956 :ライスイン:2014/04/10(木) 21:32:46
1941年12月  東京 夢幻会会合場所

「近衛さんは重傷だが意識ははっきりしている。」

「何故あの野郎が近衛さんに絵遊説中とはいえ接近できたんだ?」

「酒と女に溺れる毎日だったから警戒対象から外れていた。」

「それにクスリにまで手を出していたようだ。射殺される直前は完全に正気を失っていたよ。」

「アメリカでも・・・か。でもロングがマトモな人間でよかったな。」


        「日米露三国同盟~落日の欧州」10



 1941年11月、イギリス及びイギリス連邦は瓦解の危機に直面していた。
カナダが連邦を離脱し完全独立。併せてインドに派遣される予定だったマウントバッテン中将の陸軍部隊と
それを護衛していたフィリップス中将の東洋艦隊が任地へ向わずカナダへ向きを変え亡命したからだ。
その動きに呼応するかのように各地で英軍の離反とカナダへの亡命、又は帰属宣言が相次いだ。
アジア方面だけでも極東軍司令官パーシヴァル中将がシンガポールや香港の総督達と図ってカナダへの
帰属を宣言。同じく本国や隣接する豪州の暴走に付き合いきれなくなったニュージーランド(※1)もイギリス連邦や
同盟からの離脱を宣言し、日米へ接近して言った。
 インドでは総督や軍司令官がイギリス本国への忠誠を宣言したものの、所属部隊の暴動や離脱(※2)だけでなく
インド市民の反英・反国民議会派暴動も多発する有様だった。
カリブ海や中南米のイギリス植民地もカナダへの帰属を宣言し、イギリス連邦に残ったのは南アフリカ共和国と
アフリカ各地の植民地及びオーストラリアにフォークランド諸島という状態だった。唯一幸いだったのは有力な
海軍部隊の亡命がフィリップス中将の艦隊だけであったという。

 この状況下でイギリス、そして同盟各国を恐怖に陥れる情報が入った。
ロシアのスターリン首相の提案でハワイにて日米露の首脳会談が行われるというのだ。
同盟陸軍の度重なる攻撃を跳ね返し、一進一退の攻防を繰り広げていたロシア帝国であるが回を重ねるに連れて
負担や損害が増してきつつあった。東部戦線では数はほぼ互角で質は上回る状態であったがインド兵や植民地兵を
督戦隊付きで突撃させたり、捕虜の集団に銃を突きつけて地雷原を歩かせたり肉の壁にしたりなど形振り構わぬ
外道戦法に苦戦していた。
 そんな中でスターリン首相は皇帝に対して日本やアメリカと軍事同盟を結び、それを軸にして世界規模での
対同盟戦争を行う事を提案(※3)、皇帝の承認を得た上で議会に図り同盟を結ぶ事になった。
そして日米との調整の結果、12月24日にハワイで首脳会談を行い、軍事同盟の締結を行う事になっていた。

 この情報に対して同盟は決断した。最早日米の参戦は避けられない。ならば先制攻撃を加えて可能な限り
日米の戦力を削ぐと共に、親英派(※4)を動かしてクーデターを起こさせて混乱に落としいれる為に
行動を開始した。

958 :ライスイン:2014/04/10(木) 21:33:22
1941年12月6日未明、日米は宣戦布告なき攻撃を受けた。
アメリカでは大西洋上を本土に向けてイギリス空母部隊(カレイジャス、グローリアス、ヴィクトリアス、フォーミダブル)が
接近しているのを発見し大西洋艦隊が警戒の為出撃した。
その隙にフランス海軍の潜水艦シェルクーフ及び同型艦のヴィルヌーブがニューヨーク港に侵入し搭載する20.3cm連装砲を
港湾及び市街地に向けて発射した。砲弾の殆どはこの時の為に用意された毒ガス砲弾だった。
さらにエンパイアステートビルに自爆機(※5)が突入し同ビルは崩壊。またパナマ運河にも3つの関門近くで中立国の船を
装った工作船が自爆して復旧に半年はかかる損害を与えた。
 そして何より致命的だったのはホワイトハウスに対する自爆テロを含めた特攻同然の攻撃を許した事だった。
警備の海兵隊や警察が応戦、数は少なかった為に短時間で全滅させる事が出来たが毒ガスが使用されたことで被害が拡大し
多数の死者を出す。そして最悪な事にその死者の中にはルーズベルト大統領が含まれていた。

