ゼロの保管庫 別館

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91 名前:ルイズと不思議な女神像 ◆manko/yek. [sage] 投稿日:2006/11/23(木) 08:04:29 ID:PY+9F486 ルイズと才人の部屋の床に膝丈ほどの女神像がおいてある。少し汚れている木製の女神像は、まるでお土産屋の売れない像みたいな印象を受ける。 才人は像の前で胸をはり、偉そうに命令する。 「俺に空を自由に飛ぶ力を与えろ!」 女神像の前で偉そうにする才人にルイズとシエスタは怪訝な顔をする。 「その願い、叶えてつかわす」 女神像の目が緑色の炎を灯し、声がする。 女神像が静かになり、あたりは気まずい空気が流れる。 「で?」 「なんですかこれ?」 ルイズもシエスタも才人をせつない目でみている。 才人はコホンと咳払いをして説明する。 「コルベール先生が秘境で見つけてきた女神像で、命令を与えると像の中の風と火の魔法が喋らせたり、光らせたりするマジックアイテム・・・らしい」 ルイズは言ってはならない言葉を吐く。 「何の意味があるの?」 シエスタは才人の頭が沸いたと判断して水を汲みに出ていった。 「ルイズ、男というものはな、光って喋るおもちゃにロマンを感じるモノナノデス」

92 名前:ルイズと不思議な女神像 ◆manko/yek. [sage] 投稿日:2006/11/23(木) 08:05:15 ID:PY+9F486 才人は得意気に語り出し、満足した顔で女神像に命令する。 「ルイズの胸を大きくしろ!」 「その願い、叶えてつかわす」 女神像は光るが おもちゃなのでルイズの胸に変化はない。 「犬」 「わん」 ルイズの胸に変化はなかったが、才人の顔はボコボコに変化した。 「犬、そのガラクタを早く捨ててきなさい」 「・・・・・」 才人はしょんぼりしながら女神像を抱える。ルイズはどす黒いオーラを女神像にむけていた。 シエスタが水を抱えて戻ってきた。 才人の抱える女神像に命令する。 「サイトさんをわたしの旦那様にしてください」 「その願い、叶えてつかわす」 ルイズはにやける才人を蹴飛ばしてから女神像に命令する。 「わたしの胸を大きくしなさい」 「・・・・・」 女神像は少し遅れ喋り出す。 「汝は願う者か、ならば使い魔と願う者の契約により その願い、叶えてつかわす」 女神像は今までとは違う言葉と光りを放つ。像から風が吹きルイズを囲む。光りは女神像を抱えた才人を包み、まばゆく光る。 風も光りもおさまった後、才人とシエスタは驚いた顔でルイズを見る。 ルイズの胸は大きくなっていた。

93 名前:ルイズと不思議な女神像 ◆manko/yek. [sage] 投稿日:2006/11/23(木) 08:06:03 ID:PY+9F486 「な、な、な、なによこれ」 願ったルイズも驚いている。 「ミス・ヴァリエール!胸が・・」 「ルイズ!大丈夫か?」 ルイズの胸は本物だった。 「サイト、女神像を抱えてなさい、もう一度やってみるわ」 才人も頷き従う。 「わたしの背丈を高くしなさい」 「その願い、叶えてつかわす」 言葉は戻ったが、ルイズの願いは叶った。 「ルイズ!背が伸びたぞ」 ルイズの背丈は才人と同じくらいに伸びていた。 「これさえあればわたしは無敵だわ!ふふっふふふふ」 ルイズはもうガラクタを捨てることはしなかった。 その日からルイズは変身した。 「魔法を使えるようにしなさい」 「お小遣いを出しなさい」 「ルーレットで勝てるようになりたい」 「メイドが長期里帰りするようにしなさい」 「クックベリーパイを山ほど食べたい」 「お父様に認められたい」 才人もあきれるくらいの願いをすべて叶えた。 ルイズは魔法学院の優等生でアイドルでプリンセスになっていた。 カッコ良くて、かわいくて、美人で、運動神経抜群で、その上魔法は四大系統すべてスクエアクラス。それは生ける女神そのものだった。

