VIPロックマンまとめ

ロックマンX -1-

最終更新:

匿名ユーザー

- view
だれでも歓迎! 編集
11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2006/10/06(金) 00:37:51.15 ID:QKVImtFz0
ロックマンX

大都市に良くある高架の高速道路。
大多数の市民が移動するために使われるこの道路が、火花と爆音に彩られる。

赤い乗用車が大量の銃弾によって蜂の巣にされ、半瞬遅れて爆散。
貨物を運送するトラックの運転手が、何者かによって引きずりだされ、傍らのスクールバスが突然飛来したミサイルによって吹き飛ばされる。

丸い月が、空に浮かぶ夜。
よくある場所に、特異な光景。

地獄の縮図が、高速道路を闊歩する人影達によって描かれる。
人影達の名は――レプリロイド。
人間ではない。
死神でもない。
悪魔でもない。
人間によって、作業用、戦闘用、愛玩用、様々な願望と思惑によって作られた、人間を超えた基本性能を持つロボット。

そのレプリロイドが暴走した存在を、人々はイレギュラーと呼ぶ。
人の手に作られた、異端に堕ちた鋼の身が、人間達に向かって牙を向いた。

「……酷い」
その光景を怯まず、臆さず、悲哀に満ちた瞳で見つめる青い影が居る。
『代理隊長。暴走したレプリロイドの数はなおも増え、事態は最悪の一途を辿っています』
人影の胸から、電子音で構成された声。

『市民の被害は不明です』
「一体、どうしてこんな事に? こんな大量にレプリロイドが暴走するなんて」
『原因は不明です』
人影の詰問に、電子音声の主は淡々と答えた。



12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2006/10/06(金) 00:40:27.68 ID:QKVImtFz0

「こちらの増援は? 救助の部隊はどうなっているんでしょう?」
『増援は未定。救助班は、ハチ型ヘリコプターによって全て撃墜されました。これの増援も未定です』
機械仕掛けのオペレーターは、抑揚無く最悪の事態を伝えた。

『やはり、君がやるしかないようだな』
無線機から流れる電子音が高い少女のものになる。

「……ライト博士」
人影は声の主の名を呼んだ。
『原因追求は後にしよう。今現在、13番高速道路は未曽有の事態に陥っている』
声の主――Dr.ライトは冷静に言葉を続ける。

『この事態を打開するの者は、1人しか居ないと私は考えている』
「…………はい」
『レプリロイドで有りながら、人間に近い心を持つ。優しきながら、岩のような強固な身体と、全てを粉砕するバスター』
人影が自分の右腕に視線を落とす。
人間の腕を模された青き右腕は、ギミック音と共に砲台となった。

「人間を、人類を頼むぞ」
ライトは叫ぶ。
「行け、ロックマンX!!」

『ライト博士による出撃許可。イレギュラーハンター、エックス出撃して下さい』


「了解!!」



14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2006/10/06(金) 00:42:29.21 ID:QKVImtFz0

炎が散りばめられ、余す所なく陥没する道路をエックスが駆ける。
疾走しながら、少年は辺りを見回すが、生存してる人間は居ない。
暴走しているレプリロイドの姿も無いところから、彼等は前進しながら破壊活動を行っているようだ。

四散した自動車を、落胆と憐憫を込めた視線をやるエックスの背に、爆音にも似たローター音が降りかかった。
「良かった……早い。――救助部隊だ!!」
頭を暗い空に向け、少年の顔が喜色に彩どる。

白でペイントされた救助ヘリが、エックスの頭上に浮かんでいた。
「ボクに続いて、生存者の救助を…………っ!?」
パイロットに向けて、無線を送るエックスの端正な顔が歪む。
救助ヘリの更に頭上を覆う形で、ホバリングする影をみとめたからだ。

『軍事用ハチ型ヘリコプターを確認』
オペレーターの声を最後まで聞かず、エックスは横へ跳んだ。
ハチ型ヘリは、真下に居る救助ヘリを邪魔だとばかりに体当たりし、接触した状態で前腕部に武装したバルカンを発射した。
真っ白なボディに、小気味良い音が弾け、連続して火花が散る。
回転翼は捥がれ、ゆらゆらと揺れる救助ヘリは黒煙を上げた。

