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117 名前: トリスティンの杜(サイトが魔法を使えたら・番外編)(1/2) [sage] 投稿日: 2007/11/03(土) 01:40:15 ID:yVvwa3ip サイトは夜のトリスティンの杜へルイズに連れ出されていた。 寝る準備をする時間というのにルイズは寝巻きに着替えるそぶりもみせず、心もちそわついていたのだ。 窓の外には二つの月が重なっていた。月の映える夜である。 その月を見上げため息一つついたルイズはちょっと外へ出てみない?と言い出したのだ。 夜更かしは苦労ではないサイトは一つ返事でルイズに学院の外へと連れ出された。 外に出て数歩歩いたところでルイズは立ち止まり、口を尖らせて愚図った。 「あんた魔法使えるんだから、ご主人さまをあそこまで連れてきなさいよー」 可愛いご主人さまの命令(いうこと)を聞いて、ルイズを横抱きにかかえてサイトはスペルを唱えるのだった。 ”イル・フル・デラ・ソル・ウィンデ”サイトたちの身体はふわりと宙に浮きあがる。 飛翔魔法フライでご主人さまの目指すあそこへと飛び立った------- そして今。このトリスティンの杜に桃髪のご主人さまとその使い魔は並んで立っていた。 何しにここまできたんだか分からなかったもんだからサイトは黙って茂みから聞こえてくる虫の調べに耳を傾けていた。 リーン、リーン、リン、リン---しばらく時間が経ってからルイズが口を開いた。 「指輪。どうするのよ。誓わないの。」 ルイズの視線は使い魔の左手薬指に嵌められた鴇色の石が輝く指輪に向けられていた。 その指輪は《ミョルニル》の指輪という。その指輪を嵌めた者が二つの月が重なる時に愛を誓うと”奇蹟”が起こるといわれているらしい。 そしてその奇蹟が起これば永遠の愛が叶うという言い伝えがあったのだ。 サイトは空を見上げ重なった二つの月を見つめた。 そうか今日がその時だったのか、だからルイズが------あ、もしかして。はたとサイトは感づいたのだった。 そして薄っすらと笑みを浮かべてルイズに言葉を返してみる。 「そか。今夜は双月が重なってるのかぁ〜。綺麗だなぁ」 ルイズの問いかけとはまるで的外れな言葉を選んだ。 ルイズはそんなサイトにやきもきして言葉をぶつけてきた。 「ねぇってば。今夜がその時なんだから。誓う人いるでしょーが」 サイトはさらに焦らすように言葉を紡いでいく。 「うーん・・・だれかなぁ。俺が愛を誓う人って誰かなぁ----」 わざと言葉を濁す。 煮え切らないサイトの言葉の魔法にかかってしまったルイズは、両頬を薄紅色に染めて桃色の髪の毛をいじいじしはじめたのだ。 これを言っちゃうとあの言葉を言っちゃたのと同じゃないのよ。 でもでもでもでも・・・ここで確かめてとかないとチビメイジやチチオバケのエルフとか世間しらずなどっかの女王とかにとられちゃうかも。 彼女の中で抑え切れないくらいに使い魔への使い魔を越えてしまう想いが虚無の魔法のように膨れ上がっていくのであった。 118 名前: トリスティンの杜(サイトが魔法を使えたら・番外編)(2/2) [sage] 投稿日: 2007/11/03(土) 01:41:16 ID:yVvwa3ip もはや表情が魔法にかけられてかのようにころころ変わっていくルイズを半分にやりと残り半分は愛しいという気持ちを込めてサイトは眺めていた。 そして最後のダメ押しの一言をルイズへ呟いた。 「何回も『好き』って言ってんだけど応えてくんないからなぁ・・・」 ルイズの溢れる想いを喉で抑えつけていた何かがふっと消え失せ、口をついて出てしまった。 「『わたし』がいるでしょー。このわたしに誓いなさいって言ってるんでしょーが」 ついに言ってしまった。頬どころか顔や耳までも紅潮させてルイズは涙目である。 サイトは嬉しくなった。ルイズがついに彼女のホントの気持ちに肉薄する言葉を放ってくれた。 真顔になってルイズに向き直った。そしてさっきの言葉を確かめる。 サイトの真剣な眼差しにルイズも涙をためながらも目を逸らさずにまっすぐと見つめている。 「じ、じゃぁ誓うからな。後戻りできねーんだぞ。いいな」 サイトの問いかけにルイズはこくんとうなずいたのだった。 ルイズの首肯を受けて、サイトは二つの月に向かって左手の指輪を差し伸べた。 「我が名はサイト・シュヴァリエ・ド・ヒラガ。重なりし双月のもとミョルニルの仲立ちにて誓いの儀式を執り行う。 我はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールに永遠の愛を約することを誓う----」 重なり合った二つの月の光芒に鴇色の宝石が呼応しまぶしいばかりの輝きを放ち始めた。 宝石から白銀色の光の束が弧を描いて、ついに真円の形を成した。続いて宝石そのものから鴇色の光の球が湧き出てきた。 その光の球はしばらく宙で浮遊していた。そして寸秒燃えるような輝きを見せ、球の色が紺碧に変化した。 最後に紺碧の球は先の真円と重なり合って今まで最も眩しく光り輝いた。 まるでこれからの二人を祝福するかのような輝きで。 奇蹟は完成したのだった-----サイトの右の掌の上にはもう一対の紺碧の宝石のついた《ミョルニル》の指輪がのっていた。 綺麗・・・ルイズはその光景に見入っていた。 サイトは指輪をつけた左の手でルイズの左の手をとる。そしてルイズの鳶色の瞳を見つめた。 「誓い・・・・受けてくれるよな」 サイトの黒い瞳を見つめすぎてルイズは吸い込まれそうな気持ちになりながらも応える。 「・・・・うん。受けてあげるわ」 彼女は軽く腰をかがめる貴族の淑女の所作をした。よろしくおねがいしますという意味を込めて。 サイトの人差し指と親指つままれた生まれたばかりの誓いの証はゆっくりとルイズの四の指”薬指”に嵌められていった。 奥まで嵌められた指輪は、サイトの時と同じように紺碧色の宝石が一瞬輝いたのだった。 想い人に誓いの指輪を嵌めてもらってルイズは感極まってしまって涙がとまらくなっている。 ぬれた双眸で想い人を見上げて一言、今まで封じ込めてきた正真正銘の気持ちを告げたのだった。 「好きなんだから」 その一言を想い人は微笑みで応えてくれた。 そしてこの場所に来たときと同じようにルイズを横抱きに抱いてふわりと魔法で舞い上がる。 二人のシルエットが二つの月と重なった。 主人と使い魔という壁を越えた桃髪の少女と黒髪の少年の二人を讃えるかのように双月の月の光がやさしく二人を包み込んでいった。 〜Fin〜

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