見せたことで、食糧自給率が下がってしまった。
結果として、東欧の穀倉地帯が目を付けられ、主にオランダ商人、デンマーク商人がそれらを取引していた。
そのための元手として、大量の銀が必要だったのだ。
なお、西欧の穀倉地帯として農業生産力の強化を求められたり、食料輸出があまりにも儲かりすぎた結果、有名なロシア帝国の農奴制に
繋がっていく。ソレまでのロシアは実は、むしろ農奴的な物が時代遅れに廃れていった時代だったのだ。
そして、三つ目が一番重要である。
三つ目、オランダ、ポルトガル、デンマークにドイツ、フランス、イギリスがヒャッハーした。
結局の所、スペインがカトリック世界の超大国であり事実上のカトリックの盟主であった事がすべての元凶だ。
スペイン国内の政治問題もおいて、外国の面倒を見なければならなかった。そのために各所、軍事介入を行い、軍事費がかさむ。
その結果、国内の不和が大きくなって……の繰り返しが3つの理由を呼び込んだのだ。
で、そうした結果ヨーロッパ中に流通したポトシ銀。
しかし、世界史に名を残すチート銀山(20世紀に入るまでは世界で使われる銀の半分がソレと言われてる)と互角に戦える銀山がある。
日本の石見銀山だ。
そして、日本の石見銀山なくして、銀を使ったヨーロッパの経済発展を拡張出来なかったのが現実だ。
厳密にはヨーロッパ人によるアジア貿易の成立だけど。
人間の欲望や金融システムはチート銀山であるはずのポトシ銀山ですら手に負えない怪物だった。
当然、史実のような流出が起きてない以上、オランダの飛躍が無い以上、代わりが求められる。
それが、インドの銀であり、金であり、そういった諸々であった。
それ故か、史実以上に色々な意味で元気になりすぎた、インドのイギリス系ブルジョワジーたちの金融坩堝の悪鬼羅刹っぷりは加速した。
史実でもあった、中国銀が欲しいよぉー、市場が欲しいよー、生産過剰を何とかするために医療用アヘンに投資先を変えたら集中して
これまた生産過剰だよー。なんかインド産アヘンが中国で高値で売れるらしいよー、お茶がもっと欲しいよー投資先が欲しいよー
バブル崩壊で失業だー、植民地にでも就職しに行くかー。本国がいいよー本国で仕事ないのー。海軍が受け入れるそうだよー云々
といった欲望が史実の何倍にもふくれあがっている。
バブルとその崩壊の連鎖を繰り返しゆがんだ欲望が出口を探して大英帝国の内部で暴れ回っている。

「『東アジアを政治的恐怖を持って閉鎖している〝ジャパンとチャイナ〟』を何としても世界経済の場に引き釣り出す」
「おそらくそれの完遂には十数年ほどの年月が必要になるでしょうが……」  「10年後投資した金が10倍以上確実になるとあれば普通に待てますわ」
史実でもそうであったように、戦争を望む最大の勢力が動き出す。台湾と福建沿岸部を抑えてる限り、清王朝以前に彼らがぶつかるであろう。
そう、日本と……。
この世界線のアヘン戦争はひょっとしたら……。

352: 名無しさん :2019/07/18(木) 18:31:31 HOST:175017014222.ppp-oct.au-hikari.ne.jp

  ―― 同年、日本領域外、ガージャル王朝ペルシャ帝国にて ――
 『シャア・ハン・シャア(諸王の中の王)』。すなわちペルシャ帝国を総べる帝位を表す言葉だ。
しかし、ガージャル王朝にとってそれは、半分以上悲しく空しい物でしかない。
ペルシャ帝国は中東の中華帝国と呼ばれるくらいには中華思想が強い国だ。
彼らにとって、ペルシャから遠く離れれば離れるほど、一部の例外を除いて野蛮な世界であり文明国家は存在しないとなる。
そういう世界観を持つペルシャ人たちにとって、ガージャル王朝はどこまでも野蛮人が作り上げた征服王朝としか認識しない。
幸い、ペルシャ的中華の毒素ですでにずぶずぶに溶かした存在であるがゆえに、半分受け入れられているだけで
圧倒的な戦力をもってペルシャ戦国時代を平定した初代、でもない限り、もはやまともな武力も持たない弱い王権でしかない。
だから彼らにとってガージャル王朝に敵対しないのは、敵対するだけの大きな理由がないのと、いくら力が弱いといっても
地政学的な重要拠点を皇族で支配し、夷を以て夷を制すの言葉にどこまでも忠実に従い、既存の有力者たちをそれぞれ
相争うように政治的均衡を図り続けてきた歴代のガージャル王朝ペルシャ帝国皇帝の政治的手腕にはさすがに頭を下げざる負えないからだ。

