VIPロックマンまとめ

Short Stories X -6-

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パンドラスイッチ

「ったく、エックスの奴どこに行ったんだ」
「真面目なあの彼が家に帰らないとはな……嫌な報告だ」
肌寒い早朝。
ガラス越しに見える木々に止まった小鳥が、優しい歌を紡ぐ。

ハンター本部の廊下を二人の人物が揃って歩く。
猫の耳を不機嫌そうに動かすゼロと、その上司であるDr.ケインだ。

「ライト博士の研究所に行ったまでは、足取りを掴めてるんだ」
少女が両腕を背中で組みながら、報告する。

「他のハンターには聞いたか?」
ケインが顔は向けず、横目だけでゼロの顔を見た。
猫耳の少女が頷く。

「あぁ、全員知らないそうだ。ペンギーゴの奴なんか、家で泣いてるぜ」
痛ましげな顔をするの少女に対して、老人はそうかと呟いて、思案する。
少年は何処に行ったのだろうか。

「あ、イーグリードには聞いてないな。あいつから連絡が取れないんだよ」
「――捨て置くんだ」
思い出し、ゼロは首を傾げる。
ケインは即答し、話を切り捨てた。



478 :パンドラスイッチ :佐賀暦2006年,2006/10/24(佐賀県警察) 01:04:03.55 ID:nscwGFmC0

「あんた、ほんとアイツが嫌いだな…………」
上司の態度に、自分にも解らなくもない思いによって苦笑する。

「好きになるレプリロイドか人間がいたら、是非私の前に」
「はははははは。解ったよ」
冗談なのか、皮肉なのか、それとも本心か。とりあえず、話の人物の親友である彼女は笑っておいた。

「ケインはかちぇー!!」
「ふわーん!!」
下らない言葉の応酬をしている二人に、妙に甲高い声がかかった。

迫り来る小さな二つの影に、凍りつくケインとゼロ。老体の方は、貧血を起こしたかの様な顔をする。

「たいへんでちゅ!!」
「ふわーん!!」
マックとVAVA――身長を大幅に減少させた彼女等が現れた。

「神よ……」
祈る二人の足元しかない、小柄なレプリロイド。

少女から、幼い顔立ちに成ったマックがケインを見上げる。
ヴァヴァは片手を目尻に、大声をあげ泣き叫んだ。

「ケインはかちぇ!! イーグリードが、中庭で暴れてるんでちゅ!!」
握った両手を胸に、漆黒のボディを装着した幼き少女が、強張る表情の老人に進言する。



480 :パンドラスイッチ :佐賀暦2006年,2006/10/24(佐賀県警察) 01:05:32.94 ID:nscwGFmC0
「………………マック……なのか? 一体何が……」
ケインは報告よりも先に、擦れる声で疑問をぶつけた。

「そうでしゅよぉ!! そんな事はいいから、早くきてくだちゃぁい!!」
「ふわーん!!」
身長差から、致し方なく足を引っ張るマックに、泣き続けるヴァヴァ。

「今なら……空を……飛べる……」
「やめれ」
よろよろと窓に近づく上司をゼロが冷静に止めた。



「ぴょおおおおおお!!!!」
ハンター本部を丸く切り取る形で設計された中庭。
職員の憩い場は、一匹のイレギュラーの暴走で混沌に叩き込まれていた。

興奮に満ち溢れた鷲型のレプリロイドが、バスターの腕を振り回している。

「不不不。これはこれは、まじゅい事になったものだ」
「転落じんちぇい、ここに極まる……」
「最悪なのでちゅよ!!」

混沌の庭園で、半分以下になった身長のハンター達。


482 :パンドラスイッチ :佐賀暦2006年,2006/10/24(佐賀県警察) 01:07:40.49 ID:nscwGFmC0

「やっぱり、てんちょくしよう」
疲れたように頭を沈ませる、ピンクの髪を生やしたマンドリラー。

「ふちぎな装置だ。衣服まで、ちいちゃくするのか」
神経質気味に銀髪を弄るクワンガー。

「およめに行けないのでちゅよ。――死んじゃいなちゃい、ばかドリ!!」
小さな両手を振り上げ、暴れるレプリロイドを罵倒するオクトパルド。
しかし、その罵倒も常よりかは数段に可愛げがある。

「イーグリード!!」
イレギュラーの名を誰かが叫び、暴走に待ったがかかる。
赤きハンター――ゼロが中庭に舞い降りる。
バスターを親友である筈の者に向けながら、辺りを伺った。