「やめてください!!」
エックスの怒声も虚しく、穴だらけになったヘリは、出鱈目に滑空しながら高架下へと墜落。
一瞬、夜空がぱっと明るくなり、半瞬後に爆炎を上げて散開した。

「………くっ!」
引き締められた口元から、憤りが吹き出る。
怒れるエックスを頭上から睥睨しているハチ型ヘリは、次の目標を少年にせず、下腹部に設置されたハッチを開放した。

開放され、降り落ちてくる影。
紅い単眼を顔に持つ、数十の人型レプリロイドだ。

彼らの着地を待たず、エックスはバスターを数度放つ。
いくつかのレプリロイドは空中で爆発したが、多数がエックスを囲むように着地した。



18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2006/10/06(金) 00:45:02.87 ID:QKVImtFz0

「あなた達は、自分が何をしているのか解っているんですか!?」
自分の周りを囲む、人型にエックスは叫んだ。
しかし、レプリロイド達はその声を無視し、じりじりと歩み寄って方陣を形成する。

「ニクムベキ……ニンゲンに……」
レプリロイドの一人が呟く。
「オレタチを……ジユウに…………」
その右手側のレプリロイドも同調して、顎にあるスピーカーから言葉を吐き出した。
「オレタチは……」
囲む全ての人型が唱和する。

「ニンゲンのドウグじゃナイ!!!!」
――そして、掴み掛かった。

『言語中枢に問題があります』
エックスは、敵と仲間、双方の声を聞きながら、背後に迫るレプリロイドの頭部を打ち抜いた。
頭部を失った人型が地面に落ちるより先に、左から迫る人影にチャージ無しのバスターを浴びせる。

仲間がやられても気にしない愚鈍なレプリロイドは、仲間の死体を踏み越え、飛び掛る。
エックスは舌打ちしながら、数度バスターを放ち、暴走する人型をスクラップにかえた。

武装もしていないレプリロイド達は、一太刀も浴びせることなく地に沈む。
背後から急襲するレプリロイドが、鉄色の胸部に数個の風穴を空けられ、彼の死を最後に戦闘は終了した。

「このレプリロイド、本当は土木用のなのに……」
『暴走する原因は不明のままです』
『感傷に浸る暇は無い。エックス、直ぐに破壊活動をしているイレギュラーを停止させてくれ』

今しがた戦闘をした数キロ先の高速道路に、轟音が響く。
「……了解」



20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2006/10/06(金) 00:48:43.45 ID:QKVImtFz0

エックスは疾走を再開し、現場へと向かった。
この辺りは複雑に入り組んでおり、二車線の道路が何重にも引かれ、一種の迷路となっている。
その迷路に端々で、非武装のイレギュラー等が陶然と立っていた。

「また……」
エックスは煮えきれぬ思いを胸に感じながら、レプリロイドがこちらに迫る前に射殺する。
上下左右に銃撃し続け、8匹目を処分したエックスの顔が黒に曇る。

『ハチ型戦闘ヘリを確認』
闇の空から爆音。ローター音と死を撒き散らす、大型ヘリが真正面に現れた。

「救助ヘリの償いはしてもらいます!!」
エックスが駆ける。
その姿に多数のミサイルが向かった。ヘリに備えられた武装の一つ、ミサイルポッドである。

煙の尾を引きながら迫るミサイルに怯えず、エックスは走りながら銃撃。
見事ミサイルを打ち抜き、目標へ届く前に爆発した。

ヘリとエックスの距離が狭まる。
ヘリは気にせず再度ミサイルを発射し、加えて二門のバルカンで弾幕を張った。
弧を描くミサイルはまたもや撃墜され、嵐のような弾幕は走り続けるエックスの身体に虚しく弾けるのみ。

更に距離がせまる。
分が悪いと悟ったのか、ヘリが急上昇しようとしたが、もう遅い。
ヘリの攻防を備えた銃撃に打ち勝ったエックスの青いボディが、ハチ型ヘリのコックピットまで飛び上がった。

「落ちろ!!」
エックスのバスターが輝く。
右腕の周囲に光が生じ、同時に収束する。
少年の武装に備わった機能――太陽エネルギーを溜め、膨大な威力の砲弾を撃ち放つ――チャージショットだ。



