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122 名前:1/10[sage] 投稿日:2007/01/30(火) 01:29:05 ID:cJYHbtWw 「おとうさん、貴方は堕落しました」  は? いきなりこんな事を言われて、納得する奴は滅多に居ないだろう。  ましてや、俺が堕落?  今ハルケギニアが平和なのは、俺の努力がその一端を担っている。  胸を張って宣言してもよかった。

 シエスタがもうすぐ一人目の子を産むし、少し遅れてルイズも……  姫さまとだって続いてるし、数ヶ月に一度外交名目でガリアに出かけるが、  仕事なんかしたことねーし。  それでもトリステインでは英雄扱いだ。他の国に行ってもかなり我侭がきく。  我が世の春!! そんな状態だった。

「で、君は誰だ?」  そんな俺の事をおとうさまと……心当たりが無い訳じゃないけど、育ちすぎ。  日本なら、幼稚園児か小学生か、そんな年頃の男の子だった。  親に抱かれる年頃ならば、『ルイズとシエスタには内密にィィィ』と、土下座の一つも辞さないが。 「わかりませんか?」

 妙に自信満々な男の子……黒い髪、黒い目……それだ……けで?  よーくみると結構俺に似ていた。  俺より各パーツの出来が遥かに良いが、小さな頃の俺の面影が確かにある。  写真の無いこの世界で、子供の頃の俺を知るのは俺だけ……  その俺が……似てるって判断できる、この子は…… 「僕の母はティファニアですよ、サイトおとうさん」  にっこり笑う笑顔に、テファの印象が重なる。 「え? でも……テファと分かれたのが……」  しかも、テファとは肉体関係は無い……あの頃の俺は禁欲的だったなぁ  あの直後位から、妙に我慢が出来なくなって、手を出しまくった結果……  戦争よりやばい数々の修羅場をくぐって……俺、よく生きてるなぁ……

 物思いにふける俺を、しばらく眺めていた男の子が洒落にならないことを言い出した。 「母は、記憶を消せるのをご存知でしょう?」  ……まあ……ご存知ですよ……っまさか! 「貴方がルイズさんの側に居るべきだと、母は判断したそうです」 「ちょっ、ちょっと待て、じゃ……俺……」 「命の恩人に手を出した挙句、捨てて逃げた卑怯者ですね、おとうさん」  マジでへこむ。  テファの事は大切な思い出だ。  美しい森の奥で、ひとり静かに暮らす妖精の美少女。俺だけが知っているその存在。  思い出すたびに胸が温かくなる彼女の事を、まさか自分で汚していたなんて。

「……母は一人でたまに泣いていました……はっきり言って僕は貴方を許せません」  静かな宣告に、死ぬほどの後悔が俺を襲う。

 綺麗な姿勢、歳とは不相応な言動、今は冷たいとはいえ、優しそうな顔立ち。  出来たお子さんだった。どこに出しても恥ずかしくない美少年だった。  ……いや、多少とはいえ自分に似ているのを誉めるのは面映いけど。  テファは一人でこの子を育てたんだと思うと、誇らしくて……悔しかった。  俺にも……何かさせて欲しかった。

 テファは俺の事を気遣ってくれたのだろうし、実際、子供が居ても構う暇が無いくらい激動の数年間だった。  シエスタやルイズと子供が出来た頃、やっと各国の情勢が落ち着き始めていた。 「母はずっと待っていたんですよ?」 利発そうな少年は、俺を弾劾する手を休める事は無かった。

