257 名前:28号[] 投稿日:2006/10/15(日) 02:15:18.15
ID:SiRlZJNt0
俺は泣いた。
敵の……ワイリーのステージの中で。
それはどれだけ危険なことだったかもしれない。
だけど………溢れる涙を堪えることはできなかった………
258 名前:28号[] 投稿日:2006/10/15(日) 02:16:00.67 ID:SiRlZJNt0
「…………」
………どれくらい時間がたったのだろう………
「…………」
ガガガ……ザザ……ピーーッ
……頭の中に、妙な機械音が聞こえてきた。
259 名前:28号[] 投稿日:2006/10/15(日) 02:16:39.91 ID:SiRlZJNt0
「……う……ち号……う8号……!」
「……28号。聞こえるか」
……機械音は、ライトからの通信だった。
「…………」
「28号!聞こえているのか!」
「…………」
「………はい………」
260 名前:28号[] 投稿日:2006/10/15(日) 02:17:15.06 ID:SiRlZJNt0
「む……ようやく通じたか…… おい」
「…………」
「……32号はどうした?」
「…………」
「……死に…ました」
「………!!!!」
「………そうか………」
「…………」
「……28号。聞くんだ」
262 名前:28号[] 投稿日:2006/10/15(日) 02:22:12.86 ID:SiRlZJNt0
「ワイリーが逃げた先は、おそらくここよりさらに地下にあるラボだろう」
「…………」
「……ワイリーにはもう、手札は一つしか残されていない。……だが……」
「……ロックマンで残されているのも、おまえ一人だ」
「必ず、ワイリーを倒せ」
「…………」
「いいな」
「…………」
「…………はい…………」
263 名前:28号[] 投稿日:2006/10/15(日) 02:23:15.39 ID:SiRlZJNt0
「次の……」
「次の戦いが、本当に最後の戦いだ」
「これが終われば貴様は自由だ」
「………」
プツン
……通信が、途絶えた。
「………」
「……自由……」
「……俺が……」
「……32号……」
264 名前:28号[] 投稿日:2006/10/15(日) 02:28:07.93 ID:SiRlZJNt0
眠ったように動かない32号の手を……
「…………」
俺は…強く握り締めた。
………
……必ず……
……必ず…終わらせる……だから……
「……見ていてくれ……」
……そう32号と約束して、俺は……
最後の戦いの道を、進んだ……
266 名前:28号[] 投稿日:2006/10/15(日) 02:29:02.87 ID:SiRlZJNt0
さらに下へ下へと降り続けて、たどり着いた。おそらく…ここが最下層。
細く長い一本道の向こう側に、うっすらと小さく扉が見える。
……あそこに……ワイリーがいる……
俺にはそれが、開けてはいけない地獄の門のようにも見えた。
……だが、止まるわけにはいかない。
267 名前:28号[] 投稿日:2006/10/15(日) 02:29:35.09 ID:SiRlZJNt0
……ドクン……ドクン……ドクン……
心臓の高鳴る音が聞こえる。汗が妙に冷たく感じる。
……これは、恐怖なんだろうか……?
…………
……ふ……
……ここまで来て…今さら何を言っているんだ。
……覚悟を決めろ。32号と約束したろ。
……終わらせるんだ。必ず、ここで……
「……ふう……」
……一呼吸おいて、俺は最後の扉を開けた……
271 名前:28号[] 投稿日:2006/10/15(日) 03:00:43.26 ID:SiRlZJNt0
その部屋は、いつものものよりさらに一層闇が濃い気がした。
自分がどこに立っているのかすら分からないほどに。
……自分の存在が、本当にあるのかすら分からないほどに……
「……く……」
吐き気がする。
こんなところ………この研究所もろとも、まとめて吹っ飛ばしてやる!!!
俺は自分の見えないバスターにエネルギーを込め始めた。
「……待っていたぞ……小僧」
「…!!!!」
そう聞こえた途端…前方がまぶしく輝きだした。
273 名前:28号[] 投稿日:2006/10/15(日) 03:04:28.18 ID:SiRlZJNt0
「……ワイリー……」
輝いていたのは…ワイリーの乗る小型飛行ポットだった。
「まさか貴様らがここまでやってくれるとはな。いささか予想外だったぞ」
「………」
「……だがそれもここで終わりだ。一瞬で灰にしてくれるわ」
ヤツのポットの真下に……あたりから集まってきたエネルギーが膨張してスパークしている。
バチバチッ…バチッ……
276 名前:28号[] 投稿日:2006/10/15(日) 03:06:18.14 ID:SiRlZJNt0
……恐怖は既に無くなっていた。
ただ、何か感慨深さに似た想いが胸の中にこみ上げてきていた。
…………
「………これが……本当に………」
「…?」
「最後の戦いだな……ワイリー」
「………ふん……よくわかっているようじゃの」
「では行くぞ」
277 名前:28号[] 投稿日:2006/10/15(日) 03:08:41.08 ID:SiRlZJNt0
「!!!!」
ヤツの下でスパークしていたエネルギーが球体になり、突如俺を目掛けて襲い掛かってきた。
バチバチバチバチッッ!!!!
「ぐあああああああっ!!!!!」
「くくくくくっ!!!どうじゃ、スパークボールの味は?ええ!?」
「…がはっ…!!!!」
……なんて……ダメージだ……!!
「くそっっ!!!!」
俺もすかさずチャージバスターで反撃に転じる。
だが。
278 名前:28号[] 投稿日:2006/10/15(日) 03:09:53.04 ID:SiRlZJNt0
バチンッッ!!!
「なっ……!!!」
バスターはヤツに当たった途端、まったく違う方向へと向かって進んでいった。
……はじき……返された……!!?
「ふはははは!!!いつまでもそんな豆鉄砲が通用すると思うか!!?無駄なんだよ!!!」
フッ……
「!!??」
そう言って、ワイリーのマシンは姿を消した。
279 名前:28号[] 投稿日:2006/10/15(日) 03:12:42.53 ID:SiRlZJNt0
「き……消え…た……!!?」
音も気配も何も無い。完全に闇と同化している。
………どこだ……出て来い……!!!!
その瞬間、すぐ横から光と共に、ヤツのマシンが再び姿を現した。
「だっ!!!!」
すがさず振り向きざまにチャージバスターを発射する。
280 名前:28号[] 投稿日:2006/10/15(日) 03:13:37.08 ID:SiRlZJNt0
バチンッッ!!!!
「!!!!」
また……はじかれた……!!!!
こいつには…本当にバスターが効かないのか……!!!?
「何度言わせる気だ小僧!!!!そんなものこのわしには……」
バチバチバチッッ!!!!
「!!!?」
「通用しないんだよっ!!!!!」
カッッッ!!!!!
「ぐああああああああああああっっ!!!!!!」
282 名前:28号[] 投稿日:2006/10/15(日) 03:15:39.12 ID:SiRlZJNt0
「………ぐっ……う……」
「くくく……おとなしく諦めるんだな……そしてさっさと……」
「仲間の元へと行ってやるがよい。みんな待っておるぞ……カカカカ……」
ワイリーはそう言い放つと…再び闇の中へと溶け込んでいった。
「…………!!!」
……ふざ…けんなよ……
……こんなの……ありかよ……冗談じゃないぞ……!