21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2006/10/06(金) 00:50:05.86 ID:QKVImtFz0

巨大な光弾はハッチ部分に直撃し、パイロットを操縦席ごと粉砕した。
操作を失うヘリは、自らが斃した救助ヘリと同じく、錐揉みしながら落下する。

巨体は高架にぶつかり爆発。そして、エックスが道路に着地した。

『お見事。そうでなくてはな』
ライト博士の誇らしげな声が、エックスを賞賛する。

ヘリを撃墜したエックスは、現場へ急ぐ。
数分ほど駆け抜けると、巨大な駐車場が視界にひらけた。

「……ここか」
『イレギュラー集団を確認』
駐車場の中央に、多数の人影が集まっている。

土木用などの非武装レプリロイドは、駆けつけたエックスを見ず、全て天空へ頭部に向けていた。

その行為に疑問を持つエックスに、答えは直ぐに来た。
少年の上空から。

『なんて事だ……』
こわばるライトの声が、胸から聞こえるが、エックスの耳に届いたかは解らない。

『第7空挺旗艦デスログマーを確認』
鳥の要塞が舞い降りた。

「ヒャーッハッハァッ!!」
呆然とするエックスの前に、狂声を放つ影が現れる。

デスログマーから飛び出した、紫のカラーの装甲。右肩に砲台を乗せた、異形の存在。
「……ヴァヴァ!?」
『元イレギュラーハンター第17特殊部隊所属、VAVAを確認』



23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2006/10/06(金) 00:53:24.69 ID:QKVImtFz0

エックスの沈痛な声に、パープルカラーのボディを着込む、ショートカットの少女の顔が喜悦に歪む。
「よう、エックス」
ニタニタと笑みを浮かべ、ヴァヴァは少年の身体を眺めた。

「元気にしてたかよ? え?」
人懐っこい声をかけながらも、狂気溢れる顔を貼り付けた少女は、エックスの周囲をくるくると回り始めた。

「こんなとこで再開するとはなぁ。ラッキーだよ。ん? あぁ、ラッキーか」
『言語中枢に問題があります』

「ヴァヴァ……なんでここに?」
エックスは掠れる声を上げ、任務中ということも忘れ、その場で立ち尽くす。
無線から声が聞こえるが、少年は完全に聞いていなかった。

「幽閉されてた時は、寂しかったぜぇ。砂糖みたいに甘ちゃんの、可愛いお前に会えなかったし――」
ヴァヴァが回るのを止める。

「――殺しができなかったしなぁ!!」
突然、少女の右肩が光り、砲門がデスログマーの到着を待っていたレプリロイド達に向けられる。
連続する発射音。エネルギーを弾丸にしたマシンガンがイギュラーを蹂躙した。
ズタズタに引き裂かれるレプリロイド達。仲間に攻撃されてるにも関わらず、機能停止するまで、黙したままエネルギーの洗礼を受けた。

「スッキリしたな。やったね」
破片だけの存在と化した集団から興味を無くし、ヴァヴァはエックスに向きなおる。

「さて、次は……」
「どうして!?」
ヴァヴァの興奮に満ちた声を、少年の張りあげる叫びが打ち消した。

「どうして? いったい、どうして!? ヴァヴァが!!」
きょとんとするヴァヴァ。

「んん?」
「一緒に戦ってきたヴァヴァが……何で。友達のはずのヴァヴァが……どうして」



30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2006/10/06(金) 00:56:46.92 ID:QKVImtFz0

