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*気軽に科学してみませんか? **混ざった米と小豆を分離する ([[理系的コミュニケーションてなんだろう?いけるかな?]]から転載)【Balsamicose】小豆と米粒の実験おもしろいですね(待ちきれなくて[[2分近辺から>http://www.youtube.com/watch?v=gil8VrxT-6g&t=110]]見ました)。箸で“流動性”を与えたことにより「小豆が米に浮かんだ」という理系っぽくない解釈をしました。でもまだ箸の作用と瓶を振ったことの違いがわからないです。振り方を工夫すれば(例えば左右にしか振らないとか)箸のように分離できるのかなと思ってしまいました。[2011/07/28(木)] [04:37:49] 【Yasushi】 >Balsamicoseさん:「小豆が米に浮かんだ」という理系っぽくない解釈をしました ツィッター上でも同じコメントを頂きました。固体粒子に対し、分子・原子のアナロジーが物理的に妥当である場合と、はっきり異なる場合があります。固体粒子のこの二面性の興味深さは、散逸系物理学の分野で検討されてきています。 さて、ここでは後者なんです。流体で生じる「浮力(buoyancy)」は、米と小豆では生じていません。そうであるなら、動きやすさを与えるのは瓶を回すのも箸でかき混ぜるのも同じ事なので、前者では混合し、後者では分離するという全く逆のことが起こることの説明がつきません。 米と小豆の分離動画のメカニズムは、極端化すると納得できるかと思います。防波用のコンクリートのテトラポットがありますよね? 砂浜に、クレーンでテトラポットをドカドカと落とした場合、テトラポットがズブズブと砂浜の中に沈んでいくか……というと、それはないですよね? ところが、テトラポットがゴロゴロ積み重なっている上から、バケツで砂をぶっかけ続けたらどうなるでしょう? 砂はテトラポットをすり抜けて、下に落ちていくでしょう。 テトラポットと砂粒の大きさは圧倒的に違いますが、この大きさの差を少しずつ近づけた二者でも同じ事が起こります。手作業でも簡単に起こせるぎりぎりのクライテリオンが1:2くらいかと思います。米と小豆は、比重はだいたい同じですが、大きさが3~4倍ほど違います。 お米と小豆の分離は、実験の手技の差がほとんど出ない、つまり、誰でも簡単に再現できる系なので、試してみると面白いですよ。コツは、箸を刺し、大きな円をゆっくり描くように回す、それだけです。(その前に混合させないといけませんが、むしろこっちのほうがやや難しく、動画でも密閉した瓶をぐるぐる回して、時々逆さまにすることで、混合させています) [2011/07/28 14:44] 【Balsamicose】瓶を回すのは上下を常に変化させてますよね? テトラポッドの回りで砂をかき混ぜても沈まないのでしょうか? 今一つ同一視して良い場合とそうでない場合の違いがわからないです。大きい方が上に行くのですか? [2011/07/28(木)] [15:06:48] 【Yasushi】ただテトラポットの周囲をかき混ぜても(ただしゆっくりです。速く攪拌すると空気が入るため、後述の要因でテトラポットが沈むことは起こり得ます)、砂に埋没することはないです。これは、川原などで経年で大きな岩が流砂から露出してくることからも分かります。 これは、要因がたくさんあるのですが、かいつまんで説明すると、テトラポット同士の集合の間の「隙間A」と砂同士の集合の間の「隙間B」の違いです。   (1) 隙間Aに砂は入り込むことはできますが、   (2) 逆に隙間Bにテトラポットが入る事は不可能です。 このため、テトラポットと砂の位置移動(シャッフル)の機会があると(1)の起こるチャンスが増えますが(2)は起こりません。つまりシャッフルすればするほど、小さいものが(1)の要因で進みます。そして(1)は「重力に従って」起こるため、系全体の上下を逆転しないで攪拌だけすると(1)は、「小さいものが下へ下へと落ちこんでいく」という形で表れます。米と小豆の実験動画も、この原理で分離が起こっているわけです。 さて、ここで、テトラポットの地下の砂に管を押し込んで、管の先から空気を吹き出すとします。すると、砂の中を空気が逃げようと四方八方に流れができるため、砂粒にとってみると、自分と隣の砂との間に空気が入り込んで砂といえども「互いの隙間」が大きくなります。つまり砂がフカフカの状態になるのですが、こうなると、隙間の優位差がなくなってきて、サイズでは無く、重量の差が効いてくるようになります。つまり、地下から砂に大量に通気すると、底なし沼のようにテトラポットがズブズブ沈んでいく、という現象が起こります。 ある特殊なタイプの焼却炉では、これを利用して、燃え切らない残渣を下に集めて回収するということをやっています。(ダイオキシン対策で炉の基準化ができてからは、このタイプは稼働してないかも知れませんが……) [2011/07/28 19:31] 【Balsamicose】すみません。