749 :ライスイン:2014/04/07(月) 22:08:20
1941年10月 東京 夢幻会会合場所


「何だか我が国が介入する必要が無い様に感じますね。」

「そういうわけには行かないだろう。国民の同盟に対する悪感情は上昇するばかりだ。」

「それにしてもあのタイミングでバドリオが裏切るとは。」

「空気が読めない奴だな。だが・・・史実のハルノートみたいな文書を英国から貰うとな。」

「劣化具合が激しすぎますね、我々がこんな要求を呑むと思っているんでしょうか。」



          「日米露三国同盟~落日の欧州」09


 1941年10月2日、大日本帝国政府はイギリスから外交ルートを通じて要求を突きつけられた。
世界平和と英日友好および欧州との関係改善の為とハリファックス首相が起案した
通称”ハリファックスノート”は以下の内容であった。

1:イタリア、オランダ、ロシアへの物資供与・義勇軍派遣などの支援停止。

2:バドリオ総統率いるローマ共和国の承認及び友好関係の樹立。

3:同盟各国に対し最恵国待遇を与え、必要とする資源を有効価格で輸出する事。

4:蒋介石率いる中華民国政府の反乱勢力討伐への支援。及び再統一後の大陸権益の無償譲渡及び
  大陸からの撤退。

5:保護下にある朝鮮王国の管理を大英帝国に移管する。

6:オーストラリアから賠償として譲渡された旧ドイツ植民地をオーストラリアへ返還する。
  また同地の資産も無償譲渡する。

7:同盟各国への資金援助。

8:上記の事項を全て履行した後、同盟へ加盟。そして同盟が要求する兵力を欧州へ派遣、同盟の指揮下において
  運用する。

9:兵力派遣に伴う防衛力不足並びに治安の悪化に対応する為に日本領土に同盟軍及び警察を駐留させる。
  それに伴う費用は全て日本側が持つ。

750 :ライスイン:2014/04/07(月) 22:08:54
この余りにもふざけた内容の文書を手渡された近衛首相は言葉を失った。対して文書を渡した駐日英国大使は

「受け入れるかは貴国次第ですが英日、そして欧州との友好と世界平和の為には是非とも受け入れるべきですな。」

と上から目線で伝えた後、大使館へと戻っていった。
再起動した近衛首相は会合メンバーにこの事を伝えると共に首相官邸へ内外の記者を集め会見を行った。
そして公開されたハリファックスノートの内容に同盟各国を除く世界は余りにも酷い英国外交の劣化ぶりに哀れみを憶えると
共に英国首脳部の精神状態を疑った。
 また1日遅れでアメリカにもイーデン外相が来訪して同様の要求を突きつけた。此方はイーデンノートと呼ばれたが、文書の冒頭の
”アメリカの再植民地化を防ぐ為に”という文にルーズベルト大統領が激怒。イーデンの顔面に緑茶を吹っ掛けた後、警護の海兵隊員に
外へ叩出すよう命じた。その後、緊急招集された議会で本件を公表。怒り狂った上下両院は満場一致で拒否すると共に対ロシア・イタリア
  • オランダへの援助増加と戦時動員の準備及び兵器増産を決定した。
だが英国を含む同盟各国は日米に対して要求を受け入れさせる為に通商条約を破棄したり資産凍結・接収を示唆するなど
圧力をかけ始めた。そんな中・・・世界は再び驚愕に包まれることになる。

 1941年10月5日、仏独がスイスに侵攻した。永世中立国であり外交交渉の場でもあり、各国が資産を預けているスイス銀行が
存在するこの国への軍事侵攻は予め連絡を受けていたイギリスを除き、同じ同盟諸国すら驚愕させた。
宣戦布告無しに行われたこの暴挙に対し各国は非難声明を出したが仏独は

「永世中立を標榜しながら同盟諸国の市場を荒し不況を助長した。」
「オランダ・イタリア・ロシアに多額の資金援助をしている。これは明確な敵対行為だ。」
「ユダヤ人に金を渡し、同盟加盟国内でテロを計画させた。」

