ゼロの保管庫 別館

10-82

最終更新:

familiar

- view
だれでも歓迎! 編集

82 名前:1/7[sage] 投稿日:2006/12/29(金) 02:17:32 ID:bGKe/r+5 猫の様に起きぬけの身体を伸ばす。 腕の中には……タバサの使い魔。 (浮気してるわけじゃないわよ、ジャン) きゅいーきゅいー、と独特の寝息を聞きながら同室の筈のタバサを見つける。 「あんたまたそんなとこで……」 疲れが取れないのか、気配に敏感なこの子があたしが話しかけているのに寝入ったままだった。 小さな溜息を付いてから足音を殺して側まで近寄る。 (幸せそうに寝てるわねぇ……) この子がこんなにくつろいでいるのを見るのは初めてかもしれない。 それを引き出したヴァリエールの使い魔……サイトに何度目か分からない感謝を捧げる。 ずれた布団を起こさないように注意しながら掛け直した。 本当は……ジャンを助けに行きたかった。 もし傷ついていたら? あの騎士隊長に殺されていたら? そんな焦燥に身を焦がされる。 でも……一度ジャンの為にオストラントを作っている間にこの子はこんなに危ない目にあった。 何とか助け出すことが出来たけれど、今のこの子を置いたままジャンの所には行けない。 (いいわよね?ジャン) 自分の生徒だというだけで、国だって敵に回す愛しい人。 彼の代わりには成れないけれど、彼が居るならそうしろと、必ず言ってくれるから。 「貴方の側に居るわね?タバサ」 助け出されてから一度もベットで眠らない親友。 少なくとも理由が分かるまでは……ジャンのところに向かうつもりは無かった。

83 名前:2/7[sage] 投稿日:2006/12/29(金) 02:18:05 ID:bGKe/r+5 2 ―――――シルフィード 「毎日おねぇさまと同じ部屋でシルフィうれしいの、きゅいきゅい」 ……使い魔ならなんか知ってるかもっていうのは……間違いかしら? 「別にどこで寝ても平気なの、毎日おねえさまの側にいられるのがうれしいの」 ……そういやこいつ、竜だっけ? 「人間はベットで寝るのよ」 「床とか穴の底で寝てるのも居るよ?」 どこに居るのよ…… 「とにかく、タバサがあんな所で寝るのはおかしいんだからっ」 だめだ……こいつにはもっと基本的なところから話さないとだめねー 「きゅるきゅるは小さいことを気にしすぎなの、ハゲるのハゲるのお揃いなのー」 「だれがきゅるきゅるかぁっ」 ……ジャンとお揃いでもそれはちょっと…… 「で、心当たり無いのよね?」 ん〜と空中を睨みながら竜が悩む…… こいつって結構いい歳なのよねぇ…… 「あ、そうだ、聞いて聞いてきゅるきゅる〜!」 お、何か有ったのかしら? 「シルフィね、シルフィねっ」 パタパタと派手なジェスチャーで感動を表そうとしているけど…… 小さい子の駄々にしか見えない…… 「おねえさまとおんなじ部屋で寝た事そんなにないの〜」 ………… 「それで?」 「いつもと違っても、いつもを知らないからわからないのっ、きゅいきゅい」 ……悩んでそれって……韻竜が滅んだ理由って…… 「よ、よく分かったわ……」 「役に立ってよかったの〜きゅいきゅい〜♪」

