コンコン。
衣梨奈が絵里の部屋で寛いでいるとドアをノックする音がした。
「お姉ちゃーん、入るよ~」
「えっ!ちょっと待っ…」
衣梨奈の返事を待つことなく部屋に入って来た絵里の妹・理那は姉の姿を見て一瞬絶句した。
「ちょっ、お姉ちゃん何で新垣さんのTシャツ着てんの?しかもそれバースデーTシャツでしょ?」
「いや、まあこれはその…。えへへ」
笑ってごまかそうとする衣梨奈に理那はさらに追い打ちをかける。
「そのTシャツって確かイベント会場とかでしか買えないやつでしょ?どうやって買ったの?」
「いや、そのぉ、ネット?」
「もう。お姉ちゃんも元芸能人なんだから気を付けてよ」
まさか入れ替わる前に買って持ってたものを生田家からこっそり持ち出したとは言えない、と衣梨奈は内心冷や汗をかいた。
衣梨奈が絵里の部屋で寛いでいるとドアをノックする音がした。
「お姉ちゃーん、入るよ~」
「えっ!ちょっと待っ…」
衣梨奈の返事を待つことなく部屋に入って来た絵里の妹・理那は姉の姿を見て一瞬絶句した。
「ちょっ、お姉ちゃん何で新垣さんのTシャツ着てんの?しかもそれバースデーTシャツでしょ?」
「いや、まあこれはその…。えへへ」
笑ってごまかそうとする衣梨奈に理那はさらに追い打ちをかける。
「そのTシャツって確かイベント会場とかでしか買えないやつでしょ?どうやって買ったの?」
「いや、そのぉ、ネット?」
「もう。お姉ちゃんも元芸能人なんだから気を付けてよ」
まさか入れ替わる前に買って持ってたものを生田家からこっそり持ち出したとは言えない、と衣梨奈は内心冷や汗をかいた。
その間にも理那は姉の部屋を物色していた。
理那が次に目を止めたのは部屋の床に大量に置かれた新垣里沙の生写真だった。
「お姉ちゃん最近よく新垣さんの写真買ってるみたいだけど、また増えた?」
「もう、いいでしょ。ガキさんとは仲いいんだし、それにガキさんもうすぐ卒業だからさ。それより何か用?」
苦しい言い訳をして衣梨奈は無理矢理話題を変えた。
理那が次に目を止めたのは部屋の床に大量に置かれた新垣里沙の生写真だった。
「お姉ちゃん最近よく新垣さんの写真買ってるみたいだけど、また増えた?」
「もう、いいでしょ。ガキさんとは仲いいんだし、それにガキさんもうすぐ卒業だからさ。それより何か用?」
苦しい言い訳をして衣梨奈は無理矢理話題を変えた。
「あ、そうだ。お姉ちゃん忘れてるみたいだけど、今度の土曜日、18日ね、私たち知り合いの人の結婚式に出るでしょ。そのことで話があったんだ」
え?結婚式?聞いてない!内心焦りながらも、衣梨奈は必死に平静を装い亀井絵里を演じる。
「覚えてるに決まってるでしょ。で、何?」
「うん。その知り合いの人に私とお姉ちゃんで結婚式の受付をしてくれって頼まれたからよろしくね」
「ええーっ!」
思わず叫んだ衣梨奈に理那は不思議そうな顔をした。
「何びっくりしてるの?ともかく、よろしくねお姉ちゃん」
「わ、分かった」
絵里の手前、勝手に断るわけにもいかず衣梨奈は仕方なく了承した。
「じゃ、それだけだから」と、理那は絵里の部屋を出て行った。
え?結婚式?聞いてない!内心焦りながらも、衣梨奈は必死に平静を装い亀井絵里を演じる。
「覚えてるに決まってるでしょ。で、何?」
「うん。その知り合いの人に私とお姉ちゃんで結婚式の受付をしてくれって頼まれたからよろしくね」
「ええーっ!」
思わず叫んだ衣梨奈に理那は不思議そうな顔をした。
「何びっくりしてるの?ともかく、よろしくねお姉ちゃん」
「わ、分かった」
絵里の手前、勝手に断るわけにもいかず衣梨奈は仕方なく了承した。
「じゃ、それだけだから」と、理那は絵里の部屋を出て行った。
理那が自室に戻ったのを確認すると、衣梨奈は急いで絵里に電話した。
「もしもし!」
『あ、えりぽん。どうしたの?』
「あの、今度の土曜日に知り合いの人の結婚式に出なきゃいけないみたいなんですけど…」
『そっか、言うの忘れてた。入れ替わるちょっと前に話があったんだった。ごめんね』