と主張し

「この様な国家の存在を許しては欧州各国だけでなく世界平和への大きな障害となる。」

とまで言い切って侵攻を正当化した。
この明らかな根拠の全く無い言いがかりに各国は唖然としつつも対応策を協議した。

1941年10月12日、遂にスイス全土が陥落した。
欧州の戦乱を危惧し、国土の要塞化と軍備増強を進めていたスイスだったが予備部隊や徴収したばかりの新兵部隊までも動員し、
圧倒的な戦力で攻め込んだ仏独の前に遂に降伏したのだった。
 全土を制圧した仏独はさっそく国家憲兵隊やSS部隊を投入して戦犯の摘発や処刑を進めると共に、スイス銀行へ押し入り
同盟加盟国を除く国家の預け入れ資産を官民問わずに接収した(後に同盟各国で分配)。
更にエリコン社を接収し自分達の都合の良いように会社を再編成(※1)した。

751 :ライスイン:2014/04/07(月) 22:09:36
このとんでもない暴挙に各国(同盟以外の国)は激怒、特に資産を奪われたウォール街のハゲタカやお金持ち、そして
倉崎や三菱などの財閥や辻~んは特に怒り心頭で政府に対して対応を求めた。
そして1941年10月20日、ハワイにて近衛首相とルーズベルト大統領が緊急に会談を行い、同盟に対して非難声明を発表。中でも

 「1ヶ月以内にスイスから撤退し資産を全て返還しない場合は共同して実力を行使する。」 

という部分に同盟は驚愕した。柔らかい表現ではあったが明確な”宣戦布告する”という意味合いに恐怖した同盟は特使を日米に
派遣して”資産接収を正当化しつつ日米の介入を避ける”為の交渉に当たったが聞き入れられるはずも無く、時間だけが過ぎていった。

 そんな中、英連邦に所属するカナダが英連邦及び同盟からの離脱を表明した。
先の大戦後から続くイギリスの暴走に嫌気がさしていたカナダ。復興も本国優先どころかアメリカに近く経済関係が深い事を理由に
他の連邦所属国よりも支援が低く抑えられていた。おまけに世界が経済恐慌に突入してからは資源や製品を安く買い叩かれ、本国の
金蔓扱いされ、不満が次第に高まっていた。
戦争に突入してからは幸いにもアメリカの存在を理由にしてカナダ軍の派遣を拒否する事が出来、更にイギリス軍が欧州やアフリカに
派遣されたのでニューファンドランドなどカナダ周辺の英領の警備に軍を駐留させている状態であった。
 そんな状態で度重なる同盟の暴走にこれ以上付き合いきれなくなったカナダは首相のウィンストン・チャーチル(※2)が同盟の
行動を批判する発言を多く発していた為に総督という形でカナダに追放されていたエドワード8世を国王にしてイギリスから
完全独立することを議会に緊急提案。満場一致での賛成を得てエドワード8世を説得した。
 そして世界に向けてカナダ王国(※3)の独立と英連邦・同盟を宣言。その翌日にチャーチル首相がアメリカを訪問して
ルーズベルト大統領と会談。アメリカ・カナダ安全保障条約(※4)を締結した。
 イギリスを含む同盟各国はこの事態に驚愕しアメリカとカナダを批判。武力制裁を匂わせたが時既に遅く、締結から3日後には
カナダ本土及びニューファンドランドに有力なアメリカ軍が展開。更にはデンマーク亡命政府の了承を経てアイスランドにも
アメリカ軍が進出した。
 おまけに政府や軍の方針に嫌気がさした英軍の部隊単位での亡命(※5)も発生していた。

 これらの事態を受けて同盟各国は日米の参戦は不可避と判断。参戦を遅らせ、若しくは参戦自体を不可能にさせる為に
更なる暴挙に走るのだ合った。


※1:役員全てを同盟各国から派遣。同盟企業にライセンスやパテントを格安で使用させ、その他の国の企業には使用料を
   大幅に値上げさせる等、完全に自分達に都合がよい様にした。

※2:大戦後の英国の劣化暴走に落胆しカナダへ移って政治家を続けていた。なおカナダの離脱後、イギリス政府はチャーチル歩兵戦車
   の生産停止を決定。そして名称を”チェンバレン歩兵戦車”に改称している。