 一つ弁解するならばOSSやFBI、そして軍はけっして無能ではなかった事だ。
ノーフォーク軍港を狙ったUボートは全て返り討ちにし、一連の攻撃での軍艦の損失をゼロに抑えた。
また攻撃に呼応して事前に拘束出来たし囮ではあったがイギリス空母部隊を追い散らした。そしてフィリピンなどの
海外拠点への攻撃は全て防げた。2隻のフランス潜水艦も砲弾を撃ち尽くして浮上した所を爆撃で沈めた。
ただ・・・同盟側の形振り構わぬ攻撃が警戒を強めていたとはいえ未だ完全な戦時体制へ移行していなかったアメリカの対応能力を
上回っていたのだった。
 一連の攻撃でアメリカは市民に3万人以上の死傷者を出し、象徴であったエンパイアステートビルが崩壊。パナマ運河が半年間使用不能になり
、そしてルーズベルト大統領が死亡するという建国以来最悪の損害を受けた。


 日本では内務省や特務機関、それにMMJの同志達が事前に警戒していたお陰で被害は少なかった。それでも航行中の船団に対する攻撃や
海外での日本人・日本商社襲撃が相次いで少なからず被害がでていた。日本本土で計画されていた毒ガステロに関しても事前に拠点を
摘発し防ぐ事が出来ていた。そんな中で唯一の大きな被害として嶋田人事で退役させられていた女好きの某元海軍中将(※6)とその一派が
演説中の近衛首相を襲撃、首相が重傷を負うという事態が発生した(襲撃犯たちはその場で全員射殺)。

 これ等の攻撃の報告を聞いた同盟首脳部は一様に安堵した。日本の損害が少ない事は残念だがこれほどの損害を受ければ暫くは参戦できない。
若しくは上手く戦論を誘導できれば厭戦気分を煽って参戦を不可能に出来るかもしれない・・・そう楽観していた。
しかし事態は彼らの想像を超える速さで進展した。

959 :ライスイン:2014/04/10(木) 21:33:56
アメリカではルーズベルト大統領の死亡が伝えられて直ぐに、西海岸で遊説中だったヒューイ・ロング副大統領(※7)が現地にて宣誓式を
行い大統領に就任。2日後に除染完了の報告を受けた後にホワイトハウス入りをした。幸い閣僚は全員無事であった為、副大統領にガーナー
を任命した上で国民に向けて演説。対同盟戦争へ向けて団結を訴えると共に予定通り首脳会談を行う事を宣言した。
 日本でも予定を早めて嶋田海軍大臣が首相に就任し完全に戦時体制へ移行した。

 そして12月24日、ハワイに嶋田首相・ロング大統領・スターリン首相が集まって首脳会談が開かれた。
会談後、世界が注目する中での記者会見が行われ、日米露3ヶ国の軍事同盟締結と日米の同盟諸国に対する宣戦布告が宣言された。
この瞬間をもって欧州・アフリカに限定されていた戦争が”世界大戦”に移行した。
またこの3国同盟には後にカナダやイタリア・オランダ等も含め、多数の国家が参加するのだった。


※1:同盟には加盟させられていたが国民の反対で軍は派遣していなかった。

※2:代金の遅配・欠配及び踏み倒しに激怒したグルカ傭兵部隊やガンジー率いる国民議会派の対英協力方針に反発するインド兵等。
   中にはウィンゲート准将の様に指揮下の部隊ごと、輸送船を手配してシンガポールへ亡命する英軍部隊もあった。