厳しい顔をしたゼロに、変わり果てた同僚達が待っていた。

「ふーむ、たちゅかったのか」
冷たさを感じさせた顔が、幼いものになり温かみが滲む。
そんな顔を持つクワンガーが、顎をさすりながら呟いた。

「どーちぇ、わたちなんて……」
マンドリラーは膝を抱え座り込んでいる。


486 :パンドラスイッチ :佐賀暦2006年,2006/10/24(佐賀県警察) 01:09:13.12 ID:nscwGFmC0

「ゼロなのでちゅ!! はやく、たちゅけるのでちゅよ!!」
オクトパルドはキーキーと声を張り上げた。

「ふー……今なら、空が飛べるな」
猫の耳を垂らし、ゼロは空を仰いだ。
遅れて、ケインと二人の小さなハンターが後ろに付く。

「やぁ、ゼロじゃないか。ご機嫌いかがかな?」
イーグリードが少女の存在に気付き、血走る瞳を向けた。
その威圧は、今まで戦ってきたどのイレギュラーよりも強い。

「お前、一体何をした!?」
恐れを振り払い、ゼロは叫ぶ。
その後ろのケインが、イーグリードに握られた円筒の物体を見止めた。

「素晴らしい眺めだろ? 粒揃いの〝美幼女〟が、今私の目の前に!!」
ゼロの声が聞こえていないのか、両手を広げ、中庭の光景を披露するイレギュラー。

「私は神から授かれし、大いなる遺産を手に入れたのだ!!」
悦に入り、彼女曰くの〝神器〟を掲げる。

「こいつを押せば周囲のレプリロイドが………あぁ!!」
言葉を途中で止め、イーグリードは自身の身体を抱きしめ、振るわせた。
中庭のハンター達は気分を朝から害する。


487 :パンドラスイッチ :佐賀暦2006年,2006/10/24(佐賀県警察) 01:11:47.04 ID:nscwGFmC0

「は?」
ゼロが説明してくれとばかりに、ケインに振り返った。

「旧世代の遺産だな。ありえる話だ」
神妙に頷くケイン。

「恐らくあのスイッチ内に、退行作用のあるナノマシンが含まれているのだろう」
皺の寄った指で、銀の円筒を指し示し説明する。

「範囲は知らないが、霧状に分散され、対象をあの様な形に変換」
「誰だよ、そんなの作ったのは……」
説明を聞くゼロが呆れる。

「使う本人が対象者に選ばれないのと、服まで小さくする理論は不明――恐れ入る」
顔をしかめ、ケインは皮肉の賞賛をこの場に居ない設計者に与えた。

「かいけちゅ策はあるのでちゅかー?」
いつの間にか傍に来たオクトパルドが問う。

「――不明だ」
即答された。


490 :パンドラスイッチ :佐賀暦2006年,2006/10/24(佐賀県警察) 01:13:43.06 ID:nscwGFmC0
「なんでちゅと!?」
「まっちゃく……」
「ふわーん!!」
幼女のオクトパルドは悲鳴を上げ、クワンガーは嘆息して空を見上げた。
またも泣き出すヴァヴァ。
マンドリラーだけが我関せずと、座り込んでいる。

「解決など要らない。私は幼女だけの世界を作り上げるのだからな!」
馬鹿にする笑みを浮かべ、イーグリードがステップを踏む。
主人の興奮に呼応し、両翼が羽ばたいた。

「んな事させるかよ!!」
「わるいが、お前をほかくちゅる!!」
ゼロとマックが叫び、各々武器を構えた。
マックはいつもの注連縄では無く、両手で縄跳びの紐を胸の前で引っ張る。

「さーて、愛しきゼロも代えてやろうか」
「ケイン博士、他のハンターを呼んでくれ! オレ達はこいつを何とかする!」
ケインがゼロの言葉に頷き、後退。
そして、ハンターの二人はイーグリードに疾走する。

「さらばだ、大人の肉体!!」
皆の前で、握りこまれようとする悪魔の機械。


491 :パンドラスイッチ :佐賀暦2006年,2006/10/24(佐賀県警察) 01:15:18.84 ID:nscwGFmC0
「〝スイッチ〟を押させるなーッ!!」
早朝の中庭で響き渡る少女の声。
迫る危機に、小さなハンター達は目を見張る。

