272 :ライスイン:2014/05/26(月) 20:20:40
1943年11月 東京・夢幻会会合場所


「圧倒的ではないか我々は。」

「フラグになりかねないからそういう台詞はやめてくれ。」

「ですけどロシア軍はワルシャワに迫ってますしイタリアは国土を奪還。」

「おまけに同盟は慢性的な油不足。ハンガリーの油田や人造石油だけでは足りませんからね。」

「スウェーデンやフィンランドも敵に回したお陰で包囲されたも同然だからな。」




                   「日米露三国同盟~落日の欧州」16



 1943年11月、連合軍は怒涛の勢いで攻勢を行っていた。
これまでの同盟軍による外道行為によって連合軍は司令官から兵卒まで怒りに駆られており、法を守りつつも容赦はしなかった。

 イタリア軍は日米などの援護を受けつつ国土をほぼ奪還し、一部部隊をフランスに侵入させていた。
ドイツ側であったローマ共和国は完全崩壊し所属部隊は連合に投降しようとする者もおおかった。しかし大半が投降に成功する前にレジスタンスや住民に裏切り者としてリンチされ、到着したイタリア軍も残敵掃討より投降したローマ共和国兵の保護を優先しなければならない状態であった。
 因みに大統領のバドリオは少数の側近や護衛と共に難を逃れてドイツ国境を目指していた途中でゲリラ活動を行っていたイタリア軍国境警備部隊の生き残りの兵士達に捕捉され銃撃戦の末死亡。その死体は過度の銃撃で挽肉状態になっていて、所持品などが無ければ判別できないような有様だった。

 スペイン戦線では米軍・カナダ軍の快進撃が続き、既に国土の8割を占領。あまりの進撃速度にフランス・ドイツ軍の援軍すら間に合わない状況で
フランコ総統は北部のビルバオに臨時首都を設けて徹底抗戦を叫んでいたが軍や国民の士気は最低でサボタージュや脱走が相次いでいた。

 バルカン戦線ではルーマニアが陥落し旧ユーゴも連合軍がほぼ掌握。北部のフィウメにて北上してきたトルコ軍と東進したイタリア軍が握手を交わし、東部でも戦前の国境を回復したロシア軍がトルコ軍と互いに祝辞を述べ合う光景が広がっていた。

 そんな中で同盟に更なる凶報が飛び込んできた。連合がアイスランドの飛行場を大幅に拡張し、同盟本土に対する爆撃を大幅に強化するという計画が進められていて、既に大量の物資を満載した大規模船団がニューヨークからアイスランドに向けて出発したというのだ。
なんとしても船団を壊滅させて飛行場を破壊しなければならない。

初めは残存空母部隊を囮にして護衛を引き離した後に戦艦部隊を突入させる案が考えられたが空母自体が数が少なく、戦力差から吊り上げるまでも無く各個撃破される可能性が非常に高い事が判明。その為に残存艦艇を一気に投入する事で強引に護衛を突破する方針に決定(というより他に妙案が無い)。
同時に残された大型潜水艦に特殊部隊を乗せてアイスランドに接近させて破壊工作を行う事も決まった。

274 :ライスイン:2014/05/26(月) 20:21:15
○欧州同盟軍投入戦力

空母

イラストリアス級:ヴィクトリアス、フォーミダブル

クレマンソー級:クレマンソー

グラーフ・ツェッペリン級:グラーフ・ツェッペリン(※1)

他:フューリアス、アーガス

戦艦

クイーンエリザベス級:マレーヤ、バリアント

ロイヤルサブリン級:ロイヤル・サブリン、ロイヤル・オーク、リヴェンジ、レゾリューション、ラミリーズ

キングジョージ5世級(史実ライオン級):デューク・オブ・ヨーク、アンソン、ハウ

ノルマンディー級:フランドル、ガスコーニュ

クールベ級:クールベ、フランス、パリ、ジャンバール

ビスマルク級(英国製38.1㎝砲装備):ビスマルク

他の艦艇を合わせると空母6隻・戦艦17隻・重巡洋艦12隻(※2)・軽巡洋艦20隻(※3)・駆逐艦50隻・潜水艦20隻という文字通り総力出撃となった。
万が一これ等を失えば残されるのは建造中か長期修理中の艦ばかり。他にも出撃可能な艦艇はあるにはあったが備蓄資源の観点からこれ等のみとなった。
肝心の総司令官は英本国艦隊司令長官のトーベイ大将が就任。他にも空母部隊を指揮するソマーヴィル中将とフランス戦艦部隊を指揮するジャンスール中将
にビスマルク戦隊(※4)を指揮するリュッチェンスの3人が副司令官に選出された。

 1943年11月15日、同盟海軍は集結地であるスカパフローを出撃した。大艦隊の出撃であり、連合軍は容易に察知できた・・・が運が無かった。
実はこの時点で米艦隊の主力は修理などの為に東海岸に帰還していてアイスランド周辺海域に展開している有力な艦隊は
コロラド級3・テネシー級2・ニューメキシコ級3・ネヴァダ級2の旧式戦艦10隻のパイ中将率いる打撃部隊と
空母ワスプにインディペンデンス級軽空母6隻のフレッチャー中将の機動部隊に護衛空母18隻とフリゲート多数のスプレイグ少将の船団護衛部隊だけであった。
おまけに何故かアイスランド近海に濃霧が発生してかなり接近を許してしまった状態で戦闘が始まった。