123 名前:2/10[sage] 投稿日:2007/01/30(火) 01:29:39 ID:cJYHbtWw 「貴方をずっと待っていたのに、ここ数ヶ月は諸国も安定したのに……貴方は来なかった」  ……シエスタとルイズの妊娠も、言い訳にはならない。 『またな』って言ったのは俺だ。 「……すまない」  この子も……少しは俺に会うのを楽しみにしていてくれたのだろうか?  怒りも悲しみも無く、訥々と語る姿からは、何も読み取れないけれど。 「今から……ウエストウッドに立つよ」  シエスタとルイズに、何て言い訳しよう。  多分、本気で起こられるだろう。  大騒ぎするほど遠い場所ではないとはいえ、出産に立ち会えないかもしれないからだ。 「無駄です」  どうやって説得するか、どうゆう手段で行くか、そんなことを考えていた俺を、少年は突き放す。 「なっ、なんでっ?」  嫌な予感がした。  そうだ、この子なんでこんな所に居るんだ? 「テ、テファはっ? テファに何か有ったのかっ?」  ……怖い。  全身からいやな汗が出て、震えが止まらない。  こんな歳の子が、一人で片親を訪ねる理由なんて…… 「ウエストウッドには……もう……居ません」  全身の力が抜けて、その場に崩れ落ちる。  地面を見つめる俺に向かって、少年の声が響く。 「貴方が危ない事をするたびに……その噂を聞くたびに、母はそうなっていました。  ラ・ヴァリエールの所から単身令嬢を攫ったり、一人で砂漠を横断したり、  騎士隊一つだけでガリアに特攻したり……そんなたびに母は泣いていました」  ……ごめん、テファ……ごめんなさい。

 地面にポツポツと、黒い痕が出来る……どんどん増えていく、俺の涙の痕。

「何度も言うが、僕は貴方を許せない、それでも……母は貴方が好きなんだ……  僕がここに来たのはね、おとうさん。名前を貰いに来たんだ」 「……なま……え?」  泣き崩れる俺に、少しは心を許してくれたのだろうか?  細いが、しっかりとした手で、俺を助け起こしてくれる。

 ……嬉しかった。……こんな些細なことがこんなに嬉しいのなら……  もっと親孝行しておくんだった……  呆然と後悔を続ける俺に、テファと同じ優しさを持つ瞳が語りかける。 「母は僕が育つところをおとうさんに見てもらえないから……そう言って、いつもこう言っていました。  いつか、おとうさんに会ったら、子供と認めてもらえなくても良いから、一生一緒に居られるように、名前を貰いましょうね。  いつも……そう言っていました」

 テファは……優しい。  俺が、何も出来なかったって、後悔することも分かってたんだ…… 「テファに……会いたいな」 「……来なかった癖に」  確かに……後悔なんて……何の役にも立たない。

「一言……謝りたかったな……」  少年が何も言い返さなかったから……  静寂が辺りを包み込む。  お互いに、何も言えずぼんやりと道行く人を見ていると、少年がぽつりと言った。 「なら、どうぞ……」

 少年の指し示す先には……、テファが居た。

124 名前:3/10[sage] 投稿日:2007/01/30(火) 01:30:14 ID:cJYHbtWw 「テファァァァッァ、テファッ、テファッ、テファァァァ」 「っっ、きゃぁあっ、サイト? どうしたの?」  数年前からまったく姿の変わらない……いや、姿かたちは同じだが、前よりもまとう空気が優しく……強かった。 「ごめんっ……ごめんっ、テファ……またなって……言ったのに」 「いいのよ、サイト。忙しかったのよね? ウエストウッドまで噂が流れてきてたよ」  柔らかく笑うテファが、潰れそうなくらい強く抱きしめる。  テファも俺を放さなかった。 「両親の仲が良くて、僕も安心ですね」

 ……こっ、この根性悪がっ、どこの誰に似やがったぁぁぁ、俺でもテファでも無いぞっ絶対!!  ふつふつと沸き立つ怒りを抑えていると、テファが慌てて謝っていた。 「ご、ごめんなさいっ……あのっ……あのねっ、この子……ね、その……」  切り出し辛そうな、テファに助け舟を出す。 「「知ってる」」  ……二人そろって。

 綺麗にハモった声に、お互い苦笑する。 「因みに、嘘は一つもついてません。名前、よろしくお願いしますね?」 「……ぜーーったい、変なのつけてやる」 「おとうさんが付けて下さるのなら、それで結構ですよ」  俺の大人気ない宣告にもまったくめげずに、さらりと言い返された。  ……か、可愛くねぇ。

 何も言えずにガルガル吠えてる俺を置いたまま、  少年はテファに駆け寄って報告を始めた。 「ごめんなさい、おかあさん。薬が効きすぎたみたいです」 「ダメよ? 悪い子っ。めっ!」  怒られる方も、怒る方も、相手を大事にしているのが分かって、微笑ましかった。  一生懸命に一つも嘘を吐いていない事を説明していたけれど、テファは笑いながらもきちんと怒るべき事は怒っていた。