やっぱり理解できないです。小豆でなくパチンコ玉なら沈むような気がしますし、どんな要素で上に行くか下に行くかがわからないと、わかったような気になれないです。[2011/07/29 13:33] 【Yasushi】 >>パチンコ玉なら このスレッドの「気軽に」から外れてしまいますので深入りしないでおきますね。米と小豆を使っているのは意味があって、密度(比重)がオーダーがほぼ同じなんです。また、砂とテトラポットも密度はオーダーはほぼ同じ(岩石とセメント)です。混合物が分離して元の成分だけに偏ることを偏析といいますが、サイズ偏析、密度偏析、形状偏析など、いろいろな偏析があり、ある偏析現象を追いかけるためには他の条件は同一でなければいけません。米とパチンコ玉だと、サイズも密度も違うため、現象が複雑化します。 さて、サイズ偏析の主要因は、密度が同じなら、隙間の違い(空隙率差、パーコレーション等々)なんですよね。これはめんどくさいですが計算機シミュレーションでも再現できます。歴史のある問題で、ブラジルから出荷されるミックスナッツが、ブラジルの工場では二種類を均一に混ぜて装填しているのに、アメリカに荷揚げされるときに、大きなナッツが缶の上のほうに来ている例が多くて、輸出元に「手抜きして装填してないか?」と苦情が行った(苦笑)という逸話があります。ブラジルの会社の無実を晴らす為に、物理学者に依頼して、数値計算で輸送の間に大きな種類のナッツが缶内で上に移動することを弾き出したという話が伝わっています。後に、分子動力学(MD)が提案されたときに、化学分子に適応する前にテストにこのナッツの系でシミュレーション方法の妥当性を示したと、いにしえの教科書で読みました(笑) 米と小豆で混じってる辺りを箸でコチョコチョやると、実感がつかめると思うんですが…… [2011/07/29 18:46] 【Yasushi】なんか、もっと自然の例がないかな~と思って、うちの壁の周りに敷いてある玉砂利の写真を撮ってみました。うち、砂利を敷いたのは十年以上前ですが、全く手入れというものをしてません。ここに雪はつもるし、子どもたちも歩いてます。しかし、玉砂利が埋もれて、買い足すという必要はないし、逆に、玉砂利を敷いていると土埃というものが全くたちません。 [1] まずはその放置の状態です。位置が分かり易いように、灯油配管の箇所を撮影   ★いつもの放置状態の玉砂利(直径1~2センチ)   http://twitpic.com/5y5qgp [2] 次に、素手でこの玉砂利を慎重に表面から取り払って、掘り下げていきます。だいたい3~4センチの深さ。こうすると、砂や、土が見えてきます。この場合、サイズ偏析だけではなく、降雨による沈降の要素も入ってくるのですが、これも同じく小粒子ほど下に行きやすくなるため、結果的に、このように下層ほど小サイズ(砂、土、埃、ダスト)のものがもぐりこんでいる状態になっています。これが、普段、玉砂利の上に出てきて、埃が舞うということはありません。   ★表層から3~4センチ玉砂利をよけてみた   http://twitpic.com/5y5raf [3] さらに表層からトータル4~5センチ、玉砂利をどけると、土だらけです。湿り気があるので手が汚れる(汗)   ★表層から4~5センチ玉砂利をよけてみた   http://twitpic.com/5y5sgk        *  *  * さて、「気軽にサイエンス」ということで、米と小豆の分離の話を、実験動画の実演も交えて紹介してきましたが、個人的に福島現地の小学校などについて思う事。 放射性セシウムが含まれているから土の表面を剥がしたら線量が減った、とかやってますが、既に雨が何度も降ってるわけですし完璧ではなく、また、土である以上は表面を荒らすと混合が起こって、埃がたち、少し下の土が再飛散します。それだったら、子供が怪我をしないような、うちのより良質の丸い玉砂利を4~5センチ敷設した方がマシだと思うんですが……。 メリットは、 +かさ上げする分、線量は下がるだろう +土の飛散を押さえるのに非常に有効である +表土除去の場合は、除去した土を何処に集積するのかという問題があるが、玉砂利敷設ではそれを考えずに済む といったあたりです。議論は色々あると思いますが…… このような小石というのは、自然の篩(ふるい)の役を果たしてくれます。土を剥がしたり、土に別の土を客土したり、アスファルト敷きにする……といったようなことは、いずれも、再飛散で、小だまりができ、そこの線量を計ったら東大児玉氏が言うような危ない局所が発生して、きりがないです。 [2011/07/30 19:25] 【Balsamicose】独り暮らしなので、小豆は身近ではないんです。すみません。礫岩は浅い所に堆積し、泥岩は深い所に…というのもその原理ですか? 礫も泥岩も密度は同じだと思うのですが…。