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535 名前:過去現在未来[sage] 投稿日:2007/03/10(土) 14:25:09 ID:sm+0u6gZ  寝る頃になって突然降り始めた雨。  本などにあるお話では、人が死んだりすると悲しみを洗い流すかのように降っていた。  無事にタバサとタバサのお母さんを助け出したというのに、やけに悲しく感じてしまう。  流さずに貯めていく憂鬱な雨。  それは雲が夜空を隠しているからなのか。  すがすがしく、穢れの無い綺麗な星空を望んでいたからなのか。 「お母様……」  馬車の中、かすかに声がしたほうにルイズは顔を向けた。  今日、この行為が何度目になるかわからなかい。  タバサ救出という大仕事を終わらせた後、馬車に乗り込んでひとまず森に身を潜めることになった。  皆が疲れて眠りこける中、一人だけ起きてある思いに馳せていたから。  それは家族のことだった。誰にとっても言葉では表せないほどの大事な人。

 タバサは自分の母親に寄り添って眠っていた。  目を覚ましているときには近づけないから、あの母親の娘は今大事そうに抱えている人形だから。  近づけるのはこの時間帯だけ、寝ている今だけが唯一甘えられる。  一方的で返事すらも返ってこない、まるで死人と触れ合っているかのようだ。  それがどんなに悲しいことなのか。どんなに辛いことなのか。  胸が痛んでしかたない。  考えるたびに涙が出てきてしまうのだった。  立ち上がり、わずかに見える夜目を駆使してタバサに近づいていく。  徐々に見えてくるタバサの顔。  それは嬉しさが溢れていて、見た人すべてに幸せを分け与えるような表情だった。  その表情に吸い込まれていき、目の前が見慣れた光景に変化していった。

536 名前:過去現在未来[sage] 投稿日:2007/03/10(土) 14:26:06 ID:sm+0u6gZ 「ここは……」  太陽の光が暖かく迎え入れてくれる。  そこはもう帰れるかどうかわからないトリステイン国、ゲルマニア沿いの国境にあるお城。  馬車にでも乗っているかのように、自動的に目の前の景色が進んでいった。  やさしい日差しとやわらかい風が 髪を撫でていく。  綺麗な植物が地面を埋め尽くしていて、小鳥達が楽しく歌っている。  病弱で、自然を愛するちい姉さまが作り上げたお庭。私も大好きな大きなお庭。  小さい頃に何度も歩いたから決して忘れることは無い。  召使いとよく遊んだ原っぱ、お姉さまと一緒にお茶会をした広場。  そして噴水。中央には父親に作ってもらった小さな小船。  怒られたて悲しいときはここに隠れていつも泣き、そのまま小船の揺れに慰められて眠りについていた。  そのうち……ここにちい姉さまかワルドが心配してやってくる。  この小船にいることを知っている、私以外の人物だから。  景色が噴水にある小船に差し掛かった頃、景色は動かなくなった。 「うっ、ひっく」  ふいに聞こえてくるさみしそうな泣き声。この声には聞き覚えがあった。  正体は小船の陰、とても悲しそうな顔をして、体を丸めて涙を流している。 「これは、私?」  一人で泣いている……一人?  弱弱しく、どこまでも無力に見える幼い頃の自分の姿。  どうして? いつからなの? 「な、んで」  どうして私はこんなにも孤独だったの? 「魔法、でないの」  胸が痛み始める。 「がんばってるのに」  魔法がでない……だから私は。  物心が付き始めた年齢、記憶も途切れ途切れできっかけが無ければ思い出さないような幼少。  その頃は楽しい思い出しかなかった。  私も周りにいる両親、お姉さま、メイド、皆笑ってた。  それじゃあ物心付いてからはどうだったのか。  徐々に、年齢を重ねるほどに皆の表情が険しくなっていくのがわかる。  年をとっていつまでも呑気にしていられないということもあるだろう、でもそれだけじゃないのは明白だった。  さきほど幼い自分が告白していたこと「魔法、でないの」 「ルイズ」  ふと後方から聞きなれた声がして思考を止めた。  声の主を確かめたくて振り向こうとする。けれども目線が動くことはない。 「何なの? 今更こんなことを見て何になるというの?」  自分は変わった。強くなった。  それなのに、こんなにも惑わされている。  情けなくて仕方なくて、動けなけないから思いのたけを叫んだ。 「わ、私は……ゼロじゃない! 魔法だって、虚無の使い手なの! それに一人じゃない! 学院の皆が、才人がいるから!」 「ルイズ」  二度目に呼ばれた自分の名前、それを合図に世界が突如として捻れ始めた。  すべてが曲がりくねり、一点へと収縮されていく。  そのすさまじいさまをただ見つめていた。  世界は潰れていき……やがて夜に戻った。