 ……疎外感。俺、おとうさんなのに。

「おとうさんっ!!」 「はいっ!!」  テファとの話が終わったのか、俺の所に来て話かけてくれる。 「ご自宅伺ってよろしいですか? 僕は数時間してから参りますので、母と積もる話でも……」  ……こいつどんな環境で育ったんだろう? 「……こっから見えてる、ほら、あの屋敷……あと……これ、小遣い」 「うわぁ、ありがとうございます。街っていろいろ有ったから、楽しみです。すこし見物してきますね」

 ……元気な子だ……頭も良いし。 「さすがテファの子だな」 「……サイトの子だもん、恥ずかしくないように……って」  顔が赤くなっているのが自分でも分かった。

 ……この時間なら、ルイズもシエスタも居ないよな……

 テファと腕を組んで自宅に向かう。  ……もう少し、時間がゆっくりと流れればいいのにな。二人ともそんなことを考えながら。

125 名前:4/10[sage] 投稿日:2007/01/30(火) 01:30:48 ID:cJYHbtWw 「手間の掛かる、両親です」  ワルドおじさんや、フーケねえさん(おばさんと呼ぶと、ゴーレム詰め数時間……あれは辛い)みたいに、いつも一緒に居れば良いのに。 「出来るだけ二人っきりにしてあげれば良いんですよね?」  出かける前に、二人に厳重に言い渡された。おとうさんに会うのがどれだけ嬉しくても、夫婦の邪魔しちゃいけないって。  さっきのお話も、フーケねえさんが筋書きを考えてくれた。嘘は一つも無いところが怖い。 「僕、もうそんなに子供じゃ有りません」  手の掛かる大人が、周りに沢山居ますから、いつまでも子供では居られないのです。  おとうさんに貰った……金貨? うわぁ……こんなにお小遣いもらったの初めてだ……  は……使いません。村でコツコツ貯めたお小遣いで、皆へのお土産を探します…… 「高い……」  おかしいです、これはどう考えても陰謀です!!  こんなの、僕、自分で作れます。原価だって見当付きます。なんでこんな値段なんですかっ。  ……うぅ……怒っても仕方ありません。  お土産……困ったなぁ……おとうさんに貰ったの使えば良いんですが…… 「これは……記念に置いておくつもりですし」  次に会えるのがいつか分からないですから、貰ったものは全部取っておきたいです。 「……困りましたね」  道の真ん中で唸っていると、優しいおねえさんが声を掛けてくれました。 「どうしたの僕?」  僕と同じ黒い髪をした……妊婦さん。 「うわぁ……お子さん産まれるのですか?」  村に子供は多いけれど、子供ばかりなので、妊婦さんを見るのは初めてです。 「えぇ、坊やみたいな賢い子が産まれると嬉しいですね」 「? 僕、賢くないですよ」  お土産もちゃんと買えないのに賢いとか自分で言ってると、ワルドおじさんにお空の彼方まで飛ばされます。  「何か有ったの?」  あぁ、いけません、おねえさんに気を使わせてしまいました。  ここは理由だけ言って退散しましょう。 「実は……で……」 「……わかりました、わたしが何とかしましょう!!」

 ……えと……どういう事でしょう?

126 名前:5/10[sage] 投稿日:2007/01/30(火) 01:31:23 ID:cJYHbtWw  僕は今後女の人には逆らいません。  フーケおねえさんや、おかあさんが特殊なのだと思っていました。 「ほら、こーんなに安く買えましたよ」  このシエスタおねえさんも、凄いです。  全然足りないと思っていたお金が、余りました。  思ったよりも、ずっと沢山買えましたし。