「いいや! 限界だ――押すね!」
――狂気の声。


「ちくちょう! オレもかよ……」
これを作った者と同じく、どうやら神も意地が悪いらしい。

「ヒャーッハッハッハッハッハッハッハッ!!」
勝利の奇声。

「おわりまちたのでちゅよ………」
青ざめるオクトパルド。

「まいっちゃね。不不不」
どこか楽しげなクワンガー。

「もういいんだ、わたちなんて……」
沈むマンドリラー。

「ケインはかちぇ、ごめんなちゃい」
助けを呼びに行ったケインの方向に謝るマック


493 :パンドラスイッチ :佐賀暦2006年,2006/10/24(佐賀県警察) 01:16:49.86 ID:nscwGFmC0

「ハンターを総動員させ、平和を取り戻す手か…………」
地響きと共に現れた黒い巨体が中庭を囲む。
ハンターが所有する戦車隊が迫り来た。

「クハハハハハハハハハ!! だが、ケイン!! 私がジョーカーだ!!」
そんな光景にも、〝最強〟のイレギュラーは臆さない。





「最後に笑うのは、このイーグリードよ!! ぴょおおおおおお!!」
「それ、オレの台詞だよぉ! ふわーん!!」


海は広いな、大きいな


「えっと……え、え、エックス!!」
「はい?」
「おかえり……なさい……」
 珍妙な言葉に、エックスの口がポカンと開く。
 彼女は三つ指をついて、土下座していた。

「ご飯と……お風呂……どっちが……いい……?」
「あの、何やってるの?」
「ちなみに……お風呂は……もれなく……私がセット……」
「ええっ!?」
 お構い無しと近寄ると、大きな目をパチパチさせて尋ねる。
 吐息がかかる程の距離から、潤んだ瞳で見上げてくるのは、小柄な自称・新妻ではなく……
 ……天然少女・カメリーオだった。

     ※

「貨物船の護衛……ですか?」
 いぶかしげに尋ねるエックスに、ケイン博士は重々しく頷いた。

694 :以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします :佐賀暦2006年,2006/10/24(佐賀県警察) 20:23:02.43 ID:3IC2Nna90
「最近、メカニロイドを悪用する海賊が出るそうでな。
 本来は我らの仕事ではないが、いちおう同行してくれ」

――つまり、悪用されている、何の罪も無いメカたちを壊せと?

 エックスは口をヘの字に結ぶ。普段、会議で賑わうハンター本部の会議室に訪れる、僅かな静寂。
 しかし、それも、彼の口からYESという答えが出るまでだった。

     ※

 無骨な貨物船とは言え、そこから眺められる景色に変わりは無い。
 特に、蒼穹の中を、真白な渡り鳥が群れをなして飛んで行く様は、とても美しい。
 その美しい景色の中に、奇妙な少女がいた。

「いい天気ですねー」
「あの、こんにちは、オクトパルドさん……」
 学生用の水着に、軍用のコートというミスマッチ。
 それを物ともせず、彼女は甲板の縁にもたれ、優雅に微笑む。

「エックスさん、あなたも潮風を浴びにきたのですか?」
「ええ……今回の任務、よろしくお願いします」
「任せるのです。海は私の故郷。文字通り、大船に乗ったつもりでいるのですよ?」
 少女は、まるで自分が船長であるかのように、鷹揚に頷く。
 対するエックスは、表情から固さが抜けない。

697 :以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします :佐賀暦2006年,2006/10/24(佐賀県警察) 20:24:02.65 ID:3IC2Nna90
「あの、ところで……」
「エックスさん?」
 エックスが話題を変えようとすると、不意にオクトが語気を荒げた。

「さっきから私の後ろを見ているけど、何か見えるんデスか?」
「見えてません! 見えてません! 吊るされたカメリーオなんか、見えてません!」
 カメリーオという単語に反応して、オクトの目に鈍い輝きが宿る。

「まったく……なぜ、あんなのが居るんです。海洋生物を代表しての抗議モノですよ?」
「それは、狭い船室での戦闘をシミュレートした場合、針による精密射撃と柔軟性――」
 必死の笑顔で微笑むエックスの首に、オクトの触手が絡みついた。

「……文句あんのか?」
「ひぃっ!?」
「女は不吉、吊るして鮫の餌ってのが船乗りの掟なんだよ。
なんなら、お前も吊るしてやろうか……この女顔!!」
 エックスは涙をこらえ『Sir, no sir!!』と敬礼した。

     ※

 航海は静かに進む。
 オクトは時折、操舵室で計器を眺めるものの、その他は黙って海を眺めていた。
 過激な発言が目立つ彼女だが、本来はおとなしくて海が好きなだけである。

――カメリーオに猿轡を噛ませるだけで、こんなにも平和なのか。


698 :以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします :佐賀暦2006年,2006/10/24(佐賀県警察) 20:24:37.05 ID:3IC2Nna90
 潮風になびくオクトの後れ毛を見つめ、エックスが感慨にふけっていたとき。
 海上に黒い影が見えた。斑に並んだそれは、みるみる距離を詰めてくる。
 それがウォータージェットに乗った海賊たちだと気づくのに、そう時間はかからなかった。

「海賊だ! 海賊が来……」
「ハッ!! 来やがったな、海と美学を汚す豚ども!!
片っ端から焼き豚にして、同胞の餌にしてやるのDEATHよ!!」
「…………」
 口の端に残忍な笑みを浮かべ、嬉々としてミサイルを準備するオクト。
 エックスも彼女への評価を修正しつつ、バスターを準備する。
 二人は貨物室のドアの陰にかくれた。