……バスターが利かない相手なんかに……勝てるはずないだろ……!!!
ガクッ…
「……うっ……!?」
284 名前:28号[] 投稿日:2006/10/15(日) 03:18:11.94 ID:SiRlZJNt0
立ち上がろうとして手を着いた瞬間、急速に力が失われていくのを感じた。
「……ち……くしょ……!!」
……力が…抜けていく……立てない……
「………う……あ……」
……視界が……ボヤけていく……
……く……そ……
……み…んな………ごめ…ん……
………もう………
「諦めるな!!!!!」
「…!!!!」
292 名前:28号[] 投稿日:2006/10/15(日) 03:55:29.80 ID:SiRlZJNt0
「……32号……!!!!」
目を閉じた途端に浮かんできたあいつの顔が……俺に向かって一喝した。
「言ったはずだぜ」
「どんな絶望的な状況でも……絶対に諦めるな…!!!!」
「……!!!!」
「おまえなら……やれる」
「……さ……」
295 名前:28号[] 投稿日:2006/10/15(日) 03:58:21.10 ID:SiRlZJNt0
………
「………」
「………くそっ………!!!!」
ググググッッ……
「む……なんだ……諦めたんじゃなかったのか?」
いつの間にか目の前に現れていたワイリーの目を睨みつけて……俺は言った。
「……やってやる……最後まで……戦ってやる……!!!!」
俺は………諦めない!!!!
300 名前:28号[] 投稿日:2006/10/15(日) 04:01:08.66 ID:SiRlZJNt0
バスターが通用しないなら特殊武器で勝負だ……!!!!
「うおおおおおぉぉぉぉっ!!!!!」
ヤツのマシンに目掛けて、残されているありったけの武器を叩き込む。だが……
「無駄だ無駄だ無駄だあああああ!!!!!」
ことごとく…はじき返される。
「素直に死ねっっ!!!!」
バチバチッ…バチッ…… カッッッ!!!!!
「くそっ!!!!」
301 名前:28号[] 投稿日:2006/10/15(日) 04:02:34.36 ID:SiRlZJNt0
……どれだ……!!! いったいどの武器なら通用するんだ……!!!
……まさか…どれも効かないっていうんじゃ……!
……もしそうだったら、勝ち目は……
「俺たちに倒せない敵は、いないんだ」
……!!!!
そうだ……倒せない敵なんているはずがない……!!!
必ず……必ず弱点はある……!!!
302 名前:28号[] 投稿日:2006/10/15(日) 04:03:09.59 ID:SiRlZJNt0
「しぶといガキだっ!!!!」
「………」
……残されている武器は……
……これだけだ……!!!
「今度こそ死ね……」
「だああああああーーーっ!!!!」
ゴオオッッ!!!!
「!!?」
303 名前:28号[] 投稿日:2006/10/15(日) 04:06:09.87 ID:SiRlZJNt0
ズドオオオオオオンンッッ!!!!!
「ぐおおおおおおおっ!!!?」
「……!!!!」
……き……
……効いた……!!!ファラオショットが……!!!
……これが……これがあいつの弱点だ!!!!!
「こ……このガキ……!!」
……いける……!!!攻撃が通用するんだ!!!倒せる!!!!
「もう一発……喰らえーーっ!!!!」
305 名前:28号[] 投稿日:2006/10/15(日) 04:08:26.19 ID:SiRlZJNt0
「この馬鹿がっ!!!そう何度も喰らうと思うか!!!!」
フッ……
「!!!」
「くそっ……また消えやがった……どこだ……!!!」
バチバチバチッ……
「!!!! そこか!!!!」
フッ……
「…!!!!」
「くそっ……!!!」
307 名前:28号[] 投稿日:2006/10/15(日) 04:09:55.93 ID:SiRlZJNt0
当たらない。
ヤツも一度ファラオショットを喰らったことで警戒心を強めている。攻撃が当たろうという瞬間に姿を消す。
「くそおっっ!!!!!」
「ふはははは!!!!」
フッ……
……いたちごっこだ……このままじゃヤツを倒す前に、ファラオショットのエネルギーが尽きて無くなる。
……もう……外せない……!!!!
308 名前:28号[] 投稿日:2006/10/15(日) 04:12:05.28 ID:SiRlZJNt0
………集中しろ………
……がむしゃらに撃っていてもダメだ。確実に当てなくちゃ……!!
「くくくくく!!またおとなしくなったな!!ついにエネルギーが切れたか!!!」
……ヤツが俺に……俺の傍に……
「……ならば………さっさととどめを刺してくれるわ!!!」
……最大限まで近づいた時!!!!
フッ……
「!!!!」
……来た!!!!
「死ねえええええ!!!!!」
「うおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!」
309 名前:28号[] 投稿日:2006/10/15(日) 04:12:58.53 ID:SiRlZJNt0
カッッッ!!!!!
「ぐおおおおおおおおお!!!??」
「ぐあああああああああああああああ!!!!!!!」
ヤツのスパークボールと、俺のファラオショットが互いに同時にヒットした。
「こ……このくそガキがあああああああああっっ!!!!」
「………ぐっ…あっ!!……はあっ、はあっ!!!」
あと……あと少しだ……あと少しで……倒せる!!!!
……諦めない……絶対に……!!!!
310 名前:28号[] 投稿日:2006/10/15(日) 04:14:22.67 ID:SiRlZJNt0
「…!!!!!」
ワイリーはもはや姿を隠すことはなかった。代わりにスパークボールのエネルギーを…最大限までチャージし始めた。
ここが勝負所と見たのか……決着を付ける気だ……
……上等だ……!!!
バッッ
俺は上空に向かって手を掲げた。
頭の上でファラオショットがみるみるうちに大きくなっていく。
これが本当に……本当に最後の勝負だ……!!!!
