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503 :Soft-M ◆hjATC4NMLY :2007/07/23(月) 02:51:51 ID:Vq5fg2Rd 「それでサイトさん、ミス・ヴァリエールの格好を見て何て言ったと思う? 『なんかヘンな格好してるな。なにそれ。カーテン?』だって!」 「あっはは! そりゃひどいわ! サイトらしいけどねえ」    開店前の『魅惑の妖精亭』内で、あたしは久しぶりに会った従姉妹と談笑していた。  魔法学院に奉公しているその子、シエスタが話すのは、あたしもよく知っている あたしたちと同じ黒髪の男の子、ヒラガサイトの事ばかり。  今は、なんと貴族になっちゃったサイトの専属メイドをしてるんだとか。    シエスタはサイトの事を話すとき、本当に楽しそう。目がきらきらしていて、 ときどき頬を赤らめて、不意に物思いに耽って。  そう、恋する乙女の顔。見てて恥ずかしくなるのと同時に、微笑ましくなる。  この子、本当にサイトのこと好きなんだなって、よくわかる。    でも、あたしは彼女に相づちを打ちながら、ちょっと複雑な心境。  あたしはサイトが、ルイズと一緒に一夏この店で働いていたのを傍で見ていたから。  サイトは……ほぼ間違いなく、ルイズのことが好き。  我が侭でプライドが高くてすぐ怒って単純で身体も子供で、 ウチの店じゃちょっと特殊なお客さんにしか受けないような女の子。  でも、あたしや…シエスタには無いものを持ってる。そんなルイズのことを好いてる。    だから、シエスタがどんなにサイトを好きでも、ちょっと厳しいかなぁなんて思う。  それを、シエスタ自身も気付いているんだろう。だから、過剰なくらい明るく サイトのことを話す。楽しそうにしている。    ちょっと、羨ましいかななんて思う。  あたしには、この子みたいに”恋”するチャンス、もう巡ってこないかもしれないから。  叶わないかもしれない恋のために、全力でぶつかれるかどうかわからないから。  それができるほど、純真でもなくなっちゃうからね、こんな仕事してると。 もちろん、後悔をしてるわけでもないんだけど。    でも、だからこそシエスタの事は応援したい。幸せになって欲しいと思う。  まぁ、ルイズのこともよく知ってるあたしとしては、手放しにシエスタの恋だけ 叶えばいいとも思えないから、フクザツなんだけどね。   「あ……ごめんね、わたしばっかり話ちゃって。そろそろお店の準備しないとまずいかな?」 「んー、まだ大丈夫でしょ。それより、帰るんだったら」    ほとんど一方的に喋っていたシエスタは、帰る素振りを見せた。この子も用事があって トリスタニアに来てるんだから、そうのんびりもしてられないのか。  それに、あんまり外出してると、学院でサイトとルイズが何してるかわかんないしね。  彼女の話からすると、何だかおっぱいが凄い子やらルイズよりちっちゃい子やら、 ルイズより手強いかもしれないライバルまで出てきたらしいし。   「また、ちょっと面白いもの手に入ったのよ。貸してあげるわ」 「えっ……、面白いものって」  シエスタの頬がぼっと赤くなる。そうそう、モノの本やら何やら、 サイトを落とすための参考になりそうなもの、定期的に渡してるのよね。  これくらいの援助ならいいでしょ。おみやげ話も面白くなるし。   「今日のブツは凄いわよー、サイトに使ったら、たぶんイチコロね」 「そ、そんな……あぁ、どうしよう……」  もじもじするシエスタだけど、この子もあたしと血が繋がってるだけあって 結構まんざらでもないのは知ってる。嬉々として実践するでしょうね。    ブツを大事そうにしまい込んだシエスタと、店の前で別れる。また近いうちに会う約束をして、 彼女は魔法学院に帰っていった。がんばんなさいよ、と小声で呟く。  それを見送って、あたしは伸びをしながら空を見上げた。    ――今日も、忙しくなるわね。あたしは気合を入れ直して、『魅惑の妖精亭』のドアを開いた。