イントロが鳴り1曲目に選曲したモーニング娘。の『ピョコピョコウルトラ』を歌い始めながら、優樹は自分の意識が数分前とは大きく変わっていることに驚いていた。
優樹は数分前まではわざとめちゃくちゃなパフォーマンスを見せるつもりでいた。
大好きなあの人と一緒にいられる時間がそう長くないと本能的に悟ったその時からひそかに練っていた計画だった。
自分がいつまでもひとり立ちできなければあの人の卒業も先送りになるのではないかという子供っぽい考えだったが、優樹なりに真剣だった。
けれどもあの人のやさしい目を見た瞬間。違う、と優樹は思った。そんなことをしたらあの人をいたずらに悲しませるばかりか、周りにも迷惑をかけてしまう。
自分にできることは少しでも安心してあの人が次へ進めるようにすること。そのためには少しでも成長した佐藤優樹を見せなきゃ。
優樹は一点の迷いもなく2曲目の℃-ute『世界一HAPPYな女の子』を歌い、3曲目の『What's up愛はどうなのよ~』を全力で踊り切った。
優樹は数分前まではわざとめちゃくちゃなパフォーマンスを見せるつもりでいた。
大好きなあの人と一緒にいられる時間がそう長くないと本能的に悟ったその時からひそかに練っていた計画だった。
自分がいつまでもひとり立ちできなければあの人の卒業も先送りになるのではないかという子供っぽい考えだったが、優樹なりに真剣だった。
けれどもあの人のやさしい目を見た瞬間。違う、と優樹は思った。そんなことをしたらあの人をいたずらに悲しませるばかりか、周りにも迷惑をかけてしまう。
自分にできることは少しでも安心してあの人が次へ進めるようにすること。そのためには少しでも成長した佐藤優樹を見せなきゃ。
優樹は一点の迷いもなく2曲目の℃-ute『世界一HAPPYな女の子』を歌い、3曲目の『What's up愛はどうなのよ~』を全力で踊り切った。
優樹のパフォーマンスが終わり、絵里もステージに戻り優樹と並んで審査結果が出るのを待った。
自信はある。しかし、絵里は先程の優樹のパフォーマンスを見て危機感を覚えていた。
決めるのはつんく♂さんをはじめとする審査員。でも…。
絵里がネガティブな考えに陥りそうになった時、MCのまことが審査が終わったことを告げた。
自信はある。しかし、絵里は先程の優樹のパフォーマンスを見て危機感を覚えていた。
決めるのはつんく♂さんをはじめとする審査員。でも…。
絵里がネガティブな考えに陥りそうになった時、MCのまことが審査が終わったことを告げた。
「それではつんく♂さん、結果発表をお願いします!」
つんく♂はマイクを取り上げ、結果を読み上げた。
「まず生田衣梨奈の得点は…。歌唱9ポイント、ダンス9ポイント、表現9ポイント。合計27ポイント!」
絵里は高評価が嬉しくてたまらなかったが平静を装った。
「続いて佐藤優樹の得点は…。歌唱7ポイント、ダンス6ポイント、表現8ポイント。合計21ポイント!勝者、生田衣梨奈!」
つんく♂はマイクを取り上げ、結果を読み上げた。
「まず生田衣梨奈の得点は…。歌唱9ポイント、ダンス9ポイント、表現9ポイント。合計27ポイント!」
絵里は高評価が嬉しくてたまらなかったが平静を装った。
「続いて佐藤優樹の得点は…。歌唱7ポイント、ダンス6ポイント、表現8ポイント。合計21ポイント!勝者、生田衣梨奈!」
絵里は思わずガッツポーズをした後、隣の優樹の様子をそっと窺った。
号泣しているのではないかという予想を大きく裏切って、優樹は笑顔だった。その表情は全部を出し切った者のそれだった。
「生田さん、おめどうございますっ!」と優樹からふいに手を差し出され、絵里は調子が狂いながらも「あ、ありがとう」と握手をかわした。
会場からは二人への大きな拍手が湧き起こった。
号泣しているのではないかという予想を大きく裏切って、優樹は笑顔だった。その表情は全部を出し切った者のそれだった。
「生田さん、おめどうございますっ!」と優樹からふいに手を差し出され、絵里は調子が狂いながらも「あ、ありがとう」と握手をかわした。
会場からは二人への大きな拍手が湧き起こった。
拍手がおさまったところでつんく♂は対戦の総評に移った。
「生田に関しては技術的な面というよりも表現の仕方、自分の見せ方という面を高く評価しました。
披露した3曲で出してくれたそれぞれ違った見せ方は、新しい生田の可能性を感じさせてくれました。ということで、これからへの期待も込めての高得点となりました。
佐藤はまだ技術的な底上げが足りていないだけで、実は生田とはポイント差ほどの差はないと思っています。表現の面では我々を唸らせるものは見せてくれました。
ただ、もうちょっと技術的な面を伸ばして行ってほしいなということで今回の評価になりました」
「生田に関しては技術的な面というよりも表現の仕方、自分の見せ方という面を高く評価しました。
披露した3曲で出してくれたそれぞれ違った見せ方は、新しい生田の可能性を感じさせてくれました。ということで、これからへの期待も込めての高得点となりました。
佐藤はまだ技術的な底上げが足りていないだけで、実は生田とはポイント差ほどの差はないと思っています。表現の面では我々を唸らせるものは見せてくれました。
ただ、もうちょっと技術的な面を伸ばして行ってほしいなということで今回の評価になりました」
ステージ袖に捌けるや否や「たなさたーーん!!」と一目散にれいなの元へ駆けて行く優樹を微笑ましく見送っていると、衣梨奈が絵里の姿を見つけて駆け寄ってきた。
「あ、えりぽん。絵里、勝っちゃったよ」
「おめでとうございます。それより、さっき控室に戻ったら化粧台の衣梨奈の席にこんなものが…」
衣梨奈が絵里に見せてきたものは一枚の折りたたんだ手紙だった。
「あ、えりぽん。絵里、勝っちゃったよ」
「おめでとうございます。それより、さっき控室に戻ったら化粧台の衣梨奈の席にこんなものが…」
衣梨奈が絵里に見せてきたものは一枚の折りたたんだ手紙だった。
『鈴木香音の様子に気を付けてあげなさい。 もう一組のE.KとE.I』
絵里はそのたった一行の手紙を何度か読み返し、首を傾げた。
「これ、どういう意味?このイニシャルは亀井絵里と生田衣梨奈ってことだろうけど、もう一組のって?」
衣梨奈も首を傾げるばかりで、何も分からないようだった。
「あ。そいうえば香音ちゃんはどうしてるの?次出番じゃなかったっけ」
絵里が思い出したように衣梨奈に訊いた時、奥からさゆみが走って来た。
「さゆ、何慌ててんの?」
「ね、鈴木知らない?さっきからどこにもいないの!」
さゆみの言葉に絵里と衣梨奈は思わず顔を見合わせた。
「これ、どういう意味?このイニシャルは亀井絵里と生田衣梨奈ってことだろうけど、もう一組のって?」
衣梨奈も首を傾げるばかりで、何も分からないようだった。
「あ。そいうえば香音ちゃんはどうしてるの?次出番じゃなかったっけ」
絵里が思い出したように衣梨奈に訊いた時、奥からさゆみが走って来た。
「さゆ、何慌ててんの?」
「ね、鈴木知らない?さっきからどこにもいないの!」
さゆみの言葉に絵里と衣梨奈は思わず顔を見合わせた。