311 名前:28号[] 投稿日:2006/10/15(日) 04:16:23.84 ID:SiRlZJNt0
ザザッ……ザ……ツーッ
「……ばれ……んばれ…!!」
「…?」
「がんばれ!!がんばるんだロック!!!」
……ヘルメットの通信機から聞こえてきたもの……それは、ライトの声だった。
それは、今までの嘲笑ではない……本当の、声援。
…………
Dr. ライト……
おまえは正真正銘のクズ野朗だ。いつかおまえは必ず俺が殺す。
……だけど……今、この一瞬だけは……
その声も……俺の力になる。
316 名前:28号[] 投稿日:2006/10/15(日) 05:01:41.29 ID:SiRlZJNt0
共に肥大化していく、俺のファラオショットとヤツのスパークボール…
「……これで終わりだ……!!!小僧……!!!」
「…………」
……こんな時だというのに……俺の頭の中には突拍子もなく、自分がライトに生み出されてから……
この短かった自分の人生が、走馬灯のようにフラッシュバックしていた。
317 名前:28号[] 投稿日:2006/10/15(日) 05:02:35.14 ID:SiRlZJNt0
「俺たち……道具なんかじゃ…ないよな……?」
「すまん……すまん……!」
「すごかったよ。君の諦めない力」
「……28号は、他のみんなとは少し違うね……」
「……貴様らは所詮人間の道具なんだ……」
「……絶対に俺は帰ってみせる……生きて帰るんだ……!!」
319 名前:28号[] 投稿日:2006/10/15(日) 05:05:55.38 ID:SiRlZJNt0
「……よく見ておけ」
「ああ…!!…やってやる!!俺も必ずやってやる!!!」
「ちくしょう!ちくしょう!!ちくしょう!!!ちくしょう!!!!」
「……こいつも……おまえ『たち』と同じなんだよ……」
「いいんだ。俺、行くよ。みんな待ってる」
「……戦いが終わった後までも……あんなクソ野朗に縛られれ続けないでほしい……」
「28号」
「死ぬなよ」
「…………」
320 名前:28号[] 投稿日:2006/10/15(日) 05:07:21.68 ID:SiRlZJNt0
……27号……!!!
……ロールさん……!!!
……リングマン……!!!
……71号……!!!
………32号………!!!!
………みんな………!!!!
………俺に………力を………!!!!!
322 名前:28号[] 投稿日:2006/10/15(日) 05:09:17.60 ID:SiRlZJNt0
頭上のファラオショットは俺の意思に比例するかのように…
さらに熱く、猛々しく燃えさかっていた。
………この……一瞬に………
………全てを………!!!!!
カッッッッ!!!!!!
「くたばれえええええええええええええええ!!!!!!!」
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!」
323 名前:28号[] 投稿日:2006/10/15(日) 05:13:21.46 ID:SiRlZJNt0
……2つのエネルギーがぶつかり合う瞬間。
一瞬大気が震えたような衝撃が部屋中に走り、次の瞬間…
俺が放ったファラオショットは、ヤツのスパークボールを喰らい尽くすかのように、飲み込んでいた。
「な……なんだと………!!!!!!」
そしてそれは……勢いを緩めることのなく走り続け……
ゴオオオオオオオオオオオウウウッッッ!!!!!!
「……!!!!! うがああああああああああああああああああああ!!!!!!!!」
……ワイリーのマシンすらも……その業火に包み込んだ……
「……!!!!!」
324 名前:28号[] 投稿日:2006/10/15(日) 05:14:21.85 ID:SiRlZJNt0
………ゴオオオオオオオオオォォォォ………
……………
………たお……した………
………ワイリーを………
………みんな………
325 名前:28号[] 投稿日:2006/10/15(日) 05:15:01.88 ID:SiRlZJNt0
「…………」
宙空で、真紅の炎を上げながら燃え続けるワイリー。
それは……まるで暗闇の中、正しい道を指し示す、道標の松明のようでもあった。
……キレイだ……
俺はその炎を見て……そんなことを思っていた。
………終わった………
………終わったんだ………
328 名前:28号[] 投稿日:2006/10/15(日) 05:18:45.70 ID:SiRlZJNt0
ガチャン!!!
「……!!」
ドサッ…
燃え盛るポットの中から、ワイリーが命からがら飛び出しているのが見えた。
……しぶとい野朗だ……
「…く………くく……」
這い蹲るようにして、必死に逃げようとするワイリー。
「……待て」
329 名前:28号[] 投稿日:2006/10/15(日) 05:19:31.07 ID:SiRlZJNt0
「……!!!!」
「……どこへ行く気だ……」
「……く……!!」
「…ゆ……許してくれえっ……!!!」
「………!」
ワイリーは突如…俺に向かって、ペコペコと床に頭を摩り付けるようにして土下座を始めた。
334 名前:28号[] 投稿日:2006/10/15(日) 06:00:16.89 ID:SiRlZJNt0
「わしは……わしは元々世界征服をする気なんて初めからこれっぽっちもなかったんじゃ…!!」
「…………」
「……わしは教えてやりたかった……あいつに…見せてやりたかった……わしの力を……」
「…………」
「ライトに……あいつに勝ちたかった……それだけなんじゃ……!!!!」
「…………」
「ただ……それだけなんじゃあ……!!!」
336 名前:28号[] 投稿日:2006/10/15(日) 06:02:16.32 ID:SiRlZJNt0
ポタ……ポタ……
「……?」
……いつの間にか…握り締めた拳から、血が滴り落ちていた。
………ふざけるな………!!!
「………ふざけるなよ………!!!」
「…!!!」
「……貴様の……貴様らのそのくだらない争いのために……いったいどれだけの命が消えていったと思ってやがる……!!!」
「……う……!」
「みんな……みんな……かけがえのない……かけがえのない命だったんだ……!!!!」
「……許さない……絶対………おまえだけは絶対に許さない……!!!!!」
337 名前:28号[] 投稿日:2006/10/15(日) 06:03:24.58 ID:SiRlZJNt0
カチャリ……
「……!!!!!」
俺は土下座を続けるDr. ワイリーに向かって、バスターを構えた。
その時だった。
ドオオオオオオォォォォォンンン!!!!
「…!!?」
「うわっ!!!!」
338 名前:28号[] 投稿日:2006/10/15(日) 06:04:37.43 ID:SiRlZJNt0
ドドドドドドドドドドドド………!!!!!
突然部屋中を……いや、この基地全体を揺るがすような大きな爆発が起こった。
「なんだ……!!!?いったい何が起こっている!!!??」
「…くくくくく……自爆装置がようやく作動したようだの」
「なんだと!!!?」
ドオオオオオンンン!!!!
「ぐあっ!!!!」
天井から落ちてきた岩盤に、俺は身を伏せた。
「!!!!!」
その一瞬の隙をついて……ワイリーは身を翻し、後ろの扉へと向かって走り出していた。
「逃がすか!!!!!」
339 名前:28号[] 投稿日:2006/10/15(日) 06:05:54.85 ID:SiRlZJNt0
逃げていくワイリーに向かって、俺はチャージバスターを発射した。
ドンッッ!!!!
「!!!!」
しかし…それは崩壊する基地のガレキに阻まれ、当たることは無かった。
「…くそっ!!!ここまで来て逃がしてたまるか……!!!」
再び標準を定めてバスターを構える。
だが。
カチッ……カチッッ……
「……!!?」
……バスターが……出ない……!?
340 名前:28号[] 投稿日:2006/10/15(日) 06:07:23.78 ID:SiRlZJNt0
「…………」
……そう…か……
……全てのエネルギーを……使い果たしたのか……
……全ての……力を……
「……うっ……」
そう気付いた瞬間、足元から自分が崩れ落ちていくような感覚に襲われた。
「………俺は………」
………もう………
ドサッッ………
341 名前:28号[] 投稿日:2006/10/15(日) 06:09:43.41 ID:SiRlZJNt0
……もう、とても立ち上がれそうになかった。
手も足もどこも動かない。視界はほとんど真っ暗だ。
………みんな、ごめん………
みんなの代わりに生きていくっていう約束も……もう、守れそうにない……
……でも……許してくれるだろ……?