「まだだ……まだ遠い!! 早く寄ってこいよ……チキンどもが!!」
「オクトさん、怖いです……」
 目を血走らせ、発砲のタイミングを計る少女。
 うねる触手の一本がヒタヒタと頬に当たり、エックスはちょっとゲンナリした。

 海賊はいよいよ近づき、マシンガンを取り出す。
 彼らが空に向けて威嚇射撃をしたのと同時、少女が叫んだ。

「READY!! FIREEEEEE!!」
「うひゃあーっ!?」
 バックパックの触手から、ミサイルの群れが放たれる。
 折り重なった爆風が、暴風と化してウォータージェットを飲み込む。
 それで海賊たちは全滅した……呆気ない幕切れだった。


699 :以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします :佐賀暦2006年,2006/10/24(佐賀県警察) 20:25:19.57 ID:3IC2Nna90
「HAHAHA! 生まれたてのマンボウみたいに吹っ飛んだのDEATHよ!
 クソ海賊め、所詮この程度なのDEATHよー!!」
「もうイヤ……」
 エックスがボヤく。綺麗な顔はバックファイアで真っ黒になっていた。
 ……とりあえず床に突っ伏して、スンスン泣くことにする。

 他のレプリロイドたちは、オクトの奇行に慣れているのか、淡々とボートを準備する。
 波間に浮かぶ海賊たちを捕らえるのだろう。
 ほとんどの乗員がボートに乗った、その時だった。

「うわっ!?」
「むっ!?」
 船を襲う激しい揺れに、床を転がるエックス。
 一方のオクトは触手で床を掴み、耐えた。自身に内臓された無線へと怒鳴る。

「状況報告! どうなってるのデスか!?」
『す、水中にシーアタッカーが! 人間は囮で、そっちが本命だったようです!』
 オクトは舌打ちし、甲板から海へと身を乗り出した。

「あの、ボクはどうすれば……」
「海は私の領域なのです。いい子でお留守番してるのですよ?」
 穏やかな微笑みを見せ、彼女は海へと跳ねた。
 エックスは、ただそれを見ていることしか出来ない。


「あの!! 誰か!! 忘れてませんか!?」


700 :以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします :佐賀暦2006年,2006/10/24(佐賀県警察) 20:25:56.21 ID:3IC2Nna90
「あ」
 オクトが見えなくなって、すぐ、吊るされたカメリーオが叫び出す。さっきの爆風で猿轡が外れたようだ。
 ごめんね、とエックスが近寄りかけた時、またも衝撃が船体を襲う。

「ぎゃあ!! 助けてぇ!!」
 ロープの先でカメリーオの細い体が、ぷらんぷらん揺れた。

「おろして!! お願い!! 怖いです!!」
「わ、わかったよ。待ってて……」
 エックスはそろそろと立ち上がり、慎重にカメリーオの元へ移動した。
 船の横手に立てられたポール。おそらく旗かを掲げるのだろうそれに、カメリーオは吊るされている。
 幸い、揺れはこない。だが、のんびりしても居られない。
 エックスは左手でポールを掴み――バスターでポールの土台を破壊した。

「ぐっ……重い!!」
「ひぃ!! これは!! いけない!! 堕ちてしまう!!」
 さすがのロックマンと言えど、片手で人ひとり支えるのは至難の業。
 カメリーオの体は海面スレスレまで下がった。

「許して!! お願い!! なんでもしますから!!」
「わわっ、わかったから! 暴れないで!」
 バスターを腕に戻し、両手で支える。一本釣りの姿勢で格闘すること、しばし。
 エックスは無事カメリーオを引き上げた。
 出力を最低に抑えたバスターで、ロープを焼き切ってやる。

「しっかりして。立てる?」

702 :以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします :佐賀暦2006年,2006/10/24(佐賀県警察) 20:26:36.04 ID:3IC2Nna90
「……女顔に心配されるなんて……悔しい!!」
 痙攣しながら、酷いうわ言を繰り返す少女。
 落ち込みながらも律儀に肩を貸すエックスの耳に、複数のエンジン音が届いた。
 見れば、無人のウォーターバイクが三機、こちらへ向けて走ってくる。
 なんだろうと見つめた、その時間がロスタイムだった。

「しまった!?」
「ふぇぇ……?」
 今度はウォーターバイクが囮。
 その後ろを、海中からついてきたアングラーゲ達が、一斉に顔を出した。

 ほぼ同時にエックスがバスターを乱射。バラ撒かれた光弾が、一機のウォーターバイクをスクラップに変える。
 だがアングラーゲは倒せていない。彼女らが手にするマシンガンが、一斉に火を吹いた。