やっぱり理解できなくても方程式を解く仮定を見ないと納得した気分にもなれない感じです。どの現象に使えるのか判断できないようでは私には不要な知識で終わってしまいそうです。[2011/08/01(月)] [12:44:29] 【Yasushi】礫岩と泥岩の堆積深さの違いも偏析が主要因です。 方程式ですか……。方程式はたちますが、米と小豆から、礫岩と泥岩まで、それぞれモデルの細部が違ってくるので、同じ方程式にはならないです。そして、それらはたてることはできますが、解析解は存在せず、数値解しかないわけで、シミュレーションになります。 式がどんなものであるかの一例は、 -http://www2.nagare.or.jp/jscfd/cfds15/papers/B05/B05-3.pdf -http://www.sumitomo-chem.co.jp/rd/report/theses/docs/20070203_d6c.pdf -http://www.kansai-u.ac.jp/Fc_ss/common/pdf/bulletin001_02.pdf などに載っています。ちなみに、これらの方程式は、系内の粒子1個について1セットです。さらにある粒子は他の粒子たちと接触する為、それらとの接触点の数だけ、力、モーメント、摩擦などの項を計算します。(気が遠くなる計算量です) シミュレーション結果のアニメーションを探してみたら、こんなのがありました。 -http://www-cf.mech.eng.osaka-u.ac.jp/hp-english/study/drum/avi.htm 大小二粒子が入った回転ドラム(錠剤のコーティングや、造粒:原料から大きな粒子を作って行く工程)のなかの運動で、実際に起こる現象とほとんど一致しています。この場合、回転しながらできる斜面を大小2粒子群が流下するさいに偏析がおこり、装置全体が回転している為に、時間が経つと「小粒子が中央、大粒子が外辺」という、お菓子のポッキーのような構造になります。 こんなのしかなくてすみません。イメージにつながるでしょうか? [2011/08/01 13:47] (2)生存競争のシミュレーション ([[理系的コミュニケーションてなんだろう?いけるかな?]]から転載)【Balsamicose】「魔法少女まどか☆マギカ」というアニメがあります(このアニメ自身、今年の1月~3月の放送予定だったため、震災の影響を受けているのですが)。魔法少女と魔女の人口変化を[[Matlabを使って数値計算>http://wiki.puella-magi.net/Population_dynamics]]した人がいるようです。私も生物学的半減期を考察するのに[[似たようなことをやった>http://sak.naganoblog.jp/e355286.html]]のですが、日本の一般人にはこういう考察をする人は少ないような印象を私は持っていますが、どうでしょう? [2011/07/28(木)] [07:23:40] 【Balsamicose】生存競争に限らず、Matlabとかの汎用ソフトで数値的にシミュレートしようとする人って見たことがないです。シミュレートは専用のソフトじゃないとできないと思っていたりするのかとふと思ってみたり。[2011/07/28(木)] [15:06:48] 【Yasushi】う~ん。過渡現象やら競合現象の挙動のシミュレーションは、わりとやらされます。グラフィック出力がマシン依存だった頃は数値の出力を延々やって「あ、餌動物が全滅して、3日後に、強者も餓死したね」とか読み取ったりしてました。 今だとJavaな人が環境依存しない美麗なシミュレーション書いたりしてますね。これ→ http://jsdo.it/Akiyah/cC8B はjavascriptを使わずに実装してるみたい。鮫と小魚を適当に増やして、小魚が全滅するまでを遊んでみて下さい。ただし、これは、鮫に餓死する要素を入れてないので小魚は必ず全滅することになるため、生態系のシミュレーションとはいえないですが……。 [2011/07/28 19:11] 【Balsamicose】「やらされます」ということは、趣味で自発的に解析をしたりする人は少ないということでしょうか? 微分方程式を解くのが困難なときなど気軽に計算できるのがMatlabやEXCELだと思うのですが、日本ではJavaやJavascriptを使ってプログラミングするのが主流でやはり趣味ではなく「専門家の仕事」ということでしょうか。[2011/07/28(木)] [21:40:36] 【Yasushi】やらされます、というのは、大学で物理系のシミュレーション実習や研究テーマがあるなら、自然現象を簡単化したモデルで計算機内で現象を追跡する作業は最初の練習としてやらされるということです。ぼくが大学で学んだのは相当前ですがあったし、その後、学生さんのテーマを指導する機会があったときは、何度か課題を作ってやってもらいました。言語はFortranかC++。