915 :YVH:2012/02/28(火) 18:27:10
   ※ワルキューレは汝の勇気を愛せりを脳内再生しながら、ご覧下さい(笑)

 帝国暦48X年某月某日、銀河帝国帝都オーディンにおいて、新皇帝の即位式が挙行された。

      -新無憂宮・黒真珠の間-

今、この場には赤い絨毯を挟んで政・軍の高官、即ち玉座から見て右の列には
国務尚書リヒテンラーデ侯、新設された外務尚書で皇族・侯爵に復帰した当代のバルトパッフェル侯、
叛逆を起こして滅亡したカストロプ公に代わって正式に財務尚書となったゲルラッハ子爵、
内務尚書フレーゲル伯爵、内務省から独立した教育関係を司る文部尚書ミュンツァー子爵
司法尚書ルーゲ伯爵、宮内尚書ノイケルン伯爵、キールマンゼク内閣書記官長、主だった諸侯が立ち並ぶ。
(余談ながら、科学省は文部省に、典礼省は宮内省に其々吸収合併)
左の列には、軍務尚書エーレンベルク元帥、統帥本部総長シュタインホフ元帥、幕僚総監クラーゼン元帥
宇宙艦隊司令長官ミュッケンベルガー元帥、部下の一部が起こした叛逆の責任を取って自決した
ラムスドルフ上級大将に代わって近衛兵総監となったシュタイエルマルク上級大将
装甲擲弾兵総監オフレッサー上級大将、憲兵総監クラーマー大将、帝都防衛司令官グナイゼナウ大将
十八個艦隊の司令官たちが立ち並ぶ。

そして帝国初の「国賓」大日本帝国皇族・月詠宮裕子一品内親王、実弟の後華頂宮篤仁一品親王とその随員たちが
東側に設えられた特別席で式の開始を待っていた。

「黒真珠の間」に皇帝出御を告げる式部官の声が響き渡った。

「全人類の支配者にして全宇宙の統治者!天界のあらゆる法則の擁護者!
 神聖にして不可侵なる銀河帝国皇帝、フリードリヒ四世陛下のご入来っ!!」

その声が終わるか終わらないかのタイミングで、広間に帝国国歌の荘重な旋律が流れる。
帝国側の人員は最敬礼で、日本側の人員は起立の上、軽く会釈するようにして国歌の演奏終了を待った。

演奏が終わるのと同時に諸人が顔を上げると、玉座には帝冠を戴いた皇帝が座し、玉座の左側には四公の内、
国舅となった公爵を除く残りの三公爵が、それぞれ皇錫、宝石や金銀で作られた帝権を顕す世界のリンゴ、
皇后の宝冠を捧げ持って佇んでいた。
そして右側には、ブラウンシュヴァイク公夫妻、リッテンハイム侯夫妻、ローエングラム女伯姉弟が
立ち並んだ。
姉弟の姿に、一同は一瞬ざわめいたが場所柄を思い出したのか、その後は沈黙を保った。

式部官が本日の主役の名前を呼び上げる。

「摂政皇太子・ルードヴィッヒ大公殿下っ!」

その呼びかけと共に広間の大扉が開けられ、嘗て日本から贈られた桐竹文様の絹織物で作られた服を纏い
真紅のマントを付けた皇太子が広間に入室し、赤絨毯を踏んで父である皇帝の座す玉座に向かって歩き出した。
余談だが、皇帝も皇太子と同じ文様の服を纏っている。
階〔さきはし〕の下に来た皇太子はそれを上り、玉座の前に用意された紫の敷物の所で止まり、その場で跪いた。
そんな息子に父である皇帝は玉音を下賜する。

「後を頼むぞ。ルードヴィッヒ」

皇太子は奉答する。

「御意。陛下より託されしこの帝国の為、身命を賭す所存」

皇太子の奉答に一つ頷くと、皇帝は玉座から立ち上がり自らの頭上にあった帝冠を脱ぎ両手で捧げ持つと
広間を睥睨するように見渡し、声高らかに宣言した。

「諸卿よ、よく聞くが良いっ!お前たちの新しい皇帝ルードヴィッヒじゃっ!!」

皇帝の大音声に広間に居る者は皆、瞠目する。日本側の人員は皇族方は笑みを深くし、随員たちは唯黙って見続ける。
次に皇帝は来賓席に向かって、こう述べた。

「日出る国より参られた賓客たちに申し上げる。貴卿らの新しい友、ルードヴィッヒじゃ」

広間の諸侯達に対した様な厳しい雰囲気ではなく、柔和な笑みが浮かんでいるような声音で皇帝は
日本側に語りかけた。
その宣言というか語りかけに、皇族方は深い笑みと共に目礼し、随員たちも会釈でこれに答えた。