 どーやったのか、横で見てたのに分かりません。  店の人が泣き出しても、値段交渉を止めない様は非常に勉強になりました。

「えへへ、満足です。ね、もうちょっと付き合いませんか?」  この人には逆らえません。  それにお土産も買えましたし、  今から僕は時間つぶししないといけません。渡りに船です。 「はい、どこえなりとお供します」 「うん、そこの喫茶店でルイズと待ち合わせなの」  ……き、聞き覚えのある名前ですけど、きっと街では珍しくない名前なのでしょう。 「ルイズ……さん、ですか?」 「ほら、そこの美人」  まだ少し向こうですが、オープンカフェに桃色の髪の人が座っていました。  道行く男の人が必ず一瞬立ち止まるほどの美貌。  おかあさん以外では始めてみました。

「ルイズ〜」 「遅いわ、シエスタ……って、もう産んだ訳?」 「まだ入ってるわよ、ほらほら見て、そ〜〜っくり、ナンパしちゃった」  えと……なんだか嫌な予感がするのですが? 「うわ……こんなに大きくなかったら、どこで浮気したのか問い詰めるところね」 「まったくですねー」  凄く仲の良い二人です。姉妹でしょうか? 「あ、そういえば君、名前は?」 「……シエスタ……あんた……」  幼児誘拐は犯罪よ? ルイズおねえさんの目が語っていましたが……まぁ自己紹介をしましょう。 「えっと、名前はまだ有りません」  まぁ、こうなるのですが。  因みにおかあさんが呼ぶ通称は有るのですが、秘密。  ……もうすぐ僕にも名前が出来ると思うと、楽しみです。 「「は?」」  最初はいつも皆さん驚かれます。  説明も慣れたものです、物心ついたときから繰り返してますから。 「父は僕が産まれたこと知らなくって、母は父から名前を貰うまでは我慢しなさいって」  二人とも目を丸くして驚いてます……そんなに変でしょうか?  悪いことを聞いたのかしら? ルイズおねえさんが申し訳無さそうに尋ねてこられました。 「えっと……困らないの?」 「はい、それに……今日までですから」 「今日まで?」 「はい、この街にはおとうさんに会いに来たんです」  二人ともほっとした様に笑ってくれました。  いい人たちですね。 「そう……ね、名前くらいは付けさせてあげた方が良いのかもね」 「そうですね」  あれ? 「ルイズおねえさんも?」  よく見ると、お腹が少し…… 「ええ、……シエスタにちょっと負けたけどね」 「うふふふ、わたしの方が先に愛情が奥に届いたんです」 「そんなこと無いわよっ」 「ありますー」  何だかよく分かりませんが、とても重要なことなのでしょう。  真面目に張り合っている女性の間に入ると死ねるのは、何度も経験してますので静観しましょう。

127 名前:6/10[sage] 投稿日:2007/01/30(火) 01:32:03 ID:cJYHbtWw  しばらく眺めていると、口論は終了しました。  引き分けの模様です。 「あー、ごめんなさい。誘ったのに、無視して話しちゃって」 「いえ、結構ですよ、おとうさんとおかあさんを二人きりにしてあげたいので、僕は時間潰し中ですので」 「へー、どんな二人なの?」 「おかあさんは美人です。ルイズおねえさんに負けません」 「まぁ」  笑われてしまいました。お世辞ではないのですが。 「胸だって立派です。シエスタおねえさんより大きいです」  ……どうして、二人そろって笑い転げるんでしょうか? 「「ティファニアを思い出すわねー」」  あれ? 「おかあさん、ご存知なのですか?」  そういった途端、二人とも凍り付いてしまいました。  ……な、何かまずいことを言ったのでしょうか? 「……おとうさんの名前を言ってごらん?」 「サイト……です」

 おかーさん、おかーさん、まおーがでーたーよー

 ……なんでしょう?  なんだか凄い迫力です。 「「で? 二人は今どこなのかな? かな??」」  い、いけません、なんだか本当なことを言ってはいけない気がします。

 ……うん、ごめんなさい。おかあさん。  僕は今から嘘を吐きます。

「あそこの森でデート中です」 「「あっちかーーーー」」

 えと……妊婦さんは安静に……  というか、通行人の人たちを跳ね飛ばしたらご迷惑ですよー。

 ……行ってしまいました。

 あ……困りました。 「お客様」  ……ですよね。 「えと……おいくらでしょうか?」

 ……良いんです、僕はもう子供じゃありません。  女の人とお茶したら、男が出すべきなのです……

 ……ごめんなさい、おとうさん。使います……  あと、なんだか色々ごめんなさい。面倒なことになったかもしれません。  いろいろ心でお詫びしながら、泣く泣くお小遣いを使う羽目になってしまいました。