※3:主要閣僚はカナダ国王エドワード8世、首相ウィンストン・チャーチル、内相オズワルド・モズリーなど

※4:米軍を特定のカナダ本土地域及び編入宣言したニューファンドランドに駐留させる代わりにカナダ防衛に協力させる内容。

※5:フィリップス中将指揮下の東洋艦隊及びマウントバッテン中将指揮下のインド派遣軍など。主な戦力は
   戦艦:キングジョージ5世、プリンスオブウェールズ、
巡洋戦艦:レパルス
   空母:アークロイヤル、イラストリアス、インドミダブル
   陸軍:自動車化歩兵師団×2、戦車旅団×1   他にも亡命部隊あり。

752 :ライスイン:2014/04/07(月) 22:11:15
おまけ    1941年末、日米参戦直前の同盟海軍主力艦状況

○英国

クイーンエリザベス級戦艦:クイーン・エリザベス(大破着底・復旧のめど立たず)、ウォースパイト(大破着底・復旧のめど立たず)、
             バーラム(撃沈)、マレーヤ、バリアント

ロイヤルサブリン級戦艦:ロイヤル・サブリン、ロイヤル・オーク、リヴェンジ、レゾリューション、ラミリーズ

ネルソン級戦艦:ネルソン、ロドネー

レナウン級巡洋戦艦:レナウン(撃沈)、レパルス(カナダ亡命)

フッド級巡洋戦艦:フッド、リチャード1世、ドレーク、シェイクスピア

キングジョージ5世級戦艦(史実ライオン級):キングジョージ5世(カナダ亡命)、プリンス・オブ・ウェールズ(カナダ亡命)、
                      デューク・オブ・ヨーク、アンソン、ハウ

超巡洋戦艦:???(44就役予定)


空母(同型艦なし):フューリアス、アーガス、イーグル、ハーミーズ、アークロイヤル(カナダ亡命)

カレイジャス級空母:カレイジャス、グローリアス

イラストリアス級空母:イラストリアス(カナダ亡命)、ヴィクトリアス、フォーミダブル、インドミダブル(カナダ亡命)
           インプラカブル(44年就役予定)、インディファティカブル(44年就役予定)

コロッサス級空母:建造中、但し資材・資金不足により完成のめど立たず。


○フランス

クールベ級戦艦:クールベ、フランス、パリ、ジャンバール

ブルターニュ級戦艦:ブルターニュ(撃沈)、プロヴァンス(撃沈)、ロレーヌ(撃沈)

ノルマンディー級戦艦:ノルマンディー(大破、42年末復帰予定)、ラングドック(大破、42年末復帰予定)、
           フランドル、ガスコーニュ、ベアルン(大破、42年末復帰予定)

リヨン級戦艦:リヨン(大破、43年復帰予定)、リール(撃沈)

リシュリュー級戦艦:リシュリュー、ナポレオン、ラファイエット(43年就役予定)、リッシュモン(44年就役予定)

クレマンソー級空母(アークロイヤル準同型、英国より技術提供):クレマンソー(43年就役予定)、ジョッフル(44年就役予定)

753 :ライスイン:2014/04/07(月) 22:12:32
○ドイツ

リュッツォー級装甲艦:リュッツォー、アドミラル・グラーフ・シュペー

ビスマルク級戦艦(英国製42口径38.1㎝砲装備):ビスマルク

バイエルン級戦艦(英国より返還、英国製42口径38.1㎝砲に換装):バイエルン、バーデン

H41級戦艦:フリードリヒ・デア・グローセ(44年末就役予定)、カイザー・バルバロッサ(45年末就役予定)

グラーフ・ツェッペリン級空母:グラーフ・ツェッペリン(42年末就役予定)、ペーター・シュトラッサー(44年就役予定)


○ギリシャ

戦艦:アレクサンドロス(旧名アイアンデューク、撃沈)

装甲巡洋艦:ゲオルギオス・アヴェロフ(撃沈)


○スペイン  エスパーニャ級戦艦:アルフォンソ3世、ハイメ1世


○南アフリカ

プレトリア級戦艦(バイエルン級を英国製主砲に換装の上、引渡し):プレトリア(旧名:バーデン)、キンバリー(旧名:ヴュルテンブルク)

○オーストラリア

巡洋戦艦オセアニア(旧名、改ライオン旧巡戦タイガー 英国海軍にて運用中、開戦後に移管予定)

次話:「日米露三国同盟~落日の欧州」10

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最終更新:2014年04月11日 21:25