「あぶな……うわあっ!?」
 船室へと走り抜けようとするエックスを、再び揺れが襲う。
 バランスを崩した彼の背中に降り注ぐ、鉛弾の雨。
 カンカンカンっと、まるで大粒の雨がトタン屋根に当たるような音が響く。

「いててててっ!」
「あぶない!!」

 飛び出す、緑色の影。カメリーオは四つん這いになると、尻尾だけをピンと立てた。
 船体の揺れを物ともせず、撃ち出される針の一群。
 アングラーゲが一体、顔を穴だらけにされて海に落ちた。

706 :以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします :佐賀暦2006年,2006/10/24(佐賀県警察) 20:28:41.85 ID:3IC2Nna90
「えっ、うそ……?」
「さあ!! 今のうちに!!」

 カメリーオはエックスの手を引いて走り出す。
 その細腕で彼の体を支え、船室までを転ぶことなく走りきった。

 ドアの陰に隠れ、一息つく。

「あぶない!! けれど!! 大丈夫!! さっすがカメリーオ!!」
「……うん……見直したよ……ありえないぐらい……」
「あれ!? なにカナ!? なにカナ!? その反応!!」
 しみじみと頭を撫でられ、カメリーオは目尻に涙を溜めた。

     ※

 我に返ったエックスが、ヘルメットに内臓された無線機へ話しかける。

「オクトパルドさん、そっちはどうなってますか!?」
『それが、すごい数で……船を傷つけないように白兵戦してるんデスが……』
「あ!! このタコ!! タコこら!! このタコこらタコァ!?」
 オクトパルドの声を聞きつけ、カメリーオが無線に割り込む。
 カメリーオが何を言おうとしたのかは、分からない。ただその瞬間、ブチッという音が確かに聞こえた。

『AHAAAAAAA!! このアホたれ、黙るがいいのDEATHよぉぉぉ!!』
 水中に放たれる、獰猛なミサイルの群れ。
 片っ端から獲物となるメカニロイドを粉砕し――その余波は船にまで襲いかかる。


707 :以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします :佐賀暦2006年,2006/10/24(佐賀県警察) 20:29:24.70 ID:3IC2Nna90
「え? わっ、うわああああっ!?」
 エックスは自分の目を疑った。船室が縦方向に回転している気がしたのだ。
 それが錯覚ではなく、船が転覆しているのだと分かったとき――彼の意識はブラックアウトした。

     ※

「うう、痛たぁ……」
「うわぁ!? 起きた!! 起きちゃった!!」
 瞼を開けると、やたらと暗い。
 エックスは目が慣れる――センサーの光量補正が有効になる――のを待った。
 やがて見えてきたのは、貨物室に並べられていた僅かなコンテナ。どれも引っくり返っている。
 それから足元に据え付けられた蛍光灯と、何かに怯えるカメリーオの姿だった。

「……ここは?」
「あ、はい、船です。船の中です」
 いまいち事態を把握できないエックス。
 その疑問が言葉となる前に、再度カメリーオが口を開く。

「つまりボクとエックスさんは、逆立ちした船に閉じ込められてしまったんです」
 エックスは、改めて足元を見やる。蛍光灯があるということは、これは天井なのか。
 彼は頭を溜め息をついて、無線のスイッチをいれた。

「オクトパルドさん?」
『も、申し訳無いのですー! ミサイルでメカニロイドは片付いたんですが……
ふっ、船っ、船も沈めてしまったのですよー!』
 びぇんびぇん泣き出すオクト。意外にもあどけない声に、エックスは毒気をそがれた。


708 :以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします :佐賀暦2006年,2006/10/24(佐賀県警察) 20:30:13.03 ID:3IC2Nna90
「それは、もういいですから。僕たちは、いつごろ出られそうですか?」
『ひっく、えぐっ……それが……』
「ハンター本部は海賊たちの身柄確保を優先するそうです」
 言葉に詰まったオクトの代わりに、カメリーオが説明を始めた。
 エックスも、泣いていたオクトでさえ、驚きに口をつぐむ。

「既に他のクルー……水中用レプリロイドは港へ向かっています。
この船はしばらく沈まないので、ボクたちは救援待ちです」
 緊急事態だからか、普段の暴れっぷりが嘘のように、真面目なカメリーオ。
 彼女が用件を言い終えると、居心地の悪い沈黙が降りかかった。

「えっと、じゃあオクトパルドさん。後はお願いします」
『……あっ、はい! エックスさん、本当にごめんなさい』
 気を取り直し、エックスとオクトが無線を切る。
 カメリーオは、ずっと真面目な顔で黙っていた。