「あぁ」
ヴァヴァが合点がいったような声を上げ、頷く。

「お前、オレが『壊れた』事を知らないんだな。そうするとオレが本部に監禁された事もしらないんだろ? でも、なんでかな?」

「壊れた? 監禁された? 何を……何を言ってるんだ!?」
エックスは顔に手を当て、突然の同僚の狂った近況報告に混乱する。

「オレはなぁ、殺しが好きで好きでたまらなくなったんだよ」
ニタリとするヴァヴァ。

「理由はしらねぇ。原因は何かな? どうしてだろうなぁ。解らないねぇ」
侮蔑にもとれる、ヴァヴァの言葉。そして、ますます混乱するエックス。

「どうでも良いさ、そんな事。好きになったものは仕方が無い。壊れた後、オレはすき放題やったさ」
「ヴァヴァ……」

「だが、本部はオレのささやかな趣味を容認しなかった。それで汚い牢獄へ」
摩天楼が並ぶ都市に、遠い目を向けヴァッヴァが語る。

「そんでもって、ある計画が、あるある奴に聞いた。オレはそれに乗り、素敵な今の現状さ」
「計画?」
「レプリロイドのための世界を創造するだとよ。今、流行の新世界ってやつさ」
ヴァヴァは丁寧にも答えを与えた。

「オレは、それにはどうでも良い。ノータッチだ。だが、人間や反抗分子は皆殺しにして良いと言われてなぁ」

今まで以上の、狂気の笑みを浮かべ、狂える少女――ヴァヴァが言う。
「乗るしかないだろうぅ? ハッハッハッ……ヒャーハッハッハッハッハッハッ!!!」
「やめて、ヴァヴァ」

エックスが耐え切れなくなり、顔をヴァヴァから逸らす。
ヴァヴァも耐え切れなくなり、エックスを見つめながら笑いを上げ続ける。



32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2006/10/06(金) 00:59:06.97 ID:QKVImtFz0

「うん。オレにしてはよく喋った。疲れたし、お話はおしまい」
急に、ヴァヴァは笑いを止めた。
右腕が上がり、自身の後頭部にかけられる。

「次は殺し合いだろ? きっと楽しいだろうなぁ、お前とは」
跳ね下がるマスク。これもまたパープルカラーのヘッドギアが、ヴァヴァの少女の顔を覆った。

「死にな、エックス」
元同僚であり、少年の友人であるはずのヴァヴァは、少女特有の愛らしい声色で死の宣告を吐いた。

「ヴァヴァ!?」
仲間との戦闘に青ざめるエックスに、飛び上がったヴァヴァの膝が打ち込まれた。
腹部を押さえるエックスの側頭部に、鋭い回し蹴りが迫る。
回避することも忘れ、エックスはそれを受け、コマのように回転しながら吹き飛んだ。

「あれれ? おかしいな、綺麗に決まってしまった。これじゃイジメじゃないか。これは詰まらない」
ヴァヴァは不思議そうに首を傾げ、倒れるエックスに踵を落とした。

「ぐっ……ヴァヴァ……」
痛みに顔しかめるエックスに、苛烈な追い討ち。
ヴァヴァの爪先が、エックスの顎を蹴り飛ばし、エックスが空を舞う。

「こらこら、いい加減にしてよ。これじゃ、さっきのゴミと変わらない。ヴァヴァは失望しました」
落下するエックスの身体が地面に付く寸前に、ヴァヴァは青いボディに向け、彼女の武装である砲台を放つ。
エネルギー弾によって、エックスの身体は加速し、数メートル先の道路にやっと着地した。

「優しいオレは、お前に選択肢をやろう。二つな」
「き、聞こうかな……」
エックスは息も絶え絶えに、しかし少しだけ微笑んで答えた。

ヴァヴァも頷き、指を二本立てた。
「一つは、オレと戦って死ぬ。グレイト! もう一つは、オレと戦わず嬲られ死ぬ。これはあんまりお勧めしないかもな」



38 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2006/10/06(金) 01:02:36.90 ID:QKVImtFz0

聞き届けたエックスも、震える指を一本立て、ヴァヴァに提案した。
「三つ目に、ボクとここで仲直りして、一緒に……がっ!?」
エックスの顔面に素早く蹴りが入り、発言を阻害する。

「ごめんね。それは」
ヴァヴァは、意外にも優しげな声を出し、
「つまらない!!!!」
吼えながら、右肩のマシンガンを放った。

倒れ伏すエックスが、解き放たれたエネルギーによって踊る。ヴァヴァが好む死の舞踏だ。
数秒間続く掃射は、余すことなくエックスに突き刺さり、ブルーの装甲を引き剥がす。