84 名前:3/7[sage] 投稿日:2006/12/29(金) 02:18:41 ID:bGKe/r+5 ―――――モンモランシー 「はぁ?そんな事してるの?身体壊すわよ?」 「そうなのよ……何か聞いてない?」 ちゃんと話の通じる人間に聞くことにした…… まぁ、色ボケのヴァリエールよりこっちの方が頼りに成るしね。 「……まさか……」 あ、やっぱり心当たりとか有りそうね。 「……まさかっ……まさかぁぁぁぁ」 何を考えているのか分からないけれど、モンモランシーの顔が見る見る青ざめていった。 え?え? 「あの子……ベットに乗るのも嫌なトラウマでも……掴まっている間にっ!」 げ 「じゃ、じゃあ……あのエルフとかに○○○○とか?詰めてた貴族に×××とか?」 「そうよっ、それどころか毎日毎日ベットの上で夜も昼もなく△△△△とかっ」 「捕まってまだ自由の利かないタバサの身体を、薬で……」 「あーあれ、あの薬とかっ、効くのよねぇ……」 「え、モンモランシー……あんた……」 い、意外な一面を見てしまった。 「で、でもそれは有りそうねぇ……野郎ばっかりだったし」 最悪の可能性、軽々しく聞くことも出来ない。 ……でも、もしそうなら…… 「あのエルフ……殺す……」 あたしの殺意はモンモランシーの一言にあっさり散らされる。 「ま、そんなはず無いけど」 「は?」 「いや、助けた後、最初に診察したわよ、そんなの。」 ……いや、まて……モンモランシー……あんたっ 「女の子がさらわれたんですもの、助けた後に調べるのは当然でしょ?」 ち、力が抜けて何もいえない…… あたしの殺意を返せっ 「病気とかうつされてたら困るし、メンタルなケアも要るし」 ……今のあたしのメンタルをケアしなさいよ…… 「あ、あんたねぇ……」 「いや、茶化すつもりは無かったのよ?ただちょっと思いついちゃっただけで」 さ、最悪だこの女…… 「ちなみに大丈夫だったのよね?」 念の為に確認。 「うん、ばっちり未使用、綺麗なもんだったわよ」 ほっとする、しかしモンモランシーは止まらなかった。 「いや、胸は無いけどあの子肌綺麗でねー、触り心地良いし」 ……何してんのよ。 「無き疲れて寝たときだったから、力抜けててやり放題でね」 ……いつの間にか、サイトとかギーシュが鼻の下伸ばして聞いているのに、モンモランシーは気付かずに続けていた。 「無いって言っても、全然無いわけじゃないし、あれは結構前途有望よ! 肝心なアソコは成長途中っぽいけど、それもまたよしっ」 ……どよめくな野郎共…… 「なによりっ、タバサのアソコまた生えてな……」 拳を握って力説を始めていたモンモランシーは真っ赤に成ったタバサに杖で殴り倒された…… 呪文も唱えられないくらい怒ってたみたい……

後が怖い……

85 名前:4/7[sage] 投稿日:2006/12/29(金) 02:19:13 ID:bGKe/r+5 ―――――ヴァリエール 「で……ね?」 「うふふふふ、もぉ、サイトったら奥手なんだから……」 聞いてねぇ…… 「だからっ、タバサがっ!!」 「うふふ〜ん、ここにはシエスタいないも〜ん」 ……よほど毎日が楽しいのね…… こいつの部屋は当然のように、使い魔と同室…… 「あ〜ツエルプストー、なぁに?何か御用?」 ……さっきまでの説明全然聞いてなかったのね…… 「……お幸せにね……ヴァリエール」 だめだ……こいつはだめだ…… 「いや―――、お幸せにだなんてっ、けっ結婚するみたいじゃない? まだよ、わたしそう簡単許しませんことよ?」 ……だ、だめだ……あたしが馬鹿だった……

―――――ギーシュ 「……タバサ……」 名前を言っただけで、勢いよく鼻時が噴だした…… 「さっきの話は忘れなさいっ!!」 「も、もちろんだともっ、僕は紳士だからねっ」 ……怪しい 「タ、タバサの……が……だ……など……ぐはっ」 ……こいつもだめだ……