だがしかし、ペルシャ人たちが語る『例外』がいま、無数に魔手を伸ばしている。

その名は、ヨーロッパ。特に北方の熊と銭ゲバ変態紳士の2カ国。

「オスマン帝国と同じような権利を認めろ……か……」  「「「…………」」」
宦官たちは黙る。武官も黙る。文官も黙る。皇帝も宰相も困った顔を見せる。
水たばこの煙だけがこの静寂と停滞の中、動いていた。
本来であればあと十数年の猶予がある。トルコマンチャイ条約。その条約こそが、ガージャル王朝大崩壊の序曲。

「……シャーリア(イスラム法)的には?」  「……問題は、限りなく、少なく……その」
「……はっきりと申します。一切問題がございません。むしろ下手な反発はシャーリアに反するという解釈もできます
オスマンのくそったれ……いえ、オスマンのスルタンが認めたのもある意味で仕方ないものと存じ上げます」
「何を申すか!! これは、事実上の『治外法権』だぞ!?」
「だが、治外法権だけなら、正直な話今まで通りではないか! どうせ中央政府の意向や法律なぞ、
地方政府や部族長どもはききゃしない! いい気味だ!」
「……ですが、陛下……必ずやペルシャの人民は…………神聖にして犯すべからず偉大なるペルシャの大文明の領土が
夷狄に侵犯されたと感じますぞ……。ガージャルの帝位は究極的には夷狄に力でとられてるのだという認識が存在することを
努々お忘れなきよう……」
臣下らの言葉に酒器を投げる一人の人間。

353: 名無しさん :2019/07/18(木) 18:32:14 HOST:175017014222.ppp-oct.au-hikari.ne.jp

「くどい! そもそも諸君らが不甲斐ないから……!」  
ロシアとの戦争は敗北にまみれていた。きっかけはなんであったか。中央アジアのくそ野郎が南進して、カスピ海やペルシャ北部の山岳地帯で
散っていくのは毎度のことだ。問題は、イラク方面より侵入されたらだだっ広い平原での会戦を毎度、余儀なくされるということか。
だから、国防の意味からペルシャは自分から攻めることもあれば、攻められることが多かった。
まぁ、だからと言って北部の山岳地帯だって、安易に油断してはならない。アフガニスタンの草原回廊を渡ってモンゴルがやってきたように
山岳地帯においても侵入者は常に現れる。
第1次ロシアペルシャ戦争。最もロシアとの小競り合いなんぞ数えきれないから、特に大きいもので国際法上正式に戦争状態と認められた
一つの戦いの名をそう呼ぶ。
何とか、本国領土こそ守ったが、いろいろな領土を奪われ、十数年後取返しに第2次が起きて、トルコマンチャイ条約を結ばせられる。
それが、ペルシャの歴史。
だが、今はまだ、その第1次の真っ最中、敗北まっしぐらである点を除けば。
いや、一つだけ歴史においてまったく違う点があった。

「最新鋭の兵器をフランスから買ってやったんだ! もう負けるのは仕方がない。だが、一矢報いろ! 何が何でも!!」
この世界線、ペルシャだけではなく中東イスラム世界は――――

「――――経済的にはまだ、負けてない! 奴らとためを張れる!」
イスラムのもともとの繁栄は奴隷、香辛料、砂糖の三つの商品の貿易網とそれらを前提とした金融工学の発達によるものだ。
逆説的に言えば、奴隷、香辛料、砂糖の供給ルートが破壊されてしまえば、その繁栄は終結する。
そして、それを徹底的に破壊したのは……史実では日本銀をもってヒャッハーしたポルトガルとオランダだ。
だからこそ、この世界線では……。


  ―― 同年、オスマン帝国属領エジプト王国にて ――
 この年、ある悲劇が起きている。マルムークの大粛正。流血の大惨事。
エジプトの大王にして改革者、ムハンマド・アリー立ち上がる。
膨大なる流血の大河を生み出し、その代わりに彼が理想とする強いエジプトの建国と復権に向けて……。
ましてや、この世界線のイスラム文明圏は未だ経済力的にはヨーロッパと殴り合いが出来る。
最後には必ず負けるような戦いであったとしても殴り合いが出来る。
ムハンマド・アリーの大粛正は史実以上の流血の惨禍を引き起こす――――
――――地中海をかつてのようにエジプトのバスタブにするのだ。
インド洋の権益を我が物とするのだ。そして、そして、そして…………。

354: 名無しさん :2019/07/18(木) 18:32:59 HOST:175017014222.ppp-oct.au-hikari.ne.jp

  ―― 同年、フランス帝国、パリにて ――
 一人の男が、歩く。
彼を最前列に二列に並んだ男たちが続く。
その男の服装は軍人であった。続く男たちの服装も軍人であった。
その男の背丈は長く無かった。続く男たちの方が大きかった。
けれどもそんなこと、誰も気にもとめない。