「それで、私と妹さんで受付やることになって。どうしましょう?」
『あー、大丈夫大丈夫。理那に任せてえりぽんはてきとーに理那に合わせとけばいいから』
「え、そんな」
『ああいうのはノリで何とかなるから』
だめだこの人。このことでは絵里が頼りにならないと判断し、衣梨奈はもうひとつの心配事を相談した。
「あと、結婚式のテーブルマナーとかあんまり自信ないんですけど…」
『そっか。まだ中学生だもんね。でも私も春ツアー直前で教えてる時間ないし、理那かお母さんに聞いて』
「でも、怪しまれませんか?」
『大丈夫。絵里もテーブルマナーとか完璧じゃないから』
いや、自信満々に言われてもと思ったが、さすがに先輩に対してそうは言えずぐっと堪えた。
「分かりました。私の方で何とかします」
『ごめんね。でもえりぽんなら大丈夫だから』
「はい。頑張ります」
電話を切ると衣梨奈は頭を抱えた。
結婚式まで1週間。何一つ解決しない悩みに悶々としたまま、その夜は更けていった。
「もしもし!」
『あ、えりぽん。どうしたの?』
「あの、今度の土曜日に知り合いの人の結婚式に出なきゃいけないみたいなんですけど…」
『そっか、言うの忘れてた。入れ替わるちょっと前に話があったんだった。ごめんね』
「それで、私と妹さんで受付やることになって。どうしましょう?」
『あー、大丈夫大丈夫。理那に任せてえりぽんはてきとーに理那に合わせとけばいいから』
「え、そんな」
『ああいうのはノリで何とかなるから』
だめだこの人。このことでは絵里が頼りにならないと判断し、衣梨奈はもうひとつの心配事を相談した。
「あと、結婚式のテーブルマナーとかあんまり自信ないんですけど…」
『そっか。まだ中学生だもんね。でも私も春ツアー直前で教えてる時間ないし、理那かお母さんに聞いて』
「でも、怪しまれませんか?」
『大丈夫。絵里もテーブルマナーとか完璧じゃないから』
いや、自信満々に言われてもと思ったが、さすがに先輩に対してそうは言えずぐっと堪えた。
「分かりました。私の方で何とかします」
『ごめんね。でもえりぽんなら大丈夫だから』
「はい。頑張ります」
電話を切ると衣梨奈は頭を抱えた。
結婚式まで1週間。何一つ解決しない悩みに悶々としたまま、その夜は更けていった。
それから結婚式までの1週間は大変だった。
テーブルマナーは絵里の母親に恥を忍んで一から教わった。結婚式の受付係についてはネットで調べたり理那と相談したりして準備した。
もしかしたらモーニング娘。加入後の初ツアーの時と同じかそれ以上の緊張感だったかもしれない。
そして完璧とはいかないまでも何とか様になるくらいまで準備できたところで結婚式当日を迎えた。
テーブルマナーは絵里の母親に恥を忍んで一から教わった。結婚式の受付係についてはネットで調べたり理那と相談したりして準備した。
もしかしたらモーニング娘。加入後の初ツアーの時と同じかそれ以上の緊張感だったかもしれない。
そして完璧とはいかないまでも何とか様になるくらいまで準備できたところで結婚式当日を迎えた。
式場に着いて受付係の打ち合わせを終えると、早速理那とともに受付に立った。
衣梨奈が最初の招待客がやって来るのを緊張しながら待っていると、理那にそっとドレスの袖を引っ張られ耳打ちされた。
「お姉ちゃん、あがり過ぎ。顔怖いよ」
「う、うん」
これでは亀井さんに恥をかかせてしまうと衣梨奈は深呼吸を繰り返して何とかやわらかい表情を作った。
事前の打ち合わせで招待客との応対が多い案内係を理那が、比較的口を開くことが少ないご祝儀係を衣梨奈が担当することになっていた。
最初の数人こそ緊張から「ちょちょちょ、頂戴いたします!」とどもったり声を裏返らせたりしていた衣梨奈だったが、モーニング娘。のメンバーとして培ってきた度胸が活きて徐々に落ち着いて受付をこなせるようになった。
衣梨奈が最初の招待客がやって来るのを緊張しながら待っていると、理那にそっとドレスの袖を引っ張られ耳打ちされた。
「お姉ちゃん、あがり過ぎ。顔怖いよ」