916 :YVH:2012/02/28(火) 18:28:03
それに満足そうに頷くと、皇帝は跪いている皇太子の方に向き直り、
その頭上に帝冠を授け新皇帝の手を取って立ち上がらせ玉座に導きそこに着座させ、
自らは四公の居る場所まで下がり、その上座に位置した。
次に四公最年長のルドルフィン公が新皇帝の前に進み出て、捧げ持っていた皇錫を授けると一礼して
元の場所に戻り、代わってヴィデルスバッハ公が同じく進み出て、捧げ持っていた世界のリンゴを
新皇帝に授けると同じく一礼して、自らの定位置に戻った。

  銀河帝国、第三十七代皇帝ルードヴィッヒ一世の誕生である。

次は新皇帝の初仕事である、妃カテリナの立后式である。

再び、式部官の声が「黒真珠の間」に木霊した。

「摂政皇太子妃カテリナ殿下っ!」

その声と共に再び大扉が開かれ、父親であるノイエ=シュタウフェン公に手を取られた大公妃カテリナが入室し
今や帝国の主となった夫の下に進み、階の所に来ると父親と共にそれを上り、先の夫と同じく敷物の所で止まり跪いた。
尚、先導を終えた公は四公の列に並んだ。
玉座に座す新皇帝はそこから立ち上がり、ノイエ=ザーリアー公を従えて跪く妻の前に立ち
公が恭しく差し出した皇后の宝冠を、妻の頭上にそっと被せた。
そして跪く妻の手を取って立ち上がらせ、自らの右側に導いた。
その瞬間、広間は「帝国万歳!」「新皇帝ご夫妻万歳!!」の大合唱に包まれた。

ひとしきり歓声が続いた後、広間内に静粛が国務尚書より告げられた。
次は大日本帝国駐在大使の任命式である。三度、式部官の声が「黒真珠の間」に響く。

「ジッキンゲン=ゴールデンバウム大公フリードリヒ殿下っ!」

その声に、玉座の左側に侍っていた前帝は新帝の前に進み出て、先の敷物のあった場所から
少し離れた場所で跪いて玉音を下賜されるのを待った。新帝たる息子は前帝であった父親に
玉音を下賜した。

「頼むぞ大公。卿の働きに期待する」

父たる大公は息子である新帝に、こう奉答した。

「御意。臣の全力を持ちまして、職務を遂行する所存に御座いまする」

その奉答の後、新帝は侍従官から差し出された辞令を読み上げる。

「我が銀河帝国から大日本帝国へ派遣する駐在大使に、汝ジッキンゲン=ゴールデンバウム大公フリードリヒを任命する
 尚、餞として同道するベーネミュンデ侯爵夫人シュザンナの領地を夫人の化粧料と認め、夫人亡き後は大公領に
 併合する事を認める。帝国暦四八X年某月某日、銀河帝国皇帝・ルードヴィッヒ一世」

新帝が辞令を読み終わると、大公は立ち上がり玉座に近寄り辞令を受け取ると元の位置まで下がり、一礼した。
この後、大公はベーネミュンデ侯爵夫人を伴い日本側使節の帰国に便乗する形で故国から出発した。
その後は、一度として故国の土を踏む事無く日本で過ごし、臨終後も遺言で日本での埋葬を望み
故国へは遺髪のみが送られたという。

余談ながら、日本から新帝即位に対する祝いの品が数々贈られたが、その中に両国の末永い友好を祈念して
十ダースの桜の樹と菩提樹の樹が贈られた事を記しておく・・・


【あとがき】

あくまでネタなので、こうなるとは限りません。
フリードリヒ四世の行動は、ある映画のワンシーンのオマージュです。
皇帝の日本側に対する語りかけは、いわば銀河帝国の意地と願望を見せた格好です。

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2012年03月07日 21:58