368 :ひゅうが:2012/02/13(月) 06:56:21

銀河憂鬱伝説ネタ 本編――「返礼使」その1.5~旅程~


――同盟軍と政府直轄区域であるエア星系を発した艦隊は、合計1万5千隻の合同艦隊を編成。
あえて民間航路と並走しつつシヴァ星系へ達し、自由惑星同盟のメイン航路での航行をはじめた。ジャムシード星系からは同盟の軍事航路をそれ、民間航路のみの航行となる。
そのため、ランテマリオ、ガンダルヴァ、バーミリオン、ロフォーテン、リオ・ヴェーデと主要星系をたどり、首都星ハイネセンのあるバーラト星系へと至るルートをとった。

これは同盟軍の機密であるバーラト星系への最短ルートを秘匿するという意味もあったが、何よりもこの艦隊を同盟を構成する各星系政府に誇示しつつハイネセンへ向かわせるという意図もあった。

この意図は大成功といえ、シヴァ星系ではロボス提督率いる同盟第2艦隊が辺境星域での海賊討伐完了とサイオキシン麻薬製造所破壊という成果を手に艦隊を出迎え、辺境へのターミナルとなるジャムシード星系では星系防衛艦隊と、第2艦隊と入れ違いにイゼルローン方面への警戒に向かうボロディン提督の第3艦隊が辺境星域へ向かう民間船団と共に艦隊を出迎えてさながら一大観艦式の様相を呈した。
艦隊は周囲を取り巻く民間船とともにそのままフェザーン航路の拠点ランテマリオへ向かい、フェザーン商船団の歓迎と共にガンダルヴァを経てバーミリオンから首都近傍のロフォーテンに達した。

ここで艦隊は補給を済ませ、同盟第2の人口を誇るリオ・ヴェーデ星系で同盟軍第7艦隊と首都を守る第1艦隊の出迎えを受けた。
宇宙艦隊司令長官ラムゼイ・マクドナガル元帥の直卒部隊である。

この合計3個艦隊は、7月29日、夏も盛りになろうとするバーラト星系へと到着する。
ここで護衛隊はとどまり、使節を乗せた「初瀬」と護衛の装甲巡航艦「春日」が星系内へと入る。
同盟軍は第1艦隊の旗艦直卒戦隊がこれを先導し、首都星ハイネセン周辺に集結した多数の民間船舶で構成される船団の間を縫うようにして「アルテミスの首飾り」のすぐそばにあるハイネセン停泊地へとたどりついたのであった。

日本郵船所属の豪華客船である「初瀬」はともかくとして同盟軍の基準をはるかに上回る装甲巡航艦「春日」は全長25キロに達するその巨体を同盟軍の艦艇に囲まれて停泊。
「初瀬」にあわせ純白の礼装外殻のまま入港したために「まるで白いドレスを着た女王のようであった」と翌日のニュースペーパーに記されることになる。


ここで使節団は夜をあかし、同盟軍差し回しのシャトルに乗り換え、積荷と一緒にハイネセン首都宇宙港へと降り立つことになる。

時に、宇宙暦789年7月30日 標準時10時3分だった。



――宇宙暦789(皇紀4249)年7月30日 銀河系サジタリウス腕
  自由惑星同盟 首都 ハイネセン


軍楽隊が少しフランス風味をまとわせた国歌を演奏する中、「正使」である月詠宮裕子内親王を筆頭にした代表団はタラップの上に立った。
気を利かせた同盟政府がジャーナリストのうち限られた人々しか近寄らせていないために雑音は少ないが、それでもシャッターの閃光が視界を漂白しかけるほどに連続している。

天候は晴れ。
快晴とはいかないまでも夏の日差しをほどよく遮る程度の雲が出ている。

裕子や副使をつとめる副総理の藤村重雄が手を振ると、それはさらに激しくなった。
タラップを降りた正使と副使、そして侍従武官役をつとめる南雲忠一中将はレッドカーペットを歩き、出迎えた自由惑星同盟最高評議会のハッブル議長や議会上下両院の議長たちと握手を交わした。
そのまま一行は同盟政府のよこした車に乗り込み、1個大隊規模の護衛を伴って迎賓館の代役となるハイネセン・ホテルへと向かった。

なお、道中での妨害を試みた人々は、30万人規模で動員された警官隊と国防委員会直轄の「首都防衛旅団」によって実力で排除されている。
その中には、のちに街頭闘争で有名になる「憂国騎士団」の母体となる複数の極右あるいは極左組織があったという。

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2012年02月15日 19:43