537 名前:過去現在未来[sage] 投稿日:2007/03/10(土) 14:26:48 ID:sm+0u6gZ 「ハッ、ハァ」  ふとルイズは、上から冷たい何かが襲ってくるのを感じた。  手のひらを上にして顔の前に出す。たくさんの水滴が落ちてきていた。 「雨……」  そこは森のなかにある小さな野原だった。  馬車を止めてあるところの近く、偶然見つけたこの場所は木で空が途切れていなかった。  そういうこともあり星空を調味料にしてここで夕食を食べていた。  記憶を思い起こしたルイズは天を仰いだものの、そこは雲に覆われていた。 「空、何もない。ゼロ……」 「どうしたの」 「体が重たい」  衣服に水が染み込んだからなのか、気持ちが沈んでいるだけなのか。 「泣いて、いるの?」 「泣いてなんかない」 「大丈夫?」 「私は、成長したの。だから」  ルイズは途中で言葉を失った。それは何か暖かい感触が体を包み込んだからだ。  さらに視界の中には徐々に人が写りこんできた。その人物はルイズの良く知っている人。  タバサはルイズを抱きしめていた。 「落ち着いて」  ルイズの内にやすらぎが広がっていく。  このやすらぎがなんだか幸せに感じられて、しばらく固まったままだった。 「タバ、サ」 「私の使い魔に教えてもらった。大切な人が不安がっていたり落ち込んでいたりしたらこうすればいい」 「そう」  雨はいつの間にか止んでいた。

538 名前:過去現在未来[sage] 投稿日:2007/03/10(土) 14:27:27 ID:sm+0u6gZ 「声が届いていなかった」 「だから私のこと抱きしめたの?」  タバサはうなずいた。    あれからしばらく経ち、ルイズは冷静さを取り戻した。  まず、二人はびしょ濡れの服を着替えることにした。  馬車にこっそり戻って、忍び足で衣類を物色した。  残念なことに踊り子の服しかなくてルイズは渋っていたが、濡れた服よりはいいだろうというタバサの助言もあり、ルイズは渋々と着替えることにした。  この姿を万が一目を覚ました男連中(特に才人)に見られたらどうなるかわからない。  ということで馬車の外、衣服を枝にかけた木のすぐ近くに布を敷いた。  そして寒くないように二人で肩を寄せ合って、そこに座り込んでいるのであった。

「それにしたっていきなり……肩を叩くとかしなかったの?」  タバサはまたうなずく。 「ん〜」  ルイズは得体の知れない恥ずかしさを感じていたのだった。 「嫌、だった?」 「そんなことはないわよ。むしろ嬉しかった」  なんでこんなことを言っているのかわからなかった。  考えてみれば自分の為にしてくれたタバサの行為は感謝すべきことである。  今更拒んで怒るほどのことでもない。ただ何かが引っかかっている気がしていた。  それが気になって、ついタバサに抱きしめたことを突っ込んでしまうのだった。  いつまでも同じ質問してても仕方ない。  ルイズはしゃべるのをやめようとした、そのとき。 「あなたも、一人だったの?」 「えっ?」  ルイズは突然の問いに思わず体を離してタバサを見た。 「忘れて」 「でも「忘れて」 「む〜う」

539 名前:過去現在未来[sage] 投稿日:2007/03/10(土) 14:28:16 ID:sm+0u6gZ  いつからか二人の停滞していた時間。  近いうちに動き出すのかもしれない。  理解者とともに、支えてくれる使い魔とともに。

作者「ボン! キュッ! ボン! になってしまう日が!!!」