……ワイリーは……倒した……
……俺は……自分の人生を……生まれてきた意味を……
……達成したんだ……
………眠い………
343 名前:28号[] 投稿日:2006/10/15(日) 06:11:36.76 ID:SiRlZJNt0
「………ろ」
「………きろ。おい起きろ」
「………?」
……気がつくと、俺は真っ白い部屋の中に……いや、「空間」の中にいた。
……すぐ近くで……俺を呼んでる声が聞こえる……
………誰………?
「………あ………」
「さっさと起きろ」
「……32号……」
345 名前:28号[] 投稿日:2006/10/15(日) 06:12:33.88 ID:SiRlZJNt0
「32号……おまえ……どうして……?」
「いいからさっさと立て。帰るぞ」
「帰る……?帰るって、どこに」
「もう……全部終わったんだ」
「……終わった……?」
「ああ。おまえが終わらせたんだ」
「……俺……が……」
「………」
「……おまえの帰りを待ってる人もいるぞ」
「え?」
354 名前:28号[] 投稿日:2006/10/15(日) 07:04:34.07 ID:SiRlZJNt0
「28号っ!!!!!」
「…!!!!!」
今度ははっきりと、声が聞こえた。
部屋の中は…さっきと変わらない。爆発が続く薄暗い地下室。
……幻……だったのか……
………32号………
「28号!!!お願い!!!返事して!!!!」
「……!!!!」
だんだん…意識が戻ってきた。
この声は……ロールさん……!!!
356 名前:28号[] 投稿日:2006/10/15(日) 07:07:20.27 ID:SiRlZJNt0
「ロールさん……ロールさんですか!!?」
「28号…!!!!大丈夫!!?」
「はい…!」
「お願い!!!早くそこから逃げて!!!!」
「!?」
……意識が無かったからわからなかったけど、
辺りはもはや崩れ落ちてきた岩盤や瓦礫で、埋め尽くされようとしていた。
もはやこの基地の崩壊は間近だろう。
ドドドドドドドドドドドド………!!!!!
「28号!!!!」
「くっ……!!!」
……でも……ダメだ……身体が動かない……!!!
357 名前:28号[] 投稿日:2006/10/15(日) 07:09:00.01 ID:SiRlZJNt0
「………」
「……ロールさん……」
「…?何……!?」
「……俺、もうダメみたいです。身体がまるで動かない。……とてもじゃないけど脱出できそうにありません」
「……!!」
「だから……ロールさん。ロールさんだけは……幸せに…」
「ダメ!!!!」
「…!!」
「あの時……あなた言ったはずよ!!!必ず生きて帰るって!!!!」」
「……!?」
「それに……あなたの命は……死んでいったみんなの命でもあるんだから!!!!!」
「……だから……だからお願い……」
「……帰ってきて……!!!」
ザッ…ザザッ……ツー……
「………」
359 名前:28号[] 投稿日:2006/10/15(日) 07:10:17.21 ID:SiRlZJNt0
「………」
……みんなの……命……
「………」
「……う……」
「…うおおおおおおお……!!!」
……最後の最後……残された力を振り絞って……
グググッッ……
「がああああっっ!!!!」
俺は、立ち上がった。
360 名前:28号[] 投稿日:2006/10/15(日) 07:11:09.18 ID:SiRlZJNt0
「はあっ……はあっ……」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!
転送装置は、壊れている……自力でなんとかしなくちゃいけない……
爆発は……もう、すぐだ……!!!
走るしかない…!!!!!
ダッッッ!!!!!
361 名前:28号[] 投稿日:2006/10/15(日) 07:12:14.36 ID:SiRlZJNt0
………
出口がどこにあるのかなんて…わからない。
それでも俺は走り続けた。
目は…もはや霞んでしか見えない。
だから目をほとんど瞑った状態で走った。
それでも……俺は止まらなかった。
ふと、辺りが真っ白く輝いていることに気が付いた。
……また、幻か……?
いや、違う。
俺は目を見開いた。
362 名前:28号[] 投稿日:2006/10/15(日) 07:13:14.73 ID:SiRlZJNt0
「………空………」
……知らないうちに俺は、雪原の大地の真ん中に立っていた。
振り向くとそこには、ついに崩れ落ちていこうとしている、ワイリーの秘密基地があった。
……助かった……のか……
ドドドドドドドドドドドドドド………
ドオオオオオォォォォォォォンンンン!!!!!
365 名前:28号[] 投稿日:2006/10/15(日) 07:18:37.30 ID:SiRlZJNt0
「…………」
巨大な爆発をあげる、ワイリー基地。
もはや、もし手下のロボットが残っていたんだとしても、あれでは跡形も無いだろう。
………これで…本当に………
……全て……終わった………
366 名前:28号[] 投稿日:2006/10/15(日) 07:22:00.14 ID:SiRlZJNt0
ダダンダダンダダンダダン……
……俺は今、自分の研究所まで帰るためのエアモノレールに乗っている。
乗っていると言ってもちゃんとした席に座っているわけじゃない。屋根の上。しかも、無賃乗車だ。
……今回のこの戦いは、世界の平和のためなどではなく、完全に俺自身のための戦いだった。
だけど……
それでも俺は一応は、ワイリーの世界征服の野望を打ち破った、ヒーローなんだ。
……これくらいの悪さは、きっと許してもらえるだろう。
368 名前:28号[] 投稿日:2006/10/15(日) 07:24:19.47 ID:SiRlZJNt0
…徐々に空が暗くなって、モノレールは街へと入った。
ビルの隙間から、大きな満月が見える。
「………」
……あの日、あのバルコニーで見た満月とそっくりな、
キレイな月だった。
375 名前:28号[] 投稿日:2006/10/15(日) 07:46:14.67 ID:SiRlZJNt0
……多分、今逃げ出そうと思えば、あのライトからも逃げ出せる。外に出て、本当の自由を手に入れることもできるだろう。
…でも、そうはしなかった。それは一つにロールさんのためでもあったけど……でも、それだけじゃない。
……ライトを殺したいから、というわけでもない……
……それは……
……それはきっと……俺自身が、変えていかなくちゃいけないと思ったからだ。
……そう。変えていかなくちゃならない。 ……あの、ジジイを。そして………
………この、世界を………
378 名前:28号[] 投稿日:2006/10/15(日) 07:49:59.02 ID:SiRlZJNt0
……これでとりあえずは俺……
いや、ロックマン・タイプ4、№28としての戦いは終わりだ。
……でもこの話は…ほんの序章にしかすぎない。
そう。これからも続いていく、「俺」自身の…
……長い長い戦いの歴史の……
380 名前:28号[] 投稿日:2006/10/15(日) 07:51:58.23 ID:SiRlZJNt0
……終着駅……
俺がモノレールからばれないようにこっそりと飛び降りると、目の前にはロールさんが立っていた。
「……!……」
「……ロール…さん……」
「……28号……」
「……ありがとう……」
「……え……?」
…そう一言だけつぶやいて、ロールさんは俺の胸の中に飛び込んできた。
