404 :ライスイン:2014/06/09(月) 15:37:12
1944年3月  東京・夢幻会会合場所


「まさかジョンブルが菊水一号モドキをやらかすとはな。」

「でがそのお陰で仇を討てて、あのふざけた名前の巡洋戦艦を冥府に送ってやれたな。」

「ですね。それにしてもアメリカも派手にやりましたね。」

「いくら現場の暴走とはいえナチがまたやりやがったからな。それの報復だろう。」

「我々もやりましたけど。」




               「日米露三国同盟~落日の欧州」18 修正&追加版


 1944年も2月に入ると欧州同盟各国はもう助かる見込みが無いくらい状況が悪化していた。
スペイン全土を制圧した米軍・カナダ軍を中心とする連合軍がフランス側に侵攻し始め、イタリア軍も精鋭の山岳部隊や空挺師団を用いてスイス解放作戦を開始。
バルカン半島は完全にイタリア・トルコ軍に制圧されていた。
ハンガリーではドイツ軍が連合軍と降伏交渉をしていた執政のホルティ提督を爆殺(※1)し、超親ドイツ政権を打ち立てたために激戦地帯となり国土が著しく荒廃。
またノルウェーも軍港のある南部の一部を除いてロシア軍や北欧各国の軍(※2)に奪還されていた。

 同盟の主要国でもフランスは兵器生産能力をほぼ喪失(※3)して定期便の迎撃も満足に出来ず、さらに便の一部が大規模なブドウ畑などに焼夷弾をばら撒き、
おまけに爆弾の一部がワインの生産・貯蔵設備の多くが破壊された。そのお陰で元から士気が低かったフランス軍の士気が著しく低下してしまった。

 ドイツにいたっては更に悲惨でシュペーア軍需相の死去により兵器生産が著しく混乱し前線への補給が満足に行えなくなっていた。
更には状況の悲観からモルヒネの服用が大幅に増加していたゲーリングが中毒により死亡。後を継ぐべき有能な将官達が前線指揮で動けない状況下で
またしてもヒムラーが動き出し空軍の指揮権を獲得。親衛隊長官/陸軍総司令官/空軍総司令官ヒムラー国家元帥という悪夢が誕生した。
 これによって元から激しかった国防軍と親衛隊(一部は除く ※4)の軋轢は大きくなり、前線ではその横暴さから親衛隊と陸軍の銃撃戦が多発。中には
督戦任務の親衛隊を撲滅した後、ロシア軍に投降する部隊もあった。
 そして親衛隊でもディートリヒやハウサーなど比較的マトモな指揮官はヒムラーに反発し、親衛隊内部でも大きく亀裂が走っていた。

 更に2月25日、ドイツ南部で連合軍と抗戦していた親衛隊の一部が独断で毒ガスを使用。対して被害は出なかったが連合は再びの暴挙に対して激怒。
報復として米軍が開発した地対地ミサイル”レッドストーン”を300発、日本軍も試作の移動式短距離地対地ミサイル(初期型スカッド相当)100発を
ドイツ南部の諸都市に対して発射。ついでにベルリンへ富嶽とB-36を差し向けた。

405 :ライスイン:2014/06/09(月) 15:37:43
そして1944年3月1日、イギリス本土のスカパフロー軍港から英国海軍最後の水上艦隊が出撃しようとしていた。
これまで何故か爆撃目標にならずに済んでいた(※5)同地では盛大な出撃式典が挙行され、基地内にある高さ10mのジェリコー提督の銅像に見送られながら
艦隊は出撃して行った。艦隊編成は

○旗艦:超巡洋戦艦ジョン・ジェリコー  ○軽空母コロッサス  ○軽巡洋艦リアンダー  ○トライバル級駆逐艦×8

司令官は元地中海艦隊司令官のカニンガム大将。彼は当初は出撃を渋ったがこのまま名誉が地に堕ちて滅び行く祖国を見るよりはと出撃を決意していた。
攻撃目標は連合軍の物資集積拠点となっているポーツマスであった。

 連合軍は比較的早い段階から英国艦隊の出撃情報を掴み、近海を航行する予定の船団に退避勧告を出すと共に巨大な艦隊を集結させて哀れな英国艦隊を
叩き潰そうとした。しかし英国側は艦隊の出撃に併せて各地の戦力を総動員。数百隻単位の急造魚雷艇や特攻ボート、1000機近い特攻機に加えてランカスターや
ハリファックスにボーフォートなど残された優良な航空戦力を各地の連合軍艦隊に叩きつけて一時的にだが著しく混乱させる事に成功。その隙に艦隊は出航した。

