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「似合ってる、かな」  ドレスのスカートを掴んで持ち上げると、アニエスは顔面神経痛のような歪んだ表情を作った。 「違う違う!」  ピシリ、とテーブルを鞭で叩く音が部屋に響く。マザリーニは鼻に皺を寄せて怒鳴った。 「良いかアニエス!年頃の娘の上目遣いと街のならず者のガン飛ばしとやらは全く別物だ!」 「私は……ならず者でしたか」  アニエスは腕組みをして唸る。途端、再びマザリーニの鞭がなった。 「アニエス!困ったときのポーズは?」  あ、と呻いてアニエスは頬に人差し指を当てて首を斜め30度に傾げ、「てへっ」と呟く。マザリーニは溜息をつくと説教を始めた。 「良いかアニエス。パーティの護衛に軍人ではあまりに不粋。これから同様の場は増える。その際にこのざまではこっそり客に混ざって護衛しようなぞ無理だろうが」  アニエスは再び呻く。マザリーニは頷いてさらに続けた。 「だから淑女になるよう、言葉の訛りに至るまで私が自ら教えているのではないか」  はあ、とアニエスは溜息をつく。「ア」の発音がおかしいと何度も何度も変な採点機に向けての発声。昨日はテーブルマナー、今日は「かわいい仕草」。1,000本打ち込みの方がはるかに楽だ。マザリーニは再開の印に手を打つ。  アニエスは上目遣いでマザリーニを見つめてくるりとまわって見せる。ふわりとスカートが浮かび、再び上目遣いで言った。 「んもう、マザリーニさまのエッチィ!ね、似・合・う?」 「ああ最高だアニエス」 「ア、アニエス嬉しい!」  羞かしげに口元に手を当てながら、指でマザリーニを突き飛ばす。 「馬鹿者ーっ!肩をつつくだけだ!拳法じゃない!」 「も、申し訳ない」 「謝罪の言葉が違う!」 「ごごめんなさーい!」  マザリーニは大きく溜息をつくと、自分の文箱の中身を想い嘆息した。文箱の中で眠るアニエスお見合い計画書と人妻騎士採用法案が活躍するのはまだ当分先のようだ。