終わり
俺は泣いた。
敵の……ワイリーのステージの中で。
それはどれだけ危険なことだったかもしれない。
だけど………溢れる涙を堪えることはできなかった………
258 名前:28号[] 投稿日:2006/10/15(日) 02:16:00.67 ID:SiRlZJNt0
「…………」
………どれくらい時間がたったのだろう………
「…………」
ガガガ……ザザ……ピーーッ
……頭の中に、妙な機械音が聞こえてきた。
259 名前:28号[] 投稿日:2006/10/15(日) 02:16:39.91 ID:SiRlZJNt0
「……う……ち号……う8号……!」
「……28号。聞こえるか」
……機械音は、ライトからの通信だった。
「…………」
「28号!聞こえているのか!」
「…………」
「………はい………」
260 名前:28号[] 投稿日:2006/10/15(日) 02:17:15.06 ID:SiRlZJNt0
「む……ようやく通じたか…… おい」
「…………」
「……32号はどうした?」
「…………」
「……死に…ました」
「………!!!!」
「………そうか………」
「…………」
「……28号。聞くんだ」
262 名前:28号[] 投稿日:2006/10/15(日) 02:22:12.86 ID:SiRlZJNt0
「ワイリーが逃げた先は、おそらくここよりさらに地下にあるラボだろう」
「…………」
「……ワイリーにはもう、手札は一つしか残されていない。……だが……」
「……ロックマンで残されているのも、おまえ一人だ」
「必ず、ワイリーを倒せ」
「…………」
「いいな」
「…………」
「…………はい…………」
263 名前:28号[] 投稿日:2006/10/15(日) 02:23:15.39 ID:SiRlZJNt0
「次の……」
「次の戦いが、本当に最後の戦いだ」
「これが終われば貴様は自由だ」
「………」
プツン
……通信が、途絶えた。
「………」
「……自由……」
「……俺が……」
「……32号……」
264 名前:28号[] 投稿日:2006/10/15(日) 02:28:07.93 ID:SiRlZJNt0
眠ったように動かない32号の手を……
「…………」
俺は…強く握り締めた。
………
……必ず……
……必ず…終わらせる……だから……
「……見ていてくれ……」
……そう32号と約束して、俺は……
最後の戦いの道を、進んだ……
266 名前:28号[] 投稿日:2006/10/15(日) 02:29:02.87 ID:SiRlZJNt0
さらに下へ下へと降り続けて、たどり着いた。おそらく…ここが最下層。
細く長い一本道の向こう側に、うっすらと小さく扉が見える。
……あそこに……ワイリーがいる……
俺にはそれが、開けてはいけない地獄の門のようにも見えた。
……だが、止まるわけにはいかない。
267 名前:28号[] 投稿日:2006/10/15(日) 02:29:35.09 ID:SiRlZJNt0
……ドクン……ドクン……ドクン……
心臓の高鳴る音が聞こえる。汗が妙に冷たく感じる。
……これは、恐怖なんだろうか……?
…………
……ふ……
……ここまで来て…今さら何を言っているんだ。
……覚悟を決めろ。32号と約束したろ。
……終わらせるんだ。必ず、ここで……
「……ふう……」
……一呼吸おいて、俺は最後の扉を開けた……
271 名前:28号[] 投稿日:2006/10/15(日) 03:00:43.26 ID:SiRlZJNt0
その部屋は、いつものものよりさらに一層闇が濃い気がした。
自分がどこに立っているのかすら分からないほどに。
……自分の存在が、本当にあるのかすら分からないほどに……
「……く……」
吐き気がする。
こんなところ………この研究所もろとも、まとめて吹っ飛ばしてやる!!!
俺は自分の見えないバスターにエネルギーを込め始めた。
「……待っていたぞ……小僧」
「…!!!!」
そう聞こえた途端…前方がまぶしく輝きだした。
273 名前:28号[] 投稿日:2006/10/15(日) 03:04:28.18 ID:SiRlZJNt0
「……ワイリー……」
輝いていたのは…ワイリーの乗る小型飛行ポットだった。
「まさか貴様らがここまでやってくれるとはな。いささか予想外だったぞ」
「………」
「……だがそれもここで終わりだ。一瞬で灰にしてくれるわ」
ヤツのポットの真下に……あたりから集まってきたエネルギーが膨張してスパークしている。
バチバチッ…バチッ……
276 名前:28号[] 投稿日:2006/10/15(日) 03:06:18.14 ID:SiRlZJNt0
……恐怖は既に無くなっていた。
ただ、何か感慨深さに似た想いが胸の中にこみ上げてきていた。
…………
「………これが……本当に………」
「…?」
「最後の戦いだな……ワイリー」
「………ふん……よくわかっているようじゃの」
「では行くぞ」
277 名前:28号[] 投稿日:2006/10/15(日) 03:08:41.08 ID:SiRlZJNt0
「!!!!」
ヤツの下でスパークしていたエネルギーが球体になり、突如俺を目掛けて襲い掛かってきた。
バチバチバチバチッッ!!!!
「ぐあああああああっ!!!!!」
「くくくくくっ!!!どうじゃ、スパークボールの味は?ええ!?」
「…がはっ…!!!!」
……なんて……ダメージだ……!!
「くそっっ!!!!」
俺もすかさずチャージバスターで反撃に転じる。
だが。
278 名前:28号[] 投稿日:2006/10/15(日) 03:09:53.04 ID:SiRlZJNt0
バチンッッ!!!
「なっ……!!!」
バスターはヤツに当たった途端、まったく違う方向へと向かって進んでいった。
……はじき……返された……!!?
「ふはははは!!!いつまでもそんな豆鉄砲が通用すると思うか!!?無駄なんだよ!!!」
フッ……
「!!??」
そう言って、ワイリーのマシンは姿を消した。
279 名前:28号[] 投稿日:2006/10/15(日) 03:12:42.53 ID:SiRlZJNt0
「き……消え…た……!!?」
音も気配も何も無い。完全に闇と同化している。
………どこだ……出て来い……!!!!
その瞬間、すぐ横から光と共に、ヤツのマシンが再び姿を現した。
「だっ!!!!」
すがさず振り向きざまにチャージバスターを発射する。
280 名前:28号[] 投稿日:2006/10/15(日) 03:13:37.08 ID:SiRlZJNt0
バチンッッ!!!!
「!!!!」
また……はじかれた……!!!!
こいつには…本当にバスターが効かないのか……!!!?
「何度言わせる気だ小僧!!!!そんなものこのわしには……」
バチバチバチッッ!!!!
「!!!?」
「通用しないんだよっ!!!!!」
カッッッ!!!!!
「ぐああああああああああああっっ!!!!!!」
282 名前:28号[] 投稿日:2006/10/15(日) 03:15:39.12 ID:SiRlZJNt0
「………ぐっ……う……」
「くくく……おとなしく諦めるんだな……そしてさっさと……」
「仲間の元へと行ってやるがよい。みんな待っておるぞ……カカカカ……」
ワイリーはそう言い放つと…再び闇の中へと溶け込んでいった。
「…………!!!」
……ふざ…けんなよ……
……こんなの……ありかよ……冗談じゃないぞ……!
