112 : ◆Ai.p5y3NWQ:2013/03/04(月) 00:07:18 ID:GdrYit120
('A`)「そうか・・・君の副業はライターか」
('A`)「うちの国でもさ、警官の副業認めりゃいいんだ。
不正がはびこってんだから」
('A`)「でもすげえなあ、俺なんか一つの仕事でもまともに務まらないんだから」
ドクオはちょっと卑屈になった。
デレーニャは急に打ち明けるような口調になった、
ζ(゚ー゚*ζ「実はね」
ζ(゚ー゚*ζ「今、小説を書いてるの。それが書き上がったら、警察やめようと思ってるの」
('A`)「へっ、やめちゃうの・・・?夢だったんだろ、警察官」
ζ(゚ー゚*ζ「そりゃあ、子供の頃から親近感のある職業だったから目指してたけど、
Metermaidなんて人のいやーな顔も見なきゃいけないでしょ。
あんま生産的じゃないわ」
('A`)「そうかなあ、俺は・・・」
「君みたいな警察官がいて良かった」、と言おうとしたが言葉が消えてしまった。
113 :名も無きAAのようです:2013/03/04(月) 00:15:58 ID:GdrYit120
('A`)「でも、うまくいくといいな」
ζ(゚ー゚*ζ「うん。最近、うまくいきそうかなって思えるようになった。
・・・あなたに会ってから」
('A`)
どういうことだろう。俺は彼女の創作意欲を高めることができた、とでも言うのか?
なぜだ。
なぜだ。
('A`)(ひょっとして・・・俺に恋してる・・・とか)
彼の喪男としての本能がその考えを瞬殺した。
('A゜)(いやいやいや!)
116 :名も無きAAのようです:2013/03/04(月) 00:32:06 ID:GdrYit120
んなわきゃない。んなわきゃない。
こんな娘が俺なんかに。
では。
なぜ今日彼女は俺に会おうとしたのだ?
寂しいから?
男なんてよりどりみどりだろう。
('A`)
ふと彼女の顔を見てみる。
ζ(゚ー゚*ζ
ふんわりとした髪の毛の中に、優しい丸みを帯びた顔がある。
可愛らしいエクボは幸福そうで、行きずりの相手を求めるような、病的な、寂しい影など見当たらない。
('A`)(だけど・・・なぜ俺なんかと?)
彼はこうしたことをじっくり考えたことがなかった。
考えると、本気で好きになってしまいそうで、そして自分がとても惨めさになりそうで、無意識のうちに避けていた。
だけどこの心拍の増加が怖さのためなのか、それとも別の理由からなのか、答えを出せずにいた。
('A`)
.
117 :名も無きAAのようです:2013/03/04(月) 00:43:59 ID:GdrYit120
そもそも俺を好きになる理由など無いではないか。
自分の魅力の無さなど自分がよく知っているし、何か恩を売った覚えもない。むしろ世話にばかりなっている。
('A`)(とするとあれか・・・?)
('A`)(母性本能ってやつか?)
ζ(゚ー゚*ζ
たしかに世話好きな感じはする。
でも俺もいい歳した男だ。
('A`)(となると・・・)
('A`)(何かの・・・勧誘とか・・・)
ドクオは働き始めた時、可愛い娘に騙されて高額な絵を売りつけられた事があった。
あんな惨めな思いをしたことは無かった。それ以来、異性に対する自分の気持ちを注意深く制してきたのだ。
('A`)(だ、騙されないぞ・・・騙されないぞ・・・)
.
118 :名も無きAAのようです:2013/03/04(月) 00:49:52 ID:GdrYit120
ではなんだ。
小説を書いているとか、そういうのも、全部小芝居の一部か?
('A`)
そう考えると腹さえ立って来た。
が、彼のそんな逡巡は次の甘い一言でせき止められてしまった。
ζ(゚ー゚*ζ「ねぇ」
ζ(゚ー゚*ζ「落ち着いて飲めるとこいかない?」
もちろん2つ返事で答えた、
('A`)「行く」
と。
.