僕が仕事でシステムバイオロジーの専門の先生に教わりに行ったときは、JavaとDelphi(BorlandがPascalを拡張したやつ)のソースをぽんと渡されて、半泣きでテキストを紐解きながら内容を解読して、アレンジして練習しました。 ただ、仰しゃる通り、いまのPCのパワーだと、微分方程式のモデルを二次元のメッシュをそのままExcelのセルにして、収束させることができるんですよね。伝熱計算の練習をExcelでやってもらったことはあります。(ただし、解けるからと行って、調子に乗って元の式の些末な項を付け足したりした途端に、そのExcelシートが固まって、リセットボタンというハメになることはあるので、ワンタッチなスプレッドシートで押し通すのも考えものです) ただ、精度や計算負荷が問われる場合は、Matlabなどのシステムで、どこまでできるのか分からないです。例えば、鮫が空腹で死ぬか、小魚を食う、という簡単な条件ならいいのですが、鮫同士、小魚同士の共食い、鮫の一回の食事の満腹(バッチで食える量)というようにモデルを複雑化していくと、速い実行コードで動くものを使いたくなりますね。 あと、計算機にかける一歩手前、つまり、モデルの方程式をプログラム化する際のテクニックも重要で、たとえば数値積分の方法も手堅いこなれた公式から、新しく出てきて効率がいいけど、解析例が少なくて弱点がはっきりしていない方法まで色々です。ぼくはチキンなので、うまくいってる解析で採用されている方法にならうばかりですが……。 現象論的な解析から離れてしばらくになるので、今の物理屋さんの最前線には付いていけてないです。 [2011/07/28 23:45] 【Balsamicose】私がここで話題にしたいのは、(後でつけていただいたものですが)タイトルの「気軽」という部分です。現代のPCパワーであれば、最初に例示したような計算([[和訳版>http://raliosralios.web.fc2.com/MadoMagipop/MadolaPopulation.htm]]が見つかったのでリンクします)を例えば数学力の未熟な中高生がやってみるのは難しいことではないと思うのですが、やっている人を見ないのは何故だろう、やらないのは知らないからじゃないかと思うのです。いわゆる微分方程式は私は大学に入ってから学びましたが、身近な現象を記述するものでありながら微分方程式の考え方で立式をしようと思う人が少ないように見えるのは何故だろう、教育課程の問題ではないかと思うのです。[2011/07/29(金)] [06:58:21] 【Yasushi】昔、神戸大学の学生だった四囲氏が「砂 for Windows」http://www.vector.co.jp/soft/win95/amuse/se091919.html を公開したときに、同様のことを複雑な連立微分方程式で解析していた研究者たちは驚きました。重力流下に限定されるのですが、実験で見られる挙動を非常によく再現できているからです。(現在、氏は、iPhoneにも移植していて動画が http://ccnet.dip.jp/sand/sand-iPhone-movie.html で見られます。リアルです)当時のインタビューがVectorに残ってます。http://www.forest.impress.co.jp/article/2000/10/10/shii.html このリアルな「砂」のアルゴリズムですが、恐ろしいことに、高等な数学は何も使ってません。http://ccnet.dip.jp/sand/ ←たったこれだけの「ルール」でドットを動かしているだけです。 重力流動で粒子の動摩擦係数が小さい場合(サラサラの砂、ということ。つまり、グラニュー糖や鳴き砂のようなタイプです。これが、片栗粉や濡れた砂だと、この簡単な「ルール」では再現できません)には、これだけの「決まり」で、自然現象を表現できるということですね。これだと、グラフィックが描ける人なら、誰でもシミュレーションしてみることができます。 自然現象を解析するのは小難しい、という印象は、どうしてもあると思います。しかし、計算するのには都合が良い簡単さで、しかし、ある種の現象に狙いを絞れば要所を押さえた「モデル化」ができれば、専門知識がなくても可能だと思います。気軽にやってみる、というのは、無意識のうちにこの「うまいモデル化」をやっていることが多いです。米と小豆の実験動画も、実は、崩壊したがれき堆積物の内部構造のシミュレーションになっているのですが、現象を支配する大きな要因の一つ「空隙の違い」だけに特化しているので、小豆と米と箸、というたった三つの要素で実現できる訳です。 [2011/07/29 12:51] 【Balsamicose】この話題も理系的コミュニケーションから始まっているわけで、理系側の人間も一般人の思考・嗜好に興味を持つことは大切だと思います。私は趣味柄アニメ関係の掲示板を見ることが多いのですが、海外の掲示板は先のMatlabの例をはじめ内容を分析したりすることが多い反面、日本人はダジャレやイラストに走るようです。どちらが優れているというわけではありませんが、理系的コミュニケーションという観点から見れば劣っていると言わざるを得ないと思います。日本人は何故こうなのでしょうか? [2011/07/29(金)] [13:39:31]