『エックス!? エックス!? 応答しろ、ロック!!』
『隊長。装甲値が危険です。退避を』
悲痛と危険を知らせる報告の無線は、着弾音によって掻き消され、エックスの耳に届かない。

「なんとつまらない。これは非常につまらない」
ヴァヴァは、本当に失望したように首を振った。

「オレのライドアーマーを投下しろ」
少女の薄い胸付近に装備された無線を使用して、上空の達観する要塞戦艦に命令した。

戦艦の巨大なハッチが直ぐに開き、落ちる大きな物量を持つ物体が、ヴァヴァの付近へ。
その影が、駐車場に乱立する照明によって露わになる。

「オレのお気に入りさ。知ってるだろ?」

土木作業用の二足型車両――ライドアーマー。
もともと兵器では無いが、二本のアームによる腕力は、ヴァヴァのサディスティックな喜びを満足させるには十分な玩具だ。

「失望させた礼と、お仕置きだ。良い子だが悪い子のお前を、地獄に送ってやろう」



39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2006/10/06(金) 01:04:17.82 ID:QKVImtFz0

甲高い駆動音を放ち、ライドアーマーの野太い両腕がエックスを掴みあげる。

「さようなら、ね。エックス……もし、もし壊れてなかったらの話だけど、オレは………」
けたたましい音に遮られ、少年はヴァヴァの独白を最後まで聞き取れない。
絶望を顔に滲ませたエックスは、そんな事にも気づかず、段々と締められるアームによる痛みさえも感じなかった。

「ヴァヴァ……」
『エックス!!』
『先刻からの報告を再度報告。装甲値が危険です。退避を』

呼応し、突き進んだのは何だったのか。
槍のように鋭いエネルギー弾が、ヴァヴァのライドアーマーの右腕を吹き飛ばした。
「お前ぇ……」
突然の横槍に、ヴァヴァが静かな怒りの声を漏らした。

「悪いな。楽しそうだったが、見ていられなかったんでな」
猫の耳のように飛び出したメット。全身が真紅に染まる乱入者。整えられた金色の長髪を持つ少女。

「特Aが何のようだぁ!? みれば解るだろ。オレは、こいつと楽しくやってるんだよ! 何のつもりだ!!」
ヴァヴァはたたみかけるように、沸騰する不満をぶつけた。

「――えぇ!? ゼロォ!!!!!」
『特A級イレギュラーハンター、ZEROを確認』
『ゼロ!! た、助かった……』

「よう、エックス。無事か?」
三者に名前を呼ばれた少女は、シニカルな笑みを満身創痍のエックスに投げかけた。

「遊びの時間は終わりだぜ、ヴァヴァ。今度は俺が相手だ」
「ゴミ風情が……調子付くなよ」
ゼロは打って変わり、ヴァヴァに鋭い視線を浴びせ、バスターの銃口を向けた。
対するヴァヴァは舌打ちし、残ったアームを振り上げる。



43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2006/10/06(金) 01:06:55.82 ID:QKVImtFz0

「だが……」
振り上げたが、そこでヴァヴァは呟く。

「オレは、ここまでは許可されていない。第一……時間切れだ」
「あぁ、そうかい。なら消えな。あのデカイのを引き下げて、今すぐに」
バスターではない腕が、夜空をバックにした戦艦を指す。

「だが、今回はやむをえなく退くだけだ。次はお前も殺す。必ず、絶対に、解体してやる」
『言語中枢に問題があります』
凝縮した怨嗟の声にゼロは鼻を鳴らし、取り合おうとはしない。

「ヴァヴァ……ゼロ?」
意識を取り戻したのか、エックスが苦痛に呻きながら起き上がろうとする。
あわててゼロがその身を支え、ヴァヴァに向き直った。

「やぁ、エックス。次にオレ達が会う日は、記念日になる。何の日か解るか?」
「下衆が……」
真意を汲み取ったゼロが、自分の腕に抱かれる少年の代わりに答える。

「いかないで、ヴァヴァ。ボク達は……」
「再開の日が、お前の死刑執行の日になる。そうすれば、お前のAIチップはオレの宝物になる。ずぅぅぅっと。そう、ずっと一緒だ」