94 名前:ルイズと不思議な女神像 ◆manko/yek. [sage] 投稿日:2006/11/23(木) 08:06:58 ID:PY+9F486 そんな時、デルフリンガーが才人を問いただす。 「なぁ相棒」 「なんだよ」 「相棒、なんか隠してるだろ」 「なんも隠してないぞ」 あぁとか うぅとか考えてからデルフリンガーは一番聞かなければならないことを聞く。 「願いを叶える魔力はどっから引っ張ってくんだろうね」 「・・・俺が知るわけないだろ」 「女神像が願いを叶えれば叶えるほど相棒の魂が薄くなっているのはなぜなんだろうね」 「・・・・」 「相棒、悪いこといわねぇ、貴族の娘っ子に正直に話しなよ」 才人は黙ってデルフリンガーを鞘に納めて会話を終わらす。 才人が部屋に戻るとルイズが退屈そうにベッドに寝そべって頬づえをついている。 「どうした、退屈そうにして」 ルイズはなんだかご機嫌斜めだった。 「なんだかわからないけどつまんなくなっちゃった。おかしいよね、魔法も胸もあってメイド追い払って叶う願いは全部叶えたのにね」 ルイズは寂しそうに笑う。才人も複雑な顔をする。 「われに願え!願う者よ、退屈をしのぎたいと」 女神像が自分からルイズに話しかける。 ルイズは驚いていたが女神像に命令する。

95 名前:ルイズと不思議な女神像 ◆manko/yek. [sage] 投稿日:2006/11/23(木) 08:09:53 ID:PY+9F486 「退屈をしのぎたい」 ルイズの部屋には踊る人形や様々な本、パズルなどの退屈をしのぐ道具で溢れかえり、才人はからだを半透明にさせて倒れた。 「サイト!どうしたの?なにがあったの?ねぇ答えて!!」 才人は半透明になった手を振ってなんでもないと言うがルイズは信じない。 デルフリンガーが鞘から顔を出して叫ぶ。「貴族の娘っ子の願いが相棒の存在を消しているんだ。相棒!本当のことを言え!このままじゃ存在そのものが消えちまう!」 才人は気まずい顔で黙っている。 「サイト!正直に言いなさい。勝手に消えるなんて許さないんだからっ」 「・・・・」 「サイト!!」 才人はしぶしぶ口を開く。 「ルイズの願いが叶うたびにルイズがすごく嬉しそうにするから黙ってただけだ」 ぶっきらぼうに言って才人は砂人形のように消えた。

96 名前:ルイズと不思議な女神像 ◆manko/yek. [sage] 投稿日:2006/11/23(木) 08:10:45 ID:PY+9F486 ルイズはいままで叶えた願いの愚かしさに気づいた。願いを軽々しく口した自分を呪った。 「われに願え!願う者よ、世界を手に入れたいと」 「サイトを返して」 「なぜだ!世界を手に入れれば贄の存在以外はどんなものでも自由になるのだぞ?富も名声も命さえも!そなたは世界をいらぬと申すかっ」 「そんなものいらない!いままでの願いを返すからサイトを返して!!」 「・・・・愚かなり、願う者よ!使い魔一匹のために世界を捨てるとは・・・そなたは胸も背も魔法もいらぬと申すかっ」ルイズは才人の消えた床に爪をたてて泣き叫ぶ。 「サイトを返して!胸も背も魔法もいらない!世界もいらない!なにもいらない!サイトを返して!」 女神像は少し黙った後、寂しそうに答える。 「そなたの願い、返してつかわす」 風と光りはルイズと部屋に満ち溢れ、静かになった時には才人がルイズの側に倒れていた。

97 名前:ルイズと不思議な女神像 ◆manko/yek. [sage] 投稿日:2006/11/23(木) 08:11:30 ID:PY+9F486 ヴェストリ広場にあるベンチに才人とルイズが座っている。 「なぁルイズ」 「あによ」 「なんでもとに戻ったんだ?」 ルイズは才人を見ないで言う。 「いらなくなっただけよ」 「そうか・・・もったいなかったな」 「いいのよ。本当に欲しいものはもう手に入れてるの、だから いらないの」 才人は不思議そうに首をかしげる。 「本当に欲しいものってなんだ?」 「し、知らないわよ!!ばか犬っ」 ルイズは真っ赤になっているが才人に見られないように横を向く。 「ルイズ」 「あによ」 「今のルイズでもさ、その・・・いいと思うんだ。たまにキスしたくなったり・・・とかするから」 「サイト」 「な、なんだよ」 「その願い、叶えてつかわす」 二人はまわりに人がいないのを確認してから・・・・・軽くキスしてうつむいた。

おしまい

98 名前:あとがき ◆manko/yek. [sage] 投稿日:2006/11/23(木) 08:12:33 ID:PY+9F486 ルイズと不思議な女神像

この物語はこれでおしまい。 次の物語は、またいづれ。

それではっ

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