*気軽に科学してみませんか? **混ざった米と小豆を分離する ([[理系的コミュニケーションてなんだろう?いけるかな?]]から転載)【Balsamicose】小豆と米粒の実験おもしろいですね(待ちきれなくて[[2分近辺から>http://www.youtube.com/watch?v=gil8VrxT-6g&t=110]]見ました)。箸で“流動性”を与えたことにより「小豆が米に浮かんだ」という理系っぽくない解釈をしました。でもまだ箸の作用と瓶を振ったことの違いがわからないです。振り方を工夫すれば(例えば左右にしか振らないとか)箸のように分離できるのかなと思ってしまいました。[2011/07/28(木)] [04:37:49] 【Yasushi】 >Balsamicoseさん:「小豆が米に浮かんだ」という理系っぽくない解釈をしました ツィッター上でも同じコメントを頂きました。固体粒子に対し、分子・原子のアナロジーが物理的に妥当である場合と、はっきり異なる場合があります。固体粒子のこの二面性の興味深さは、散逸系物理学の分野で検討されてきています。 さて、ここでは後者なんです。流体で生じる「浮力(buoyancy)」は、米と小豆では生じていません。そうであるなら、動きやすさを与えるのは瓶を回すのも箸でかき混ぜるのも同じ事なので、前者では混合し、後者では分離するという全く逆のことが起こることの説明がつきません。 米と小豆の分離動画のメカニズムは、極端化すると納得できるかと思います。防波用のコンクリートのテトラポットがありますよね? 砂浜に、クレーンでテトラポットをドカドカと落とした場合、テトラポットがズブズブと砂浜の中に沈んでいくか……というと、それはないですよね? ところが、テトラポットがゴロゴロ積み重なっている上から、バケツで砂をぶっかけ続けたらどうなるでしょう? 砂はテトラポットをすり抜けて、下に落ちていくでしょう。 テトラポットと砂粒の大きさは圧倒的に違いますが、この大きさの差を少しずつ近づけた二者でも同じ事が起こります。手作業でも簡単に起こせるぎりぎりのクライテリオンが1:2くらいかと思います。米と小豆は、比重はだいたい同じですが、大きさが3~4倍ほど違います。 お米と小豆の分離は、実験の手技の差がほとんど出ない、つまり、誰でも簡単に再現できる系なので、試してみると面白いですよ。コツは、箸を刺し、大きな円をゆっくり描くように回す、それだけです。(その前に混合させないといけませんが、むしろこっちのほうがやや難しく、動画でも密閉した瓶をぐるぐる回して、時々逆さまにすることで、混合させています) [2011/07/28 14:44] 【Balsamicose】瓶を回すのは上下を常に変化させてますよね? テトラポッドの回りで砂をかき混ぜても沈まないのでしょうか? 今一つ同一視して良い場合とそうでない場合の違いがわからないです。大きい方が上に行くのですか? [2011/07/28(木)] [15:06:48] 【Yasushi】ただテトラポットの周囲をかき混ぜても(ただしゆっくりです。速く攪拌すると空気が入るため、後述の要因でテトラポットが沈むことは起こり得ます)、砂に埋没することはないです。これは、川原などで経年で大きな岩が流砂から露出してくることからも分かります。 これは、要因がたくさんあるのですが、かいつまんで説明すると、テトラポット同士の集合の間の「隙間A」と砂同士の集合の間の「隙間B」の違いです。   (1) 隙間Aに砂は入り込むことはできますが、   (2) 逆に隙間Bにテトラポットが入る事は不可能です。 このため、テトラポットと砂の位置移動(シャッフル)の機会があると(1)の起こるチャンスが増えますが(2)は起こりません。つまりシャッフルすればするほど、小さいものが(1)の要因で進みます。そして(1)は「重力に従って」起こるため、系全体の上下を逆転しないで攪拌だけすると(1)は、「小さいものが下へ下へと落ちこんでいく」という形で表れます。米と小豆の実験動画も、この原理で分離が起こっているわけです。 さて、ここで、テトラポットの地下の砂に管を押し込んで、管の先から空気を吹き出すとします。すると、砂の中を空気が逃げようと四方八方に流れができるため、砂粒にとってみると、自分と隣の砂との間に空気が入り込んで砂といえども「互いの隙間」が大きくなります。つまり砂がフカフカの状態になるのですが、こうなると、隙間の優位差がなくなってきて、サイズでは無く、重量の差が効いてくるようになります。つまり、地下から砂に大量に通気すると、底なし沼のようにテトラポットがズブズブ沈んでいく、という現象が起こります。 