Wikipedia日本語版の記事を充実させるために書いて欲しい内容は、分野外の人はあまり知らないけれども、あなたの(研究・専門)分野においては常識であることです。
自分の(研究・専門)分野においては常識とは?
福島第一原発事故の後、放射線量測定に対して多くの人が興味を持ち、実際に測定しようとしています。もし、測定者が大学や職場などで実験の設計方法を学んでいるならば「対照実験」の知識は常識中の常識として身につけているはずです。しかし、実験を設計したことがない人にとっては「対照実験」が絶対に必要であるということはさっぱりわからないと思います。他にも普段から放射線量を測定している人たちの常識は、新たに放射線量を測ろうとしている人たちにとって非常に有意義な情報となります。
- 参考:放射線量測定をしようと考えている方はまずは「怪しい伝説」を見よう中のガイガーカウンターミーティングへのリンク
また、なぜ「この程度の放射能汚染は安全」という学者が多いのかにあるように、最近、放射線の知識を促成で身につけた我々からすると信じられないような放射線医療の従事者の常識もあります。このような常識に賛成するかしないかは別として、この常識が存在することを知っているのはさまざまな判断の基準を増やす観点からとても有用なことです。
こんな風に書くと大学院修士課程の方は「えっ、常識と言われても」と思うかもしれませんが、自分が学んだ教科書を紹介するということだけでも、非専門家の方々にとってはとても役にたつ情報です。本があふれている現在において、その分野における定番の教科書や文献を紹介してあげるというのはとても重要です。また、同様にWeb上の定番サイトを紹介するのも重要です。
記事の充実と言われても…
記事の充実は大きくわけて以下のものがあると思います。
- 新規記事の作成
- 日本語によるオリジナル版の作成
- 他国語版 Wikipediaからの翻訳
- 既存記事への加筆(他国語版 Wikipediaからの追加訳含む)
- 既存記事への参考文献の追加(自分の分野の標準教科書の追加)
- 既存記事への外部リンクの追加
- 既存記事における出典の追加および出典不明の指摘
新規記事の作成
「新規記事の作成」は、Wikipedia日本語版にはまだ存在しない、自分の分野における常識を記載するページを作ることです。方法は大きくわけて二つあり、ひとつは自分で記事を書くこと。もう一つは、既に良くまとめられている他国語版Wikipediaの該当記事を翻訳することです。学術記事においては英語版Wikipediaの内容が充実していますので、自分が書きたい内容とほぼ同じであるならば、翻訳するだけでも素晴らしい貢献になると思います。
既存記事への加筆
「既存記事への加筆」は、既に存在する記事の足りない部分を加筆することです。間違っている部分を修正してもよいのですが、編集合戦になる可能性もありますので「ノート」の項目で間違っている可能性を指摘するだけにとどめておいたほうがよいと思います。他国語版の該当記事の部分訳を追加するのも良い貢献だと思います。
既存記事への参考文献の追加
「既存記事への参考文献の追加」は、参考文献が偏っている、あるいは少ない場合に、自分の分野において標準的な教科書や専門書を紹介することです。日本語文献はもちろんのこと、英語文献も紹介してあげるととても親切だと思います。また、非専門家の方々がもう少し専門知識を学びたいと思ったときに、この参考文献の紹介はとても役にたつことと思います。
既存記事への外部リンクの追加
「既存記事への外部リンクの追加」は、外部リンクが偏っている、あるいは少ない場合に自分の分野において標準的、あるいは、より詳しい内容が書いてあるWebサイトを紹介することです。Web上には有用なサイトがたくさんありますが、非専門家にとって、どれが有用でどれが有害なのかの判別はつきづらいものです。また、本は入手に時間がかかりますから、目的によってはWebサイトの紹介の方が有意義なことがあります。
既存記事における出典の追加および出典不明の指摘
「既存記事における出典の追加および出典不明の指摘」は、Wikipediaの重要な方針である検証可能性を保持するために必要な出典情報を追加してあげること、また、出典が不明確なものを指摘してあげることです。Wikpediaは玉石混交といわれていますが、出典をつけることで、その記事に信頼度を向上させることができます。適切な出典情報の追加、あるいは、出典が不明確なものについての指摘も重要な専門知識の還元であるといえます。
難易度
「新規記事の作成」が一番労力が高く、以降「出典の追加および出典不明の指摘」につれて比較的労力が低くなっていきます。他にもフォーマットの修正や「てにをは」の修正などもありえますが、それは専門知識の還元という観点からは別の方に任せた方がよいことだと思います。
修士論文や博士論文を書く際には、必ず第一章にその分野の背景を書くと思います。Wikipediaに記述する内容は、背景のように既に確定した事柄が適していますので、論文を書く前に自分が調べた先行研究をまとめる場としてもWikipedia日本語版は役に立つと思います。
- ライセンスを確認したうえで、このページのウィキペディアへの転載を許諾する。