「皇帝陛下!」  「フランスの救世主!」
「「「フランス帝国万歳!」」」
そんな賛美歌が流れる中で、彼は最高存在の祭典のために用意された儀式場へとたどり着く。
かつて猛威を振るったテロル。ある世界線では破壊されたが、ここでは破壊されなかった。

「……ロビエスピエールは神を否定した。神威の……神の権威という物を否定して、自らの権力や共和制の権威のなさに気がつき絶望した」
皇帝と賛美される一人の男がその場で何事かを語る。
それはまるで演説のようで、聞く物は彼の腹心や政権の人間たち。すなわち演説では無い。

「それが、コレだ。神を否定して、自分で神を作った。人類知性のその先にある理想の知性体。
最高存在。最高存在の前で人間はすべて平等であり、最高存在の祝福の中で共和制が成り立ち、最高存在の祝福の賛美歌の中で指導者が
国家最高の知性として、指導者として振る舞うのだと」
そして、鼻で笑った。

「バカバカしい。わかりやすい方法をとれば良かったのだ。武力で政権を作ればいい。その後は法律で政権を肯定すれば良い。
大丈夫、法律とは、民衆の支持が一度でも集まれば成立する。それが奴が夢想した共和制の根幹とやらであろう」
ナポレオンという男は強い野心と理性の化身だ。人の姿をした血に飢えた獣ロビエスピエールが死ぬ寸前まで望み続けた『理性』の怪物。
一つだけ、この世界線のフランスは救われていた。
東欧で農奴制が完全には広がっていないように、この世界線のフランスの食料自給率は、史実ほど下がってはいない。
史実、フランス革命の原因は色々と言われているが、究極的にまとめてしまえば、パリ市民が抱いた餓死への恐怖が最大の原動力とも言われている。
冷夏やフランスの経済成長に伴う人口爆発、そして投資家たちの穀物投機が食料価格に直接の大ダメージを与えてしまい、適切な手段を
とれない社会体制や国家構造がついにはフランスで革命という名の流血の嵐を呼び込んだのだと。
それが、あの歴史ほどは吹き荒れていない。まだ。かろうじて。
これから、吹かせる。

355: 名無しさん :2019/07/18(木) 18:33:30 HOST:175017014222.ppp-oct.au-hikari.ne.jp

「これからの戦争は大砲だと証明できた訳だ。さて、ロシアを殴ってくるか?」
ナポレオンは止まらない。ある歴史より生き残っている食料自給率が……彼の野心の炉をくべていく。

「エジプト人たちもいい方法を知ってますね。少しめんどくさいですが、彼らのおかげで戦費が稼げそうです」
14世紀のエジプトは金融工学の爆発的発展によって、事実上経済的超大国であった。その後、様々な要因から
その地位は失われていったが、その残滓たる金融工学的発展は失われている訳では無い。
ナポレオンのエジプト遠征はナポレオンに詐称にも思えるそれが、もたらす富の巨大さを印象づけた。
これなら、勝てる。やれる。フランスはもっと軍隊を拡張出来る経済力を作れると。
冬将軍には勝てないだろう。泥将軍にも勝てないだろう。だが、ひょっとすればロシアには勝てるだけの時間と力が――――ひょっとしたら、此度の戦いは……。


 ―― 同年、レコンストラクション以前のアメリカ合衆国にて ――
「捕鯨基地が欲しい」  「ボニンアイランドは手に入らないのか?」
「ハワイが欲しい」  「フィリピンの権益はルソンが押さえられてるせいで赤字だ」
「「「どうすればいい?」」」
無数の声。

「マニフェスト・デェステニィーはもう終わりだ」  「終わりでは無い。まだ新しい土地は開拓すれば増える」
「それは妥協の南北境界線を審判しかねない」  「奴隷たちの存在は投機の邪魔では無いか」
「大統領の権限を小さくするべきだ」  「連邦など不要だ」
「イギリスへの食料輸出は莫大な財貨を我らに提供してくれている」  「南米への侵攻を」
「ナポレオンには感謝しかない……」  「大封鎖は我らにとって最良だ」
「「「艦隊を整備しよう。南米に、そして極東に。我らの信仰と繁栄の灯火を広げるためにも」」」
強欲の賛歌が始まろうとしている。

356: 名無しさん :2019/07/18(木) 18:34:02 HOST:175017014222.ppp-oct.au-hikari.ne.jp

 ―― 再び同年、水戸藩邸 ――
「…………やっぱり無理がありますねぇ……」  「辻さんでもですか?」
「元々水戸藩の石高は高くないんですよ。なんかこっちの歴史だと石高と貫高が雑多に同居してる感じですが
少なくとも水戸では石高でやってるのは藩主であるあなたも知っての通り」
帳簿の前でにらめっこの2人組。
でもってこの風景が新たな教材に使われるまであと十数秒。