ある特殊なタイプの焼却炉では、これを利用して、燃え切らない残渣を下に集めて回収するということをやっています。(ダイオキシン対策で炉の基準化ができてからは、このタイプは稼働してないかも知れませんが……) [2011/07/28 19:31] 【Balsamicose】すみません。やっぱり理解できないです。小豆でなくパチンコ玉なら沈むような気がしますし、どんな要素で上に行くか下に行くかがわからないと、わかったような気になれないです。[2011/07/29 13:33] 【Yasushi】 >>パチンコ玉なら このスレッドの「気軽に」から外れてしまいますので深入りしないでおきますね。米と小豆を使っているのは意味があって、密度(比重)がオーダーがほぼ同じなんです。また、砂とテトラポットも密度はオーダーはほぼ同じ(岩石とセメント)です。混合物が分離して元の成分だけに偏ることを偏析といいますが、サイズ偏析、密度偏析、形状偏析など、いろいろな偏析があり、ある偏析現象を追いかけるためには他の条件は同一でなければいけません。米とパチンコ玉だと、サイズも密度も違うため、現象が複雑化します。 さて、サイズ偏析の主要因は、密度が同じなら、隙間の違い(空隙率差、パーコレーション等々)なんですよね。これはめんどくさいですが計算機シミュレーションでも再現できます。歴史のある問題で、ブラジルから出荷されるミックスナッツが、ブラジルの工場では二種類を均一に混ぜて装填しているのに、アメリカに荷揚げされるときに、大きなナッツが缶の上のほうに来ている例が多くて、輸出元に「手抜きして装填してないか?」と苦情が行った(苦笑)という逸話があります。ブラジルの会社の無実を晴らす為に、物理学者に依頼して、数値計算で輸送の間に大きな種類のナッツが缶内で上に移動することを弾き出したという話が伝わっています。後に、分子動力学(MD)が提案されたときに、化学分子に適応する前にテストにこのナッツの系でシミュレーション方法の妥当性を示したと、いにしえの教科書で読みました(笑) 米と小豆で混じってる辺りを箸でコチョコチョやると、実感がつかめると思うんですが…… [2011/07/29 18:46] 【Yasushi】なんか、もっと自然の例がないかな~と思って、うちの壁の周りに敷いてある玉砂利の写真を撮ってみました。うち、砂利を敷いたのは十年以上前ですが、全く手入れというものをしてません。ここに雪はつもるし、子どもたちも歩いてます。しかし、玉砂利が埋もれて、買い足すという必要はないし、逆に、玉砂利を敷いていると土埃というものが全くたちません。 [1] まずはその放置の状態です。位置が分かり易いように、灯油配管の箇所を撮影   ★いつもの放置状態の玉砂利(直径1~2センチ)   http://twitpic.com/5y5qgp [2] 次に、素手でこの玉砂利を慎重に表面から取り払って、掘り下げていきます。だいたい3~4センチの深さ。こうすると、砂や、土が見えてきます。この場合、サイズ偏析だけではなく、降雨による沈降の要素も入ってくるのですが、これも同じく小粒子ほど下に行きやすくなるため、結果的に、このように下層ほど小サイズ(砂、土、埃、ダスト)のものがもぐりこんでいる状態になっています。これが、普段、玉砂利の上に出てきて、埃が舞うということはありません。   ★表層から3~4センチ玉砂利をよけてみた   http://twitpic.com/5y5raf [3] さらに表層からトータル4~5センチ、玉砂利をどけると、土だらけです。湿り気があるので手が汚れる(汗)   ★表層から4~5センチ玉砂利をよけてみた   http://twitpic.com/5y5sgk        *  *  * さて、「気軽にサイエンス」ということで、米と小豆の分離の話を、実験動画の実演も交えて紹介してきましたが、個人的に福島現地の小学校などについて思う事。 放射性セシウムが含まれているから土の表面を剥がしたら線量が減った、とかやってますが、既に雨が何度も降ってるわけですし完璧ではなく、また、土である以上は表面を荒らすと混合が起こって、埃がたち、少し下の土が再飛散します。それだったら、子供が怪我をしないような、うちのより良質の丸い玉砂利を4~5センチ敷設した方がマシだと思うんですが……。 メリットは、 +かさ上げする分、線量は下がるだろう +土の飛散を押さえるのに非常に有効である +表土除去の場合は、除去した土を何処に集積するのかという問題があるが、玉砂利敷設ではそれを考えずに済む といったあたりです。議論は色々あると思いますが…… このような小石というのは、自然の篩(ふるい)の役を果たしてくれます。土を剥がしたり、土に別の土を客土したり、アスファルト敷きにする……といったようなことは、いずれも、再飛散で、小だまりができ、そこの線量を計ったら東大児玉氏が言うような危ない局所が発生して、きりがないです。 [2011/07/30 19:25] 【Balsamicose】独り暮らしなので、小豆は身近ではないんです。