128 名前:7/10[sage] 投稿日:2007/01/30(火) 01:32:34 ID:cJYHbtWw 「おとうさんに知らせに行くべきでしょうか? まだ二人きりにしておくべきでしょうか?」  とぅびー おあ のっと とぅびー です。 「困りました」  街に来てから困りっぱなしです。

 村の人たちが都会は怖いといっていたのは、こういう事なのですね。  考えながら道をとぼとぼ歩いていると、壁にぶつかりました。

 あれ? 道の真ん中で壁ですか?

「あ、すまない。大丈夫か?」 「あ、平気です。すいませんでした」  壁だと思ったのは大きな人でした。  慌てて立ち上がって、ぴょこんとお辞儀をします。 「失礼しました、騎士様」  そうです、近衛の立派な制服を纏われてます。  横に大きい騎士様と、妙にキラキラした騎士様でした。 「おや……君は僕の親友にそっくりだね」  キラキラした騎士様が、ひょいっと僕を抱き上げました。  細く見えるのに力持ちなのでしょうか。 「見てください、へ、……あー失礼、アン様」  フードで顔を隠した女の人の前に連れて行かれました。  わぁ! びっくりです。  この人もおかあさん並です。  おかあさんは世界一美人だと思うので、  街って凄いです。世界一の美人が沢山です。 「あら……本当……わたくしもこんな子供が欲しいですね」  ころころ笑うおねえさんを、二人の騎士様がギョッとした顔で見つめています。 「貴方、お名前は?」  あれ?またこのパターンなのでしょうか? 「まだ有りません」

 説明が終わった時、僕はもう二度と街に来ないことを心に誓いました。

129 名前:8/10[sage] 投稿日:2007/01/30(火) 01:33:09 ID:cJYHbtWw  腕の中でテファが眠っている。 「いてててて」  もう歳だろうか? あちこちが痛い……てーか。 「やりすぎたなぁ」  部屋の中は、俺の匂いが立ち込めている。  アルビオンからの旅で相当疲れていた筈なのに、俺が求めれば求めるだけテファは答えてくれた。 「さーて、どうするかな」  ルイズとシエスタは怖いが……テファもあの子も手放す気は無かった。  両方可愛すぎるっ!!

 記憶が消されているらしいが、テファの身体を俺は確かに知っていた。  何度も思い描いた夢の身体。  記憶は消えても、身体はしっかりと覚えていたようだ……しかも…… 「エルフって……老化しないのか?」  そう、むっちゃ若い。同じ位の歳のはずだけど、年下の愛人ができた気分だった。  もうこれは手放せません。 「さーて、どう誤魔化すかな……」  ルイズはともかく、シエスタは鋭いからなぁ…… 「なにを誤魔化すんだ?」  ぞわっと、総毛立つ。やっば、こんな所見られたらっっ 「って……ギーシュかよ」 「かよとは、ご挨拶だね、サイト……しかし……いい趣味だ」  眠るテファを覗き込みながら、続けた。 「エルフとはねぇ……たまにはって事か?」  馬鹿にするような響きを感じて、数年来の親友と言えども黙っては居られない。 「エルフだと悪いのか?」 「いやっ、違うぞっ! サイト」  俺の本気を感じ取ったギーシュが距離を取る。 「聞けっ、サイト!!」 「いーや、聞かないね、ギーシュ、テファは今まで抱いた中で最高の女だ! 馬鹿にするのならっ」  睨みながらの俺の言葉に、ギーシュはその場で頭を抱えた。 「……バカヤロウ」  は?  静々と、もう一人部屋に入ってくる人が居た。 「……最高……ですか?」  ……へ? 「へいかぁぁぁぁぁぁ」  や、ヤバいっ、ギーシュは気を使ってくれてたんだ……  あそこは姫さまに気に入られるように、ギーシュに乗っとけばよかったんだぁぁぁ 「すうすう」  テファは熟睡してるし。 「最高……なんですねぇ」

