チョコレート囲いの極意

チョコレート囲いの極意

『将棋は玉を囲ってから攻める』これは将棋の基本である。
美濃囲い・穴熊・船囲い・左美濃・矢倉など色々な囲いが存在する現代将棋。
目まぐるしく定跡が進歩していき、もう囲いは出尽くしてしまったと思われていた・・・。
しかし囲いの存在こそが、チェスとの決定的違いでもある。
そう簡単にもう囲いはないよ と諦めてもいいのだろうか?

そんな時、ふと先に名前が浮かんだのがこの『チョコレート囲い』である。
形はその数時間後に浮かんだ。
他にも『屋根裏矢倉』『玉冠』という別名もあった気がするが、好きに呼んで貰って構わない。


チョコレート囲いとは?

ではさっそくチョコレート囲いについて説明しよう。
下の図がチョコレート囲いである。

まるで玉が金銀の上に腰掛けているようだ。
玉が三段目にある数少ない囲いの1つだろう。
基本は対振り飛車で使われる囲いという事を覚えておいて欲しい。


因みにこの囲いには原型となる将棋がある。
下図をご覧になって貰おう。


41手目▲3八飛まで

将棋を指している人なら、この将棋を知っているだろう。
日本に残る最古の棋譜 初代大橋宗桂 対 本因坊算砂 戦の棋譜である。

この先手の形がチョコレート囲いの原型である。
8八角・6七の銀がチョコレート囲いと違っているが、これを見てこんな囲い方もある と思い知らされた。


チョコレート囲いの思想

チョコレート囲いを使うには、通常と違う思想が必要である。
ポイントは下の3つ。

1.玉の固さではなく広さ・柔軟性で勝負する囲い
2.通常型のまま受け切る事はほとんどなく、相手の動きによって自ら囲いの形を変えて受ける柔軟な囲い。
3.7七の桂馬はお荷物

特に2と3が非常に重要で、3番は中盤での課題である。
なぜお荷物なのかは、後々説明していく。


まず1番と2番から説明する。


チョコレート囲いの基本


お互い  銀 桂 歩  を1枚づつ持った終盤戦と仮定した局面である。
ここで後手にチョコレート囲いを攻めて貰う。

仮想図から
△6九銀


まず直接的な△6九銀から。
玉でしか紐がついていない金を攻めるのはよくある考え方だ。
しかしチョコレート囲いは一筋縄ではいかない。

以下の指し手
▲7九金 △5八銀不成 ▲6八金 △5九銀不成 ▲7八金寄(結果図)

まず▲7九金と引き銀に当てる。
▲6八金寄は、△5八銀不成 ▲5七金 △5九銀不成 ▲7八金 △6八銀成(失敗図)となり次の△7八成銀があり大変。

後手は△5八銀不成と6七の金を狙うが、大人しく▲6八金と引き。
△5九銀不成と食らいつくも▲7八金寄(結果図)でこれ以上攻めが続かない。


因みに▲7八金寄では▲6九金引も十分ありえる。

結果図以下△7五歩と桂頭を攻める手には、
▲同歩 △7六歩の後、▲7四桂(参考図)という手があり先手優勢。
この返しは後手が銀冠でも成立するので覚えておいて欲しい。
先手の持ち駒に桂馬があれば後手の玉頭攻めはなかなか対抗できる と思っておけば良いだろう。




では仮想図に戻って、ここで△8五歩と直接しかけるのはどうだろうか?
狙いは当然△8五歩 ▲同桂 △同桂 ▲同歩 △8六歩 ▲同玉に△7八飛成
しかしそう簡単に上手く決まるはずもなく・・・。

仮想図以下の指し手
△8五歩 ▲同桂 △同桂 ▲8四桂(結果図)

何と▲8四桂という返し技がある。
次の▲7二桂成が上手く受からず後手大変。

その後、先手に▲8五歩と取られると後手はもう続かないだろう。
△8六歩と打ってもさっきまで桂馬がいた7七に▲7七玉と逃げられてしまうのだ。

ただしこの攻めは先手に桂馬か香車がなければ成立してしまうので注意して欲しい。
先手が香車を持っているなら、最初の△8五歩の時に▲8四香とすぐに返して先手良し。



以上でチョコレート囲いの例題を終えるが、
1.玉の固さではなく広さ・柔軟性で勝負する囲い
2.通常型のまま受け切る事はほとんどなく、相手の動きによって自ら囲いの形を変えて受ける柔軟な囲い。

この2つの特に2番が今回よくわかったと思う。
1番目が今回よくわからなかったと思うが、1番目が発揮されるには3番目の
3.7七の桂馬はお荷物 について説明しなければならないだろう。

なぜ7七の桂馬は必要ないのか?

まずこの図を見て欲しい

先手の桂馬を取り除いただけだが、この時点で先手の手番なら▲7七銀と上がるだけで受かっている。
上部の攻めを警戒しての▲7七銀だが、上部に憂いがなければ▲7七金寄もかなり有力。


他にも▲7七金上 ▲7七金寄の手も生じ、いざという時の▲7七玉も可能になるので7七の桂はいない方が良い。
なまじ7七に桂がいるために、7六の地点を攻められたりとあまりいい事がないのだ。

そのため、チョコレート囲いを指す際には 
7七の桂を中盤で上手く交換してしまうか、捌くのがベストである

これだけで非常に柔軟性のある広い囲いへと変身する。


チョコレート囲いの裏技・豆知識


他にも戦いの後半で▲9八玉と深く逃げる裏技もある。

これだけでグッと玉が深くなった感じだ。
筋として覚えておくと良い。


  • ▲7六金型

隙があれば▲7五歩~▲7六金型にするのも有力。
桂頭を攻められた際、この形になった場合は歓迎してもいいぐらいだ。
相手が高美濃や銀冠なら▲8五歩・▲6五歩などの筋がある。
8筋に何もないなら▲8五歩でグッと広くなる。
狙えるなら狙ってみてもいいかもしれない。
ただし3段目に飛車を成られたりすると少し厄介だ。


  • ▲6六銀型

滅多に6筋の位は取れる事はないが、戦いの中で上手く取ることができた場合。
▲6六銀型を狙ってみるのもいいかもしれない。
次に▲7五歩と突く事ができれば玉が広くなる。
5筋にも手厚く、なかなかに固くなるので狙える時には有力な囲いだ。


  • ▲8六銀型

裏定跡の決め手の中の実戦でチラッと出た囲い。
▲8五歩から持ち駒の銀を▲8六に打ち込んだ形だが、今まで実戦でこの形にできたことはない。
だが組むことができれば上部に強く強力な囲いだろう。


チョコレート囲いの組み手順

面倒臭いので棋譜だけおいておく。

先手:チョコレート囲い
後手:四間飛車

▲7六歩 △3四歩 ▲2六歩 △4四歩 ▲4八銀 △4二飛
▲6八玉 △3二銀 ▲7八玉 △9四歩 ▲9六歩 △7二銀
▲5八金右 △4三銀 ▲5六歩 △6四歩 ▲2五歩 △3三角
▲7七角 △5二金左 ▲6八角 △6二玉 ▲6六歩 △7一玉
▲6七金 △4五歩 ▲7七桂 △7四歩 ▲8六歩 △6三金
▲8七玉 △7三桂 ▲8八銀 △8四歩 ▲7八金 △5四銀
▲3六歩 △8二玉

攻め筋とかはトーチカ囲いの本とか参考にしやがれですぅ。
筋はほとんど似てるからあの本ほとんど参考にしたから買って損はないぞ!

簡単に棋譜ファイルにまとめてみた。
チョコレート囲いの組み方