119 :名も無きAAのようです:2013/03/04(月) 01:04:22 ID:GdrYit120
******
そこから先、ドクオの意識は消失した。
気付いた時には朝で、自分のフラットの床の上だった。
('A`)ハッ 「あ・・・朝か・・・」
ぼんやりした頭で昨日の顛末を思い起こす。
そうだ。
バーについたところまではいいが、そこで、自分の中ににわかに芽生えた照れと疑念を打ち消すため、
次々と杯を重ねてしまったのだ。
('A`)(酔っ払っても記憶なんて普段無くさないのに・・・)
ヲッカで鍛えた彼は、酒に対して多少無防備な所があった。
('A`)(にしても、こんなことになるなんて)
よほど気持ちが昂ってたのだろう。
.
122 :名も無きAAのようです:2013/03/04(月) 20:12:11 ID:GdrYit120
突然、携帯電話のバイブがフラットの床を激しく打った。
('A`)「あっ」
デレーニャからだ。
('A`)】「もしもし・・・あの・・・昨日はごめん・・・、あ、そう・・・ならいいけど・・・」
('A`)】「・・・・・・へっ?」
('A`;)】「おいおい、どういうことだ?」
('A`;)】「え?もう玄関まで来てるって?」
ドクオは慌てて玄関の扉を開けた。
ζ(゚ー゚*ζ「ハイ」
ζ(゚、゜*ζ「あれ、まだ着替えてないの?着替えて!早く!」
('A`)「あ、はい」
ドクオは急いで出社の準備をした。
ネクタイを締めながらドアの外に出た。
('A`)「ごめん、その、すいません、なんていうか」
.
123 :名も無きAAのようです:2013/03/04(月) 20:13:25 ID:GdrYit120
ζ(゚ー゚*ζ「うん。いいの、案内して」
('A`)「じゃあ」
Σ('A`)ドン
('A`)「・・・え?」
(●e●)「Hello」
サングラスを掛けた、スーツ姿の巨体の黒人がいる。
その者はサングラスを取って、ドクオを見下ろした。
(’e’)
('A`)「なんでセントジョーンズが・・・ここに?」
(’e’)「ズドラーストヴィチェ!」
(’e’)「オレ、ロシア語、スコシ、ベンキョウ。トモダチ、OK?」
('A`)「ダ、ダー」
124 :名も無きAAのようです:2013/03/04(月) 20:15:44 ID:GdrYit120
どうやら、こういうことらしい。
酒の勢いで仕事の事を愚痴ってしまった。
不利な条件で幾つか契約を結んでしまったらしい、ということ・・・。
自分は英語不得手なので、交渉もうまくできない、ということ・・・。
デレーニャはさっそうとしたビジネススーツ姿で、これまたよく似合う。
歩きながら言う、
ζ(゚ー゚*ζ「そんな胡散臭い相手、ちょっとこっちも脅すくらいでいいのよ」
(●e●)「オレ、トモダチ、カナシイノ、ユルセナイ」
ドクオは狐につままれたようであったが、だんだんと事態が飲み込めてきた。
('A`)「あ、あの・・・こちらの方は?」
ζ(゚ー゚*ζ「ボディーガード。泊が付くでしょ」
(●e●)シュッシュッ
「ボディーガード」は、シャドーボクシングを始めた。
('A`;)「ど・・・どうなるんだ・・・」
.
125 :名も無きAAのようです:2013/03/04(月) 20:18:55 ID:GdrYit120
やがて一行は先方の商社に着いた。
('A`)「Hello, Mr. Jeff Rin・・・」
( `ハ´)
すっかりドクオを舐めきっていた先方は、いつもの通り挨拶もせず傲然とテーブルに着いた。
しかしドクオに付いて入ってきた二人を見て、目を丸くした。
( ゜ハ゜)
ζ(゚ー゚*ζ「Hello, Nice to meet you Mr. Jeff Rin. My name is Rita Delenovskaya.