―――――マリコルヌ 「……ギーシュがなにか隠してるんだ……サイトも…… 何だ?何が有ったんだ〜〜〜どーして僕だけ不幸なんだぁぁぁぁ」 ……以下略

86 名前:5/7[sage] 投稿日:2006/12/29(金) 02:19:45 ID:bGKe/r+5 ―――――サイト 「そう言えばおかしいよな……」 ……や、やっと……まともな反応…… 「最近どこに行くのも、ちょこちょこ付いてくるよな」 恩を感じているのか、タバサは極力サイトの側に居ようとしていた。 「かわいいわよねぇ」 「義理堅いよなぁ」 最近毎日あの子の新しい面を見ている気がする。 物陰からサイトを見つめるところもその一つ。 たまにヴァリエールが怒り出すけど、そんな時はあっさり立ち去るから、そんなに波風も立たなかった。 「女の子助けたんだから、感謝くらい大人しく受けなさいよ」 タバサが珍しく男の子に興味持っているのに、鈍いこの男と自分から動かないタバサがもどかしい。 「んなこといってもなぁ……普通助けるだろ?泣いてる子が居たら」 結構いい男に育ってるわね、ジャンほどじゃないけどね。 「心当たりはないのよね?」 頷くサイトを見て、本人に聞く覚悟を固める。 「タバサにきいてみるわねー」 「あ、じゃあ……ちょっと頼みが……」 あら意外 「自分で聞いたら?」 「いや、タバサさ、俺が近寄ると逃げるんだよな……寄って来るのに」 照れてるのよ……聞くまでもないのに…… 「自分の口で聞きなさい、勇者さま」 あたしでは成れなかったあの子の救い主を、腹いせに少し困らせてからタバサの所に向かった。

87 名前:6/7[sage] 投稿日:2006/12/29(金) 02:20:17 ID:bGKe/r+5 ―――――タバサ 「…………」 ……や、やばい。 「ごめんなさい」 そういえばさっき、モンモランシーの件で怒らせたままだった…… 視線の強さは一切変わらないまま、小さな声が響いた。 「聞かれた?」 「ご、ごめん、聞いちゃった……そんなに気にしなくてもっ」 あたしが聞いたことを気にしているのかと思ったけど……タバサが視線を伏せながらもう一度言い直した。 「……才人に……」 ……ギーシュが聞いてたから間違いなくサイトも聞いているだろうけど…… 「聞いてないんじゃない?」 「ほんと?」 まぁ嘘も方便よね? 「本当、本当、あ、そうそうサイトがね心配してたわよ、最近様子がおかしいって」 見るからに脱力するタバサを、いい機会だから押しまくる。 「どうしたの?サイトからは逃げてるみたいだし……床で寝るし」 「平気、何でもない」 何度聞いてもコレだから…… 「あたしに出来ることは?」 「ありがとう……でも……」 大切な親友なのに……いつもこの子の役に立てない自分が歯がゆい…… 「……わかったわ……何か有ったら、言ってね?タバサ」 ごめんなさい、ジャン……あたしもう暫くこの子の側にいるわね……

88 名前:7/7[sage] 投稿日:2006/12/29(金) 02:20:49 ID:bGKe/r+5 今日も新しい宿に着く。 キュルケが交渉して、みんなの部屋を取る。 才人はルイズと。 わたしはキュルケと ギーシュとマリコルヌ モンモランシーは母さまの世話をしてくれている。 いつもどおりの部屋割り。 皆がどの部屋に入ったのか確認してから、キュルケに手を引かれて自分の部屋に。 シルフィードが窓から入ってくる。 じゃれ付くシルフィードに、わたしを気遣うキュルケ。 自分で自分が分からないから…… キュルケが助けようとしているのに、何も言えなかった。 才人の側で、お話したかったな…… ありがとうって、言いたかったなぁ…… 母さまが帰ってきて、まだ先のことは分からないけれど…… わたしの勇者さまに、見出した仕えるべき勇者に……言いたい事は沢山ある。 でも……男の子と…… ううん、自分からどう話しかければ良いのか、よく分からないよ。 それに…… 彼はルイズの使い魔だから……迷惑だよね? メイドの女の子もいる。 ルイズが陛下も気にしていた。 昔は……キュルケも。 ………………寂しい。 ほんの数日前よりも、ずっとずっと幸せなのに。 今までで一番寂しい。 「おねーさまー」 「ほらほら、もう寝るわよ?明日も早いんだから、早く寝るっ」 シルフィードも居るし、キュルケも居る。 アタシハ イマ シアワセデス

でも……でもね 「もう……その趣味、変よ?」 「おねーさま、一緒に寝よっ、きゅいきゅい」 ごめんね、二人とも。 「平気、おやすみ」 毎日だから……何も言わなくなった二人の横を、布団を抱えて通り抜ける。

ぴったりと壁に寄り添う。 少しでも……距離が縮まるように。 「おやすみなさい」 貴方に届きますように。 小さな挨拶。 あの人が居る部屋に、少しでも近い場所で……わたしは今日も眠りに付く。

明日もあの人が幸せでありますように、強く祈りながら。

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

目安箱バナー