 3月2日昼頃、北海を最大の難所であるドーバー海峡目掛けて航行していた英国艦隊は偵察中のソードフィッシュからの報告で色めき立った。自分達から
さほど遠くない位置に恐らく退避勧告が間に合わなかったであろう連合軍の大規模輸送船団が航行しているとの報告が入ったのだ。
これはオランダ解放作戦に向けての物資をノルウェーに運んでいた日本の船団であった。
 この事態にカニンガム大将はポーツマスへたどり着くのは最早不可能と判断し全力での船団攻撃を命令。コロッサスに搭載機全てを船団攻撃に向わせるように
命令し、艦隊を突撃させた。

 一方日本船団では臨時に船団司令官を勤めていた草鹿龍之介中将は偵察機発見と同時に護衛空母に戦闘機を上げる様に指示した後、水偵による偵察を実施。
そして防空の為の戦闘機が上がって暫くした後にコロッサスの攻撃隊が到着した・・・・があっけなく蹴散らされた。英国が放った攻撃隊はフルマー12機
ロック8機・ソードフィッシュ12機・アルバコア12機という編成で日本側の10隻以上の護衛空母から飛び立った50機前後の96式戦闘機(最終型)に太刀打ちできず、
船団に到達する前に全て撃墜されてしまう。
防空戦闘が終了した後、草鹿中将は攻撃隊を編成すると同時に船団の護衛から一部を抽出して英国艦隊を迎撃する事にした。
日本側の攻撃隊は60機と少なかったが戦闘機すら対艦ロケット弾を搭載していた。それに自分達の機体より高速なせいか対空火器の照準が追いつかず一方的な
攻撃を許してしまった。その結果。ジョン・ジェリコーは後部の第3砲塔を潰された挙句、速度が15ktまで低下。コロッサスとリアンダーは撃沈され、
駆逐艦も半数が撃沈され残りもロケットと機銃掃射により戦闘能力を損失した。

 夕方に差し掛かった頃、遂に日英の水上艦同士が激突した。

日本側 ○旗艦:巡洋戦艦金剛(草鹿中将乗艦)  ○重巡洋艦:青葉、衣笠(※6)  駆逐艦:暁、響、雷、電

英国側 ○旗艦:超巡洋戦艦ジョン・ジェリコー(第3砲塔破壊、速力15ktに低下) ○トライバル級駆逐艦×4(中~大破)

 戦闘開始から10分も経たない内に英国側の駆逐艦は全て沈められ、ジョン・ジェリコーは滅多打ちに会っていた。自身の放つ18インチ砲は全くと言って良いほど
当らず、大して日本側からの砲撃は正確を極めていた。
 戦闘開始から20分が経過したとき、金剛の放った砲弾がジョン・ジェリコーの艦橋を直撃し、カニンガム大将らが全滅。直後に複数の魚雷の直撃によって
遂に英国海軍の英雄の名を冠した巡洋戦艦は派手に爆発して轟沈した(※7)。

 この海戦により同盟は海軍力を損失(潜水艦や魚雷艇が少数生き残っている)。またこれが大戦で行われた最後の海戦になった。

406 :ライスイン:2014/06/09(月) 15:39:21
※1:史実におけるミッ○ーマウスやパンツァーファウストを実施できる余裕が無かった為。

※2:スウェーデン、フィンランド、自由デンマーク、自由ノルウェーなど。

※3:但し小火器やパンツァーファウストの生産能力は残っていた。

※4:ハウサーやディートリヒなど比較的マトモな指揮官が率いる武装SS部隊は国防軍に同調して一般SSと対立していた。

※5:理由は・・・・・察して下さい。

※6:日本海軍2タイプ目の重巡洋艦で古鷹型の拡大改良型。10000t、50口径20.3センチ連装砲×4 32.5kt

※7:この時、金剛乗員の中に「皆の仇討ったネ~」という声が聞こえたと証言する者がいたらしい。

おまけ

○金剛型巡洋戦艦(金剛を除き、ユトランド沖で損失)。 

 1番艦:金剛 2番艦:比叡 3番艦:榛名 4番艦:霧島 5番艦:羅臼 6番艦:十勝 7番艦:大山 8番艦:剣

○扶桑型戦艦

 1番艦:扶桑 2番艦:山城 3番艦:伊勢 4番艦:日向 

 5番艦:若狭(オランダに売却→ウィレム3世。アムステルダム作戦にて撃沈)、 6番艦:隠岐(オランダに売却→ゼーゴイセン。アムステルダム作戦にて撃沈) 

 7番艦:伊賀(トルコに売却→スレイマン1世) 8番艦:志摩(トルコに売却→メフメト2世)

次話:「日米露三国同盟~落日の欧州」19

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最終更新:2014年06月16日 22:16