第二部第二話

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*[[BACK>その他の小説]]  ----   第ニ話 <来た、見て、狩った> 目前の机を叩き、カバレロは思わず立ち上がっていた。 彼が座っていた椅子は倒れたし、 叩かれた反動でぼろい机は大きく揺れ、置かれていた一つのジョッキが倒れそうになる。 「だから、僕の言ってることは全部本当なんですってば!」 興奮したカバレロの声。狭い一室に響き渡り、部屋の天井付近にある鉄格子の小窓から出ていったか。 入れ替わりに、そこからの灯りだけが絶え間なく、床も四方もすべて石造りの殺風景な部屋を照らしている。 それでも今は白昼だ。室内の明るさは充分だったし、わずかな光でも刀剣のような煌きをみせる銀髪の持ち主、 エリザがカバレロの聞き役だった。 彼とは向かい側の椅子に腰掛け、両肘は机の上に乗せ、両手で顎を支える姿勢をとっている。 「……なぁるほど。それが、テメエ様の誠意かい?」 そう言ってエリザは、にっこりと微笑む。ただし眼が笑っていない。 「真面目におとなしく、プリーズ」 (うっ……) 口調も愉快そうだったが、やはり眼が笑っていない。 カバレロは取り乱した次の瞬間から、しくしくと反省することになる。 椅子を自分で直すと、力なく席についた。 エリザは話を再開させる。 「いくらなんでも、そんな話は信じられねえよ。ヲッシャア店長が体内でエウレカを飼ってるだなんて」 「僕だって、馬鹿げてるとは思いますよ。でも、事実なんです」 「証拠は?」 「……それも、無いと言ってるでしょう……」 先ほどから、いや、昨日からずっとこの調子だ。 カバレロもエリザも、このときばかりは仲良く盛大に溜息を吐いた。 どうしてカバレロが、エリザに尋問されているのか。 発端はもちろん、彼の勤める店にあの男女のカップルが訪れたことだった。 あれよあれよという間に売り物の“正体”が二人に暴かれ、 示し合わせていたかのように流れ込んで来た騎士警団が現れる。 頼みの綱の店長は逃げ出している。カバレロは、観念した。 しかし肝心なことを全て話すつもりも無かった。 なにせエウレカの件に関しては自分もヲッシャアの共犯である。 騎士警団については強きをくじき、弱きを助く正義の集団だと聞き及んでいたので、 ここぞとばかりに、無知な弱者で通そうとした。 その姿勢を、ちらと見せた直後だ。 騎士警団を取りまとめていたエリザは、急にヴァーチャルタイピングを開始した。 そして、刃渡り三十センチはあろうかというナイフを堂々と手元に召喚し、 「市民様には積極的な捜査への協力をお願いしたいです。もちろん、できれば、で構わないんですけどね」 と、ナイフを舐めながらのたまうのである。 ただでさえショックの連続だったのに、これ以上奇抜なものを見せられてはたまったものではない。 かくしてカバレロは、エリザのいうところの“誠意”をもって、“自分の意思”で、 騎士警団本部の砦にやって来たのである。結局、ナイフと要請との因果関係は説明されなかった。 ここは砦の八階、最上階にあたるフロアの一室である。 聞けばどの部屋も隊長クラスの人間の私室だという。 その中でも、現在カバレロとエリザが二人きりでいる部屋は、使用者を限らず、多目的を兼ねているようだった。 ただ、入口の扉が鉄格子であるところを見ると、あまり健全な目的に使われてはいなさそうだ。 机と椅子に粗末なベッドが隅にあるだけ。広さといい、明らかに独房をイメージした造りである。 ここへ足を運ぶまで、明らかに拷問室としか思えないような部屋もあった(無人であったが)。 幾らなんでも、見るのと聞くのとで話が違いすぎる。 騎士警団の砦は、ラングフルクの中央にある小高い丘の頂上、森に囲まれたところにある。 何といってもお役所であるし、わざわざ人が近付く場所でも無い。 