すみません。礫岩は浅い所に堆積し、泥岩は深い所に…というのもその原理ですか? 礫も泥岩も密度は同じだと思うのですが…。やっぱり理解できなくても方程式を解く仮定を見ないと納得した気分にもなれない感じです。どの現象に使えるのか判断できないようでは私には不要な知識で終わってしまいそうです。[2011/08/01(月)] [12:44:29] 【Yasushi】礫岩と泥岩の堆積深さの違いも偏析が主要因です。 方程式ですか……。方程式はたちますが、米と小豆から、礫岩と泥岩まで、それぞれモデルの細部が違ってくるので、同じ方程式にはならないです。そして、それらはたてることはできますが、解析解は存在せず、数値解しかないわけで、シミュレーションになります。 式がどんなものであるかの一例は、 -http://www2.nagare.or.jp/jscfd/cfds15/papers/B05/B05-3.pdf -http://www.sumitomo-chem.co.jp/rd/report/theses/docs/20070203_d6c.pdf -http://www.kansai-u.ac.jp/Fc_ss/common/pdf/bulletin001_02.pdf などに載っています。ちなみに、これらの方程式は、系内の粒子1個について1セットです。さらにある粒子は他の粒子たちと接触する為、それらとの接触点の数だけ、力、モーメント、摩擦などの項を計算します。(気が遠くなる計算量です) シミュレーション結果のアニメーションを探してみたら、こんなのがありました。 -http://www-cf.mech.eng.osaka-u.ac.jp/hp-english/study/drum/avi.htm 大小二粒子が入った回転ドラム(錠剤のコーティングや、造粒:原料から大きな粒子を作って行く工程)のなかの運動で、実際に起こる現象とほとんど一致しています。この場合、回転しながらできる斜面を大小2粒子群が流下するさいに偏析がおこり、装置全体が回転している為に、時間が経つと「小粒子が中央、大粒子が外辺」という、お菓子のポッキーのような構造になります。 こんなのしかなくてすみません。イメージにつながるでしょうか? [2011/08/01 13:47] (2)生存競争のシミュレーション ([[理系的コミュニケーションてなんだろう?いけるかな?]]から転載)【Balsamicose】「魔法少女まどか☆マギカ」というアニメがあります(このアニメ自身、今年の1月~3月の放送予定だったため、震災の影響を受けているのですが)。魔法少女と魔女の人口変化を[[Matlabを使って数値計算>http://wiki.puella-magi.net/Population_dynamics]]した人がいるようです。私も生物学的半減期を考察するのに[[似たようなことをやった>http://sak.naganoblog.jp/e355286.html]]のですが、日本の一般人にはこういう考察をする人は少ないような印象を私は持っていますが、どうでしょう? [2011/07/28(木)] [07:23:40] 【Balsamicose】生存競争に限らず、Matlabとかの汎用ソフトで数値的にシミュレートしようとする人って見たことがないです。シミュレートは専用のソフトじゃないとできないと思っていたりするのかとふと思ってみたり。[2011/07/28(木)] [15:06:48] 【Yasushi】う~ん。過渡現象やら競合現象の挙動のシミュレーションは、わりとやらされます。グラフィック出力がマシン依存だった頃は数値の出力を延々やって「あ、餌動物が全滅して、3日後に、強者も餓死したね」とか読み取ったりしてました。 今だとJavaな人が環境依存しない美麗なシミュレーション書いたりしてますね。これ→ http://jsdo.it/Akiyah/cC8B はjavascriptを使わずに実装してるみたい。鮫と小魚を適当に増やして、小魚が全滅するまでを遊んでみて下さい。ただし、これは、鮫に餓死する要素を入れてないので小魚は必ず全滅することになるため、生態系のシミュレーションとはいえないですが……。 [2011/07/28 19:11] 【Balsamicose】「やらされます」ということは、趣味で自発的に解析をしたりする人は少ないということでしょうか? 微分方程式を解くのが困難なときなど気軽に計算できるのがMatlabやEXCELだと思うのですが、日本ではJavaやJavascriptを使ってプログラミングするのが主流でやはり趣味ではなく「専門家の仕事」ということでしょうか。[2011/07/28(木)] [21:40:36] 【Yasushi】やらされます、というのは、大学で物理系のシミュレーション実習や研究テーマがあるなら、自然現象を簡単化したモデルで計算機内で現象を追跡する作業は最初の練習としてやらされるということです。