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日墨ルート第二次世界大戦5
1942年9月7日 スペイン領キューバ サンタ・マリア・デル・プエルト・プリンシベ郊外
ハバナから移転してきたキューバ総督府兼連合軍カリブ方面司令部所在地のこの街にイギリス軍と思われる車列が近づいていた。
「止まれ」歩哨が呼び止めた。
「ああ、済まない。実はアメリカ軍の攻撃に備えて急に配置転換になってね。連絡は入ってないかね?」
中佐の軍服を着た男がきれいなイギリス英語でそういう。
だが、歩哨は彼の言葉に何処か違和感を覚えた。それに、彼の後ろに立っている長身の軍曹にも。
「中佐殿、確認が終わりました。確かにそのようですね。」
「ああ、ありがとう。では、行こうか軍曹」
「ところで、軍曹殿は出身はどちらですか?自分はロンドンです。」
軍曹が歩みを止めていった。
「なるほど、それでそんなふうにイギリス英語が上手なのか、私は…」
嘘だ。歩哨は直感した。ロンドンの人間は一般的に上流階級を除けばコックニーという方言を話す。
まして、自分のウェールズ訛りがきれいなイギリス英語に聞こえるはずがない。
歩哨は警報を作動させると同時に銃撃によって死亡した。
「クソ、困ったことをしてくれたな『アメリカ人』?」
「申し訳ありません。しかし…」
「弁解はいい。突入だ。行くぞ。目標は総督府だ。」
この部隊唯一の純粋なアメリカ人にそういうと襲撃を開始した。彼らは『アメリカ人』を除いてみなボーア人によって構成されたコマンドだった。
そんな彼らの一人に突如として矢が命中し、続いて銃撃にみまわれた。
「先に行ってくださいここは自分が」『アメリカ人』がそういうとイギリス軍部隊を足止めし始めた。

それからどれくらい立ったのか、銃身が焼き付くまで軽機関銃を撃った『アメリカ人』の前に異様な男が現れた。
大剣にクロスボウ、バグパイプ…どう見てもまともではなかった。
「仲間においていかれて寂しいのかヤンキー?何なら俺が一曲吹いてやってもいいが?」男が言った。
「ヤンキーじゃない。ケリー、チャールズ・ケリーだ。」『アメリカ人』が言った。
「口だけは達者なようだな。俺の名はジャック・チャーチル、楽しい戦争にしようじゃないかヤンキー」
2人の死闘が始まろうとしていた(注)。

1942年9月、1942年7月から行われた連合国の夏季攻勢がまたも失敗に終わり、
なんとかしのぎきったドイツでは安堵が広がった。
しかし、それは第一次世界大戦と同様な戦線の膠着を意味していたため、
決定的な勝利を求めて各国は新兵器の開発を進めることになる。
一方カリブ海では依然として英米の死闘が続いていた。
キューバ近海は双方の潜水艦がうろつき絶えず輸送船団を襲撃した。
陸ではパットンが力押しに終始したため、パーシバル率いる連合国軍により手痛い損害を負っていた。
特に圧倒的に優位と思われていた米軍戦車が、イギリス軍が投入した新型簡易対戦車火器(注2)によって撃破されたことは衝撃だった。
一方、連合軍のレシプロ機に対して、ギャローテッドエアクラフト社製のアメリカ初のジェット戦闘機が飛来する様になったことはイギリスにとって衝撃だった。
アメリカの航空技術が連合軍のそれに対して決して遅れをとっていない事を証明したからだった。

注 2人とも無事に生き延び、互いを終生のライバルとして認めあった。
注2 バーニーガンが主に欧州に送られたため現地で急造されたPIAT

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最終更新:2019年08月18日 11:28