ただし砦の荘厳な外観は、同じく街の中央、ただしこちらは丘のふもとにある大コロッセオからもよく見える。 コロッセオでの闘技に参加することもある騎士警団の人間は、自らの砦をさなが宮殿のようだと嘯いていたが、全く冗談ではない。 巨大な牢獄がいいところである。いや、正確に言うと下のフロアはそうでも無かったので、 隊長クラスの人間が居るあたりだけが色々とおかしいのかもしれない。 そして、カバレロを取り調べるエリザの姿もまた非常識だった。 最初こそ他の団員のように全身を鎧兜に包んで現れたが、この部屋につくなりタイピングで防具を転送。取っ払ってしまった。 すると現れたのは、短い髪を頭髪剤で固め、左右をギザギザにしている女性である。 おまけに身につけているものといったら上から下まで殆どが男物であり、 パンツにも両腕にも鎖を巻きつけている。おまけに、首には猛犬につけられるような大型の首輪ときた。 女性のお洒落にしては何とも物々しい。 唯一女性らしい、黒いタンクトップの中央にも、ペンキで書き殴ったような白い頭蓋骨がでかでかとプリントされている有様だ。 そんな彼女が眼を細めれば、あたかも刃物が女の格好をしているかのごとく物騒である。 そもそも、仮にも騎士警団の一個小隊を率いる人物の服装ではない。 おおよそ今の歴史基準をオーバーしている。 カバレロは、ここが本当に騎士警団の本部なのかどうか、そろそろ本気で疑い始める顔つきになっている。 そんなカバレロの心情をまったく見抜けないエリザでもない。 これまでの取り調べには、わりと謙虚に応じてくれた(ナイフが効いたと見える)。 そろそろ、得られる情報は全て得られたのかも知れなかった。 エリザは眼を閉じて頭を掻いたあと、こう切り出した。 「わかった。面倒なのはこれで終わりにする。とりあえず、あたしは今から  あんたが言ってくれたことをもう一度纏めて伝えるから、なんか間違ってたら教えろよ」 ---- *[[BACK>その他の小説]] 
*[[BACK>その他の小説]]  ----   第ニ話 <来た、見て、狩った> 目前の机を叩き、カバレロは思わず立ち上がっていた。 彼が座っていた椅子は倒れたし、 叩かれた反動でぼろい机は大きく揺れ、置かれていた一つのジョッキが倒れそうになる。 「だから、僕の言ってることは全部本当なんですってば!」 興奮したカバレロの声。狭い一室に響き渡り、部屋の天井付近にある鉄格子の小窓から出ていったか。 入れ替わりに、そこからの灯りだけが絶え間なく、床も四方もすべて石造りの殺風景な部屋を照らしている。 それでも今は白昼だ。室内の明るさは充分だったし、わずかな光でも刀剣のような煌きをみせる銀髪の持ち主、 エリザがカバレロの聞き役だった。 彼とは向かい側の椅子に腰掛け、両肘は机の上に乗せ、両手で顎を支える姿勢をとっている。 「……なぁるほど。それが、テメエ様の誠意かい?」 そう言ってエリザは、にっこりと微笑む。ただし眼が笑っていない。 「真面目におとなしく、プリーズ」 (うっ……) 口調も愉快そうだったが、やはり眼が笑っていない。 カバレロは取り乱した次の瞬間から、しくしくと反省することになる。 椅子を自分で直すと、力なく席についた。 エリザは話を再開させる。 「いくらなんでも、そんな話は信じられねえよ。ヲッシャア店長が体内でエウレカを飼ってるだなんて」 「僕だって、馬鹿げてるとは思いますよ。でも、事実なんです」 「証拠は?」 「……それも、無いと言ってるでしょう……」 先ほどから、いや、昨日からずっとこの調子だ。 カバレロもエリザも、このときばかりは仲良く盛大に溜息を吐いた。 どうしてカバレロが、エリザに尋問されているのか。 発端はもちろん、彼の勤める店にあの男女のカップルが訪れたことだった。 あれよあれよという間に売り物の“正体”が二人に暴かれ、 示し合わせていたかのように流れ込んで来た騎士警団が現れる。 頼みの綱の店長は逃げ出している。カバレロは、観念した。 