……バスターが利かない相手なんかに……勝てるはずないだろ……!!!
ガクッ…
「……うっ……!?」
284 名前:28号[] 投稿日:2006/10/15(日) 03:18:11.94 ID:SiRlZJNt0
立ち上がろうとして手を着いた瞬間、急速に力が失われていくのを感じた。
「……ち……くしょ……!!」
……力が…抜けていく……立てない……
「………う……あ……」
……視界が……ボヤけていく……
……く……そ……
……み…んな………ごめ…ん……
………もう………
「諦めるな!!!!!」
「…!!!!」
292 名前:28号[] 投稿日:2006/10/15(日) 03:55:29.80 ID:SiRlZJNt0
「……32号……!!!!」
目を閉じた途端に浮かんできたあいつの顔が……俺に向かって一喝した。
「言ったはずだぜ」
「どんな絶望的な状況でも……絶対に諦めるな…!!!!」
「……!!!!」
「おまえなら……やれる」
「……さ……」
295 名前:28号[] 投稿日:2006/10/15(日) 03:58:21.10 ID:SiRlZJNt0
………
「………」
「………くそっ………!!!!」
ググググッッ……
「む……なんだ……諦めたんじゃなかったのか?」
いつの間にか目の前に現れていたワイリーの目を睨みつけて……俺は言った。
「……やってやる……最後まで……戦ってやる……!!!!」
俺は………諦めない!!!!
300 名前:28号[] 投稿日:2006/10/15(日) 04:01:08.66 ID:SiRlZJNt0
バスターが通用しないなら特殊武器で勝負だ……!!!!
「うおおおおおぉぉぉぉっ!!!!!」
ヤツのマシンに目掛けて、残されているありったけの武器を叩き込む。だが……
「無駄だ無駄だ無駄だあああああ!!!!!」
ことごとく…はじき返される。
「素直に死ねっっ!!!!」
バチバチッ…バチッ…… カッッッ!!!!!
「くそっ!!!!」
301 名前:28号[] 投稿日:2006/10/15(日) 04:02:34.36 ID:SiRlZJNt0
……どれだ……!!! いったいどの武器なら通用するんだ……!!!
……まさか…どれも効かないっていうんじゃ……!
……もしそうだったら、勝ち目は……
「俺たちに倒せない敵は、いないんだ」
……!!!!
そうだ……倒せない敵なんているはずがない……!!!
必ず……必ず弱点はある……!!!
302 名前:28号[] 投稿日:2006/10/15(日) 04:03:09.59 ID:SiRlZJNt0
「しぶといガキだっ!!!!」
「………」
……残されている武器は……
……これだけだ……!!!
「今度こそ死ね……」
「だああああああーーーっ!!!!」
ゴオオッッ!!!!
「!!?」
303 名前:28号[] 投稿日:2006/10/15(日) 04:06:09.87 ID:SiRlZJNt0
ズドオオオオオオンンッッ!!!!!
「ぐおおおおおおおっ!!!?」
「……!!!!」
……き……
……効いた……!!!ファラオショットが……!!!
……これが……これがあいつの弱点だ!!!!!
「こ……このガキ……!!」
……いける……!!!攻撃が通用するんだ!!!倒せる!!!!
「もう一発……喰らえーーっ!!!!」
305 名前:28号[] 投稿日:2006/10/15(日) 04:08:26.19 ID:SiRlZJNt0
「この馬鹿がっ!!!そう何度も喰らうと思うか!!!!」
フッ……
「!!!」
「くそっ……また消えやがった……どこだ……!!!」
バチバチバチッ……
「!!!! そこか!!!!」
フッ……
「…!!!!」
「くそっ……!!!」
307 名前:28号[] 投稿日:2006/10/15(日) 04:09:55.93 ID:SiRlZJNt0
当たらない。
ヤツも一度ファラオショットを喰らったことで警戒心を強めている。攻撃が当たろうという瞬間に姿を消す。
「くそおっっ!!!!!」
「ふはははは!!!!」
フッ……
……いたちごっこだ……このままじゃヤツを倒す前に、ファラオショットのエネルギーが尽きて無くなる。
……もう……外せない……!!!!
308 名前:28号[] 投稿日:2006/10/15(日) 04:12:05.28 ID:SiRlZJNt0
………集中しろ………
……がむしゃらに撃っていてもダメだ。確実に当てなくちゃ……!!
「くくくくく!!またおとなしくなったな!!ついにエネルギーが切れたか!!!」
……ヤツが俺に……俺の傍に……
「……ならば………さっさととどめを刺してくれるわ!!!」
……最大限まで近づいた時!!!!
フッ……
「!!!!」
……来た!!!!
「死ねえええええ!!!!!」
「うおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!」
309 名前:28号[] 投稿日:2006/10/15(日) 04:12:58.53 ID:SiRlZJNt0
カッッッ!!!!!
「ぐおおおおおおおおお!!!??」
「ぐあああああああああああああああ!!!!!!!」
ヤツのスパークボールと、俺のファラオショットが互いに同時にヒットした。
「こ……このくそガキがあああああああああっっ!!!!」
「………ぐっ…あっ!!……はあっ、はあっ!!!」
あと……あと少しだ……あと少しで……倒せる!!!!
……諦めない……絶対に……!!!!
310 名前:28号[] 投稿日:2006/10/15(日) 04:14:22.67 ID:SiRlZJNt0
「…!!!!!」
ワイリーはもはや姿を隠すことはなかった。代わりにスパークボールのエネルギーを…最大限までチャージし始めた。
ここが勝負所と見たのか……決着を付ける気だ……
……上等だ……!!!
バッッ
俺は上空に向かって手を掲げた。
頭の上でファラオショットがみるみるうちに大きくなっていく。
これが本当に……本当に最後の勝負だ……!!!!
311 名前:28号[] 投稿日:2006/10/15(日) 04:16:23.84 ID:SiRlZJNt0
ザザッ……ザ……ツーッ
「……ばれ……んばれ…!!」
「…?」
「がんばれ!!がんばるんだロック!!!」
……ヘルメットの通信機から聞こえてきたもの……それは、ライトの声だった。
それは、今までの嘲笑ではない……本当の、声援。
…………
Dr. ライト……
おまえは正真正銘のクズ野朗だ。いつかおまえは必ず俺が殺す。
……だけど……今、この一瞬だけは……
その声も……俺の力になる。
316 名前:28号[] 投稿日:2006/10/15(日) 05:01:41.29 ID:SiRlZJNt0
共に肥大化していく、俺のファラオショットとヤツのスパークボール…
「……これで終わりだ……!!!小僧……!!!」
「…………」
……こんな時だというのに……俺の頭の中には突拍子もなく、自分がライトに生み出されてから……
この短かった自分の人生が、走馬灯のようにフラッシュバックしていた。
317 名前:28号[] 投稿日:2006/10/15(日) 05:02:35.14 ID:SiRlZJNt0
「俺たち……道具なんかじゃ…ないよな……?」
「すまん……すまん……!」
「すごかったよ。君の諦めない力」
「……28号は、他のみんなとは少し違うね……」
「……貴様らは所詮人間の道具なんだ……」
「……絶対に俺は帰ってみせる……生きて帰るんだ……!!」
319 名前:28号[] 投稿日:2006/10/15(日) 05:05:55.38 ID:SiRlZJNt0
「……よく見ておけ」
「ああ…!!…やってやる!!俺も必ずやってやる!!!」
「ちくしょう!ちくしょう!!ちくしょう!!!ちくしょう!!!!」
「……こいつも……おまえ『たち』と同じなんだよ……」
「いいんだ。俺、行くよ。みんな待ってる」
「……戦いが終わった後までも……あんなクソ野朗に縛られれ続けないでほしい……」
「28号」
「死ぬなよ」
「…………」
320 名前:28号[] 投稿日:2006/10/15(日) 05:07:21.68 ID:SiRlZJNt0
……27号……!!!