     ※

 どのくらい、そうしているのか。
 ジャポ…ジャポッ…という水音が間断なく聞こえ、その都度、鈍い音を立てて船室が揺れる。
 いまにも壁が割れ、海水が流れてくるのではという恐怖に、エックスは身じろぎした。

 カメリーオは、全くふざけない。あさっての方向を向き、黙って座っている。
 まるで彼女の姿をした、別の少女が座っているようだった。

――い、居心地が悪い……

715 :以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします :佐賀暦2006年,2006/10/24(佐賀県警察) 20:42:15.63 ID:3IC2Nna90
 ひた続く沈黙に、エックスの我慢は限界を超えた。

――そうだ。何か話をしよう……

 思考を巡らす。そうだな、無難にテレビの話題がいいかも知れない。
 先日の「ボスんち」の話でもしようと、口を開いたときだった。

「えっと、」
「あの!! エックスさん!!」
 ほぼ同時、カメリーオが大声を出した。エックスは驚きながらも、つい笑ってしまう。
 ようやく見せた彼女らしさに、奇妙な安堵感を覚えたからだ。

「どうしたの?」
「えっと、ほ、ほ……」
「ほ?」
 ごくり、と唾を飲み込む音。そして少女は、大声で言い切った。

「本当に男なんですか!?」


 エックスは部屋の隅へ移動すると、壁を向いて座りこんだ。

「ああああ!! ごめん!! ごめんね!! 怒らないで!!」

     ※


716 :以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします :佐賀暦2006年,2006/10/24(佐賀県警察) 20:44:00.88 ID:3IC2Nna90
『閉じ込められた?』
「そうなの!! リオちん、ぴんち!! 助けて旦那!!」
『だから、旦那と呼ぶのは、おかしい』

 船が転覆してすぐ、少女はクワンガーに電話をした。
 相手は、ハンターきっての追跡者。もしかしたら、この船にも同乗していたかも知れない。

『だが生憎、私はいま発電所にいるのだよ……いや残念。
 正直、出勤時に悩んだのだ。こっらと君たち、どっちが楽しそうか、とね』
 不謹慎にも笑うクワンガー。カメリーオは、がっくり肩を落とした。

『不不不……だが、すぐに私を思い出したことは評価するぞ、ふんどし2号。
 君たちが一刻も早く助かるように、ツテに連絡してやる』
「その名前はイヤァァ!! リオちん、だぶるぴんち!! でもありがとう!!」
 尻尾を振って喜ぶカメリーオ。
 だが、そこにクワンガーは最高のプレゼントを投下した。

『しかし羨ましい。暗い密室で、女顔と二人っきりとは恐れ入る』
「へ?」
『不不不……女顔といえど男。そして男はみんな狼なのだよ?』
 言葉の意味が、徐々にカメリーオの電子頭脳へ浸透してくる。

「あはっ、あは、やだな、旦那!! エックスだよ!? グリーンだよ!!」
『私の調査によれば、エックスにも性欲があり、相応の経験もある。
無論、相手は腹黒ペンギン。それは、もうマニアックな――』
「嘘でしょう!? 冗談でしょう!!」

741 :以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします :佐賀暦2006年,2006/10/24(佐賀県警察) 21:48:28.75 ID:3IC2Nna90
 カメリーオの顔から血の気が引いて行く――彼女は男と話したことが、ほとんど無かった。
 一方的に話しかけるのは得意だが、話しかけられた経験は少ないのだ。
 クワンガーは、それらを知った上でプレッシャーをかけている。

『小便は済ませたか? コウノトリにお祈りは? 勝負ふんどしの準備はOK?』
「旦那!! 待って!! リオちん、とりぷるぴんち!!」
『2号の健闘を祈る。助けが来るまでの間、たっぷり可愛がってもらうといい』
 それっきり電話は切れた。

「あわ、あわ、あわわわわ……」
 少女は、しばらく携帯の薄明かりを眺めていた。
 それが自動で消灯される頃、かすかにエックスが身じろぎした。

「う……」
「わあっ!? 待って!! 起きないで!!」
「ん……うぅ……」
 良かった。まだ寝てる。
 カメリーオは四つん這いで近づくと、しばし彼の顔に見入った。
 長いまつ毛。白く、きめ細かい肌。まるで紅を差したかのような、赤い唇。
 まるで本物の女性のようだ。

「……女だったりしないかな? カナ?」
 もし、そうなら安心なのに……鷲みたいなのは勘弁だけれど。
 そんな下らない考えが、浮かんで消えた。

743 :以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします :佐賀暦2006年,2006/10/24(佐賀県警察) 21:50:06.81 ID:3IC2Nna90
「ううっ……やっぱりカメリーオだったよ……
ボクだって男なのに……どうしたら分かってもらえるかなぁ?」
「ひいっ!?」
 先ほどからエックスは、見えない妖精さんとお話ししている。
 けれど、漏れ聞こえる単語は、カメリーオを絶望させるのに十分な内容だった。
 少女は、今にも少年が襲ってくるのではないかと、気が気で無い。

 怖い。怖い。嫌われちゃいけない。仲良くしなきゃいけない。
 なんとかして可愛がってもらわなきゃいけない。

 どうやって? どうすれば可愛がってもらえるだろう?
 可愛がる……可愛い……彼が「可愛い」と思うモノは何だっけ?