デスログマーが地表近くまで降下し、少女と巨体に向けハッチが開く。
ライドアーマーが飛び上がり、ヴァヴァは要塞へと格納された。

「ヴァヴァ……」
「エックス? おい、エックス!? マジかよ……」
『エックス!? まずい、ロック!? ロック!?」
ハッチが閉まる寸前まで空に響いたヴァヴァの哄笑と、ゼロとライトの焦る声に包まれ、エックスは再度意識を失った。



46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2006/10/06(金) 01:10:34.77 ID:QKVImtFz0

「お前、良い奴だな。エックス」
「君はその甘さによってB級だが……私はそんな君の甘さは嫌いでは無いよ」
「……どうも……エックス」
「ロック、ありがとう。本当にありがとう」
「礼を言うぜ、エックス」
「感謝」
「エックス」「エックス」「エックス」「エックス」「エックス」「エックス」「エックス」「エックス」
「エックス」「エックス」「エックス」「エックス」「エックス」「エックス」「エックス」「エックス」
「エックス」「エックス」「エックス」「エックス」「エックス」「エックス」「エックス」「エックス」

「エックス。オレはお前が好きだぜ」

「だから」

「死ね」

「エックス!!!」
誰の声だったのか。
エックスは跳ね起きて、悪夢から覚醒した。

「エックス!? 良かった、もう目覚めないかと……」
両目に涙を溜めたライトの姿が、エックスのベッドに立っていた。
「博士……」
声の正体はライト博士だったのか。そんなことを考えながら、エックスはベッドから這い出る。

「どのぐらい寝てたんでしょう……?」
辺りを見回しながら、エックスが尋ねる。
飾り気のない白い壁と、必要最低限だけの家具が視界に入った。

「ざっと、半日ぐらいかな。一時は危ないところだったんだぞ。いや良かった、本当に」
見回し、ここが自分の寝室だと解ったと同時に、ライトが答えた。



50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2006/10/06(金) 01:17:19.88 ID:QKVImtFz0

「……半日」
ライトの言葉を吟味しながら、考え込むエックス。
「イレギュラーは!? ヴァヴァは!? いったい、何がどうなってるんですか!?」
そして、己の考え付きに、息を呑んだ瞬間にライトの両肩を掴み激しく詰問した。

「お、落ち着けエックス」
「落ち着いていられません!! なんとかしなきゃ……作戦というのはどうなってるんです!?」
肩を激しく揺らし、普段のエックスらしくなく声を荒げる。

「落ち着け……エックス」
逆にライトはなだめるように声を静めた。
両腕を、少女の小さな肩から離すエックス。


「レプリロイドのための世界だな……。最悪な状況だよ。これを見てくれ」
ライトが近くにある端末を操作する。寝室の天井からスクリーンがせり出し、映像が投射された。



52 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[] 投稿日:2006/10/06(金) 01:24:17.35 ID:QKVImtFz0

<第9レンジャー部隊>スティング・カメリーオ
<元第6艦隊所属>ランチャー・オクトパルド
<第17部隊所属特A級ハンター>スパーク・マンドリラー
<第17部隊所属特A級ハンター>ブーメル・クワンガー
<元第13極地部隊所属特A級ハンター>アイシー・ペンギーゴ
<元第4陸上部隊隊長>バーニン・ナウマンダー
<第7空挺部隊元隊長>ストーム・イーグリード
<第8機甲部隊元隊長>アーマー・アルマージ

ハンター着任当時の証明写真と共に、様々な顔が現れる。
全て、エックスと同じ職場のレプリロイドだ。面識がある者、友人、恩人、それらがスクリーンに描かれた。

「これは?」
エックスが、怪訝な顔してライトに振り返る。

「まさか、今回の事件の被害者ですか!?」
「いいや………」
驚愕の顔と反対に、苦渋の顔したライトが否定する。
白衣の少女は、これから最悪の事態をエックスに告げなければならない。
――目前の少年にとって最悪な。

「…………この事件を引き起こしているレプリロイドだ」
「……………………は?」
「本部は彼等をイレギュラーと認定した。彼女等は、君の――」
「博士?」

「――敵だよ」
「う、ソ………で…す、ヨね」

「残念ながら」

――排除すべきイレギュラー、残り8体。

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

目安箱バナー