……ロールさん……!!!
……リングマン……!!!
……71号……!!!
………32号………!!!!
………みんな………!!!!
………俺に………力を………!!!!!
322 名前:28号[] 投稿日:2006/10/15(日) 05:09:17.60 ID:SiRlZJNt0
頭上のファラオショットは俺の意思に比例するかのように…
さらに熱く、猛々しく燃えさかっていた。
………この……一瞬に………
………全てを………!!!!!
カッッッッ!!!!!!
「くたばれえええええええええええええええ!!!!!!!」
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!」
323 名前:28号[] 投稿日:2006/10/15(日) 05:13:21.46 ID:SiRlZJNt0
……2つのエネルギーがぶつかり合う瞬間。
一瞬大気が震えたような衝撃が部屋中に走り、次の瞬間…
俺が放ったファラオショットは、ヤツのスパークボールを喰らい尽くすかのように、飲み込んでいた。
「な……なんだと………!!!!!!」
そしてそれは……勢いを緩めることのなく走り続け……
ゴオオオオオオオオオオオウウウッッッ!!!!!!
「……!!!!! うがああああああああああああああああああああ!!!!!!!!」
……ワイリーのマシンすらも……その業火に包み込んだ……
「……!!!!!」
324 名前:28号[] 投稿日:2006/10/15(日) 05:14:21.85 ID:SiRlZJNt0
………ゴオオオオオオオオオォォォォ………
……………
………たお……した………
………ワイリーを………
………みんな………
325 名前:28号[] 投稿日:2006/10/15(日) 05:15:01.88 ID:SiRlZJNt0
「…………」
宙空で、真紅の炎を上げながら燃え続けるワイリー。
それは……まるで暗闇の中、正しい道を指し示す、道標の松明のようでもあった。
……キレイだ……
俺はその炎を見て……そんなことを思っていた。
………終わった………
………終わったんだ………
328 名前:28号[] 投稿日:2006/10/15(日) 05:18:45.70 ID:SiRlZJNt0
ガチャン!!!
「……!!」
ドサッ…
燃え盛るポットの中から、ワイリーが命からがら飛び出しているのが見えた。
……しぶとい野朗だ……
「…く………くく……」
這い蹲るようにして、必死に逃げようとするワイリー。
「……待て」
329 名前:28号[] 投稿日:2006/10/15(日) 05:19:31.07 ID:SiRlZJNt0
「……!!!!」
「……どこへ行く気だ……」
「……く……!!」
「…ゆ……許してくれえっ……!!!」
「………!」
ワイリーは突如…俺に向かって、ペコペコと床に頭を摩り付けるようにして土下座を始めた。
334 名前:28号[] 投稿日:2006/10/15(日) 06:00:16.89 ID:SiRlZJNt0
「わしは……わしは元々世界征服をする気なんて初めからこれっぽっちもなかったんじゃ…!!」
「…………」
「……わしは教えてやりたかった……あいつに…見せてやりたかった……わしの力を……」
「…………」
「ライトに……あいつに勝ちたかった……それだけなんじゃ……!!!!」
「…………」
「ただ……それだけなんじゃあ……!!!」
336 名前:28号[] 投稿日:2006/10/15(日) 06:02:16.32 ID:SiRlZJNt0
ポタ……ポタ……
「……?」
……いつの間にか…握り締めた拳から、血が滴り落ちていた。
………ふざけるな………!!!
「………ふざけるなよ………!!!」
「…!!!」
「……貴様の……貴様らのそのくだらない争いのために……いったいどれだけの命が消えていったと思ってやがる……!!!」
「……う……!」
「みんな……みんな……かけがえのない……かけがえのない命だったんだ……!!!!」
「……許さない……絶対………おまえだけは絶対に許さない……!!!!!」
337 名前:28号[] 投稿日:2006/10/15(日) 06:03:24.58 ID:SiRlZJNt0
カチャリ……
「……!!!!!」
俺は土下座を続けるDr. ワイリーに向かって、バスターを構えた。
その時だった。
ドオオオオオオォォォォォンンン!!!!
「…!!?」
「うわっ!!!!」
338 名前:28号[] 投稿日:2006/10/15(日) 06:04:37.43 ID:SiRlZJNt0
ドドドドドドドドドドドド………!!!!!
突然部屋中を……いや、この基地全体を揺るがすような大きな爆発が起こった。
「なんだ……!!!?いったい何が起こっている!!!??」
「…くくくくく……自爆装置がようやく作動したようだの」
「なんだと!!!?」
ドオオオオオンンン!!!!
「ぐあっ!!!!」
天井から落ちてきた岩盤に、俺は身を伏せた。
「!!!!!」
その一瞬の隙をついて……ワイリーは身を翻し、後ろの扉へと向かって走り出していた。
「逃がすか!!!!!」
339 名前:28号[] 投稿日:2006/10/15(日) 06:05:54.85 ID:SiRlZJNt0
逃げていくワイリーに向かって、俺はチャージバスターを発射した。
ドンッッ!!!!
「!!!!」
しかし…それは崩壊する基地のガレキに阻まれ、当たることは無かった。
「…くそっ!!!ここまで来て逃がしてたまるか……!!!」
再び標準を定めてバスターを構える。
だが。
カチッ……カチッッ……
「……!!?」
……バスターが……出ない……!?
340 名前:28号[] 投稿日:2006/10/15(日) 06:07:23.78 ID:SiRlZJNt0
「…………」
……そう…か……
……全てのエネルギーを……使い果たしたのか……
……全ての……力を……
「……うっ……」
そう気付いた瞬間、足元から自分が崩れ落ちていくような感覚に襲われた。
「………俺は………」
………もう………
ドサッッ………
341 名前:28号[] 投稿日:2006/10/15(日) 06:09:43.41 ID:SiRlZJNt0
……もう、とても立ち上がれそうになかった。
手も足もどこも動かない。視界はほとんど真っ暗だ。
………みんな、ごめん………
みんなの代わりに生きていくっていう約束も……もう、守れそうにない……
……でも……許してくれるだろ……?