 やがて少女は覚悟を決めた。

「えっと……え、え、エックス!!」
「はい?」
 突如、大声を出した少女を、エックスは「またか」という目で見た。
 そして自分のセンサーを、次にAIを疑った。

「おかえり……なさい……」
 珍妙な言葉に、エックスの口がポカンと開く。
 彼女は三つ指をついて、土下座していた。

「ご飯と……お風呂……どっちが……いい……?」
「あの、何やってるの?」

748 :以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします :佐賀暦2006年,2006/10/24(佐賀県警察) 21:51:42.79 ID:3IC2Nna90
「ちなみに……お風呂は……もれなく……私がセット……」
「ええっ!?」
 お構い無しと近寄ると、大きな目をパチパチさせて尋ねる。
 何の前触れもなく、少女は少年の手を握った。そして、それを自分の胸の谷間へと導く。

「ひゃわっ!? ちょ、ちょっと!?」
 手が柔肉に埋もれる。彼女の体温と、柔らかい触感に、エックスは思わず息をのんだ。
 カメリーオは固く目をつぶり、小さく震えている。
 それでも、しっかりエックスの手を掴んで、離さない。

「な、な、なにやってるの、カメリーオ? わかった、おままごとだ!
でも今はこんな時だし、ホラ、ふざけてる場合じゃないんじゃないかな?」
 しどろもどろになりながら、視線を引き剥がすエックス。
 だが、逸らした先へ、少女は回り込んでいく。
 少年の頬を両手で挟み、正面から目を合わせる。

「どうして……? なんで……無視……するの……?」
「うっ」

 普段アホばかりやっているせいで見落とされがちだが、カメリーオは魅力的な少女だ。
 小さな頤(おとがい)。適度に発達したボディライン。
 大きくて勝ち気そうなアイラインを、くっきりした二重瞼が柔らかく見せている。
 それらの魅力の全てが、余すことなく傾けられてくる。

 エックスは顔を真っ赤にして、とりあえず目を逸らす。
 その途端、カメリーオは激しく動揺した。

753 :以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします :佐賀暦2006年,2006/10/24(佐賀県警察) 21:55:16.48 ID:3IC2Nna90
「……ちがうの? ……これじゃあ、ない?」
「え? なに?」
「……どう……しよう……別の……」
 うつむき、なにか呟く。エックスは本気で彼女のAIが心配になった。
 肩に手を置こうとするが、それより早く、カメリーオが顔をあげた。

「なんだよ、エックス! オレがアイちゃんの真似したから怒ったか?」
「へ?」
 今度は覇気のこもった表情。喉を鳴らして、胸元に頭を押し付けてくる。
 仲のいい相手の匂いをかぎたがる……ゼロの癖。そこに先ほどまでの面影は無い。

「やっぱ奥さんの真似はマズイよな。ごめんな?」
「あの、カメリーオ、なんか変だよ? ……元からだけど」
 エックスは少女の肩に手を置き、言葉を選んで距離を置こうとする。

「なっ、なんだよぉ……いつも、この位するだろう?」
「たしかにゼロには変な癖がある。でも、キミにそんな癖は無いじゃないか」
 それを聞くなり、カメリーオは顔を歪めた。
 苦しそうに、悲しそうに、懸命に言葉を探す。

「あるもん!! 私は……じゃなくて、オレは……えーと……」
「……やめて」
「あれ? どうしよう。こういうとき猫は何て言うんだっけ?」

「やめろ!!」

755 :以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします :佐賀暦2006年,2006/10/24(佐賀県警察) 21:57:42.98 ID:3IC2Nna90
 エックスが――怒鳴った。少女は背筋をこわばらせ、目を見開く。

「なんで!? 私のコト嫌い? 物真似、下手だった?」
「……」
「仲良くしよう? ね? エックス!!」
「……仲良く?」
 エックスは細い眉を吊り上げ、冷たい目で呟く。
 その途端、少女の大きな瞳から、滝のように涙が溢れ出た。