「う、うん」
これでは亀井さんに恥をかかせてしまうと衣梨奈は深呼吸を繰り返して何とかやわらかい表情を作った。
事前の打ち合わせで招待客との応対が多い案内係を理那が、比較的口を開くことが少ないご祝儀係を衣梨奈が担当することになっていた。
最初の数人こそ緊張から「ちょちょちょ、頂戴いたします!」とどもったり声を裏返らせたりしていた衣梨奈だったが、モーニング娘。のメンバーとして培ってきた度胸が活きて徐々に落ち着いて受付をこなせるようになった。
招待客が全員揃って受付の仕事も終わり、理那とともに披露宴の自分たちの席についた。
やがて食事が始まったが、心配していたテーブルマナーは時々隣の理那にフォローされながらもそつなくこなすことができた。
が、問題は料理のメニューだった。よりによって衣梨奈の苦手な料理ばかりが出て、半分近くはほとんど手をつけずにフォークやナイフを置くことになった。
普段は何とかごまかしつつ亀井家で食事をとっていたものの、ここではさすがにごまかしようがなく理那に「お姉ちゃん、そんなに偏食だっけ?」と怪訝な顔をされてしまった。
やがて食事が始まったが、心配していたテーブルマナーは時々隣の理那にフォローされながらもそつなくこなすことができた。
が、問題は料理のメニューだった。よりによって衣梨奈の苦手な料理ばかりが出て、半分近くはほとんど手をつけずにフォークやナイフを置くことになった。
普段は何とかごまかしつつ亀井家で食事をとっていたものの、ここではさすがにごまかしようがなく理那に「お姉ちゃん、そんなに偏食だっけ?」と怪訝な顔をされてしまった。
何とか大きなトラブルもなく結婚式も終わり、帰りの車の中。
満足に食事できなかった衣梨奈は思わず、「お腹空いた…。とんこつラーメンが食べたか」と呟いてしまった。
「何で博多弁?」
すかさずツッコミを入れる理那。
慌てて衣梨奈が取り繕おうとしたところで絵里から電話がかかってきた。
満足に食事できなかった衣梨奈は思わず、「お腹空いた…。とんこつラーメンが食べたか」と呟いてしまった。
「何で博多弁?」
すかさずツッコミを入れる理那。
慌てて衣梨奈が取り繕おうとしたところで絵里から電話がかかってきた。
「もしもし。亀…じゃなかった。えりぽん?」
『もしかして隣に理那いる?』
「あ、うん。帰りの車の中」
『そう。こっちは春ツアーの初日終わったとこ。えりぽんの方は結婚式無事に終わった?』
「う、うん。何とか」
『最近ガキさん避けすぎだったから、今日のライブでガキさんに抱きついちゃった』
照れくさそうに、それでも嬉しそうに話す絵里だったが、衣梨奈はそれを聞いて理那の存在も忘れ思わず叫んでしまった。
「えー、ずるいぃ。エリも新垣さんに抱きつきたいぃ~!」
『え、えりぽん!理那いるんでしょ?まずいよ』
絵里の焦った声に我に返り隣を見ると、ドン引きした表情の理那がいた。
「お、お姉ちゃん。ちょっとキモい…」
「あ、あははは。えりぽん、もう電話切るね。またね~!」
衣梨奈は絵里の返事も待たず電話を切った。
その後衣梨奈がドン引きした理那のフォローに苦労したのは言うまでもなかった。
『もしかして隣に理那いる?』
「あ、うん。帰りの車の中」
『そう。こっちは春ツアーの初日終わったとこ。えりぽんの方は結婚式無事に終わった?』
「う、うん。何とか」
『最近ガキさん避けすぎだったから、今日のライブでガキさんに抱きついちゃった』
照れくさそうに、それでも嬉しそうに話す絵里だったが、衣梨奈はそれを聞いて理那の存在も忘れ思わず叫んでしまった。
「えー、ずるいぃ。エリも新垣さんに抱きつきたいぃ~!」
『え、えりぽん!理那いるんでしょ?まずいよ』
絵里の焦った声に我に返り隣を見ると、ドン引きした表情の理那がいた。
「お、お姉ちゃん。ちょっとキモい…」
「あ、あははは。えりぽん、もう電話切るね。またね~!」
衣梨奈は絵里の返事も待たず電話を切った。
その後衣梨奈がドン引きした理那のフォローに苦労したのは言うまでもなかった。