130 名前:9/10[sage] 投稿日:2007/01/30(火) 01:34:08 ID:cJYHbtWw  ガクブルしながら、アンの……陛下の言葉を待つ。 「……わたくしと比べても最高なんですものね……なにしろ、最も高いんですものね?」  こ、こわっ……だらだらと冷や汗が……よし! 「いやいや、姫さまには適いませんよ、高貴な女性の頂点、女王さまバンザーイ。  高貴な女性サイコー!!」  あれ? ギーシュが何か慌ててる。  ほうほう、人文字か。 『お』『ろ』『か』『も』『の』  何のことだ?」 「そうですかー凄いですねー、わたしみたいな街娘では太刀打ちできませんねー」  ……シエスタ?  カツーン、カツーンとまた一人部屋に踏み込んでくる。

 ……あぁ……死んだなぁ……  いやっ、まだだっ、まだ終わらんよっ!! 「おっぱいっ、おっぱい、最高。アンやシエスタサイズがさいっこー」  ……あれ?  ギーシュが、縄を輪にして……天井からぶら下げている。  ……マ サ カ  「……そ、よーく分かったわ、サイト。あなたの事がね」  ……ルイズ……

 愛しい三人の女性がにこやかに俺の側に立つ……  こ、こえぇぇぇよぉ。

 凍りつく空気を無視して、もう一人の親友がのそのそ部屋に入って来た。  睨み付ける三人も、すがる様な俺の目も無視して、ベットサイドまで歩み寄る。

 全員の注目の集まる中、いきなり布団を捲ったマリコルヌが絶叫した。 「乳 革 命 キタ―――――」 「って、てめぇぇぇぇ、見るんじゃねぇぇぇ、こりゃ俺のだぁぁぁ」

 ニヤリと笑うマリコルヌ。  げ。  前後のことも考えずに入れた突っ込みに、三人とも反応した。  テファは俺のもの宣言に…… 「「「しんじゃえ♪」」」  容赦の無い攻撃が雨のように降り続いた。

131 名前:10/10[sage] 投稿日:2007/01/30(火) 01:37:06 ID:cJYHbtWw  サイトがウエストウッドに来てくれるらしい。  それは嬉しいけど…… 「どうして、そんなにぼろぼろなの?」  朝起きたら、サイトが死に掛けてた。 「ど、どうしても……」  ほとぼりがーほとぼりがー、って唸ってる。  何だかよく分からないけれど……嬉しいな。  これからはたまに来てくれるのかな? サイトが居てくれると嬉しいから……  うん、決めた。また来てくれる気に成る様に。 「ねぇ、サイト。うーんと優しくしてあげるね」

 し、死ぬかと……いや、ルーンが消えてもおかしくなかった。  テファも居るし、ウエストウッドにしばらく避難する事にした。  ……しかし……身体中怪我だらけで……テファといちゃいちゃ出来ないのが辛い。  身体が治ったら……げへへへへ寝かさないぜぇテファ。  そんな俺の心が通じたのか、テファがそっと耳元で囁いてくれる。 「うーんと優しくしてあげるね」  マ、マジっすか……  よ、夜が楽しみだ。

 おとーさんの怪我は僕のせいなのでしょうか?  なんだかそんな気がして仕方ありません。  素直にごめんなさいと言いたいのですが……  言いにくいです。

「おとーさん」  今はまだ名前の無い少年が、サイトに話しかける。 「僕はもうすぐ6歳です、今までのお誕生日プレゼントを下さい」  虚を付かれた様子のサイトだったが、黙って頷いた。まだまだ子供だなと。 「1歳の誕生日プレゼントに名前を下さい」  彼がずっと欲しかったもの。 「2歳の誕生日プレゼントは妹が良いです」  サイトとテファが二人そろって真っ赤に成った。 「3歳の誕生日プレゼントには約束を……おかあさんを泣かさないで下さい」  サイトが頷くまで、彼は先を続けようとしなかった。 「4歳の誕生日プレゼントは弟が良いです」  順番はわかんねーぞ、サイトの返事にテファが笑い出す。 「……5歳の誕生日プレゼントはっ……今から言うことを聞いても怒らないでくださいっ」

 しばらくして、三人の笑いがどこまでも響いていった。