ぼくが大学で学んだのは相当前ですがあったし、その後、学生さんのテーマを指導する機会があったときは、何度か課題を作ってやってもらいました。言語はFortranかC++。僕が仕事でシステムバイオロジーの専門の先生に教わりに行ったときは、JavaとDelphi(BorlandがPascalを拡張したやつ)のソースをぽんと渡されて、半泣きでテキストを紐解きながら内容を解読して、アレンジして練習しました。 ただ、仰しゃる通り、いまのPCのパワーだと、微分方程式のモデルを二次元のメッシュをそのままExcelのセルにして、収束させることができるんですよね。伝熱計算の練習をExcelでやってもらったことはあります。(ただし、解けるからと行って、調子に乗って元の式の些末な項を付け足したりした途端に、そのExcelシートが固まって、リセットボタンというハメになることはあるので、ワンタッチなスプレッドシートで押し通すのも考えものです) ただ、精度や計算負荷が問われる場合は、Matlabなどのシステムで、どこまでできるのか分からないです。例えば、鮫が空腹で死ぬか、小魚を食う、という簡単な条件ならいいのですが、鮫同士、小魚同士の共食い、鮫の一回の食事の満腹(バッチで食える量)というようにモデルを複雑化していくと、速い実行コードで動くものを使いたくなりますね。 あと、計算機にかける一歩手前、つまり、モデルの方程式をプログラム化する際のテクニックも重要で、たとえば数値積分の方法も手堅いこなれた公式から、新しく出てきて効率がいいけど、解析例が少なくて弱点がはっきりしていない方法まで色々です。ぼくはチキンなので、うまくいってる解析で採用されている方法にならうばかりですが……。 現象論的な解析から離れてしばらくになるので、今の物理屋さんの最前線には付いていけてないです。 [2011/07/28 23:45] 【Balsamicose】私がここで話題にしたいのは、(後でつけていただいたものですが)タイトルの「気軽」という部分です。現代のPCパワーであれば、最初に例示したような計算([[和訳版>http://raliosralios.web.fc2.com/MadoMagipop/MadolaPopulation.htm]]が見つかったのでリンクします)を例えば数学力の未熟な中高生がやってみるのは難しいことではないと思うのですが、やっている人を見ないのは何故だろう、やらないのは知らないからじゃないかと思うのです。いわゆる微分方程式は私は大学に入ってから学びましたが、身近な現象を記述するものでありながら微分方程式の考え方で立式をしようと思う人が少ないように見えるのは何故だろう、教育課程の問題ではないかと思うのです。[2011/07/29(金)] [06:58:21] 【Yasushi】昔、神戸大学の学生だった四囲氏が「砂 for Windows」http://www.vector.co.jp/soft/win95/amuse/se091919.html を公開したときに、同様のことを複雑な連立微分方程式で解析していた研究者たちは驚きました。重力流下に限定されるのですが、実験で見られる挙動を非常によく再現できているからです。(現在、氏は、iPhoneにも移植していて動画が http://ccnet.dip.jp/sand/sand-iPhone-movie.html で見られます。リアルです)当時のインタビューがVectorに残ってます。http://www.forest.impress.co.jp/article/2000/10/10/shii.html このリアルな「砂」のアルゴリズムですが、恐ろしいことに、高等な数学は何も使ってません。http://ccnet.dip.jp/sand/ ←たったこれだけの「ルール」でドットを動かしているだけです。 重力流動で粒子の動摩擦係数が小さい場合(サラサラの砂、ということ。つまり、グラニュー糖や鳴き砂のようなタイプです。これが、片栗粉や濡れた砂だと、この簡単な「ルール」では再現できません)には、これだけの「決まり」で、自然現象を表現できるということですね。これだと、グラフィックが描ける人なら、誰でもシミュレーションしてみることができます。 自然現象を解析するのは小難しい、という印象は、どうしてもあると思います。しかし、計算するのには都合が良い簡単さで、しかし、ある種の現象に狙いを絞れば要所を押さえた「モデル化」ができれば、専門知識がなくても可能だと思います。気軽にやってみる、というのは、無意識のうちにこの「うまいモデル化」をやっていることが多いです。米と小豆の実験動画も、実は、崩壊したがれき堆積物の内部構造のシミュレーションになっているのですが、現象を支配する大きな要因の一つ「空隙の違い」だけに特化しているので、小豆と米と箸、というたった三つの要素で実現できる訳です。 [2011/07/29 12:51]

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