しかし肝心なことを全て話すつもりも無かった。 なにせエウレカの件に関しては自分もヲッシャアの共犯である。 騎士警団については強きをくじき、弱きを助く正義の集団だと聞き及んでいたので、 ここぞとばかりに、無知な弱者で通そうとした。 その姿勢を、ちらと見せた直後だ。 騎士警団を取りまとめていたエリザは、急にヴァーチャルタイピングを開始した。 そして、刃渡り三十センチはあろうかというナイフを堂々と手元に召喚し、 「市民様には積極的な捜査への協力をお願いしたいです。もちろん、できれば、で構わないんですけどね」 と、ナイフを舐めながらのたまうのである。 ただでさえショックの連続だったのに、これ以上奇抜なものを見せられてはたまったものではない。 かくしてカバレロは、エリザのいうところの“誠意”をもって、“自分の意思”で、 騎士警団本部の砦にやって来たのである。結局、ナイフと要請との因果関係は説明されなかった。 ここは砦の八階、最上階にあたるフロアの一室である。 聞けばどの部屋も隊長クラスの人間の私室だという。 その中でも、現在カバレロとエリザが二人きりでいる部屋は、使用者を限らず、多目的を兼ねているようだった。 ただ、入口の扉が鉄格子であるところを見ると、あまり健全な目的に使われてはいなさそうだ。 机と椅子に粗末なベッドが隅にあるだけ。広さといい、明らかに独房をイメージした造りである。 ここへ足を運ぶまで、明らかに拷問室としか思えないような部屋もあった(無人であったが)。 幾らなんでも、見るのと聞くのとで話が違いすぎる。 騎士警団の砦は、ラングフルクの中央にある小高い丘の頂上、森に囲まれたところにある。 何といってもお役所であるし、わざわざ人が近付く場所でも無い。 ただし砦の荘厳な外観は、同じく街の中央、ただしこちらは丘のふもとにある大コロッセオからもよく見える。 コロッセオでの闘技に参加することもある騎士警団の人間は、自らの砦をさなが宮殿のようだと嘯いていたが、全く冗談ではない。 巨大な牢獄がいいところである。いや、正確に言うと下のフロアはそうでも無かったので、 隊長クラスの人間が居るあたりだけが色々とおかしいのかもしれない。 そして、カバレロを取り調べるエリザの姿もまた非常識だった。 最初こそ他の団員のように全身を鎧兜に包んでいたが、 この部屋につくなりタイピングで身につけていた防具を転送。全て取っ払ってしまう。 すると現れたのは、短い髪を頭髪剤で固め、左右をギザギザにしている女性である。 おまけに身につけているものといったら上から下まで殆どが男物であり、 パンツにも両腕にも鎖を巻きつけている。おまけに、首には猛犬につけられるような大型の首輪ときた。 女性のお洒落にしては何とも物々しい。 唯一女性らしい、黒いタンクトップの中央にも、ペンキで書き殴ったような白い頭蓋骨がでかでかとプリントされている有様だ。 そんな彼女が眼を細めれば、あたかも刃物が女の格好をしているかのごとく物騒である。 そもそも、仮にも騎士警団の一個小隊を率いる人物の服装ではない。 おおよそ今の歴史基準をオーバーしている。 カバレロは、ここが本当に騎士警団の本部なのかどうか、そろそろ本気で疑い始める顔つきになっている。 そんなカバレロの心情をまったく見抜けないエリザでもない。 これまでの取り調べには、わりと謙虚に応じてくれた(ナイフが効いたと見える)。 既に、得られる情報は全て得られたのかも知れなかった。 エリザは眼を閉じて頭を掻いたあと、こう切り出した。 「わかった。面倒なのはこれで終わりにする。とりあえず、あたしは今から  あんたが言ってくれたことをもう一度纏めて伝えるから、なんか間違ってたら教えろよ」 (書きかけ...まだ第二話、1/6程度) ---- *[[BACK>その他の小説]] 

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