I'm project manager of his team, and just arrived last night.
I would like to talk about some issues and・・・」
(●e●)「・・・」
後ろには「ボディーガード」が控えている。さすがの先方も圧倒されているようだ。
ζ(゚ー^*ζ
デレーニャがドクオの隣に座りウィンクする。
ドクオはなんだかうまくいきそうな気がしてきた。
126 :今日はここまでです。出来れば毎日5レスずつ。thx:2013/03/04(月) 20:22:07 ID:GdrYit120
******
_, ,_
ζ(゚、゜*ζ「全くもってひどいわ、植民地時代や西部開拓時代の商社じゃないんだから」
('A`)「・・・そんなひどい内容だったの?」
_, ,_
ζ(゚、゜*ζ「まあ仮契約の段階でよかったけどね。
お膳立てだけさせられて、美味しいところは全部持ってくつもりだったのよ」
ζ(゚- ゚*ζ「あのお国のことだから、きっといいようにはさせないだろうけど。
とにかく、このまま行ってたらくだらないオーバーヘッドで大損害は免れようもないわ」
('A`)「た、助かった・・・ありがとう・・・」
ζ(゚- ゚*ζ「あなたのせいじゃないわ。きちんと信用できる会社を選ばなかったのが原因だったのよ」
('A`)「うん、上に報告を上げとくよ」
ζ(゚- ゚*ζ「いずれにしても資源開発は難しそう。リスクが大きすぎるわ」
「そこでね、」
彼女はそこで表情を和らげて言った。
ζ(゚ー゚*ζ
.
127 :名も無きAAのようです:2013/03/05(火) 18:18:06 ID:bHe9zoX.0
('A`)「観光?」
ζ(゚ー゚*ζ「そう。資源開発の線が無くなったから」
('A`)「まあ確かに観光開発の話もあったけど、正直・・・」
ζ(゚ー゚*ζ「正直?」
('A`)「なんていうか、得るものが無いと思うんだ」
ζ(゚ー゚*ζ「そんな事ないはずよ」
('A`)「そ、そうかなあ・・・」
('A`)「だって、何も無いところだよ」
ドクオはシベリアを懐かしく感じてもいたが、それは自分の故郷、煩わされない環境であるからであって、
こんな大都会の人間が来てもつまらなく感じるだろう、と思っていた。
都会はやはり刺激的だ。
仕事で来てなかったら、もうちょっといろいろ遊んでみたかった。
もっとも、デレーニャが一緒にいてくれればの話だが。
そこに気づいてドクオは不意に照れくさくなった。
帰って自分には何があるのか。
つまらない役所務め、死ぬほど長い通勤路、家に閉じこもってヲッカを煽るしか無い日々。
.
128 :名も無きAAのようです:2013/03/05(火) 18:19:50 ID:bHe9zoX.0
その灰色の日々の中に、一瞬よぎった顔。
∧,■!!
(=゚Д゚)
./.,= =l
恩師シベリアタイガー先生だ。
('A`)(先生・・・)
('A`)(先生・・・そういや・・・どうなったのかな)
恩師の行方は皆目見当がついていない。
ζ(゚ー゚*ζ「どうしたの?」
表情の変化を察して、デレーニャが案じた。
('A`)「ちょっと・・・心配してる人がいて・・・」
ζ(゚ー゚*ζ「ああ、あのシベリアタイガー先生のこと?」
('A`)「なんでわかったの?」
ζ(゚ー゚*ζ「だって言ってたじゃない、恩師が行方不明だ、って」
('A`)「あ・・・そうか」
ζ(゚ー゚*ζ「心配ね・・・例の薬物の件もあるし」
129 :名も無きAAのようです:2013/03/05(火) 18:21:57 ID:bHe9zoX.0
.