※3:日本からMMJロシア支部長であるベリヤを通してスターリンへ伝えられた。

※4:賄賂やハニートラップで骨抜きにされた連中。

※5:乗員は狂信的なアメリカナチス党員。なおアメリカのナチス党は既に摘発・壊滅していてこの乗員は残党の1人。

※6:まあ・・・誰だかお分かりになると思うのであえて名前は伏せさせて頂きます。

※7:この世界線では反英・反独・反共産主義で関係のある企業が日本やロシアとの取引で収益を上げていることから比較的親日親露。

960 :ライスイン:2014/04/10(木) 21:34:34
おまけ  1941年12月 参戦直前のアメリカ海軍主力艦

○戦艦

テキサス級(140000t、20インチ3連装砲×4、30kt):テキサス(1943年5月)、ユタ(1943年10月)、
                         コネチカット(1944年2月)、ネブラスカ(1944年6月)

フロリダ級(80000t、18インチ3連装×3、30kt):フロリダ(1942年1月)、オレゴン(1942年4月)、
                       ルイジアナ(1942年8月)、ウィスコンシン(1942年12月)

モンタナ級(史実モンタナ級+18インチ連装砲):モンタナ、オハイオ、ミシガン、イリノイ

ワシントン級(アイオワ級):ワシントン、ミネソタ、ロードアイランド、カンザス、ニューハンプシャー、ヴァーモント

ノースダコタ級(ティルマン戦艦、80000t、18インチ3連装×1、連装×2、25.2kt):ノースダコタ、サウスカロライナ

サウスダコタ級(Dプラン):サウスダコタ、インディアナ、モンタナ、ノースカロライナ、ヴァージニア、ニュージャージー

コロラド級:コロラド、メリーランド、ウェストヴァージニア

テネシー級:テネシー、カリフォルニア

ニューメキシコ級:ニューメキシコ、ミシシッピー、アイダホ

ネヴァダ級:ネヴァダ、オクラホマ

ペンシルヴェニア級:ペンシルヴェニア、アリゾナ

○巡洋戦艦

レキシントン級:レキシントン、コンステレーション、サラトガ、レンジャー、コンスティチューション、ユナイテッドステーツ


○正規空母

ミッドウェイ級:ミッドウェイ(1944年1月)、セオドア・ルーズベルト(1944年5月)、コーラルシー(1944年10月)

エセックス級(就役済み):エセックス、イントピレッド、フランクリン、タイコンテロガ、ランドルフ、バンカーヒル

(建造中、1942以降就役):ハンコック、ベニントン、ボクサー、ボノムリシャール、レイテ、キアサージ、オリスカニー
             レプライザル、アンティータム、シャングリラ、レイクシャンプレーン、タラワ

ワスプ級:ワスプ

ヨークタウン級:ヨークタウン、エンタープライズ、ホーネット

他、軽・護衛空母多数。

961 :ライスイン:2014/04/10(木) 21:35:11
○オランダ海軍

アムステルダム級戦艦(旧米ニューヨーク級):アムステルダム(ニューヨーク)、レーワルデン(テキサス)

パレンバン級空母(旧米ラングレー):パレンバン


○亡命ノルウェー海軍

オスロ級戦艦(旧米ワイオミング級):オスロ(ワイオミング)、ベルゲン(アーカンソー)


○カナダ海軍

キングジョージ5世級戦艦:キングジョージ5世、プリンスオブウェールズ

オタワ級戦艦(旧米フロリダ級):オタワ(フロリダ)、バンクーバー(ユタ)

レナウン級巡洋戦艦:レパルス

イラストリアス級空母:イラストリアス、インドミダブル

アークロイヤル級空母:アークロイヤル

※艦艇の供与は同盟側の抗議を無視して行われていた。

次話:「日米露三国同盟~落日の欧州」11

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最終更新:2014年11月28日 14:38