 米海軍は優勢な空母戦力を利用して航空攻撃で同盟艦隊を撃破しようとしたが同盟側はアーガスを除く空母搭載機の殆どをシーファイアにしていて
数と性能で勝る米軍も思うように戦果は上げられなかったがそれでもビスマルクを撃沈しリュッチェンス中将を戦死させ、クールベとジャンバールを
撃沈しアンソンとハウを大破、巡洋艦以下の艦艇にもそれなりの損害を与えたが後方の空母に打撃を与える事は出来ず、同盟軍は更に進撃。
米軍との距離が縮まった所で総司令官トーベイ大将が苦々しい表情で一つの命令を下した。

「アーガスに命令、エクスカリバー隊を発進させよ。」(※5)

この命令に従い、強引に拡張した船体から無理矢理取り付けたカタパルトを使って20機の新型機”ブラックバーン・ライオンハート”(※6)が飛び立った。
それと同時に他の空母からも偵察・哨戒用に載せていた小数のソードフィッシュやフルマーに防空戦闘を生き残ったシーファイアが同行した。
米軍はレーダーにより攻撃隊を探知して迎撃機を発進させ熾烈な戦闘が始まった。しかし米軍は通常機に気を取られ、海面ギリギリを飛行していた
エクスカリバー隊に気付くのが遅れてしまった。そして気付いた時には前衛の戦艦群を越えて機動部隊に接近されていた。

276 :ライスイン:2014/05/26(月) 20:22:40
「各員、祖国への忠誠と義務を全うせよ。国王陛下万歳。」

短い命令がエクスカリバー隊隊長機から発信された直後、彼らは機体を上昇させた。
途中で対空砲火と負い付いて来た戦闘機により5機が撃墜されたが残った15機はワスプに3機、軽空母には2機ずつ突入した。
人類が始めて”意図的に実行した航空機による敵艦への体当たり・・・特別攻撃”の瞬間であった。
ライオンハートに搭載されていた爆弾が500ポンドとそれほど大型ではなく、またダメコンに優れていた為に沈没艦は出なかった。
しかし全艦が大破し、しかも旗艦ワスプは艦橋に特攻を受けたおかげでフレッチャー中将以下の幕僚全員が戦死し機能を失った。
もっとも投入した航空機全てを損失していたが・・・。

 米軍機動部隊を壊滅させた同盟軍は更に進撃を続け、遂に米旧式戦艦部隊との砲撃戦が始まった。
同盟側は数で勝る自分達が有利(アンソン、ハウ隊は、ビスマルク撃沈でも14隻で米軍は10隻)と見ていたが実際に戦闘が始まると大いに苦戦していた。
米軍側は16インチ砲8門のコロラド級が3隻で他の7隻は14インチ砲を10~12門装備。対する同盟軍は16インチ砲は9門装備のヨーク1隻のみ。
15インチ装備のR級5隻が居るがフランス艦は12~13.5インチでバラツキが大きかった。おまけに米軍側は低速だが重装甲で高性能レーダーを全艦が装備していた。

 戦闘が始まると同盟軍側は一部の戦艦を分離させてアイスランドへ突入させようとしていた。しかし高速を発揮できる主力艦が旗艦のデューク・オブ・ヨーク
しかなく、砲戦を続けて米軍を撃破するしかなかった。・・・しかし天は同盟軍を見放した。
砲戦が始まって1時間が経過したときに船団護衛部隊の護衛空母から飛び立ったワイルドキャットとドーントレスの編隊が来襲。数は少なかったが機銃掃射と
急降下爆撃で同盟軍を苦しめた。おまけに偶然近海を航行していたフィリップス大将率いるカナダ艦隊(※7)まで到着し、ここに同盟軍の命運は決定した。

 戦闘の結果、同盟軍は投入した艦艇のほぼ全てを損失。大破離脱中のアンソンとハウも日本海軍の伊8及び伊19の雷撃により撃沈された。
米軍は主力艦に沈没こそ無かったが全艦が大破(カナダ艦隊には目立った損害なし)していた。

 この戦闘により連合軍は同盟側の海軍力をほぼ壊滅させた。しかし戦闘により警戒が薄くなった所へ同盟軍潜水艦部隊の接近を許してしまい、
艦砲射撃と特殊部隊による破壊工作により備蓄物資の3割を損失し、滑走路上の爆撃機複数を破壊された。
 海軍こそほぼ壊滅させられたものの、一連の成果をみて同盟首脳は一応安堵。残された占領地からの収奪を急ぐと共に備蓄資源を用いて
更なる兵器増産を図った。

 しかし彼らは気付いていなかった。既にイベリア半島において日米が巨大な航空基地を複数建設し、大型爆撃機を大量に進出させている事に。


※1:建造を早める為に15センチ砲の搭載を止め、武装を対空気銃のみにして艤装も相当簡略化した。

※2:未完成状態で出撃させた艦も含む。その為、8インチ連装砲を1~2基しか装備していない艦もあった。

※3:上記同様。また旧式のC級も多数含まれていた。

※4:戦艦ビスマルク、重巡洋艦プリンツ・オイゲン、駆逐艦4隻で編成されたドイツ最後のマトモな水上艦部隊。

※5:英海軍特別攻撃隊の名前。

※6:シーハリケーンを改造した特攻機。燃料タンクを縮小し防弾鋼板と機銃を撤去し500ポンド級の爆弾を機体に搭載した。また加速用ロケットを装備していた。
   ホーカー社が製造を嫌がった為、名乗りを上げたブラックバーンが完成済みのシーハリケーンを改造する形で生産した。

※7:戦艦キングジョージ5世、プリンスオブウェールズ及び空母イラストリアス、インドミダブル、アークロイヤルで構成。

次話:「日米露三国同盟~落日の欧州」17

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最終更新:2014年06月16日 21:05