「……幕藩体制を明治維新のようにひっくり返すにしても、なんだかんだであれば幕府側が近代化のために色々と
政策を実施していたおかげもありますからねぇ。政策を継承したり、幕府の官僚機構の人材を使えたりして。今、薩長同盟が
現れても、割と何の役に立たない反乱軍という形で逆に列強に侵略される弱小国に落ちるでしょう」
「……でもそんじょそこらの列強1カ国程度だと普通に勝てますよね」  「ですね。だからやっかいです」
「「…………はぁ……」」
勝てるからこそ近代化が遅れる。おまけに

「……なんか史実以上に律令が重んじられてません?」  
「律令だけではありません、17条憲法に武家諸法度。世紀の悪法呼ばわりされた生類憐れみの令でさえ、その撤廃には
明らかに史実以上の時間と手間がかかっている。法律の重みが明らかに近代化してる…………。ですが、法制度では無く
法律の重要性や重みが近代化してるだけですので、ゆがんでいると言えるでしょうね」
「カボチャバサミですか……」  「ええ、あんな感じかもしれません」
法治主義には2種類ある。一つは機械的法治主義と呼ばれるドイツ式の奴であり、法実証主義的なソレ。
一つは、主にイギリスで発達した実質的法治主義。『法の支配』と呼ばれるソレ。
後者は人道と合理性の無い法律は悪法であり、悪法は守る必要が無いと言う。そして、どうやって人道と合理性を証明するかというと
慣習と適切な手続きによる立法が重要であると言う。
つまりは、不完全な法の支配的な価値観、早すぎた『非理法権天』が律令格式という古代の法典を格別な存在にしすぎている。

「最大のターニングポイントは、1870年代のマレー半島です。あそこでとれる……何という名前だったかな? その植物から
ゴムのような性質を持った物質が出たことで、イギリスの覇権が決定的になります。それを妨害する手はマレー半島を手中に収める事」
「……辻さんってそういう歴史知識ありましたっけ?」  「何を言いますか、私が特許関係でも荒稼ぎした事、お忘れですか?」
1844年、グラハムベルがとった特許。本当は特許取得競争なのだが、ソレによって『電信』がこの世に登場する。
そして――――それから数十年後、ついに海底ケーブルが実用化する。そして……金融帝国、大英帝国にとってソレは
福音となる。世界中のあらゆる事柄が帝国の富に直結するから……。

「ベルの特許を妨害することは、無理でしょう。なら、こちらが先に電信や海底ケーブルを実用化してしまえばいい。
それが無理なら、マレー半島にイギリスが入ってくるのを妨害して海底ケーブルの開発を十数年遅らせてしまえばいい。
それが出来れば、大英帝国に真っ正面から対向できます。
そして、イギリスに対向できると言うことは、他の列強であっても1対1なら何があろうと絶対に負けない。2対1程度でも勝てると言えるでしょう」
「問題なのは…………」  「はい」
今、彼らがいるのが『水戸藩』であると言う事実だ。

「やり方を間違えると、皇道がどうとか唱えて、悪の侵略帝国まっしぐらな方向に進みたい、水戸志士を制御せよって言うミッションですね!」
「というか、この世界線だと鳥羽伏見がどーなるかわかったもんじゃ無いですよね? 国力10倍、火種20倍で、国力も軍事力も
基本的にパワーアップしているわけですから、南北戦争よろしくな、世界最初の近代的総力戦の黎明の始まり……になりませんよね?」
「「…………」」
ことが事だけに、声を小さくして会話をしていた2人の間に沈黙だけが支配する。

「あの……」
そこに現れる一人の侍女。持っているのはラーメン。

「お、おじゃましてすいませーーーーん!!」
真っ赤になって叫んで逃げ出す。思わすはてなマークが付くが、すぐに思い出す。あっ、そういや江戸時代って陰間茶屋の時代やん
二人しかいない場で男が、向かい合って黙っているんだぜ……? 
きっと、勉強会でもしてんだろうなぁ……。仮にも統治者とアドバイザーだし。なんか雰囲気的にすっごく勉強出来そうじゃん?(すっとぼけ)

「「ちっ、ちがう!! いいから、にげんなああああああ――――っ!!!」」
見事なハモりから、あらあら、仲がいいのねと一部から評価される殿様と商人であった。

357: 名無しさん :2019/07/18(木) 18:35:19 HOST:175017014222.ppp-oct.au-hikari.ne.jp
以上です。投下してから、文字数の多さに気が付いて、当時の自分の熱の入れようにびっくり
なんで、1発ネタにここまで熱中してたの……

続きません。たぶん

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最終更新:2019年07月19日 23:14

*1 (そのないないづくしで、あそこまで暴れてたあなたがおかしいという事では……?