「がんばります!! 物真似うまくなる!! だから!!」
 腕と腕を絡めようとする少女。その手首を強く握って、エックスは叫んだ。

「物真似で仲良くなれるのか!? 君は誰かの代わりになれるのか!?
君は、とても失礼だ。アイちゃんと、ゼロと、そして誰より君自身に!」
 そして彼は、空いたほうの手を振り上げた。
 殴られると感じた少女は、目を瞑って衝撃を待つ。

 ……ややあって。

 ぽん、と頭に手が乗った。そのまま、わしゃわしゃと髪をかき混ぜる。
 エックスは眉根を寄せ、やっぱり苦手だ、と舌を出した。

「……え? あれ?」
「えーと、仲良くなるなら、敬語やめない?」
「敬語? え? え?」
 相手の感情の変化についていけず、戸惑う少女。

758 :以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします :佐賀暦2006年,2006/10/24(佐賀県警察) 22:02:05.25 ID:3IC2Nna90
 その顔を正面から覗き込んで、少年はニッコリ笑う。

「友達って、そういうことでしょ?
キミは普通にしていれば、いいんじゃない……かなぁ?」

――いいんだよね、多分……

 口に出さず苦悩する少年。少女は気づいた風もなく、黙っている。
 しかし目はきちんと彼を捉え、話を聞いている雰囲気が伝わってくる。

「ほら。友達なんだから、呼び捨てにしようよ」
「よびすて……うん、あの……えっくす……」

 うつむく少女。部屋は暗く、少年には見えないのだが、その頬は朱く染まっている。

「わ、わたしのことは……リオでいいよ……」
「リオね。いいよ」

 少年が頷くと、少女はさらに赤くなって、ありがとう、と呟いた。

「えっくす……あのね……」
「ん?」
「ごめんね。男の子と話すの、慣れてなくて……」
 リオは改めてエックスの隣に並んだ。肩と肩をくっつけて座る。

「二人きりだと思ったら、なんだか、おかしくなっちゃった……」

765 :以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします :佐賀暦2006年,2006/10/24(佐賀県警察) 22:05:23.68 ID:3IC2Nna90
――いや、ならないよ、普通。

 少年の抗議は、しかし声になることはなかった。
 口元に生まれる、呆気ないほど柔らかな感触。
 リオの唇が自分の唇に重なったと気づくのに、少しかかった。

「っ!?」
「ありがとう……えっくす……」
 リオは微笑み、少年を抱きしめた。
 彼が良い人で良かった。これなら……きっと……優しくしてくれる。

「あれ?」
「ん? こ、今度はなに!?」
 待てよ。待て待て、これはおかしい。
 襲われるのが怖くって、なのに、この状況は……えーと?

「あ、あの、カメリーオさーん? もしもーし?」
 問いかけるエックス。その頬は、彼女の胸が当たっているせいで、赤い。


「き、」
「?」
「き、き、」


「きゃああああああああ!!!!」

768 :以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします :佐賀暦2006年,2006/10/24(佐賀県警察) 22:07:10.08 ID:3IC2Nna90
「キバヤシッ!?」
 渾身の右ストレートを受け、エックスは奇声をあげて吹っ飛んだ。

「なんで!! ボクが!! お前と!?」
「それはボクの台詞なのに……」


 だが、彼の災難は終わらない。
 天井――もともと船の床だった部分――が、轟音と共に崩れ落ちる。

「ショットガンアイス……ババンっと……」
 隙間から顔を覗かせたのは、紫の布に包まれた、か細い肢体。競泳用水着を着た、アイシーペンギーゴだった。

「変態も、たまには……役に立つ、ね。泳いで……助けに……きた、よ……?」
 そこまで言って、ペンギーゴは目を剥いた。
 泣きじゃくるカメリーオ。なぜか倒れているエックス。
 その瞬間、彼女の脳裏で、とんでもない誤解が生まれる。

「エックス……そういう……こと……だった、の?」
「な、なにが?」
「私に……指一本……ふれない、なんて……変だと……」

 ペンギン帽の口が開き、ガション、とリロード音が響く。


「でも、カメリーオだけは、ありえないよね!?」

771 :以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします :佐賀暦2006年,2006/10/24(佐賀県警察) 22:08:42.32 ID:3IC2Nna90
「まっ、待って、誤解――」


「セイ!!!!!」
「イケダッ!!」


 渾身の一撃は、エックスを水平の彼方へと吹き飛ばした……



『次のニュース。昨日、B級ハンターのエックス氏が行方不明となりました。
ハンター本部は遺憾の意を表明すると共に、現在も捜索を――』



「あれは……飛行機かな? ちがうな、飛行機はもっと、バーッと動くもんな」
「暑いな……ここ、どこだろう? ……おーい、誰か居ませんかー?」

「……ボク……いつになったら帰れるんだろう……」

「……うーみーは、ひろいーな、おおきいなー……」

【完】

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