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日墨ルート
1930年11月3日ブラジル、リオグランテ・ド・スル州ポルト・アレグレ上空
「くそ、こいつらしつこいな、もう帰るだけだというに」
爆弾を投下し終えた爆撃機に2機の戦闘機が食らいついていた。
「上空に機影」
「また敵か」
上空から降下してきた機体は、爆撃機に食らいついていた戦闘機を瞬く間に撃墜した。
「ご無事ですか?」
「君か、助かったぞゲーリング大尉」
「今は、元大尉ですがね。お互い除隊した身ですから」
「君は私と違ってまだ未来がある。こんな所にいる必要は無いのではないかね?」
「空軍独立を認めない愚か者には飽き飽きしていたのでね。ここらで自由に飛ぶのも悪くないと思いまして」
「国は違えど理想は変わらないというわけか」
「ええ、理想を現実にするためにもお互い生き残りましょう。ミッチェル閣下」
ドイツ義勇軍所属ヘルマン・ゲーリング元大尉とアメリカ義勇軍所属ウィリアム・ミッチェル元准将は笑い合った。

なぜ、彼らがブラジル上空にいるのかといえば、今ブラジルで起きていた内戦が理由だった。
ブラジルでは1894年以降、カフェ・コン・レイテと呼ばれる支配体制が敷かれていた。
これはポルトガル語でカフェ・オ・レの意であり、代々大統領を送り出して来たサン・パウロ州とミナスジェイラス州の特産物にちなんだ名だ。
早い話が両州で交代して大統領職を独占していたのだが、1920年代から徐々にほころび始めていた。
サンパウロ州からのコーヒー輸出が、主にアメリカやドイツを主な輸出先とするようになったからだ。
特にドイツで世界大戦の教訓からゴム資源持久のためにアフリカ植民地でのコーヒー生産をゴムに切り替えようと試行錯誤していたことも、
追い風となり輸出量はさらに増えた。
一方、ブラジル国内では青年将校たちによるワシントン・ルイス大統領に反対する運動が起こっていたが、
これを鎮圧するためにドイツの支援を要請するなど、サンパウロ州のドイツへの傾倒ぶりは目に余るものがあった。

こうしたブラジルのドイツ接近に対して危機感を覚えたイギリスは反サンパウロ州勢力に接近、
そんなことなど知らないルイス大統領は慣例を破り同じサンパウロ州出身のジュリオ・プレステスを後継者に指名、
このことをきっかけに反サンパウロ州勢力による反乱が勃発、これを受けたドイツとアメリカは即座に義勇軍を派遣した。

義勇軍には実験台として最新の装備が与えられた一方、本国から厄介払いされた人間も多数含まれていた。
ミッチェルもその一人だった。彼はマカドゥー政権による海軍拡張を批判、空軍独立論を主張した。
そうした経歴もあり、彼は暫く左遷された後、除隊させられここに飛ばされた。似たような境遇のゲーリングやウーデットと共に、
ブラジル人相手に爆弾を落としていたのだが、ここに来て急に敵の装備が良くなって来た。
自分たちのような人間がいるかはわからないが、装備は確実に良くなっていった。

このままでは不味い。前線では政府軍部隊から脱走兵も出始めているという、我々のちからを示す前に内戦が終わるのだけは困る。
そう思い始めたミッチェルの耳にある情報が入る。旧戦艦バイエルン、現リアシュエロが反乱を起こしたというのだ。
「これがラストチャンスかもしれないな」
こうして、ミッチェルたちは戦艦リアシュエロ撃沈に向けて動き出すことになる。

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最終更新:2019年08月03日 09:32