('A`)
そうだ。彼女は今取材中のSonicNerdのメンバーの死についていろいろ尋ねていたのだ。
SonicNerdのメンバーが死んだ。その原因はあの新種の薬物、HappyEndだと言われている。
そしてその成分はシベリア固有の植物から採れる。薬物に悪い連中は付き物だ。
最近のシベリアの治安の悪化、恩師の謎の行動、そして今回の疾走・・・。
その懸念について、デレーニャにも語っていたのだ。
気付いたというか、今、知った。
ζ(゚ー゚*ζ「でも、今あなたがここで気を揉んでも仕方ないわ。
向こうの人達だって探してるでしょうから、あなたはここで自分の分を果たさなきゃ」
('A`)「わかった・・・ありがとう。そうするよ」
そういえば彼女はそのことを取材する目的で俺にあの晩会っていたのではなかったか。
となると、
ζ(゚ー゚*ζ「うん。最近、うまくいきそうかなって思えるようになった。
・・・あなたに会ってから」
この言葉も大した言外の意味はない気がする。
130 :名も無きAAのようです:2013/03/05(火) 18:23:32 ID:bHe9zoX.0
またもや悶々としだしたドクオを遮るように言った。
ζ(゚ー゚*ζ「とりあえず観光を取り次いでくれるとこを探さなきゃ」
('A`)「そうだな」
('A`)「明日からいくつか売り込みをかけてみるよ、観光会社に」
ζ(゚ー゚*ζ「そんな、いきなり行っても門前払い食らうだけよ
プレゼンとかもしなきゃいけないんでしょ?」
('A`)「そうだよね・・・でも俺にはシベリアの良さなんかわからないよ」
ζ(゚ー゚*ζ「でもあなたの中に眠っているはずよ、それをよび醒ますような言葉があれば」
('A`)「俺作文苦手だからなあ・・・」
ζ(゚ー゚*ζ「大丈夫、きっと出来るよ」
('A`)「そうかなあ・・・」
ζ(゚ー゚*ζ「できるよ!そうだ、一緒に考える?」
.
131 :名も無きAAのようです:2013/03/05(火) 18:25:23 ID:bHe9zoX.0
その言葉に励まされてドクオは奮起した。
('A`)「努力するよ」
ドクオは思った。彼女は普通に良い人なのだと。
その善良さ、人間性を信じたい、と心から思った。
('A`)「ありがとう・・・君は・・・」
('A`)「いい人だな」
ζ(゚ー゚*ζ「ふふ、ありがと」
('∀`)「そういやおごるとか言ってておごってなかったな。
今日一日付き合ってくれたお礼だ、おごるよ、何がいい?」
ζ(゚ー゚*ζ「いや、おごってくれたじゃない、昨日」
('A`)「へっ?」
ζ(゚ー゚*ζ「2軒目のバーで私達だけじゃなく、セントジョーンズとバンドのメンバー全員の飲み代払ったのよ」
('A`)「そうか・・・それで」
セントジョーンズはこんなことに付き合ってくれたのか。
そして少しがっかりもした。あの時、彼女とふたりきりで無かった、ということを知って。
132 :今日はここまでです。thx:2013/03/05(火) 18:26:59 ID:bHe9zoX.0
.
('A`)「そういや・・・セントジョーンズは?」
ζ(゚ー゚*ζ「ツケが溜まってる売人に出くわしたんだって。
それで、ドロン」
ζ(゚ー゚*ζ「普通にサンドイッチが食べたいな、ここらへんだと、そーねぇ・・・」
夕暮れの雑踏の中を二人はサンドイッチ屋を目指して歩いた。
ドクオが昨日の件で財布が空っぽになっていたことを知ったのは、食事の後だった。
結局、またおごってもらった。
******.
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最終更新:2013年03月11日 06:30