……ワイリーは……倒した……
……俺は……自分の人生を……生まれてきた意味を……
……達成したんだ……
………眠い………
343 名前:28号[] 投稿日:2006/10/15(日) 06:11:36.76 ID:SiRlZJNt0
「………ろ」
「………きろ。おい起きろ」
「………?」
……気がつくと、俺は真っ白い部屋の中に……いや、「空間」の中にいた。
……すぐ近くで……俺を呼んでる声が聞こえる……
………誰………?
「………あ………」
「さっさと起きろ」
「……32号……」
345 名前:28号[] 投稿日:2006/10/15(日) 06:12:33.88 ID:SiRlZJNt0
「32号……おまえ……どうして……?」
「いいからさっさと立て。帰るぞ」
「帰る……?帰るって、どこに」
「もう……全部終わったんだ」
「……終わった……?」
「ああ。おまえが終わらせたんだ」
「……俺……が……」
「………」
「……おまえの帰りを待ってる人もいるぞ」
「え?」
354 名前:28号[] 投稿日:2006/10/15(日) 07:04:34.07 ID:SiRlZJNt0
「28号っ!!!!!」
「…!!!!!」
今度ははっきりと、声が聞こえた。
部屋の中は…さっきと変わらない。爆発が続く薄暗い地下室。
……幻……だったのか……
………32号………
「28号!!!お願い!!!返事して!!!!」
「……!!!!」
だんだん…意識が戻ってきた。
この声は……ロールさん……!!!
356 名前:28号[] 投稿日:2006/10/15(日) 07:07:20.27 ID:SiRlZJNt0
「ロールさん……ロールさんですか!!?」
「28号…!!!!大丈夫!!?」
「はい…!」
「お願い!!!早くそこから逃げて!!!!」
「!?」
……意識が無かったからわからなかったけど、
辺りはもはや崩れ落ちてきた岩盤や瓦礫で、埋め尽くされようとしていた。
もはやこの基地の崩壊は間近だろう。
ドドドドドドドドドドドド………!!!!!
「28号!!!!」
「くっ……!!!」
……でも……ダメだ……身体が動かない……!!!
357 名前:28号[] 投稿日:2006/10/15(日) 07:09:00.01 ID:SiRlZJNt0
「………」
「……ロールさん……」
「…?何……!?」
「……俺、もうダメみたいです。身体がまるで動かない。……とてもじゃないけど脱出できそうにありません」
「……!!」
「だから……ロールさん。ロールさんだけは……幸せに…」
「ダメ!!!!」
「…!!」
「あの時……あなた言ったはずよ!!!必ず生きて帰るって!!!!」」
「……!?」
「それに……あなたの命は……死んでいったみんなの命でもあるんだから!!!!!」
「……だから……だからお願い……」
「……帰ってきて……!!!」
ザッ…ザザッ……ツー……
「………」
359 名前:28号[] 投稿日:2006/10/15(日) 07:10:17.21 ID:SiRlZJNt0
「………」
……みんなの……命……
「………」
「……う……」
「…うおおおおおおお……!!!」
……最後の最後……残された力を振り絞って……
グググッッ……
「がああああっっ!!!!」
俺は、立ち上がった。
360 名前:28号[] 投稿日:2006/10/15(日) 07:11:09.18 ID:SiRlZJNt0
「はあっ……はあっ……」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!
転送装置は、壊れている……自力でなんとかしなくちゃいけない……
爆発は……もう、すぐだ……!!!
走るしかない…!!!!!
ダッッッ!!!!!
361 名前:28号[] 投稿日:2006/10/15(日) 07:12:14.36 ID:SiRlZJNt0
………
出口がどこにあるのかなんて…わからない。
それでも俺は走り続けた。
目は…もはや霞んでしか見えない。
だから目をほとんど瞑った状態で走った。
それでも……俺は止まらなかった。
ふと、辺りが真っ白く輝いていることに気が付いた。
……また、幻か……?
いや、違う。
俺は目を見開いた。
362 名前:28号[] 投稿日:2006/10/15(日) 07:13:14.73 ID:SiRlZJNt0
「………空………」
……知らないうちに俺は、雪原の大地の真ん中に立っていた。
振り向くとそこには、ついに崩れ落ちていこうとしている、ワイリーの秘密基地があった。
……助かった……のか……
ドドドドドドドドドドドドドド………
ドオオオオオォォォォォォォンンンン!!!!!
365 名前:28号[] 投稿日:2006/10/15(日) 07:18:37.30 ID:SiRlZJNt0
「…………」
巨大な爆発をあげる、ワイリー基地。
もはや、もし手下のロボットが残っていたんだとしても、あれでは跡形も無いだろう。
………これで…本当に………
……全て……終わった………
366 名前:28号[] 投稿日:2006/10/15(日) 07:22:00.14 ID:SiRlZJNt0
ダダンダダンダダンダダン……
……俺は今、自分の研究所まで帰るためのエアモノレールに乗っている。
乗っていると言ってもちゃんとした席に座っているわけじゃない。屋根の上。しかも、無賃乗車だ。
……今回のこの戦いは、世界の平和のためなどではなく、完全に俺自身のための戦いだった。
だけど……
それでも俺は一応は、ワイリーの世界征服の野望を打ち破った、ヒーローなんだ。
……これくらいの悪さは、きっと許してもらえるだろう。
368 名前:28号[] 投稿日:2006/10/15(日) 07:24:19.47 ID:SiRlZJNt0
…徐々に空が暗くなって、モノレールは街へと入った。
ビルの隙間から、大きな満月が見える。
「………」
……あの日、あのバルコニーで見た満月とそっくりな、
キレイな月だった。
375 名前:28号[] 投稿日:2006/10/15(日) 07:46:14.67 ID:SiRlZJNt0
……多分、今逃げ出そうと思えば、あのライトからも逃げ出せる。外に出て、本当の自由を手に入れることもできるだろう。
…でも、そうはしなかった。それは一つにロールさんのためでもあったけど……でも、それだけじゃない。
……ライトを殺したいから、というわけでもない……
……それは……
……それはきっと……俺自身が、変えていかなくちゃいけないと思ったからだ。
……そう。変えていかなくちゃならない。 ……あの、ジジイを。そして………
………この、世界を………
378 名前:28号[] 投稿日:2006/10/15(日) 07:49:59.02 ID:SiRlZJNt0
……これでとりあえずは俺……
いや、ロックマン・タイプ4、№28としての戦いは終わりだ。
……でもこの話は…ほんの序章にしかすぎない。
そう。これからも続いていく、「俺」自身の…
……長い長い戦いの歴史の……
380 名前:28号[] 投稿日:2006/10/15(日) 07:51:58.23 ID:SiRlZJNt0
……終着駅……
俺がモノレールからばれないようにこっそりと飛び降りると、目の前にはロールさんが立っていた。
「……!……」
「……ロール…さん……」
「……28号……」
「……ありがとう……」
「……え……?」
…そう一言だけつぶやいて、ロールさんは俺の胸の中に飛び込んできた。
終わり